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Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

オフショア口座の開設(4)

2006年12月09日 | グローバル投資

 次に必要な作業はアプリケーションフォームの記入作業だ。勿論、全て英語になる。でも、それほど難し英語力は要求されないし、今はハウツー本もでてることなので特に説明のいる部分だけ解説する。アプリケーションは8ページあり、ホームページからもダウンロードもできる。第一ページ目は基本的な情報で氏名、住所、電話番号、生年月日、国籍、生まれた場所などである。少しだけ戸惑うのは第一名義人、第二名義人と二つ書けるようになっている。日本では口座名義が複数登録されることはないので面食らうが、第二名義人を設定しなければ空欄でよい。

   但し、第二名義人のメリットはある。例えば将来自分が死亡したとき、財産を妻なり子供にその遺産を残したいと考えている場合、通常であれば貴方名義の口座を相続する場合、手続きが必要である。これは国内でも海外でも同じである。むしろ、海外で本人が死亡し、その遺族がそれを相続したといっても、簡単にそれを相続できるわけでなく、それなりの手続きを踏むことになる。実際にはどのような手続きが必要かは知らないが、少なくとも死亡診断書(証明書)、相続人の資格証明などが必要になるだろうし、しかもそれは英文である必要がある。したがってかなり面倒な作業になると容易に想像がつく。はじめから口座に相続させる対象の人間を共同名義人しておけば、そのまま直ぐに利用可能となる。まあ、確かにそのほうが都合が良いかもしれない。とりわけ、オフショアバンクに口座開設する人間が貧乏人であるとも思えないし、なかなか良い発想である。私は結婚もしていないので第二名義人はなしとした。

 (1ページ目)

 項目番号  解説
 --------   -------------------------------------------
  1        アビーの既存ユーザーである場合リファレンス番号を記入
               する。初めてならば空欄
 2ー3   氏名、Surname(姓)、First name(名)
 4     Any other name(s) eg maiden name 日本人には殆ど
               関係がないが、女性の場合旧姓のこと。また別名のある
               人はここに書く。日本人でいわゆるAliasを持っているのは
               ほとんどないが、例えば在日韓国人とか帰化した外国人
               で別名があるケースに該当。
 5ー8   住所、自宅電話番号、携帯番号、電子メールアドレス
 9     書いてある住所に何年住んでいるか。
 10ー11  居住暦が三年以下なら前の住所を書く
 12     連絡場所が登録住所と異なる場合ここに住所を書く。
               こういうケースがあるんですね。
 13ー15  生年月日、国籍、誕生場所

 (2ページ目)   

 項目番号   解説
 --------   ------------------------------------------
 1-4  パスポート番号、発行国、発行日、有効期限
 5    第二名義人との関係、第二名義人を設定しない場合空欄
 6-12 職業に関する欄。給与所得者(Employed)、自営業(Self-
      employed)、学生(Student)、家事手伝(Homemaker)、
      引退者(Retired)のそれぞれの欄にチェックをする。もし
      Retiredをチェックした場合、引退した日を書く。また、
      チェック欄には失業者(Unemployed)があるが失業者に口座
      を空けてはくれないんじゃないか。あるのが不思議だ。
      給与職者の場合、さらに勤続年数、タイトル(Position
      held)の他、給与が現金(Cash)、小切手(Check)、銀行振込
      (Bank transfer)のどの方法で給与を受けているかを
      チェック。ここまで知る必要があるのか不思議。なお、
      給与職者以外は空欄とする。自営業者の場合、職種
      (what is the nature of your business?)を書く。
      さらに開業してから何年かを書き込む。また自営業者が
      開業してから10年未満の場合、その3年前まで何をして
      いたのかを書く。ここは住所を書くことになっているの
      で、暗黙的に自営業者は以前、給与所得者でその勤務先
      を聞いていることになる。何故知りたがる。なお、自営
      業者以外はこれらは全て空欄でよい。今度はコンタクト
      できる勤務先名、住所、電話番号、携帯番号を書く。
      ここはまた給与所得者についてきいているのそれ以外の
      人は空欄で良い。どうせなら給与所得者のタイトルを聞
      いた後にいれれば良いのに。アプリケーションの作りこみ
      はいまいちだな。

 (3ページ目)   

 項目番号  解説
 --------   ------------------------------------------
 1    所得の源泉(source of your Gross Annual Income)。
      3ページ目は財産の状況を書くところになっていて私も
      最初よく分からなかった。一番目は年間収入を聞いてい
      て、給与(Salary)、投資収益(Savings and Investments)、
      年金・信託(Pensions and Trusts)、その他(other)に分
      かれている。年金収入がある人は年金の欄に金額を埋め
      る。私の場合は給与のみ。中には不動産収入がある人が
      いると思うがあまり厳密にやる必要はない。
 2-5  ここも分かりにくいがここでは現在の資産について聞いて
      いる。二番目はEquity in houseとあるが保有不動産の
      ネット価値(時価-ローン残高)を聞いている。Equityと
      言っても株式という意味ではない。ここも自宅所有との
      前提に立っていて自分の正味財産を聞いている。賃貸な
      らゼロでもよい。私のように賃貸だが、他の不動産を
      所有していて他人に貸している場合、その正味財産額
      を書けばよい。これもそれほど厳密に書く必要もない。
      要するに財産のあるなしを聞いているわけだ。三番目は
      投資している財産(shares, unit trusts holdings and
      other investments)、ここでの想定は株式、投資信託、
      他の金融商品の時価残高と理解すればよい。これも大体
      でオーケー。四番目は現預金残高。五番目は他の資産
      (other assets eg property owned)。私は二番目に他人
      に貸している不動産を書いたが、本当はここに書く。
      不動産だけでなく動産を所有している場合もここにか
      く。いずれも大体の金額を書き込めばよく、特に気にす
      る必要もない。財産の有無を調べていると考えればよい。


