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kiske3の絵日記

一コマ漫画、トホホな人の習性、

映画批評、恐怖夜話、あらゆる

告知をユルく描いて書いてます。

リアルな恐怖

2008年08月14日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

心霊現象とカテゴリーされる恐怖以外の恐怖。ほとんどが「命からがら」
とか「もう少しで死ぬとこだった」というものでしょう。自分や他人の
単なるミスから発生する事が多いかもしれません。これを経験すると何年
経っても「あぁ、生きてて良かった!」とか「あぁ、神様仏様!有り難う
御座います!」と心底、思ってしまいます。まずは、私が芸大時代の話。


当時、作品制作で立体造型を作っていた私は、針金で基礎となる骨格を
作っていました。太さが各サイズの針金は、ある一定の輪の状態に綺麗に
巻かれている。それをシャリシャリ鳴らしながら、ペンチで適度な長さも
カットしては骨組みに巻いたりしていた。深夜、朦朧としながら、なかなか
進まない行程に苛立ちを感じていた。ある針金が輪の途中で絡まっている。
それをほぐそうとするほど、難解なパズルになっていく針金の輪。ストレス
のピークに達した時、右手に持ったその針金の輪を振り下ろした。その時、
“シュッ”と空気を切り裂く薄い鋭角な音と共に、右目とこめかみの間に
痛みを感じた。円を描いて、針金の尖った先が目の1センチ横に刺さった
痛みだった。幸い、こめかみの骨の上の皮をえぐっただけで済んだものの、
私は痛みに叫ぶ前に青ざめ、そして言った。「か、神サマ!アリガトウ!」


次は弟の話。彼も芸大時代に起こった恐怖の話です。


当時、弟の友人の間でサバイバルゲームが流行っていた。サバイバルゲーム
とは、主にエアソフトガンとBB弾を使って行う、戦争の歩兵による戦闘を
模した撃ち合いを行う遊び、もしくは競技である。一般の人に解りやすい
ように言うと、要するに戦争ごっこである。さすがに軍服は着ないが、エア
ガンには凝っていたので、毎週末のゲームは白熱していた。紅組と白組
で戦い、戦場は夜中の芸大校内だった。もちろん、夜中の校内には入れない。
当時は管理が甘かった上、卒業制作の学生の深夜制作も黙認されていたので
易々と入れたのだった。数々のゲームの中、まだサバゲー初心者だった弟は
すぐに射撃され、「ヒット!」と両手を上げて自分が「死んだ」事を告げる
ばかりだった。今夜こそ生き残ってやる、と意気込んだ弟は、敵がよく
見えそうな校舎の屋上に上がった。芸大はほぼ田舎のど真ん中にあったので
街灯や周囲のライトなどほぼ皆無。自分が装備しているライトで照らそう
ものなら、自分の居場所を敵に知らせる事になるので御法度。弟は暗闇の
屋上を、敵が現れそうな場所を仮定し、見晴らしの良い屋上の縁まで
ゆっくりと静かに歩いていった。突然、自分の身体が傾いた。回る遠くの
街灯。自分が屋上から落下するのが解った。とっさにエアガンを捨てて、
屋上の縁を左全身で手すりを掴もうとした。そこには屋上にあるべき
手すりが無かった。凍り付いた脳は左手と左脚でコンクリートの本当の
「縁」を叩き付けるようにして掴み、しばらく腰が抜けたまま、右半身
だけ宙に浮かんでいた。数十秒後、力が入った身体を一気に屋上に持ち
上げて、大声で叫んだ。「か、神サマ!アリガトウ!」その声で敵に
見つかった弟はゲーム上での永遠の死、すなわち、サバゲー脱退を目的に
手を挙げて敵前に出て行ったのである。もう一度言う。「あぁ!神様!」












まだ、ありますけどね。                     ボスヒコ
 押して
 

オーラの力 後

2008年08月02日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

カオリさんに出会った頃、「ボスヒコさんのオーラ、変わっている…」と
言われて以来、そういう話をした事がありませんでした。そういえば、
彼女にはそんな能力(自称だから解らないが)があったのを思い出した。

