東京 DOWNTOWN STREET 1980's

東京ダウンタウンストリート1980's
1980年代初頭に撮影した東京の町並み、そして消え去った過去へと思いを馳せる。

千代田区神田神保町~その一

2011-05-03 11:02:57 | 千代田区
このブログには、私が1981年から1982年に掛けて撮影した東京の古い町並みの写真を整理しながらアップしていこうと思っている。ふと気が付けば,随分と年月が経ってしまい、この頃には当たり前の景色だったものが変わり果てて、違う町のようになっているところも沢山ある。懐かしいと思って頂けるも良し、こんなだったのかと思って頂くのも良し、ご笑覧頂ければ幸いと思う。
この頃は、まだ看板建築という言葉もあまり浸透しておらず、現在のようなネットもなかったし、東京の古い町並みというのも顧みられてはいなかった。当然のことながら、どこに行けば面白いという情報もなく、地図を眺めては当たりを付けて行ってみる。そして、ひたすら歩き回っていた。今改めて調べてみると、有名になっているような建物もあり、知られないうちに消えたものもありというところ。
この後にやってくるバブルという化け物が、震災や空襲に匹敵する規模で町を飲み込んで、コミュニティを破壊してしまったことをこの当時を振り返ると強く感じる。

なるべく町名毎に分類していきたいと思っている。撮影した位置を確認する意味も含めてほぼ同位置での画像を一緒に並べてみる。

さて、初回は神田神保町から始めてみる。言わずと知れた本の町である。ただ、撮影しているのは書店街の一丁目を外して、白山通りの西側の二丁目、三丁目を中心に歩いている。人通りが多くて、看板が煩わしく思えてそうしたのだと思うが、今になるとそちらも撮っておけば良かったと思う。すずらん通りの東京堂書店の木の階段の感触など、懐かしく思う。あそこは好きな書店だった。ちなみに、この町のユニークなのは、番地が奇数なのは靖国通りの南側で、偶数は北側になっていると言うこと。これは今も変わっていない。撮影日は1981年11月8日。35ミリの機材はキャノンF1nとEF,レンズはNewFD24mmF2.8とNewFD35mmF2を使用。これは後々まで共通。1982年2月16日にミノルタ・オートコードで再度撮影。現在の画像は、2010年10月から11月に掛けて撮影。機材はキャノンIXY900IS。

一丁目3番。あまり一丁目の書店街は撮影していない。今となるともう少し撮っておけば良かったと思うが、もう手遅れである。一丁目は唯一、すずらん通りの文具の老舗宮田紙商店を82年2月16日にミノルタ・オートコードで撮影。このお店は新しいビルに建て替えられたが現在も盛業中で、ホッとする。明治時代からの老舗で、元々は紙店であった。現在は文具のミヤタ。日本近代建築総覧によると、宮田紙商店、昭和5年前築、木造、店主による設計とのこと。


二丁目17番。そして、すずらん通りを抜けて白山通りを越えると、通りの名前がさくら通りに変わる。入り口には救世軍本営。建築総覧によると、救世軍本営、昭和3年築、SRC4、曽根中條設計事務所、清水組施工とのこと。


二丁目17番。その並び、山形屋紙店も現在も盛業中で、喜ばしい。この時には気付かなかったのだが、横の路地を入ったところにはレンガ造りの蔵があり、蔵は今も大切に残されている。


二丁目19番。更にその先の並びだが、良い具合に緑青の吹いた看板建築が並んでいたが、今はビルになってしまい面影はない。萬屋履物店(よろずや)に三河運輸。


二丁目19番。もう少し先まで行って振り返ったところ。中央に写っているのが手塚印刷。ちょっと前までは面影があったのだが、今はほぼ痕跡がなくなっている。


二丁目19番。この角のビルは現存している。この当時は第一相互銀行と書かれていた。その隣は手塚印刷。周りがまるで変わってしまっているのだが...。現在のカットはアングルが違う。建築総覧には、第一相互銀行(旧相互無尽会社)、昭和5年築、RC4、安藤組設計施工とのこと。


二丁目11番。今までとは反対側の角にあった豊田園茶舗。ビルに建て替えていたが、今は神保町交差点の向こう側に移転されている。


二丁目11番と5番の間の路地。豊田園の裏手に当たる路地。中質店さんは今も盛業中。右端に写りこんでいるのは飯田橋の佳作座の看板。


二丁目3番。そこから靖国通りへ向かうところ。伊勢屋の餅菓子という看板が懐かしい。伊勢屋に不言堂薬局。並んでいる店に今よりも遥かに生活感がある。靖国通りの向こうの東京相銀も今は無い。


