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kiske3の絵日記

一コマ漫画、トホホな人の習性、

映画批評、恐怖夜話、あらゆる

告知をユルく描いて書いてます。

ミステリーナイト 9

2008年09月06日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

ドアの上辺を両手で掴み、ドアノブにかけた足に力を込めて、一気に
身体を持ち上げた。開かずの扉の中で何が起こっていたのか!?






「あぁ……、あ、……あ、、、、う、うわああああああああああ!!!」






男性従業員の戦慄の叫び声が、暗くなってきた雪山に吸い込まれて行く。








目が合った。




白目の部分が血にまみれたように充血し、真っ赤に見開いた眼。これ以上
ないだろうと思われるくらいに顔面の筋肉が引きつり、大声で叫んだ
であろうと思われる大きく開いた口からは涎が滴り、恐怖に怯えた人間が
その恐怖を表すかの如く変化した顔があった。正に恐怖の顔だった。
25歳前後の女性は、両手をドアの上の方へとのばしたまま、絶命していた。
















数時間後、すぐさま警察が来て、現場検証が行なわれた。女性の死因は
心臓麻痺。しかし発見された女性の姿に事件性を見た警察は、男性従
業員をまず疑ったのだろう。男性従業員は第一発見者として取り調べを
受けるが、ほぼ容疑者扱いだった。すぐに疑いが晴れたが、腹立たしさと
一生付いてくるであろう恐ろしい疑問で彼は怒り心頭に警察に訊いた。
全く相手にされず、疑問には答えはしてくれなかった。その疑問とは……







内側のドアには血が付いた無数の引っ掻き傷があった。女性の爪が剥がれ、
爪があった部分は真っ赤な肉片が突出していた。女性は何者かから逃げ
ようとして、ドアを開けようとした。しかし、そのドアは何かの力に
よって開かず、ドアをよじ上って恐怖の箱から脱出を試みた。その度に、
何者かに引きづり落とされて、固い床に膝を強打していった。女性の
スキーウェアは全身白色だった。従業員がドアの下から見えた赤い膝は
血で出来たものだったのだ。普通の人間ではありえない行為。では、
得体の知れない何者かがいたとすれば、女性の背後にいた事になる。

便器の後ろにあるのは何の変哲も無い灰色の壁。そこから何かが浮き
出てきたのだろうか。それとも、便器の中から…。妄想と現実の狭間。




この事件(心臓麻痺なので事件ではないが)は、これらの恐ろしい内容を
伏せられたまま、実際に新聞に載った。雪山のトイレでの突然死として……












次回最終回!!!!                      ボスヒコ
 押して
 

ミステリーナイト 8

2008年09月05日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

「戦慄」





「ミステリーナイト 5」「ミステリーナイト 6」で書いた「並ぶモノ」の
峰川から聞いた話である。彼女の友人の友人(峰川は知らない)が出会った
恐怖。その女性はもうこの世にはいない。恐怖に出会った時に亡くなった
からだ。死因はVf(心室細動)。いわゆる心臓麻痺。心臓のポンプ機能が
急激に消失すること。健常人に突然起こることは極めて稀であるものの、
救急疾患としての頻度は極めて高い。どこでそれが起こったかと言うと、
あるスキー場の女子トイレ。そのスキー場のトイレでの怪奇現象の噂は元々
あった。広大なスキー場の中腹にあるロッジ。建造物としては古いが、特に
暗い印象でもない。かといって、場所が微妙にメインコースから外れている
為、ロッジに出入りする人はまばらな状態。トイレに立ち寄る事に頻繁に
使われている。そのトイレ内も特に異常は見られないそうだが、奥から
2番目の箱だけは別だった。5つの箱の中で奥から2番目の箱だけが、冷気の
せいなのか、霊気のせいなのか異常に寒く感じるらしい。壁の上側の縁、
便器の中、ドアの下の隙間、あらゆる所から邪悪な視線を感じる箱だった。
そして、なぜかその箱のドアの鍵は、一旦閉めると開きにくかった。錆びて
いるわけでも接触が悪いわけでも無いが、従業員は鍵を取り替える事にした。
しかし、何度取り替えても同じだった。従業員を騙すように最初こそは
ちゃんと開くのだが、自然に開きにくくなって行く。ドア自体も調べた
らしいが異常は見受けられなかった。このような気持ちの悪い話が出回れば
スキー場の運営に響くので、従業員の間だけの話で終わっていた。しかし、
悪意のある箱はとうとう人の血を欲するがあまり、最悪な事件を起こして
しまった。スキー場の1日が終わり、男性従業員が掃除と点検をしに
トイレに行ったところ、奥から2番目の箱のドアがまだ閉まっていた。