私はレジでお金を払いながら、彼女に聞いた。「で、どんなオーラ?」
おそらくこれが私と会う最後の時だと思っていたのだろう。彼女は言い
にくそうに言いました。「ボスの右側だけ黒いの。右半身というか、右腕
というか…。とにかく、ブラックホールみたいに暗い闇なの」気には
しませんが、こんな事を深刻に言われるのは誰だって、あまり良い気が
しません。なぜなら私も、自殺を考えている人や何か悩んでいる人の額
辺りに暗い小さなブラックホールを見る時があるからです。店の外に出た
私は彼女に訊いた。「それって、病気になるとか、ケガをするとかの
前兆として忠告してるってわけか?」彼女は大きく首を横に振りながら、
「違う違う。そんなんじゃないんだけど……例えば…凄い力があるって
感じだから」私は正直、こういう事を聞くと内心ウンザリします。よく
自称霊能力者やオーラが見える人と言う人は数多く、「何何が見える」と
言う主観だけで終わる人が多いからです。それを証明出来る人はごく
わずか。占いと同じで、言った事が当れば「ほら、言った通りでしょ?」
と言い、外れれば、「アナタの努力で変えられたのです」と言う。駅へ
向かう道中を話しながら歩きました。「今更だけど、ボスの事が好きで
おつきあいしたかったけど、そのオーラが凄く強くて、私にとっては
凄くしんどいの。せっかく会ってもらっているのにこういう事を言って
ごめんなさい。意味は近づけば近づくほどしんどくなるって意味で
精神的にも肉体的にもおつきあいは出来ないの。だから、元々はそれで
あきらめていたんだけど、コクっちゃってフラレて、スッキリって
わけ。」彼女の目を見ても、狂ってはいないし、テンションも高くは
無い。むしろ、良い想い出として楽しそうに話している。まあ、本人が
勝手に色々と納得しているのだから、と軽く流した。数メートル先に
カップルが手をつないで歩いて来た。こちらも見た目はカップル。同じ
なのは両方のカップルは話しながら歩いているので2人横に並んで歩いて
いる事。今、歩いている道路は道幅が狭く、2.5人分の幅しか無かった。
すれ違いをスムーズにする為、向かいのカップルの男性は先に一歩踏み
出して、女性を引っ張る形にして縦一列を作った。カオリさんは私より
半歩先に歩いていた状況と、エスコートする意味で、彼女の肩辺りを
軽く押して私の前に行ってもらおうとした。それと同時に私も下がれば
一瞬で縦一列になる。これくらいでは彼女が私の行為をセクハラとは
思わないのを知っている上、何も問題が無いように思えた。しかし、私が
半歩下がって、彼女の肩に触れようと腕を上げようとした瞬間、彼女が
2メートルくらい、前方に吹っ飛んだのである。転けたとは思えないのは、
若干、宙に浮いて飛ばされていたからだ。しかも彼女は高いヒールを履いて
いる。あれだけのジャンプするのは不可能なはずだ。私も驚いたが、前方
にいるカップルは、私が女性を突き飛ばしたように見えたはずなので、
かなり驚いていた。飛ばされたカオリさんは私を見て苦笑しながら言った。


「だから、言ったじゃない」


そこで思い出しました。彼女の肩を押そうとしたのは彼女が恐れている
私の右手。私の右側に危険なオーラがあるとか、強い気があるとかはさっぱり
解りませんが、私の右手と彼女の身体は合わない事だけはよく解りました。