A,B,C ここはとてもトリッキーで分かりにくい。Aは Why have
      you chosen to open an accounts with an International
      Financial Service Providerとなっている。要するになん
            でうちで口座を開設したいと思ったのという質問だ。
            いろいろな答えが考えられるが、投資の為であるとか、
            海外に別荘を所有していて決済用にとか。なんでも良い。
            私の場合は海外の証券会社に口座があり、配当が外貨な
            のでそのまま外貨で受け入れてくれる口座を開設したか
            ったというようなことを書いた。ここはわざと英語での
            事例を紹介しない。このくらいは独力でやらないとね。
      Bは簡単。Purpose of accountsとは口座開設の目的。
      ショッピングとか投資、リタイア後の貯金などと書けば
            よいだろう。これも事例省略。
      Cはトリッキー。質問文はこう。
            'Please indicate the underlying source of your
             current wealth, eg if it is from earned income,
       which employer did you eran it from and what was
             the nature of the work? If it is from an
             inheritance, from whom did you inherit it?
             If it is from a property or business sale, which
       property or business was sold?
       現在の財産がどのような性質のものかを聞いている。
      それが給与所得であればどんな仕事で得たものかそれと
      も相続によるものであるなら、誰から相続したのか。
      それが資産を売却して得たならどんな資産を売却したの
      か。これはマネーロンダリング対策で当局から義務付け
      られている質問。普通の場合、特段問題は起こらないが、
      私の場合は過去から得た給与所得が源泉であると書い
      た。これは人それぞれだろう。また、この質問に細か
      く答える必要はない。悪事を働いた人は別として
      普通に所得だとか、親から相続したとか正直に書けば
      よい。但し、英文例は省略する。

 D    Estimated level of turnover。年間のターンオーバー。
      Turnoverというのが分からないかもしれないが要するに
      年間に予想される口座の取引額。毎年私の場合、株式配当
      はたいしたことないので該当するところにチェックを入
      れた。見栄を張って年間50万ドル以上とかにチェック
      するとさらに照会を受けるので正直に書くこと。
      少なくても口座開設を断られるなんてことはない。

 これでアプリケーションの半分まで埋めることができた。長くなったのでこの後は次回で。後半はそれほど量はない。

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オフショア口座の開設(3)

2006年11月30日 | グローバル投資
まずはアプリケーションフォームの提出であるが、日本の銀口座の開設と同様、本人確認書類の提出の為の必要書類の調達作業がいる。本人確認書類とは

(1) パスポートコピー(認証されたもの)
(2) バンクステートメントなどの公的機関による住所の確認のできるもの

がひつようである。まずパスポート認証であるが、パスポートを保有していない人はかなり稀になってきているが、単にパスポートをコピーして提出しても本人確認書類とは認められない。そのパスポートを第三者が証明しなくてはならない。パスポート認証などと日本人には何のことか分からないケースが多い。認証に関してはアビーの説明書には以下のように書いてある。

'The Certifier should sign the copy document, print name clearly below the signature and also state their position and business address. Suitable Certifiers are a qualified lawyer, qualified accountant, consular official at a British Embassy or Consulate, serving police officer, government official, bank manager or a practising medical doctor.'

 要するに認証者の資格としては身分のはっきりしている人。例として弁護士、税理士、大使館員、警察官、政府職員、銀行マネジャー、医者などである。日本ではそういった習慣がないため面食らう人が多いが、外国では富裕層は個人的に弁護士、税理士、銀行職員、お抱えドクターなどがいるとの前提になっているのが少し面白い。こう書くと敷居が高いと感じるかもしれないが、実はパスポート認証は簡単にできる。インターネットでパスポート認証と検索すればすぐに見つかります。私の場合もサーチエンジンで検索して実際に事務所まで行かなくても郵送だけでやってくれる業者を見つけました。認証業務自体は弁護士でも大丈夫ですが、行政書士がやっています。しかも行政書士の場合、料金は安い。私の場合、メールで以来して送金し、パスポートのコピーを送って数日で認証書類を得ることができました。行政書士と聞くと隠したのように聞こえますが、英語ではGyosei Shosi lawyerという表記になり、問題にはなりません。料金は3,500円でした。(業者によって値段は違うようだ) 日本では弁護士、行政書士を除けば銀行マネジャー、医者、政府職員などの認証などはほとんど不可能に近い。但し、外務省の公的な証明書は金を払えば貰えるが、値段は5倍以上になります。

 オフショア口座を開設する際に問題となりやすいのは二番目の住所確認のできる公的書類です。特にバンクステートメントの発行は通常英語でもらえないケースが多いので注意が必要です。説明書には例示として以下のものを要求しています。

- Bank statement(not one issued by Abbey International)
- Building Society statement
- Credit Card statement
- Utility bill for fixed services
- Local Rates Assessment or Local Taxes Bill
- Personal Tax Assessment
- Insurance company document(quoting Policy Number)

 日本人にはほとんど手に入るものばかりですが、全て日本語表記で英語表記のものの調達はかなり困難です。但し、不可能ではありません。銀行によっては英語のバンクステートメントを有料で提供するところがあります。ここで一つ重要な事。アビーでの開設が他のオフショアより垣根が低いと思われるのはバンクリファレンス(銀行の紹介状)を要求していない点であろう。パスポート認証と住所証明で開設できるのはメリットだろう。特にバンクリファレンスは日本の銀行は発行していないとも言われており、日本人のオフショア口座開設の高いハードルになっている。私の場合であるが、実は香港の証券会社の口座があるのがとても役にたった。取引ステートメントは全て英語表記であることから追加負担なしで証明書が手に入った。

 とりあえず必要書類に関してはあっけなく終了した。いよいよアプリケーションフォームの記入作業に入ることになる。

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オフショア口座の開設(2)

2006年11月27日 | グローバル投資
 オフショア口座の開設に当たってまず第一に考えなければならないのはどこのオフショア銀行の口座を利用するかという点である。オフショア=海外と考える人がいるようだが、オフショアと海外のオンショアバンクは異なる。いわゆる、オフショアバンクと呼ばれるものはマン島、ジャージー島、ガンジー、ケイマンなどが有名である。米国、カナダ、オーストラリア、欧州地域の銀行はオンショアと呼ばれる。オフショアバンクの特徴としては金融取引が基本的に非課税であることが多い。香港などはオフショアとは厳密にはいえないものの、香港の銀行は配当、キャピタルゲイン課税がないことからオフショアに含めることもある。