二丁目5番。靖国通りに出た辺り。この辺りの古賀書店に山陽堂書店は現存している。その逞しさが嬉しくなる。古賀書店は建築総覧に記載があり、昭和3年築、木造とのこと。


二丁目19番。さて、少し戻ってさくら通りを通り過ぎて次の角にあった純喫茶藤にTOP。今は駐車場。


二丁目17番。そこから白山通り側の並びには加藤釣具店があった。右隣は有斐閣の倉庫が見えている。


二丁目17番と19番の間の路地。加藤釣具店の横。山形屋紙店の横の路地を逆側から見たところになる。喫茶&スナック「パナンビ」に突き当たりは食堂幸楽。今はビルの谷間で昼でも薄暗い。


二丁目11番。そして、この界隈のスターであった東洋キネマ。映画館としての営業は既に終えていたが、独特の存在感をもっていた。バブル期にこの辺りは色々あったようで、取り壊されてからも長く駐車場のままだったが,最近工事が始まった。新しいビルが建てば、この辺りがどんな町だったのか,思い出す人もいなくなるのだろう。建築総覧によると、昭和3年築、木造、小湊健二、中根寅男設計、西村組施工とのこと。


二丁目11番。これは東洋キネマの左側バルコニーがよく分かるカット。


二丁目11番。このカットは1982年2月16日の撮影。左側が改装されて店舗になった。バルコニーのところも様相が変わり始めた頃。


二丁目9番。さくら通りの終点。東明徴章の車庫、一軒おいてうどん蕎麦の三笠、喫茶軽食アリエス。撮影日が日曜日だったので歩行者天国が実施されており、子供らが遊んでいる。今は見られない景色になってしまった。


二丁目9番。くすんだガラスの奥に光る電球。何屋さんなのか、よく分からないけど、生き生きとした活気だけは伝わってくる。小さな店だが、その集合が町であった時代。


二丁目7番。村田パン店。コンビニはなく、人の暮らす町にはパン屋さんがあった。


二丁目7番と9番の間の路地。この路地は東洋キネマの裏の路地で、質屋さんのある路地を反対側から見たところ。奥右手には「おけ以」の文字が見える。今は飯田橋に移転されている餃子で有名な店。


二丁目23番。さくら通り終点の反対側の角には中華そば成光。このお店は今も健在。美味しいチャーハンが印象に残る。


というところで、初回はこの辺りで。次回は神保町三丁目の予定。

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4 コメント

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宮田紙商店 (流一)
2011-06-05 16:43:22
お邪魔します。「ぼくの近代建築コレクション」の流一です。
私は写真を作品としてより、どうしても記録として見てしまいます。そういうことで当記事の写真では1枚目の宮田紙商店に惹きつけられました。私がこの辺りを撮影しはじめた頃にはすでになかったと思います。何回も見ているはずですが覚えがありません。変わった建物ですね。正面の2階は2軒の建物のようにしか見えない。2階の大きい窓はなんの目的なのでしょう?
現状の写真を並べて比較できるのは有難い配慮です。かなりの手間だったのではないですか。
通りの裏のごみごみした路地で子供が遊んでいる昔の写真と、清潔なビルが相対している無人の今の光景。まったく別の町ですね。
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Unknown (kenmatsu)
2011-06-05 18:00:28
>流一様
どうもありがとうございます。記録として見ていただけること、とても嬉しく思います。
宮田紙店ですが、文具のミヤタHPによると「宮田紙店」から有限会社ミヤタへ商号変更したのが平成七年と出ていますので、この頃に今のビルが落成したのではないかと思います。
私は丁度神保町から足が遠のいていた時期で、建て直していた記憶がありません。確かに、一つの建物でありながら中央からまるで違っていて、不思議な感じですね。紙屋さんだったわけですから、二階もあまり日差しが入るのは良くなかったのではと思いますが、採光は良さそうです。
現在のカットを撮影してくるのは、正直言うと、かなり大変です。でも、これをやっていると位置の確定も確度が上がりますし、町の変化をストレートに感じられるので面白いとも言えます。
今の神保町は休日に歩いても、裏通りに人影のない町になっています。仰る通り、別の町になってしまったように感じます。
返信する
宮田紙商店~追伸 (kenmatsu)
2011-06-05 18:04:29
この宮田紙商店は、何となくこのお店の当時の記憶があるのですが、この頃は業務用というか、事務用品のお店という印象が強くて、通りすがりに入ろうかと思うような雰囲気ではなかったように思います。今は文具店で明るい感じですが、この頃はオフィスの備品などのお店という雰囲気だった覚えがあります。
返信する
Unknown (Unknown)
2020-01-03 12:16:21
パナンビで検索してまして、
拝見しました
30年前の懐かしい神保町に出会えました
ありがとうございます
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