そりゃ、つきあったとしても何も出来んわな、と倒れた彼女を左手で起こした。













なんともまあ不思議…                     ボスヒコ


 押して
 

オーラの力 前

2008年08月01日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

以前にいた会社の労働組合活動で出会った仙台の女性。彼女の名前は
カオリ(仮名)さん。カオリさんは霊感が無いらしいのですが、「気」
というか「オーラ」というか、人間の身体から出る何かは見えるらしい
のです。彼女と最初に会って挨拶している時、私を警戒している感じ
でした。しかし、それは最初だけで、3日間だけ組合の仕事を一緒に
して、彼女は仙台に帰っていきました。それから、週に1回くらい
のメールのやり取りをする仲になりました。彼女は大阪に出張するたびに
私と会おうとスケジュール調整をするのだが、忙しい彼女には難しく、
なかなか会う事が出来ません。どうやら、彼女は私の事が好きなよう
です。モデルになってもおかしくないくらいの身長と容姿のカオリさん。
悪い気はしません。そうこうしているうちに、彼女も会えない憤りが
出たのか、メールで軽い感じの告白をしてきました。私もそれにわざと
便乗して、軽く断りました。明快な彼女は「軽く失恋」したのにスッキリ
したのか、メールの数も減って行き、とうとう連絡も途絶えました。



それから半年後、カオリさんから電話がかかってきました。あれから、
仕事も上手く行き、素敵な彼氏も出来た、と言う電話でした。なぜか、
カオリさんは私と仲間意識があり、失恋したのにも関わらず、こういう
電話をしてくる。サッパリした性格に私も好感を持って話をしました。
楽しく話をした後、電話を切り際に彼女は来月の最初の土曜日に仕事で
大阪に行くので会いたい告げられました。会うのはスケジュール的に
1時間しか会えません。それでは大阪駅の近くの店で会いましょう、と
言う事になりました。もうひとつ、彼女が告げた言葉は「確かめたい
ことがあるから」でした。一体、何の事か解りません。今更、好きか
どうかも無いし、彼女の性格からはそんな事を言う事は無いでしょう。



大阪駅近くの某有名なビルにある1階の喫茶店でカオリさんと再会しま
した。仕事も恋も順調、彼女の美しさは磨きがかかっておりました。
懐かしがる私達は、お互い近況を楽しく話しただけで1時間を使い切り
ました。カオリさんは名残惜しく仙台に帰る用意をしだします。そこで
彼女は言いました。「実は、ボスのオーラの話なんですけど……」












大した話じゃないのにひっぱります。               ボスヒコ
 押して
 

飛ぶ分身 後

2008年07月31日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

その人を見た時、異様な姿に少し驚いたが、なぜか「あ、これは……ボスだ…」
と、彼女は思った。その人間ではない人のような者は、全身を覆う異様に長い
髪の毛、顔はほんのわずかしか見えない。髪から出ている唯一のガッシリした
肩が、よくライブペインティング時に来ているドイツ軍のアーミーシャツに
似ている。何よりもおかしいのは、その者全体の色が石のように灰色でモノクロ
だった。ボスヒコをデフォルメした姿にサオリさんがこの異様なモノをボスヒコ
と判断したのでは無いと言う。自分の中で念を感じて映像化された姿なので、
直感的にボスヒコだと感じたらしい。そして、その灰色のボスヒコを乗せた
電車が速度を上げ、彼女の視点から過ぎ去る時に、灰色のボスヒコが一瞬、
右手を肩辺りまで上げた。そして、上げた右手を斜めに左斜めに降り下ろした。
それは何かを刀で切るようにも念仏を放出したようにも見えた。その瞬間、
ボスヒコが生霊が乗っている電車は一気に通り過ぎた。サオリさんの前には
先ほどと同じような暗い窓が戻った。しかし、先ほどと少し違う所は、窓に
映っているサオリさんの背後に、絶叫している血だらけの女性が立っていた。



(うわぁぁあああぁああああぁぁぁぁああああ!!!!!!!!)