あの箱が閉まっている……








ノックをする従業員。







応答が無い。無人なのか? 恐怖のあまり、人の気配を感じられない。







「……すいません。営業が終わりましたので、速やかに出て下さい……」






もの凄い数の視線を感じて、従業員は急に寒気を感じた。





「すいません!!聞こえてますか!? 大丈夫ですか!?」





事が事なので、早急にスキー場を運営する幹部クラスに連絡し、外から
ドアノブを取り外さなければならない。寒気で全身に鳥肌が出る一方で
好奇心も浮上してきた。男性従業員は箱の中にいると思われる女性に声を
掛けながら、壁の上から覗こうと決めた。心のどこかで危険信号が鳴り
響いているが、生死の確認の為に覗くと言うよりか、“なぜか覗かなければ
ならない”気がしていた。そこでドアの下に隙間がある事を思い出した。
まずはドアの下に出来ている1センチ程の隙間から箱の中を覗く事にした。





トイレの冷たくて不潔で汚いタイルに顔を付ける事の不快感など、
この際、どうでも良かった。彼は地面に付けた方の目だけ開けて覗いた。













ヒザらしき部分の赤いスキーウェアが見えた。推測出来る事は、女性が
ドアに体重をかけ、ヒザ立ちをしている。尋常では無い状況に従業員は
焦りと恐怖で立ち上がり、怒鳴りながら、ドアノブに足を掛けた。


「すいません!!内鍵なので、私が中に入って開けさせてもらいますよ!!
 私はここの従業員なので安心して下さい!!良いですか!?壁の上に
 登って入りますんで!!!!」












明後日、最終回。                         ボスヒコ
 押して
 

ミステリーナイト 7

2008年09月04日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

恐怖、再び…





複雑な内容。摩訶不思議な内容。最初から読み直した方が無難です。






「ミステリーナイトツアー2008 稲川淳二の怪談ナイト」
http://blog.goo.ne.jp/kiske3/e/852e38a0cb205a8405112075192af477
「ミステリーナイト 1」
http://blog.goo.ne.jp/kiske3/e/5ff981541feacf3d7c3a9e6358329ab3
「ミステリーナイト 2」
http://blog.goo.ne.jp/kiske3/e/fd607a96f48eb94be22c1a717f93a62a
「ミステリーナイト 3」
http://blog.goo.ne.jp/kiske3/e/16254822979932fa219ca062ddaa56de
「ミステリーナイト 4」
http://blog.goo.ne.jp/kiske3/e/120e3d07fe2cf06e81542e36620f3f57
「ミステリーナイト 5」
http://blog.goo.ne.jp/kiske3/e/ada816f8281032e3324a8d1730afe865
「ミステリーナイト 6」
http://blog.goo.ne.jp/kiske3/e/ca98942941a08f284c4e2b6afeb4a58e







騒がしくなった店内はやっと居酒屋の姿を取り戻した。ホテルのバーなら
まだしも、喉の音も聞こえるくらい静かな居酒屋で、男2人で呑んでも
盛り上がらない。呑んでばかりの私達はお腹が減っているのに気づいて、
あまり不味くは無さそうなものを注文した。私達がこの店で不思議な話を
しだしたのも、元々はコー2親子の「老婆」の話からだったのを思い出し、
再び検証しだした。しかし、酒が入っているせいで、すぐに話が脱線して、
ありえない方向に行ったり来たりしながら、笑いながら呑んでいた。