 香港に証券会社の口座を保有しているので、香港も検討したが、やはり本格的なオフショア口座を持ちたいので、ジャージー島にあるアビーインターナルショナルオフショアに口座を開設することにした。ジャージー島は英国領であるが、独自の議会を持ち、金融所得に関しては非課税である。アビーインターナショナルは英国のアビーナショナル銀行のオフショア銀行部門である。アビーナショナルは英国第6位の商業銀行で、英国本土に741支店を有し、2500のATMネットワークをもつ。モーゲージ分野では英国第二位の銀行である。ローン残高は996億ポンド(20兆円)及ぶ。同行は1849年にNational Fereehold Land and Building Societyとして設立され、1944年にAbbey Rodad Building Socityと合併してアビーナショナルとなった。Building Societyというのは英国独特の金融機関形態でモーゲージなどを主体にビジネスを行っている金融機関である。1989年にはBuilding Societyとして最初にロンドン証券取引所に上場した。2004年にスペインのBanco Santanderに買収され今に至っている。Banco Santanderはご承知の通りスペイン最大の金融グループであり、40カ国以上で銀行業務を行っている。

 巷にはいくつもオフショア口座に関する解説本がいくつも売られており、私もそれを参考にとりあえずアプリケーションフォームの請求をインターネットのホームページ経由で行った。この項ではアビーの宣伝するのが目的でないのでURLは特に載せない。ヤフーやグーグルで検索すれば簡単にみつかるのでそれを参考にしてほしい。最初にホームページにアクセスするとどこから申し込むのか分かりにくくなっているが、まずは「Find account」と書いてある下にいくつかのサービスが書かれており、そのうち「Gold」と書いてある部分をクリックする。アビーのサービスは「アビーゴールド」が基本のサービスで、それから様々なサービスをチョイスできるようになっている。クリックすると「ゴールドアカウント」のサービスの説明が書いてあり、一番下の「Apply」をクリックするとオプションが2つ書いてある。最初のオプションは郵送による資料請求、二番目はインターネットからアプリケーションフォームをダウンロードしてそれを自宅で印刷して申込書を郵送する。とりあえず郵送で請求した。請求するとほぼ一週間くらいでフォームが届く。受け取ったときは結構早いと感じたが、実はその後の口座開設まで結構時間がかかることになる。実際にはもう口座は開設されているのだが、申し込んでからアクセプトされるまで1ヶ月以上かかった。また、これは蛇足だが、資料を受け取ってさらに一週間すると資料請求に対するお礼の手紙が来る。それは結構好印象なのだが...

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オフショア口座の開設(1)

2006年11月26日 | グローバル投資
 ご承知の通り日本の国債発行残高は700兆円をゆうに超えており、地方政府の分を含めるとなんと1000兆円を超えている。金利水準にもよるが、今後の金利上昇局面を考慮すると確実に増税が起こる。消費税の増税は既に暗黙の了解事項であるが、政治家、国民ともにあまり将来のことは考えていない。というより、考えたくないのだ。金利が今後、3%程度上昇するとしよう。1000兆円の残高に対して、単純計算でも30兆円。消費税が現在10兆円程度の収入があるとして、仮に5%が15%に上昇しても金利上昇でチャラとなる。しかも消費税の増税は年金などの福祉関係にきえるわけであるから、当然、現在積みあがった債務の返済に回るわけではない。

 1-2年前には日本の破綻本がよく売れたが、今ではそれを気にしている人は少なくなった。しかしながら、日本の歴史を良く見ると債務によって破綻を何回も経験しているのだ。まずは第二次世界大戦直後、敗戦によってというよりも敗戦のドサクサに紛れて企業の戦時債務が棒引きされた。形の上では戦時の債務を国が支払った上で、その収入に対して100%の税をかけた。はっきりいって詐欺ですな。企業への債務はこうした詐欺的行為で帳消しにしたが、国民から集めた国債はそういうわけにもいかず、今度は預金封鎖という強制手段により購買力を大幅に縮小させた上に、折からのハイパーインフレにより、実質的な債務の棒引きを行った。資産家に対しては財産税を最高90%課したことで国民のほとんどが窮乏化することになった。戦時債務の名目額は変化しなかったものの、インフレにより実質的な価値は戦後10年でなんと300分の1に低下した。やっぱり詐欺ですな。

 関東大震災後の昭和恐慌においても銀行モラトリアムという形の強攻策がとられており、3週間の支払猶予令が発せられた。さらに遡れば、明治維新後の混乱も同じようなことが起こっている。武士に対して俸給を国債で支払ったことで国債価格が暴落。多くの旧武士が換金を焦ったことで価値が急落。結果的にインフレを招き、実質的な価値を棒引きする形になる。江戸時代にも同じことが起こっている。寛政の改革(1789年)時に松平定信が棄捐令を発布。当時の金融機関である札差(大名などに多額な債権を保有していた)に対し、6年以前の札差債権を無効として棒引きした。札差は一日にして118万両を失ったと言われており、これによりマネーサプライの激減、デフレが進行した。江戸時代前は徳政令が有名で結局、政府は時に極めて強攻策を取りうることを示している。

 結局の所、自分の資産は自分で守るしかないという結論ではあるが、人がまず考えるのは円資産を外貨資産に換えて保有するという手段である。ソ連崩壊前後ではロシアの人はドル資産をより多く保有しようとした。ブラジル、アルゼンチンなどの南米諸国でも同様である。外国債券や外貨預金であるが、国内で外貨資産を保有したとしても100%の資産防衛にはならない。アルゼンチンでは数度にわたり経済危機が発生し、1990年にいわゆる預金封鎖を実行し、強制的に国債に転換させられた。アルゼンチン国民はペソ預金からドル預金にシフトして資産防衛を図った。2001年に再度の経済危機が発生。政府はドル預金の引き出しを制限し、月額1000ドル以下の引き出しとした。それでも預金流出が止まらない状況に政府はついにドル預金をペソ定期預金に転換させ、しかも1年間の払い出し禁止。いわゆる預金封鎖を実行した。ようするに国内法に準拠する金融機関であれば通貨がなんであれいつでも財産は没収できるということである。

 すなわち、国内法に準拠しない、海外での銀行口座を保有することが資産ヘッジになるわけである。というわけで、実際に海外にオフショアの銀行口座を開設してみることにした。それによってその開設方法や解説にかかわる実際を体験しようと思う。