サオリさんは喉まで出かかった悲鳴を抑えて振り返った。窓ガラスに映った
状況と同じ、血だらけの女性が立っている。服はOL風で髪はセミロング。
頭からどくどくと血を流し、全身が赤黒く染まっている。その女はブルブルと
震え、声無き悲痛な叫びを上げていた。もちろん周囲の人間にはこの女は
見えてはいない。サオリさんは心の中で「怨霊よ!早く立ち去れ!」と念じ
ながら、原型が解らないほどの血みどろの顔に見覚えがあるのに気づき、
驚いた。沖縄にいた頃、サオリさんはある男性とつきあっていた。その男性の
事を好きになった地元の女性の顔だったのだ。その女性はストーカー気質で
しばらくは男性につきまとっていたのだが、何を思ったのか「サオリと言う
女が邪魔をしているんだ。」と言う嫉妬に変わり、しつこい嫌がらせを受ける
ようになったと言う。警察に言っても動いてくれず、ノイローゼになるくらい
嫌で、その男性と共に神戸に引っ越した。それ以来、そのストーカー女からの
嫌がらせは無くなった。彼とは今年、結婚する予定なので、そんな過去すらも
忘れていたのだ。サオリはその生霊になってまで、ストーカーする女に心底
震えた。しかし、その女の声無き絶叫から聞こえる言葉は意外なものだった。


ギャアアアアアアアアアアアア!!!!!!!クソ!!クソ!!クソ!!
燃える!!!溶ける!!!消える!!!アイツめ!!邪魔しやがって!!!


そう叫んだ後、その女の左肩から右腹までビシッと黒い暗闇の筋が入った。
そして、その暗闇の筋の穴にストーカー女の身体が吸い込まれて行った。


灰色の者が右手で空を切った線と一致する血だらけの女を裂く闇の筋………





と、言う事で、サオリさんは私に礼を言って来たのだった。信じられない
恐怖話に自分が異形の姿で出演しているとは。まあ、彼女がそう言っている
のだから、「いえいえ、どういたしまして。」と返した。サオリさんは
無事に幸せな結婚をし、すでに2児の母である。彼女が沖縄に帰った時に、
ストーカー女の所在をそれとなく探したのだが、見つける事は出来なかった。












明日もこんなの。                       ボスヒコ


 不思議だったらグイって押して。
 

飛ぶ分身 前

2008年07月30日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」
よく「ボスの生霊(念)に助けられた」といろんな友人に言われる事があります。
何から助けられたかと言うと、悪霊だったり、悪夢だったりといわゆるアッチの
世界の魔物かららしいです。しかし、その殆どのボスヒコの生霊はボスヒコの
姿では無いのです。ここが不思議な所で、見た人は全員「でもボスだった」と
説得力の無い自分にとって都合の良い事を言います。他には、「金縛りにあった
時、ボスヒコ、ボスヒコ、ボスヒコと名前を連呼すれば金縛りがとける」と聞き
ます。もうここまでくればプチ都市伝説ですが、彼らは真剣に話しています。

ある女性の友人が私の生霊に助けられたみたいです。私は彼女を助けた記憶も
無けりゃ、そんな技を持っているとは思ってません。彼女の妄想なのか、彼女の
想いでボスヒコを作り出したのか解りませんが、「見た」と言っているので
仕方がありません。その彼女、サオリ(仮名)さんとは仕事で出会いました。

サオリさんは、いわゆる霊感が強く、道を歩いていても、人間か霊かの区別が
つかないほど、見えてしまうらしいです。それを聞いて「タイヘンですな~」
と言うしか無い。サオリさんと私が初めて出会った時、彼女は言いました。
「ボスヒコさん、後光が差してますよ。」それを聞いても「そりゃ、明るい
ですな~」としか言いようが無い。でも、怖い話好きの私はとしては、彼女との
不思議な会話が楽しく、自然に仲良くなります。仕事上の彼女は全く普通で、
勤勉な方でした。仕事仲間で呑みにいっても、おかしな言動などありません。
その彼女がある日、「助けに来て頂いて、有り難う御座いました。」と言って
来たのです。なんの事やら解らない私は事情を訊きました。サオリさんの話は
作り話のように漫画的で信じられない話でしたが、彼女の落ち着いた口ぶり
から察しても、彼女の現実や脳内にはその恐怖映像が流れていたと思います。