「いや、でもボス。さっきの女性客は時間軸のズレっぽい現象でしたが、
 実はあの老婆はボクに憑いて来て、ここにいるかもしれませんねぇ~。
 で、変な現象を起こさせている。とか、どうですかね?」


「かもしれんな。もし、そうなら、ババアの目的は何だろう。まあ、
 ババアの好きなもん、なすびの漬け物とか注文してやって、あの世とか
 異次元とか好きな所に帰ってもらうか。」



私達の声は人が振り向くほど大きくないし、完全に周囲の声に埋もれて
いる。それなのに一瞬、空気の波を感じ、周囲が静かなったような気が
した。この居酒屋の空間は、最初から何者かに支配されているだろうか。

この空気の波をコー2も感じていた。「そろそろこの店を出るべきかも
しれなませんね~」とコー2は言った。気分がすぐれないとか、頭が
重いとかは全く無いが、何か例えようのない空間にいる感じはしている。



「ま、今頼んだこのビール呑んでから出ようか。話は変わるが、」
「………………………………………………………話は変わるが…」



気にするほどでも無いが、2つ離れたテーブルのサラリーマンの上司
らしき人が同じ言葉を同時に言った。その時は偶然として片付けたの
だが、それから連続で私が話す内容の中の一文が、周囲の人の話題と
重なって、同じ言葉を同時に吐くと言うシンクロ現象が起こった。




「コー2兄弟は基本的に短気だから、なかなか難しい事かもしれないが、」
「………………………………だから、なかなか難しい事かも……」

「東京は大阪より仕事があるけど、出来ない奴はどこ行っても、」
「東京は大阪より仕事が……………」

「コー1は東京で頑張っていたけど、彼女と一緒に住むかどうかを、」
「…………………………………………彼女と一緒に住むかどうか……」




など、こんな現象が10回以上もあり、1つのテーブルだけでは無く、
1回事に別々のテーブルから聞こえてくる。わざと話すタイミングをずら
してもシンクロする言葉。各テーブルにとって1回の偶然だが、私達に
とって連続した偶然。もちろん私達は正気でノイローゼでもなく、稲川
さんの公演の雰囲気も引きずってはいない。この言葉の偶然は、不思議な
現象としては大した事は無いが、あまりの数と言葉の一致の正確さに
面白くなってきた私は、再び不思議な怖い話をしようと思った。なぜなら、
話の内容は冬の雪山で起こった恐怖。この話の状況、内容からして、
シンクロする(何者かがさせようとしている)のが難しいからである。











これぞ、肝試し。                       ボスヒコ
 押して
 

ミステリーナイト 6

2008年08月29日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

私が夢の中で峰川を上空で眺めていた丁度その時間、峰川は私が夢で
見た駅に向かって歩いていた。そして、彼女の服装は購入してから
初めて着る茶色の革ジャンとジーンズだった。私が思い出せる革ジャンの
細部までピッタリ合っていた。私は続けて言った。「それで、一緒に
歩いていた友達は誰?」。「え!?ワタシ独りだったけど…。ちょっと、
ビビらさないでよ~。誰?何?もう1人居たの?それって、どんな奴?」

見た通り、白いワンピースに麦わら帽に似た帽子を被っていた女性の話を
した。夢の中では違和感があるものでも違和感を感じさせない。自分は
大人なのに、小学生の同級生と同等に話す事があっても違和感は感じ
させない。私は夢の中の話だと思っていたので、間違いに気づかなかった。

肌寒い季節だから、峰川は革ジャンを着ていた。それなのに、隣に居た
女性は、夏の服装そのままだった。峰川の状況までは一致したが、この
女性だけが外れたのか、それとも何か得体のいれないモノを見たのか。