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ACS Media Income Fund

2005年05月01日 | グローバル投資
3番目に投資したのはこれです。ACS Media Income Fundはアラスカ最大の電話帳広告会社で、イエローページ等を展開している。当社はアラスカの人口95%をカバーしており、10地域のディレクトリー、100万部の発行部数、80年の歴史を有する企業である。主要顧客として13500以上のアラスカの企業ユーザーを有している。当社はディレクトリー広告市場の87%を占め圧倒的なポジションを有している。当社の収益の89%は地方版イエローページとなっいる。米国の電話帳広告市場は149億ドル、年間4億3千万部が発行されている。イエローページ市場の競争は存在するが、新規参入は低く、一つの地域には大手のシェアが平均して85%ある寡占市場である。当社は幅広い個人、中小企業顧客ベースを持ち、通常12ヶ月契約でかつ高い再契約率を誇っている。2003年(8ヶ月)の当社の収益は2450万ドル、EBITDAは1260万ドルとなっている。配当可能利益1090万ドル、配当実施額990万ドル。EBITDAマージンは51%と高い収益率を誇っている。

4月30日現在のユニット価格は9.72ドル、配当利回り11.3%。毎月配当である。

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Countryside Power Income Fund

2005年04月30日 | グローバル投資
続いて投資したのはこれである。Countryside Power Income Fund は2004年4月にIPOによって組成された毎月配当のファンドである。発電設備に投資するファンドで米国及びカナダで事業を展開している。当ファンドはPEIシステムズ及びロンドンシステムズという地方の発電事業会社を所有している。PEIシステムズは63メガワットの火力発電能力を持ち、さらにシャーロッテタウン、プリンスエドワードアイランド地域のビルに温水及び蒸気を128の顧客へ提供している。当社は地方自治体からでる廃棄物および低コストの木材を燃料に使用しており、低コストの火力発電を可能にしている。ロンドンシステムは電力及びコジョネレーションにより発生する熱を生産している。59メガワットの能力を持ち、ロンドン、オンタリオ近郊のビルまたは59の顧客に温水、冷水等を提供している。電力はLondon Hydroに長期契約により売却している。契約は燃料コストは変化に対してパススルーする形になっている。顧客の大半は政府及び政府出資の顧客が多い。投資事業では北米のUSバイカオガスコープ(USEB)へのローン投資をしている。USEBは北米で22箇所の発電プロジェクトを展開しており、59メガワットの能力をゆうしておりそれら全てバイオガスによる発電を行っている

4月30日現在のユニット価格は9.26ドル、配当利回りは11.07%、毎月配当である。トロント証券取引所に上場しており、ティッカーはCOU-UN.TOである。

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Versacold Income Trust(インカムトラスト)

2005年04月28日 | グローバル投資
 インカムトラストに投資して1年以上経過した。現在の所、インカムトラストで問題になっている倒産リスクとやらには遭遇していない。また、毎月配当は着実に入金しており配当利回りもネットで8%くらいになっている。カナダの国債利回りが4%前半なのでカナダ国債を買うよりもインカムという点ではメリットがでている。また、前回も紹介したがカナダの石油会社であるPengrowth Energy Trustは最近の石油価格の上昇もあり、買った時に14ドル弱であったのがなんと株価が50%以上も上昇した。もともインカム狙いであったため、これはラッキーというしかない。石油価格も不透明なので持ち株の半分を売却。株価は大幅に上昇したが、配当も増加したので売却時点での配当利回りはそれでも13%位あった。もったいないと思いつつ、それでも石油価格下落時の配当のカットというリスクもあるので半分は目をつぶって売却することにした。

 再投資の為にインカムトラストを買うことにしたが、エネルギー関連のインカムトラストはやめることにした。既に株価が高いことと、Pengrwoth Energyはインカム・トラストの中で最も配当利回りが高いので売却して配当利回りの低いエネルギー関連に投資するのは合理的ではない。従って、非エネルギーセクターのインカム・トラストを物色することにした。いろいろ探したが、配当利回りの高いものはエネルギーがやはり多く、製造業、サービス業などでは利回りが低い。その中でキャッシュフローの安定性のある銘柄を3つ選び投資することにした。今回はそれら3銘柄を紹介する。

Versacoldは簡単に言えば運輸会社で冷凍・冷蔵トラックを主力にする会社である。日本でいえばヒューテックノオリンみたいな会社と思ってよい。当社はカナダ及び米国に24箇所の冷蔵倉庫・拠点を保有する物流総合企業である。北米を中心に1700以上の食品製造、加工業及び卸売業の顧客を持っている。また、24の物流拠点は8千万立方フィートの収容能力と零下25度から零下5度の間で制御可能な倉庫を保有している北米第6位の企業である。またチルドから冷蔵製品もしくはその逆への加工を顧客の要望に応じたサービスしている。主要顧客は北米の大手食品会社がほとんどでKellogg's, Costco, Cargill Foods, Overwaitea, Maple Leaf, Kraft, Saputo, Nestle, Birds Eye, Pillsbury等の顧客を含んでいる。配当利回りは10.58%。毎月配当である。

 当ファンドの概要は以下の通りである。

* 2004年売り上げ - $172 million; 2003 - $146 million

* 2004年配当可能キャッシュ - $22.60 million; 2003 - $20.68 million

* 2004年配当実施額     - $21.95 million; 2003 - $20.58 million

* Toronto Stock Exchange Symbol - ICE.UN; ICE.DB; ICE.DB.A


  Interest Incom  Dividends       Return of
                      Capital    Total
2002 $0.5690 67.74% $0.1764  21.00%  $0.0946 11.26%  $0.84 100%
2003 $0.6037 64.91% $0.1953  21.00%  $0.1310 14.09%  $0.93 100%
2004 $0.5712 61.42% $0.2506  26.94%  $0.1082 11.64%  $0.93 100%
2005   63% 26% 11% 100%

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本国投資法(HIA)はドルを反転させるか

2005年01月08日 | グローバル投資
 為替マーケットは円高リスクの懸念が高く、どの経済雑誌でも急激な円高が予想されている状況であるが、一方でドルの反発が予想されるシナリオも存在している。既に、為替マーケットのプレーヤーの間では常識になっているが、本国投資法(Homeland Investment Act)がドル需給を反転させるのではないかとの見方がでている。本国投資法はその正式名称を「雇用創出法」に含まれる内国投資促進条項といい、略称で頭文字をとってHIAと呼ばれている。所謂、米国における税制改正の一環で成立した法律で2004年10月に大統領が署名して正式に発効した。