サオリさんはサービス残業を終え、家に帰るために終電に乗り込みました。

ほぼ、毎日が残業。しかも奉仕。転職の事を考えながらドアの横手にもたれて
いました。席が空いているのだが、座ってしまうと自分の住まいがある駅には
降りれないほど寝てしまう可能性がありそうなので、終電の場合はいつも立つ
事にしている。それほど、寝過ごして最終地点の駅まで行ってしまった事が
よくあった。自分の住まいと終点までをタクシー料金で換算すれば、会社と
自分の住まいを往復出来る料金。寝過ごすのがバカげているので何が何でも
寝るわけにはいかない。彼女は窓の外に映る疲れた自分の顔を見ながら、イヤ
ホンで音楽を聞いていた。流れる音楽は沖縄民謡。彼女の実家は沖縄で、癒し
が欲しい時は、こうして聞いているのだった。暗い窓に映っては流れて行く
街の灯りをぼんやり見ていた時に、並走して来た電車と並んだ。明るい車内に
はこちらの電車と違って、乗客は少なかった。本を呼んでいる人、肩を寄せて
ねているカップル。ベッドのように使っている泥酔者など、まばらに座って
いた。おそらく、次の分岐点で田舎の方に行く各駅停車の電車なんだろうと
彼女は思った。ゆっくりと彼女の乗っている電車を通り過ぎて行く。その中、
サオリさんと同じように、窓際で外に向かって立っている人と対面した。











うわっ!!!                         ボスヒコ
 押して
 


夕方の路地裏にて

2008年07月29日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

さて、今日からのボスヒコ日記は不思議な話、怖い話、如何わしい話などを
書いて行きたいと思います。数日間か、数週間、アップしまくります。

まずは手始めに不思議な話。つい最近です。何も事件は起こりません。
何かが見える人がボスヒコを見た感想、と申しましょうか、オーラや気、
守護霊や生霊の類いの話をいくつかします。私も未だに解りません。




『夕方の路地裏にて』



昨日、仕事の資料探しにカノリンヌと近くの本屋へ出かけた。自転車をこぎ、
ある路地裏に入った。そこは人ごみを避けれるのでとても便利な上、近道。
何が飛び出して来るか解らないのでゆっくりと走っていると、15メートル
くらい前方に小さな影がふっと出現した。私がここを通るのが解っていたか
のように交差している道から来たのは背が低いおばあちゃん。彼女は横断
する事も無く道に入る事も無く、なぜか私の方をジッと見ています。足が
悪いかもしれないので、スピードをかなり緩めた。近づいてきて解ったのは
そこは十字路では無く、T字路。おばあちゃんの前には民家の玄関がある。
と言う事は、そこの住人かお客さんかもしれない。私がいる道に入り、
どちらかの方向に行くように見えない。分岐点でジッとしながら、こちらを
見ているという事はやはり、道挟んだその民家に用事があると思われる。

道幅も全然広くはないから、多少足が悪くとも渡るには充分な時間。しかし、
おばあちゃんはこちらを見ているだけ。仕方が無いんで安全なスピードで
彼女の目の前を通り過ぎようとした瞬間、おばあちゃんは私に手を合わして
「有り難う御座いました」とハッキリ言った。「え!?」っと思って、走り
ながら振り返って見たら、私の方を向いている。道を横断する気配が無い。
そして、おばあちゃんは来た道に引き返して行った。あまりにも不思議な
状況に私は路地裏を抜けてから、自転車の走行を止めて、カノリンヌに
訊いた。「今、さっき路地裏のおばあちゃん見た?」との私の問いに
「見てない」との答え。あんなにハッキリ居たのに!?と問いつめると、
居た様な居ないような…と何も覚えて無い。霊的なものでも幻覚でも無い
とは思うが、それよりもなぜ、私に合掌して礼を言ったのだろう。しかも
そこを私がこの日、この時間に通る事を彼女はなぜ知っていたのだろうか。
老人特有の病気だった可能性もある。仮におばあちゃんに“何か”が
視得たのなら、私の後ろには何が、もしくは私自体に何が視得たのかこの
おばあちゃんに訊いてみたい。去り際の彼女は笑っていたような見えた。