峰川から聞くその答えは驚きの事実だった。



「………実はね……今までナイショにしていたんだけど、その子、ずっと
 ワタシに憑いてんの。悪さはしないから、気にしてないんだけど……
 よく、ワタシの友人に目撃されているし。ボスならいつか気づくだろう
 と、思っていたけど、幽体離脱した上に憑いている霊まで見るなんて。
 やっぱりボス、アッチ側の人は違うな~。」




峰川自身はその白いワンピースの女性を見た事はないらしい。彼女が授業
を受けている時、コンビニで買い物をしている時などに、彼女の友人達が
各自、白いワンピースの女性を目撃していた。峰川にとって、この女性
以外の霊的なモノを言われるのは怖いみたいだ。慣れと言うものは怖い。



私はアッチ側の人間では無いと思うが、この件に関しては、幽体離脱した
のか、峰川の思考や感情を読み取ったのか、全ての状況が一致していた事
になる。私と峰川は自他ともに認める“双子”的要素があった。遠く
離れていても、倒れて救急車に運ばれた時も同じだったり、会社を辞める
時も同じ。こういう、偶然で片付けられるシンクロした話は、本当の双子
だったらあたり前の話なので、コー2としてはよく理解出来る話だった。


と言う事は、どんな関係上、心が繋がっている者同士なら、夢と現実が
繋がる状況を一緒に体験出来るのかもしれない。と、話終えた瞬間に
団体客が来店したわけでもなく、2、3人のグループばかりで一気に
店が満員になった。朝礼台の校長先生のように、その客全員を見渡せる
位置に私達はいる。さっきまでの静寂が恋しくなるくらい騒がしくなった。


「あと10分もしたら、この店は満員になる」と私がほざいてから、15分後
だった。5分で満員!?偶然としても面白いので、私達は更に実験を続けた。











ゲームに世界に入りました。                  ボスヒコ
 押して
 

ミステリーナイト 5

2008年08月28日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

私達には視得たあの女性達を霊体とかお化けと言うのは簡単だが、店員の
「いらっしゃいませ~」と言う声はどう考えればいいのだろうか。あの
女性達が私達に何かを訴えたかったり、呪ったりする感じは全くしない。
この店にはいろんな人が出入りしている。その膨大な過去の1シーンの
ような気がしてならない。今のこの時間のこの店には、不思議な現象が
起こりやすくなっていたところ、感受性が鋭い私達が入った為、何かの
スイッチを押されたのかもしれない。夢を見ている時、夢に気づく人は
少ない。しかし、運良く気づいた時には人間離れした動きや無責任な
言動が取れる。今、この時間、この場所が夢の中かもしれない。夢の
世界が少し漏れているのかもしれない。私はそれを子供のように試して
みた。「あと10分もしたら、この店は満員になる」突拍子の無い事を
言ったら叶う事は現実的にまず無いが、このくらいのレベルなら、現実に
よくある話。しかし、可能性は全く五分である。その結果を確かめるべく、
10分間は待たなければならない。ただ楽しく呑む為にネタが出来た私達は、
おかわりをオーダーした。そして、ここで起こった先ほどの不思議な
体験を軽く流して、正夢では無い奇妙な夢の話をする事にした。






「並ぶモノ」


私が芸大生時代に体験した不思議な話。冬に近い秋の夜。私は大好きな
作家、稲見 一良(いなみ いつら)の「花見川のハック」を読んでいた。
小説の雰囲気と部屋の居心地の良さに、知らぬ間に寝てしまい、夢を見た。




夜、星が1つもない暗い空を、私は飛んでいた。10階建てビルを遥かに
超えるかなりの高さだった。高所恐怖症では無いが、高い所はそんな
に好きでは無いのに、その時に限って平気だった。ふわりと風に乗った
羽のように浮かんでいる感じがして、むしろ気持ちが良かった。自由
気ままに飛んでいたら、見覚えのある街にやって来た。見る角度が違う
上、明るくはない情景。しばらく、考えてから思い出した。芸大の近く
の駅周辺だった。そして、その駅に向かっている女性に見覚えがある。