その内容は簡単にいえば、本来、米国企業が海外子会社の利益、配当金、余剰資金等を米国内に送還する場合、国内の法人所得税率と同じ最大35%の税率で課税されるが、2005年の一年間限りの措置として税率が5.25%に引き下げられるという内容である。従って、海外に蓄積されている企業の資金を米国本土に送金させる優遇税制である。当然、資金を米国本土に送金するということは外国通貨建てであれば、ドルに交換するわけでドル需要が発生する。但し、これはもともと米ドルの為替レートを上げようという意図でなく、海外に蓄積した資金を米国に呼び込むことで国内の投資を促進させるのが目的である。また送金された資金は国内での再投資が義務付けられている為、無条件に税を免除しようという法案でもない。

問題はそのドル需要がどの程度あるかという点だが、ある経済しには海外にある資金約6000億ドル(60兆円)の大部分がドルに交換されるようなことを書いていたが、実際にはそうならない可能性が高い。理由は2つあって、まず現地の子会社がためている資金は必ずしも余剰資金ではなく、現地でのオペレーションの為にファンディングされている可能性のある、いわゆる運転資金である場合が高い。第二に余剰資金があるにしてもそれらはドル建てもしくは米国債への投資という形で既にドル建てになっており、巨大なドルへの交換需要は発生しないと見られている。但し、現地通貨でアキュムレートされている資金は当然あるだろう。例えば、シティバンクのような日本で100年以上オペレーションをしている会社は現地化が進んで、余剰資金が円である可能性はある。シティに限らず、J&J、IBM、P&G、デルなど日本で現地化している米国企業は多くあり、当然、日本以外の世界各国で活動している米国企業は多い。

金額は全くの推測にならざるを得ないが米上下両院合同税制委員会の予測では1350億ドル(13.5兆円)が送金されるだろうと結論している。勿論、6000億ドルというシナリオもないではないが、そのうちどの程度がドル需要となるかである。ある予測では270億ドルから1200億ドルの間とかなり開いているが、最小予想では日本政府が行った介入額の3日分くらいにしかならない。仮に1200億ドルとしてもたいした金額とはいえない。2004年に日本が介入したのは30兆円近い数字であるから、それほど巨額というわけではない。但し、ここで注意すべきなのはヘッジファンドなどが材料視したばあい、トレンドが一気に変わる可能性があり、今年のドル相場は必ずしもドル安一辺倒というわけではなそうだ。どちらにせよ為替相場から目が離せない。


ちょっと詳しいHIAの内容。但し、英語。

Homeland Investment Act (HIA)/Invest in the United States Act (IUSA)

STATUS
On October 22, 2004, President Bush signed the American Jobs Creation Act of 2004. The Homeland Investment Act/Invest in the USA Act provisions were included in this broader international tax reform bill.

BACKGROUND
The HIA would allow companies to repatriate offshore cash balances at a reduced tax rate. The proposal would temporarily reduce the current 35 percent rate and replace it with a 5.25 percent rate on dividends in excess of normal distributions from foreign subsidiaries. That is, if an American company’s foreign subsidiary turns a profit and wants to return the profit to the American company as a dividend, the dividend is taxed at 35 percent minus any taxes paid abroad. Those electing to take advantage of the lower rate would forfeit their ability to use the foreign tax credit on the funds subject to the 5.25 percent rate. Companies would have the option to take advantage of the HIA or continue operating under the existing system.
Current law requires U.S. companies to pay a tax of up to 35 percent on their foreign subsidiaries’ earnings when they bring those earnings back to the United States. Proponents of the HIA argue that because of the high tax rate, U.S. companies have been accumulating cash balances in their foreign subsidiaries. Those funds remain offshore, and are not invested in the United States. Enactment of this proposal would create an incentive to repatriate cash balances, and provide a stimulus to the U.S. economy.

For years, American companies have kept much of their offshore earningsoffshore. That’s because the US tax code (which taxes US MNCs on worldwide income) creates a disincentive for the repatriation of offshore income; it subjects those earnings to up to 35 percent in taxes when they are either paid back in dividends to the US parent, or else invested in US property. As a result, many American companies have accumulated large pools of cash in their overseas’ operations, and have been reluctant to bring that cash back home.

That's going to change.

A bill introduced inmid-February in the Housethe product of the efforts of a coalition of 20 or so US MNCs, among them Apple, Eli Lilly, Intel and HP would give US MNCs a limited period of time during which they can bring those “trapped” offshore profits back to the US, without the usual tax obstacles. On a macro level, the bill is estimated to encourage the inflow of upward of $135 billion in cash into the US, providing a much-needed “shot-in-the-arm” to the anemic US economy. On a micro level, it would resolve a tax/treasury issue that’s been haunting US companies for years: How to bring back to the US cash that’s accumulated in other countries. That issue has only gotten more poignant lately, against the backdrop of weak US earnings and growing investor/analyst focus on cash and liquidity.

How the bill would work.

The Homeland Investment Act of 2003 (H.R. 767) was introduced in the House on February 13 by Congressman Phil English. According to accounting firm PricewaterhouseCoopers, which is coordinating the lobbying efforts, similar legislation will be soon introduced in the Senate as well, by Senators John Ensign and Gordon Smith. “This legislation removes the disincentive for foreign subsidiaries to repatriate their income back into the American economy,” PwC explains. In essence, the bill reduces the tax rate on foreign subsidiary income (for only one year) from up to 35 percent to only 5.25 percent. “The proposed bill would impose a 5.25 percent tax, for a period of one year, on dividends received from controlled foreign corporations (CFCs) in excess of the ‘normal’ level of dividends received from such CFCs,” according to Pwc.

What’s normal? The typical amount of dividends would be calculated as the average of foreign dividends received over three out of the past five-year period. Importantly, the proposal would apply to foreign income that is not otherwise subject to tax, unless distributed to a US shareholder (or invested in US property, i.e., a “deemed dividend”).