なんなんだ?                        ボスヒコ


 押して~~~~~~~~~~~~~~~~~
 

ヤスラギ 最終話

2008年06月27日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

5分も経たずに警官2名がやって来た。


スニーカーはもちろん無かった。律儀なのか本当に自分の部屋だと思って
いるのか解らないが、奇妙な事に鍵は再び閉められて、部屋のライトは全て
消して出て行っている。家主の存在に気づいた侵入者(マンション住人以外)
が逃げる方法は、色々あるだろうが、何気なくマンション住人のフリをして
出て行くには肝が座ってないと出来ないだろう。発見されたのに、正面玄関
からまともに出て行くにはリスクを伴う。やはりここは、裏の非常階段から
逃げることが無難な選択。非常階段を降りた1階にはドアが2つあった。
1つは裏口へと続くドア。もう1つのドアは大家さんの部屋に続くドア
だった。これなら大家さんが犯人だとしたら、不審に思われず逃げ込める。
侵入者がマンション内の人間なら自分の部屋に入れば良いだけだから不審に
思われない。警官2名もその可能性を話しあっていた。細かい事情調査を
しながら、指紋がつきそうな所を中心に部屋の中を調べてだした。年配の
警官に盗られた物が無いか調べてくれ、と言われてワタシは我に返った。


机に置いてあったキャッシュカードと現金はなぜか盗られていなかった。


盗られた物は、ノートパソコンと合鍵だけだった。個人情報が満載のノート
パソコン。合鍵は高価なネックレスなどのアクセサリーと過去現在含めた
あらゆる鍵を入れている箱に入ってあった。アクセサリーごと、否、箱ごと
盗んでも良いのにそこから合鍵だけを盗っている。おそらく、なんらかの
形で一番最初にこの部屋に侵入した時、侵入した事に気づかれないよう、
現場を荒らさずに合鍵だけ盗んだに違いない。そして、今回見つかって、
ノートパソコンだけ盗って行ったのだ。確かに高価な代物ではあるが……。


完全に盗み目的では無いのが素人でも解る。ワタシはストーカーされて
いたのか?真のストーカーは対象相手と絶対に会わないと言うポリシーが
あるらしいが、犯人像に全く見当がつかない。普通、犯人が大家さんで
あれば、合鍵を盗むと言う可能性は少ない。大家以外でマンション内をうろ
ついても疑わしく無く、気軽にあの部屋に来れて、合鍵が必要な者とは?

元カレやコンビニ店員の可能性も拭えないが、やはり近隣の者が犯人なの
だろうか。警官はまず大家さんと鍵屋を呼び出した。警察から質問を受けた
大家さんは呆れる発言をした。「このマンションはしょっちゅう空き巣に
入られるんや」ワタシは怒りを抑えきれなくなっている。鍵屋は部屋の
鍵穴を見て、唖然としている。「ここのマンションの全ての鍵は旧式過ぎて、
ちょっといじれば誰でも入れるよ。貴女の部屋だった鍵穴には古い傷と
新しい傷がある。完全にいじられた形跡ですね。」警官は大家さんに聞いた。
「以前住んでいた人と同じ鍵じゃ無いでしょうね。以前住んでいた人が
合鍵を作っていたら普通に入れるわけですし…」大家はまた驚く発言を
した。「前から換えてまへんな」鍵屋はそれに対して言った。「あのね、
ここの鍵に良く似た鍵でも開く可能性があるんですよ、この鍵穴は。もう
ちょっと用心した方が良いんじゃないですか?」大家さん以外の全員が
呆れて、大家さんをその場から外した。大家さんは後から別で事情聴取を
受けなければならなくなった。ワタシも後日また相談と言うことになった。