私の友人の峰川だった。彼女は私と同じ学科の同級生の友人。学科は
違うのだが、価値観が同じだった為、仲良くなった。男女としての
交際をする気は当人同士は全くなく、男同士の友情に近いものがあった。

その峰川が色あせた茶色の皮ジャンとジーンズを着て、友達らしき人と
並んで歩いている。男勝りの格好の峰川と違い、隣の友達は女性らしく
白いワンピースに麦わら帽に似た帽子を被っていて、空から見下ろして
いる私からは顔までは見えなかった。私は何の気持ちも湧かないまま、
その光景とその街を通り過ぎて行った。そして、熟睡の海に落ちた。




次の日、偶然に食堂で峰川と会ったので、これらの話をネタに昼食を
食べることにした。しかし、驚きの事実にネタ程度の内容ではなくなり、
安くて不味い定食が更に不味くなるくらいに、冷め切ってしまった。










冷め切ると食えない代物になる方が怖い。            ボスヒコ
 押して
 


ミステリーナイト 4

2008年08月27日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

他人が押した呼び出しブザーを、誰でも気に止めることはない。私は
夢と現実がシンクロした話をしようとした時、店員がオーダーを聞きに
厨房から出て来た。店員の様子に違和感を感じる。その店員は中央の
通路を歩いている途中、一瞬、躊躇してからこちらのテーブルに向かって
来た。私達はブザーを押していないので、さっき入って来た女性2人の
オーダーなはず。店員は私達のテーブルに辿り着いて、オーダーを聞いた。

「私達はボタンを押してませんよ」と言うと、店員は「あ、そうですか。
失礼しました」と言って引き返そうとした。私は彼が一瞬、眉をひそめた
のを見逃さなかった。「ちょっと、すみません。オーダーは奥の女性達
じゃ無いですか?」と言った後、私は少し奇妙な事に気づいた。コー2が
「老婆」の話をしている長い間、女性達は何もオーダーしていなかった。




店員は口を歪めて言った。




「あ、……あの、今、お客様お二人様だけなんですけど……」




私とコー2は顔を見合わした。コー2が苛つきながら訊いた。


「え?さっき女性2人が入ってきたでしょう?それにお店の誰かが
“いらっしゃいませ~”って言ったのを聞いてますよ」


店員はそれを否定した。納得出来ないコー2はまだ食いついた。


「じゃあ、お店のスタッフとかコックですか?」


店員の方が、今の状況を聞き返したいくらいになっている。もちろん、
スタッフでは無かった。事情が解ってきた私は、最後に店員に訊いた。




「広いお店での呼び出しボタンは、押した人がいるテーブルの番号が
 表示されるはずですよね?それ、うちのテーブルじゃ無いですよね?」




アルバイトの店員は規則を思い出したのか、それともこの店で起きる
何かを思い出したのか「え、あ、まあ…」と曖昧な返事をして「失礼
します」と厨房の方に戻って行った。急ぎ足の店員は中央の通路に
出た時、女性達が座ったと思われるテーブルをちらっと見ていった。







私達2人だけしかいないのを知っている店員。誰も座ってないテーブル
の呼び出しブザーが鳴ると言う事実は、誰かのイタズラか機械の故障で
しかない。故障とみなした店員は、一応、ブザーが鳴ったテーブルに
客が居ないのを確かめてから、私達のテーブルにオーダーを聞きに来た。

なんらかの間違いである呼び出しブザーに、見た事も無い、存在しない
客の情報を私達から聞くなんて、店員も驚いた事だろう。店員は私達が
騙そうと思ったかもしれないが、私達の記憶にある「女性達が座った」
テーブルと、厨房でしか確認できないテーブル番号の一致が、そんな事を
思わさなかった。店員が驚いていた時、私とコー2もある事に驚いていた。



女性客が店に入って来た時、私はコー2の人生相談の真っ最中。その
話を中断してまで「今、こういう服装の女性客が2人入ったね」とお互い、
確認などしない。未確認のはずの人数、容姿、状況までもが、私とコー2
の記憶が同じだったのだ。体験した者しか解らない非現実。霊界、異次元や
異世界、未来や過去が、私達がいるこの時間と交差したのだろうか?
私達、もしくはどちらかの虚構が現実に少し影響を与えたのだろうか?