US shareholders would also permanently surrender the right to claim foreign tax credits (FTCs) for 85 percent of direct and indirect foreign income taxes associated with dividends subject to the 5.25-percent tax. In addition, the US corporate parent would be required to exclude 85 percent of income subject to the 5.25-percent tax from its calculation of the foreign tax credit limitation.

The impact is forecast to be dramatic. According to the Joint Committee on Taxation (JCT), the effective tax rate will likely trigger the inflow of upward of $135 billion into the American economy, as well as a first-year net gain of over $4 billion to the US Treasury, and at a cost of less than $4 billion over 10 years. (These estimates are over a year old and are being revisited; they may end up even higher.)

The cash, which most experts believe would otherwise never make its way into the US, would provide an immediate stimulus to the US economy, allowing companies to:
Invest in equipment, facilities and R&D;
Invest in pension plans depleted by the decline in the stock market;
Reduce domestic debt thereby strengthening corporate balance sheets and shareholder value;
Increase shareholder dividends, which could productively be redeployed; and
Raise equity market valuations by increasing funds available for stock buybacks.

“It’s the answer to my prayers,” commented the treasurer of one US MNC, upon hearing of the proposal, and echoing the sentiments of many US-based treasurers.

Timing and effective date

The proposal would be effective on the first taxable year of the electing taxpayer ending 120 days after the date of the enactment of this Act. (This could happen as soon as April). The Homeland Investment Act would offer an all-or-nothing election to taxpayers, i.e., US consolidated groups electing the proposal would be required to elect for all dividends received from all CFCs in which any member of the consolidated group is a 10 percent shareholder.
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REITとインカムトラストのリターン比較とのその特性(3)

2005年01月05日 | グローバル投資
 引き続き、インカム・トラストに関する議論を進めよう。前回も紹介した銘柄群を見て、ぴんと来た読者はかなり鋭い。油田にしろ、イエローページ、小切手にしろ、全てが将来を不安にさせるビジネスばかりである。例えば、イエローページの競争力を考慮すると10年前ならいざ知らず、いまではインターネットの発展によって簡単に新規参入が可能な業種である。人口カバー率が70%あろうが、将来のキャッシュフローは長期になればなるほど不安定である。

 また、インカム・トラストがカナダ市場というグローバルに見てかなりローカルな金融市場でしか発達していないのは何故であろうか。これの答えはリーガル上の問題に尽きるのである。それを知るにはインカム・トラストの構造を理解する必要がある。インカム・トラストの証券としての構造は意外に複雑である。

インカム・トラストが通常の株式と構造が異なっているのは次の通りである。まず株式形態の企業は所有権である株式を株主が保有している。一方で、インカム・トラストは発行証券をユニットトラストと呼び、キャッシュフローを生み出す企業をインカム・トラストが保有し、インカム・トラストが発行する証券をユニットホルダーが保有するという真の所有者であるトラスト・ホルダーとオペレーティング企業との間にリーガル上別の機関が中に入っている構造になる。単に入れ子構造になっているだけのようだが、実はこれがインカム・トラストのリーガル上の問題点になっている。

単純にインカム・トラストが100でユニット・トラストを発行し、100でその企業の株式を支配するという構造であれば簡単であるが、もしここにユニット・トラストが100で証券を発行し、100の銀行借入を行って、200の価値のある企業を購入したとする。ユニット・ホルダーは200の企業価値から得られるキャッシュフローを100で購入する分けであるから、レバレッジ効果が生まれ、配当利回りが高まることになる。また、支配している企業が株式100、銀行借入100の資本構造からさらに社債100を発行して、総資産300の会社となつた場合、ユニット・ホルダーのレバレッジは3倍になりさらに利回りが高まる。

いい事ずくめに聞こえるが、事は単純ではなく当該企業が倒産した場合、どうなるのかというのが問題となってくる。ここで、思い出してもらいたいのは通常の株式発行企業の場合、出資額までの有限責任であるというのはあまりにも基礎的な話だが、ではユニット・ホルダーは有限責任であろうか。

まず、実際のキャッシュフローを生み出す企業を見ると倒産すると出資額はパーになる。前述のケースでは総資産300の企業が倒産したとする。倒産によって実質の資産が200にまで減少した場合、どうなるか。まず出資金の100はゼロとなる。そして200に関しては企業が銀行借入、社債で調達したわけであるから、債権者に分配され、インカム・トラストの取り分はゼロとなる。

ここまでは簡単だが、問題の本質はインカム・トラストの清算にある。トラストが100の証券を発行し、100の借り入れを行っている。当然、ユニット・ホルダーの出資額100はゼロとなるが、残りの100はどうなるのだろうか。銀行家は諦めるだろうか。現在の教科書的な法解釈では、インカム・トラストが行った債務はユニット・ホルダーに帰属するというのがコンセンサスである。従って、ユニット・ホルダーは通常の株主権と違い、無限責任を負っていると考えられている。

これが、カナダのインカム・トラストの利回りが通常のREITなどよりも高い理由になっている。前号のケースでも、利回りが10%を越えているインカム・トラストは多い。むしろ、利回りが低いのはあまりないのが現状で、最大の理由はリーガル上の問題に尽きている。例えば、米国の年金基金はカナダのインカム・トラスト、REITへの投資を禁止しているケースが多く、機関投資家の資金が入りにくいマーケットでもある。

しかしながら、あまり事態を深刻に捉える必要もないだろう。カナダのいくつかの州ではこの問題を解決しようとしている動きがある。最も多くのインカム・トラストが本拠にしているアルバータ州ではliability issueに関して何らかの法的制度の成立に動いている。また、オンタリオ州政府も同様にTrust Beneficiaries’ Liability Actの成立を目指している。(これは2003年時点で現在は成立しているかもしれないが、未確認)

このようにカナダのインカム・トラストはそのスキームの特性から高いインカムゲインが見込まれ、さらにキャッシュフローの安定性という面から魅力的なものである。しかしながら、株式のような有限責任でないという点を十分に考慮し投資を検討することが強く勧められる。
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REITとインカムトラストのリターン比較とのその特性(2)

2005年01月05日 | グローバル投資
インカム・トラストとの違いはなにか、後ほど議論するがREITもインカム・トラストのひとつの形態である。但し、REITは特別の法律に基づいて組成された証券で世界的に認知されたものであるが、インカム・トラストはカナダ市場以外では一般的でなく、というよりもカナダ市場以外での発行を筆者は知らない。REITはキャッシュフローのアセットバックとして不動産を使うが、インカム・トラストは不動産以外と考えれば理解しやすい。厳密な定義は以下の通りである。原文は英語だが、面倒な読者は上記の定義で理解しても構わない。

“An income trust is an investment vehicle that pays out substantially all of the cash flows generated from relatively mature, revenue-producing assets in a tax-efficient manner. This structure allows the owner of a business to sell off assets at a higher valuation than when the assets are held in a corporate structure. This higher valuation is driven by the high demand for income trust units and the tax savings generated by structure, which reduces or eliminates corporate tax for the operating company. Investors in an income trust therefore receive a higher level of cash distribution than is possible when the same assets are held by a corporation.