しかし、ワタシが不安なのは、これぐらいの被害ではあまり警察は動け
ないと言う事実だった。警察が当てにならない今、自分で盗聴器や隠し
カメラの可能性を考えなければならない。ワタシはあの部屋に行って
引っ越しの準備をしなければならない。あの限りなく疑わしい陰険な
大家さんと対面しなければならない。侵入者が捕まるまでは安心出来る
はずがない。ワタシのヤスラギは、まだまだ先のようだった。なぜなら、
あの部屋のドアの横に、油性ペンで書かれた暗号が新たに出現していた。










おわり













明日はもっと凄い。                      ボスヒコ
 押して
 

ヤスラギ 8

2008年06月26日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

息が止まり、血の気が下がり、目が乾き、喉が唸り、手が震え、
思考が固まる。男の靴が玄関に脱いであった。空き巣なら靴を
脱ぐ間抜けな行為などしない。このスニーカーには見覚えが無い。
廊下に向かって靴が脱いである。それは玄関から入った証拠。







このスニーカーの男は、“この部屋”に住んでいるのだ!!!!






男は侵入者では無く、ずっとこの部屋に住んでいたのだ。普通に
トイレをして、落とした注射器を拾い、自分の所有物の写真を見る。
ワタシが夜な夜な見た悪夢や人の気配は、悪霊や地縛霊の霊障では
無く、押し入れかベッドの下にいる、生きている人の気配だった。




自分の部屋で安らげないワタシを見て、ヤスラギを得る闇の者。




出来るだけゆっくりと、出来るだけ素早く、出来るだけ音を立てずに
鍵を閉めた。しかし、鍵を開けた時の音は聞こえているかもしれない。
鍵を開けて閉めるまで2秒も経ってないが、永遠に時間が止まった
ように感じる。急いでエレベーターに乗り込んだ。人差し指が
折れるほど、「1」と「閉」の文字を連打する。亀のように遅いエレ
ベーターに怒鳴る。2階を通過した時、「閉」の文字の上にあるどこか
の会社のステッカーに油性ペンで書かれている暗号のような文字を
見つけた。それはテレビで見たおぼえがある。名前も解らない、いつ
不在なのかも解らないマンションに住んでいる人を訪問する郵便屋や
宅配業者が無断で書く暗号。それを見て空き巣や窃盗団は獲物を狩る。
しだいに彼らはその暗号を逆利用しだす。宅配業者らを真似て自分達で
暗号を記しておくのだ。今、ワタシの目の前に書かれている暗号は、




3E



3、E、アルファベットのE、A、B、C、D、E、アルファベットの5番目、
最上階は5階、1フロアに3世帯、ワタシが住んでいたあの部屋は3号室、




5 0 3




1階に着いたワタシは、侵入者の顔を見たい欲求と戦いながら振り返る
暇もなく走った。走りながら携帯電話を取り出して、警察に電話をした。
偶然にも13日の金曜日にこんなに忌々しい事に会うなんて……ワタシは
自分の情けなさと恐怖で泣いていた。パトカーのサイレンが聞こえて来た。












明日、最終回。                        ボスヒコ


 Xちょっと押してくれませんかね。
 

ヤスラギ 7

2008年06月25日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

ワタシの妄想なのだろうか。


周りの人全てが犯人に思える。



元カレ………向かいの大学生………大家さん……コンビニのおばさん……
不動産屋………マンションの横で工事している作業員……両親………



そして、妹。







一番疑わしいのはワタシ本人だったが、ワタシは狂っては無い。それは
自覚している。「ワタシは狂っては無い。それは自覚している。」と
言う人ほど病気だったりするのも知っている。見えないモノが見える
と言う脳にはなってはいないと思う。この部屋を嫌悪する恐怖心が
見えている物を妄想して、違う事実にすり変えているのかもしれない。