明確なのは、コー2親子が「老婆」の話を共有した状態と同等である事。
1つ違うのは、私とコー2は夢の世界にいるのではなく、目覚めている事。












不思議でしょう?                        ボスヒコ
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ミステリーナイト 3

2008年08月22日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

「ボスはこの話をどう視ます?」


彼ら双子は私の事を超が付く程の霊能力者だと勝手に確信している。
統計的に考えれば、私にはそれなりの能力はあるかもしれないが、
もちろん超霊能力者では無いので「そんなもん知らん」と軽く答える。
オカシイところは、世間で言う霊体、半透明な性質だったら、逆光で
暗くなった上、後ろのライトを隠せるのか?といろんな可能性を議論
したが、やはり不毛な話で、結局「なんだかわからんもの」になる。


「実はこの話、続きがあるんです。翌朝、起きた時にあの老婆の事を
 思い出したんですが、ひょっとして、うなされていた僕を起こそうと
 して家族の誰かが部屋に入って来たのかもしれないと。それを老婆と
 勘違いしたかもしれないし、実際、悪夢を見ていたのかもしれない。
 で、朝、親父に昨夜遅い時間に僕の部屋に入ったか?と訊いたんです。
 短気で怒りっぽい親父は“なんでそんな遅くにお前の部屋に入らな
 アカンねん!”と言った後、興味深い事を言ったんです。“オレは
 そん時、それどころじゃ無かったわ!丁度その時間くらいに、オレは
 夢ん中で知らんババァに追いかけられてたからな!”って……。で、
 その老婆の顔と容姿を聞いたんですが、鳥肌が立つくらい全く同じ
 でした。親父もその老婆に心当たりは無いっていうから、御先祖様
 から遠い親戚まで一緒に調べてみたんですが、やっぱり似た人は
 いませんでした。……不思議でしょ?ボス、これ何なんですかね?」


自縛霊や悪霊の類いじゃ無いの?と適当に言って簡単に話を終わらす
事は出来るが、酒の席なのでもっと話を膨らました方が楽しい。私も
以前に他人の夢と現実が見事にシンクロした事が数回あった。その時は
コー2と同じような不思議な状況になったものの、現実的に納得出来る
結末があった。まずはその話をコー2に話してから、今回の「老婆」の
話を考えてみようと思った。何か手がかりや解決の糸口があるかも
しれない。その時「ピンポーン…」と呼び出しブザーが鳴った。













明日はちと休憩。                       ボスヒコ
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ミステリーナイト 2

2008年08月21日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

コー2の相談の方向が変わって来た。彼は最近、家族で引っ越しをした
のだが、新しいマンションを気に入ってはいないようだ。引っ越しを
してから、夜中にうなされる日々が続いているらしい。仕事の疲れは
残してないし、夏バテもしていない。おそらく、新居に慣れていないのが
原因だと思っていた。しかし、とうとう、良からぬ体験をしてしまった。




その日はいつもにも増して、眠れなかった。夜中の3時、ようやく眠気が
来たので、部屋のライトを消してベッドに入ったのだが、眠れない。

さっきの睡魔は何だったんだ?と自分を罵りながらも、なんとか眠ろうと
試みた。何度も寝返りをしているうちに、起きようとする自分と葛藤を
し出した。神経が高ぶっているな…と彼はリラックスするように心がけた。

疲れている時はうつ伏せになれば、眠る事が出来るという話を思い出して
実行した。壁側に顔を向けて、うつぶせになる。気持ちは若干ながらも
落ちつき、やっと眠れそうな感じがしてきた。枕に埋まる顔を最適な位置に
する為に、顔を部屋側に向けた。ベッドから離れた場所にある机の上の
小さなライトの光が無い。そのライトは間接照明としていつもつけっぱなし
にしている。暗闇ほど怖いものは無いからだ。消した記憶が無いので、
電球が切れたのかもしれないと思った。しかし、視界の隅にはうっすらと
部屋の壁が照らされていた。ライトは消えているのでは無かった。