 面倒なので訳さないが、簡単に言えば、あるビジネスのキャッシュフローを割引現在価値に引きなおして一括して売却するということである。では、何故通常の株式上場と異なるというと、インカム・トラストを組成するビジネスのキャッシュフローが通常上場に耐えるビジネスと異なり成熟したもしくは限定的なキャッシュフローが予想される場合である。極端の例えで説明すれば、ここにあるオーナーが自分が保有する油田のキャッシュフローを一挙に実現したいと考える。但し、その油田は年間1000万バーレルを産出するが10年後にはその油田が枯れてしまうことが予想される。このような場合、株式上場すれば投資家は必ずディスカウントする。10年後になくなるビジネスにプレミアムをつける投資家は皆無である。では10年限定でキャッシュフローを保障する証券を投資家に売却するというスキームではどうか。この場合、投資家は10年間に得られるキャッシュフローの割引現在価値で評価してくれる。ビジネスのオーナーは保有するビジネスのキャッシュフローを一気に実現することができ、投資家は期間限定的ながら、キャッシュフローが保障される。企業の株式上場はon goingが前提となるのに対して、インカム・トラストは対象のビジネスのキャッシュフローのデュレーションが限定されているケースが多いと考えると分かりやすい。インカム・トラストの中にはRoyalty Trustと呼ばれるものがある。文字通りロイヤリティ(権益)をアセットバックとして証券を発行するスキームで油田・ガスなどのエネルギー関係が多い。

インカム・トラストの市場規模は2002年には108銘柄、450億ドルに達する巨大なマーケットに成長した。当初は油田関係が多かったが、発電所、パイプライン、ごみ処理、水産物、紙パルプ、電話帳会社、小切手などのステーショナリー関連、REITなど当初予想されていた業種から大きな広がりを見せるようになった。ここではいくつかの銘柄を紹介してみよう。但し、事前に断っておくがここで紹介する銘柄の買い推奨、投資リターンの保障をするものでは決してなくあくまでも読者に参考事例を提供するのが目的である。なお、原文は全て英語である。訳はほとんどしないのであしからず、どの道、国内投資家は基本的に無理だし。それに海外に口座を持つくらいのガッツと英語力がなければ駄目ですから。

Pengrowth Energy Trust(PGH) (http://www.pengrowth.com/)

カナダのアルバータ州カルガリーに本拠を持つ。カナダ最大のオイルトラストでトロント市場で売買されているクラスA株式の時価は24ドル。配当利回りは10.87%。株式はNYにも上場されておりドル建て株式は米ドルでの配当もなされている。

Headquartered in Calgary, Alberta, Canada, Pengrowth Energy Trust is one of the largest energy royalty trusts in North America. Trust units trade on the Toronto Stock Exchange ( PGF.B / PGF.A ) and the New York Stock Exchange ( PGH ). Pengrowth has provided investors with superior returns and growth in value for 15 years. Through the purchase of trust units, unitholders participate in the ownership of a large portfolio of crude oil and natural gas properties, receiving the net cash flow ( after expenses ), paid monthly, as the oil and gas reserves are produced. Continuing acquisitions and development of existing properties replenish and add to the reserve base. Pengrowth does not engage in high-risk exploration and seeks to acquire long-life assets with low decline rates and high development potential to achieve more stable production.

• Equity Market Capitalization: C$ 2.6 billion
• Total Enterprise Value: C$ 3.2 billion
• Stock Symbol TSX / NYSE : PGF.B - PGF.A / PGH
• Eligibility in Canada: RRSPs, RRIFs, DPSPs, RESPs
• Employees: 289


Yellow Pages Income Fund(YLO.UN) (http://www.ypg.com/page.php/en)

カナダで職業別電話帳、通称「イエローベージ」を発行する会社の権益を所有している。カナダイエローベージは1908年創刊でカナダ国民の70%をカバーしている。ユニットの配当利回りは6.76%。毎月配当である。

Yellow Pages Group (YPG) is Canada’s largest telephone directories publisher and has been an industry leader since it published its first directory in 1908. The Company is the official publisher of Bell Canada’s directories. Yellow Pages Group is the exclusive owner of the Yellow Pages™, Pages JaunesMC and Walking Fingers & Design™ trademarks in Canada. YPG publishes more than 200 directories annually for Bell Canada in Ontario and Québec as well as for a number of independent telephone companies that cover Northwest Territories, Nunavut and Yukon, in addition to 35 directories published by Aliant ActiMedia in the Atlantic Provinces. These combined directories have a total circulation of approximately 18 million copies, reaching some 70% of the Canadian population. Yellow Pages Group is the leader in the online directory business through YellowPages.ca™, PagesJaunes.caMC, Canada411.ca (English and French), CanadaTollFree.ca and CanadaSansFrais.ca, and the CanadaPlus.ca network, a leader in the local city sites market, including MontrealPlus.ca™, QuebecPlus.ca™, CalgaryPlus.ca™, EdmontonPlus.ca™, OttawaPlus.ca and VancouverPlus.ca. These sites generate an average of 3.2 million unique visitors per month. Nearly all of Yellow Pages Group's revenues are derived from the sale of Yellow Pages ads to advertisers, mostly small and medium-sized enterprises (SME). Directory advertising is the advertising medium used most by Canadian SMEs, mainly due to its comparatively high return on investment.


