第一章 序 章
一行阿闍梨(いちげうあじやり)
天台大師の滅後百余年、秘密の大教が始めて支那に伝はつて、大日(胎)、金剛界(金)の両経が将来された。一行阿闍梨は両経の将来者であります善無畏(ぜんむい)、金剛智両三蔵(こんがうちれうさんぞう)の大法を受けられ、新来(しんらい)の密教に対して最初に哲学体系を与へその教理を組織された方であつて、唐の開元(かいげん)十五年四十五歳にして示寂(じじやく)せられた。名著「大日経義㚖釈(だいにちけうぎしやく)」十四巻は一字一句悉く珠玉(じゆぎよく)であり実に日本天台の基礎をなす不朽の力作で、その功績は龍樹(りうじゆ)、天台に比肩(ひけん)するものであります。
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