すぐ目の前に大きな何かがあった。それが光を遮っていたのだ。



何かの布みたいな物がこちらに向かって平べったく盛り上がっている。



淡い逆光に影になっている物体。目を凝らす前に何かが聞こえて来た。



天井に向けている右耳がとらえた音。それは、人間の息づかいだった。





一瞬、家族の誰かだと思ったコー2は、眠りを妨げられた事に怒り、
文句を言おうとした。しかし、彼の喉の奥から出たのは、焦りが含まれた
窮屈な息だけだった。彼は金縛りにあっていた。その瞬間、自分の目の
前にいる“何か”の正体が解った。布に見えたのは、着物の生地。盛り
上がっていたのは、正座して出来るヒザだった。コー2の方に向かって
着物を着た何者かが鼻すれすれの所で正座をしていたのだ。視界の端に
浮かぶ、正体の影。顔らしき影から聞こえる息づかいが激しくなってきた。
“何か”の全体が見えなかったのは、運良く、うつ伏せ状態だったからだ。
それにこれ以上、見上げることが不可能。正体が解らない不安と、正体が
解らなくて良かった安堵を感じていた。そして、異常な寒気を感じ出した。


恐怖に取り囲まれたコー2はその“何か”の顔や姿を見ないように目を
閉じようとしたが少し遅かった。顔らしき部分の影がヒザと交代する
かの如く、一瞬でコー2の目の前に移動した。彼はそれを見て失神した。






目の前に、全く見た事も記憶にも無い老婆が、歯の無い口で笑っていた。












………………………。                      ボスヒコ
 押して
 

ミステリーナイト 1

2008年08月20日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

広過ぎる店内には風が通る事も無く、居酒屋独特の空気で澱んでいた。
「稲川淳二の怪談ナイト」を観た後の余韻はそれほど無く、そして、
雰囲気に影響される程、私とコー2は怖い話に弱くは無かった。

太ったアルバイトに生ビールと適当なアテを頼んだ。コー2は今回の
イベントの率直な感想を述べだした。「今回はどうしてもボスと、稲川
さんのイベントを一緒に観たかったんですよ。あの雰囲気、面白い
でしょ? でも、あの内容ならボクらの体験の方が凄いっすよね~。」
私の体験はさておき、確かにこのコー2達双子はたくさんの怖い体験は
してきた。彼らが高校生の時は、心霊スポットと言われる場所に好んで
よく行っていたのを知っている。霊感が強い(私にはよく解らないが)
彼らは、毎回毎回、懲りずに恐怖体験をして帰ってきている。彼らが
無事なのは若いくせに揺るぎない信仰心と、御先祖様の力と双子特有の
力が強いらしい。これは私の知り合いの信頼のおける神主さんが彼らを
視た話だ。彼は怖い話をすると思いきや、真面目に自分の将来の事を
相談しだした。今回はイベントよりも、こちらの方が目的だったのかも
しれない。とりあえず、へたくそな注ぎ方のおかげで泡がちっとも無い
生ビールで乾杯して、彼の話を聞いていた。入店してから10分程経過
したが、変わった事と言えば、店内BGMが少し大きくなっただけだった。


見るからに胸焼けしそうな串カツを運んで来た先ほどとは違うアルバイト
にコー2が今夜の様子を訊いてみた。「いつも、こんな感じ?」「いえ、
お客様が来られる前には、何組かいらっしゃったんですが」「まだ、閉店
じゃないよね?」「あ、はい」と普通に会話は終わった。確かに、この
広い店内に私達だけ呑んでいると、スタンリーキューブリックの映画
「シャイニング」に登場したオーバールック・ホテルのバーを思い出す。