Custom Direct Income Fund(CDI) (http://www.cdifund.com/)

インカム・トラストの説明の格好の例だと思う。英語の説明もかなり長文だが、辛抱してほしい。カスタム・ディレクト・インカム・ファンドは米国の小切手及び関連商品を販売しているビジネスを証券化したもので、アメリカのビジネスをカナダで上場されているユニークな例。米国ではインカム・トラストという概念がないのか不明だが、カナダドル建てで発行されている。上場もトロントである。配当利回り11.76%。 勿論、毎月配当である。簡単に英語部分を解説すると、小切手の市場は米国では非現金取引の59%を占めていて、各家庭で毎月平均19枚の小切手が振り出されている。但し、小切手市場の成長率は毎年2-3%のマイナス成長を続けている。考えてみると当たり前だが、電子マネーとかインターネットの発展を考えると死んでいく市場である。当然ながら、上場してもかなりのディスカウントとなってしまう。その為に、キャッシュフローの割引現在価値を一気に顕在化させるこの手法が用いられている。同社の売上高は年間1億ドル程度である。

Custom Direct Income Fund indirectly holds 100% of the shares of common stock of Custom Direct, Inc., which holds a 100% interest in the operating company, Custom Direct LLC. Based in Maryland and Arkansas, Custom Direct (or its predecessors) has been selling cheques and cheque-related accessories across the United States since 1992, and offers the industry’s widest selection of product designs. Custom Direct is the second largest participant in the direct-to-consumer segment of the United States cheque industry. for consumers in the United States, accounting for 59% of all non-cash transactions and representing 84% of the monetary value of non-cash transactions in 2000 according to a Federal Reserve Bank Payment Study released in 2002. Despite the increased popularity of alternative payment methods, the number of consumer cheque transactions in the United States has been stable since 1990, which is driven by a growing population, increases in the number of transactions, and continued popularity of cheques as a means of exchange. The most recent statistics available to us demonstrate that in 2000 the number of cheque transactions in the United States far exceeded the total number of noncash payment transactions. The Federal Reserve Bank Payment Study also reported that each American household writes an average of 19 cheques per month. That cheque usage rate is estimated to decline annually at a rate of 2% to 3%.

Custom Direct operates solely in the direct-toconsumer segment of the United States cheque market, where we are the second largest participant. We offer the industry’s widest selection of product designs for cheques and cheque-related accessories through a product line that consists of ten different brands. We market our products through a variety of advertising channels. Formerly known as The Check Gallery, Inc., Custom Direct was founded in 1992 by members of the current executive team with a majority investment from Canada’s largest cheque printer, Davis + Henderson Ltd., to market personal and business cheques directly to consumers. We were built on our reputation of quality and the environmental friendliness of materials we use to manufacture our products. Our customer base and product offerings have grown through internal growth and acquisitions, such as the acquisitions of Image Checks, Inc., Artistic Greetings, Inc., Custom Direct, Inc. and The Styles Checks Company. As a result of these and other acquisitions, we have ten distinct brands, which allow us to provide customers with a selection of over 500 unique cheque designs and to target specific niches and customer affinities.


 
 このようにインカム・トラストには多種多様なビジネスのキャッシュフローが証券化され、かつ魅力的な配当利回りを提供している。蛇足ながら、筆者は上記3銘柄に投資しており、毎月の配当を享受している。前にも断ったが、決して投資の推奨やリターンの保障ではないことを改めて明言しておく。また、ここで紹介しなかったがREITもじつはインカム・トラストの一つの形態であることは理解できると思う。紙面が尽きたので今回はここまでとする。次回はインカム・トラストが何故、カナダ市場といったローカルな金融商品となっているのか、そのリーガル的な側面、限界について述べる。

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REITとインカムトラストのリターン比較とのその特性(1)

2005年01月05日 | グローバル投資
 近年、REIT(Real Estate Investment Trust)は日本においても法改正がなされて証券取引所に上場されることで一般化した。このように一般大衆レベルにおいてポピュラーになったREITであるが、それに類似した商品特性を持つインカム・トラストという商品があるがこれに関してはまだ一般化されておらず知識を有している投資家も皆無に近い状況である。本記事においてはカナダのインカム・トラストを中心にその商品特性とREITとの違いを詳細に述べる予定である。

 REITとは既知のように証券のアセットバックとなるものとして不動産のキャッシュフローを基に証券が発行され、投資家に売却される。また証券は取引所に上場されるのが一般的で不動産という商品特性を持ちながら、流動性に優れるという特徴を有している。また、REITの組成には特別な法規制に基づいたいくつかの要件を満たすことで投資法人の課税を免除する特典を得ることができる。REITは米国、日本、カナダ、豪州、ニュージーランド、シンガポール、オランダなど多くの国で組成され、上場流通している。日本の投資家にとって、国内のREITは凍傷に上場している為、投資が可能であるが、海外のREITを直接購入することはできない。というより、国内の証券会社がREITの取次ぎができないことになっており、日本の投資家は海外REITをファンド形式でしか投資ができない状況になっている。但し、これには抜け道があり、海外の証券会社の口座を直接開設することができれば投資は可能である。かくいう筆者も海外の証券会社に口座を開設し、米国、豪州、カナダ、シンガポールのREITへ投資している。

 日本のREITは平均利回りが4%を切っているが、海外REITの利回りはさらに高い。例えば米国で最大のREITであるEquity Office Properties Trust(EOP)の直近の利回りは6.87%である。2番目に大きなEquity Residential(EQR)の利回りは4.78%である。各銘柄によって利回りの格差は大きいが、平均すると7%程度であると考えられる。日本のREITとの最大の違いは配当の回数で、米国では一般的に四半期配当になっている。豪州も同じである。シンガポールは年2回、オランダのREITは年1回となっている。特徴的なのはカナダのREITでこれは後述するインカム・トラストと同じだが、毎月配当が一般的である。

 REITはサブセクターとして住宅、オフィス、ショッピングモール、工業施設、公共施設、医療施設などに分かれているが、一般的なのはオフィス、住宅である。またそれぞれのサブセクターを含めた複合型のREITも存在している。ユニークなものとしてはレジャー施設などがあるがあまり一般的とは言えず、筆者が知っているレジャー施設のREITは豪州に存在しているが数は少ない。

 紙面も尽きたので次回に譲るが、次回ではインカム・トラストについて解説する。
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