kiske3の絵日記

一コマ漫画、トホホな人の習性、

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ヤスラギ 7

2008年06月25日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

ワタシの妄想なのだろうか。


周りの人全てが犯人に思える。



元カレ………向かいの大学生………大家さん……コンビニのおばさん……
不動産屋………マンションの横で工事している作業員……両親………



そして、妹。







一番疑わしいのはワタシ本人だったが、ワタシは狂っては無い。それは
自覚している。「ワタシは狂っては無い。それは自覚している。」と
言う人ほど病気だったりするのも知っている。見えないモノが見える
と言う脳にはなってはいないと思う。この部屋を嫌悪する恐怖心が
見えている物を妄想して、違う事実にすり変えているのかもしれない。


注射器、便座、写真、それらはなんとでも説明がつく。自分に自信が
無い。自分の記憶に自信が持てない。慢性の寝不足から来る記憶障害
かもしれない。しかし、ここで自信と勇気を持たなければ、本当に
頭がおかしくなる。ワタシは可能性を色々と考えてみた。ワタシの
住所を知っている者は挙げた全員に可能性がある。ワタシの部屋の鍵を
開けれる者は大家さん。しかし、ここのマンションの鍵は旧型なので
代用品で開けれる可能性がある。ベランダと非常階段が限りなく近い
ので、そこから侵入も出来る。窓に鍵を閉めてない日もあったかも
しれない。注射器を落とした者も全員に可能性がある。便座を上げる
者は男性。妹やコンビニのおばさんがこっそり侵入して掃除をする
理由がない。ベッドに写真を置く者は……もう何がなんだか解らなく
なってきた。直感も頼りにならない。侵入者は全く見知らぬ奴かも
しれない。とにかく、ワタシは引っ越す事に決めた。人によれば、
遅すぎる決断かもしれないが、認識したくはない事実から遠ざける
心がやっと前を向いたのだ。こんな馬鹿な考えは、後々、自分を
嘲ることになるだろう。あの部屋が怖い。それだけで充分だった。





昨夜は叫びさえしなかったが気が狂いそうだった。下で侵入者が
待ち伏せしている可能性すら考えれずに一目散にエレベーターに
入り込んだ。降りて行く間にその可能性に気づいたが、どうとでも
なれと言う怒りが湧いてきた。おぼろげにしか覚えていないが、
何かを盗られた形跡は無かったと思う。むしろ、物の移動や物が
増えていたのだから。ワタシは、1階に着くなり、漆黒の土砂降り
の中へつっこんで行った。車が行き交う道路まで全力で走った。










仕事を午前中までに片付けて、いつも良くしてくれている不動産屋に
行き、事情を説明して、新しい部屋の相談をした。心が晴れやかに
なると、天候までこうなるかと思うくらいの雲ひとつない晴天だった。





今のワタシには前に進む力が漲っている。まるで子供のような発想だが、
これを利用しない手はない。このまま、あの部屋と決着をつけよう。
あの部屋で安らぎを得ることは一度も無かった事に少し寂しく思えた。
安らぎは得るものではなく、作っていくものだとワタシは実感した。










不動産屋からあの部屋に直行する。薄暗い印象のマンションも強烈な
陽の光を浴びて、綺麗なコントラストをつけている。エレベーターに
乗り、最上階のボタンを押す。鍵はもう持っている。カバンを肩に
かけて、両手を空ける。最上階に着き、過去の部屋となるドアを開けた。



















かろうじて白色と解る、汚れた大きいスニーカーが玄関にあった。

















もうすぐ終わります。                      ボスヒコ
 ちょっと押して
 


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