「いらっしゃいませ~」と店員の声と共に、入り口から濃い紫色のシャツ
を着た女性とクリーム色のジャケットの着た小柄な女性が入って来た。
彼女達は私達とは反対側の奥の方のテーブルに座った。私達はその様子を
流し見しつつ「やっと、客が来たか……」と思いながら、会話をしていた。


コー2は2杯めの生ビールを頼む為にテーブルに設置されている呼び出し
ブザーのボタンを押した。「ピンポーン…」とファミレスで良く聞く音が
なり、すぐにアルバイトがやって来た。ついでに私もおかわりを頼んだ。



ミステリーナイトツアー2008 稲川淳二の怪談ナイト

2008年08月19日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

8月23日(土)「ミステリーナイトツアー2008 稲川淳二の怪談ナイト」
17:30/18:00 大阪厚生年金会館 芸術ホール


エロチック展前日のこのイベントの事をすっかり忘れて、作業に没頭
していました。17:30、厚生年金会館前に霊感双子の弟、コー2と待ち
会わせ。コー2が「あ、こりゃ、ボスは忘れているな」と感づき、私の
ケータイに電話を入れたのが、17:40。急いでマンションを飛び出して、
タクシーに乗ったが、赤信号や渋滞に巻き込まれました。20分くらい
かかったはずが、到着してみれば10分しか経ってません。どこかで
ワープしたんでしょう。厚生年金会館前のコー2が驚いていました。

ぎりぎり会場に入ると同時に暗転して、稲川淳二さんが白い着物で登場。
「せんせーい!」「じゅんじぃー!」とお客さんが拍手喝采。稲川さん
曰く、こんな盛り上がりは大阪だけらしいです。メタルもアートも元気
がなくなった大阪、ホラーは生き残ってました。セットもなかなかの
もんです。陰気な森の中、寂れたロッジ、湿気ている庭…。そして、軽く
挨拶しながら、自然に怪談に突入して行きます。大阪びいきの稲川さん、
今回は新ネタを3話披露。怪談を1時間話して、心霊写真が30分です。

結論から言うと、全然怖くありません。ほんわかしてアットホームです。
もちろん、怖がっている人の方がほとんどだと思いますが、私には稲川
さんの人の良さが見え過ぎて、全く怖く無い。コー2は怖い体験をしすぎて
全く怖く無い。それよりも、稲川さんの滑舌の悪さに身を乗り出して、
読解するのに必死でした。普段、テレビで稲川さんの怪談を観ている時は、
声を聞きながら、口の動きも見ているので、滑舌の悪さはあまり気には
しませんが、私達の席は2階の一番後ろ。手振り身振りもはっきり見え
ません。これも作戦か?と言うくらい、話に耳を傾けなければなりません。

怪談を始めた頃は本当に怖かったんだろうな~、と思っていたら心霊
写真のコーナーに。あっと言う間の1時間半でした。落語では無いが、
それに近いものがありました。私とコー2にとって、怖く無かったので
少し残念でしたが、満足なショーでした。だって、生「なんだか、ミョー
な感じがする」が聞けたのですから。「やすおー!やすおー!」も。

その後、コー2と歩きながら適当に呑める所を探すが、オサレ~なカフェ
しか見つからず、結構な距離を歩いたものの、見つかった居酒屋がよく
ある普通のチェーン店。普段、私はチェーン店には絶対に入らない(不味い
から)のですが、せっかくの機会(25歳の若造と呑む)なんで率先して
入りました。照明は暗く無いのに、なぜか暗く感じる店内。音楽も流れて
ません。「いらっしゃいませ。御二人様ですか? こちらにどうぞ。」と
だだっ広い店内の端っこの真ん中のテーブルに連れて行かれる。私は壁側に
座った為、室内が見渡せる位置。21時頃なのに、客は私達2人だけです。

実はここから、私達2人は、稲川さんの怪談よりも怖い体験をすることに
なりました。その話は、また明日……










言う程、怖くは無い。                     ボスヒコ
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