注射器、便座、写真、それらはなんとでも説明がつく。自分に自信が
無い。自分の記憶に自信が持てない。慢性の寝不足から来る記憶障害
かもしれない。しかし、ここで自信と勇気を持たなければ、本当に
頭がおかしくなる。ワタシは可能性を色々と考えてみた。ワタシの
住所を知っている者は挙げた全員に可能性がある。ワタシの部屋の鍵を
開けれる者は大家さん。しかし、ここのマンションの鍵は旧型なので
代用品で開けれる可能性がある。ベランダと非常階段が限りなく近い
ので、そこから侵入も出来る。窓に鍵を閉めてない日もあったかも
しれない。注射器を落とした者も全員に可能性がある。便座を上げる
者は男性。妹やコンビニのおばさんがこっそり侵入して掃除をする
理由がない。ベッドに写真を置く者は……もう何がなんだか解らなく
なってきた。直感も頼りにならない。侵入者は全く見知らぬ奴かも
しれない。とにかく、ワタシは引っ越す事に決めた。人によれば、
遅すぎる決断かもしれないが、認識したくはない事実から遠ざける
心がやっと前を向いたのだ。こんな馬鹿な考えは、後々、自分を
嘲ることになるだろう。あの部屋が怖い。それだけで充分だった。





昨夜は叫びさえしなかったが気が狂いそうだった。下で侵入者が
待ち伏せしている可能性すら考えれずに一目散にエレベーターに
入り込んだ。降りて行く間にその可能性に気づいたが、どうとでも
なれと言う怒りが湧いてきた。おぼろげにしか覚えていないが、
何かを盗られた形跡は無かったと思う。むしろ、物の移動や物が
増えていたのだから。ワタシは、1階に着くなり、漆黒の土砂降り
の中へつっこんで行った。車が行き交う道路まで全力で走った。










仕事を午前中までに片付けて、いつも良くしてくれている不動産屋に
行き、事情を説明して、新しい部屋の相談をした。心が晴れやかに
なると、天候までこうなるかと思うくらいの雲ひとつない晴天だった。





今のワタシには前に進む力が漲っている。まるで子供のような発想だが、
これを利用しない手はない。このまま、あの部屋と決着をつけよう。
あの部屋で安らぎを得ることは一度も無かった事に少し寂しく思えた。
安らぎは得るものではなく、作っていくものだとワタシは実感した。










不動産屋からあの部屋に直行する。薄暗い印象のマンションも強烈な
陽の光を浴びて、綺麗なコントラストをつけている。エレベーターに
乗り、最上階のボタンを押す。鍵はもう持っている。カバンを肩に
かけて、両手を空ける。最上階に着き、過去の部屋となるドアを開けた。



















かろうじて白色と解る、汚れた大きいスニーカーが玄関にあった。

















もうすぐ終わります。                      ボスヒコ
 ちょっと押して
 

ヤスラギ 6

2008年06月24日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

キッチンに入る。



リビングに入る。



机の上を見る。



携帯電話とキーがある。



それを取りながら、ベランダを見る。



暗闇しか見えないベランダからの
風景から、視点を洗濯物を畳んだ
衣服に移す。



わざとあくびをして、適当な服を
2、3枚カバンに入れながら、
寝室を見る。



ベッドの周りにはリビングの灯りで、
ベッドからはねのけて落ちた
掛け布団、雑誌やペットボトル
などが浮かんでいる。




ベッドの奥は薄暗くて見えない。






ベッドの上には













ベッドの上には















ベッドの上には、ワタシと妹が
写っている写真が一枚、乗ってあった。




寝起きする所の真ん中に写真なんて置かない!


その写真を押し入れの写真箱からわざわざ
取り出してベッドに置かない!!


写真箱は引っ越した時から開けていない!!


きつく貼ったガムテープを取らないと上箱は取れない!!!!!



ワタシはそんなことをやってない!!!!!!













人なのか!?霊なのか!?そしてその意図は!?          ボスヒコ
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