奈良博三昧『国宝 辟邪絵』
5幅 紙本 著色 掛幅平安~鎌倉時代 12世紀
栴檀乾闥婆
1幅
紙本 著色 掛幅
縦25.8 横77.2
平安~鎌倉時代 12世紀
紙本 著色 掛幅
縦25.8 横77.2
平安~鎌倉時代 12世紀
詞書「世間の婦女のはらめるこをはらのう/ちにて損害しむまれてのちもいのち/おたちあるいは種種のやまうをあ/たふる鬼十五の種類あり童子のはゝ/なげきかなしむのこゝろさしをあはれみ/て栴檀乾闥婆といふものありてこの鬼/等のかうへをきりてほこにつらぬく/十五鬼いたみくるしみけむ」
奈良博収蔵品データーベースから「 邪悪な悪鬼の類を辟(さ)け除く、様々の善神を集め描く絵巻に含まれていた五図のうちの一図である。詞書に適当に漢字を当てなどして記すと、「世間の婦女の孕める子を、腹の内にて損害し、生まれてのちも、命を絶ち、あるいは種々の病を与ふる鬼、十五の種類あり。童子の母、嘆き悲しむ心ざしを憐れみて、栴檀乾闥婆といふものありて、この鬼等の頭を斬りて、鉾に貫く。十五鬼、痛み苦しみけむ。」と、図の意味を簡明に述べている。絵は特にその最後の部分に対応し、鎧と有角の獣の頭部を象る冑を着けた、忿怒相の栴檀乾闥婆が、柄に旗をくくりつけた三叉の鉾に、人形・獣形・鳥形など種々の頭部十五個をぎっしりと刺し貫いており、地面にはそれらの胴体部が血を撒きながら散らばっているという凄惨な情景を、環境描写は一切排除して単刀直入に、画面一杯に展開している。母親とこどもを護る善神ではあるけれども、この絵が婦女子に向けられたものとは到底言い難いであろう。このような表現は、この絵巻のどの図にも共通するところであり、製作意図について、辟邪という内容が重視されるべきか、それともこの表現そのものに意味が認められるべきなのか、なお検討を要しよう。
(中島博)
女性と仏教 いのりとほほえみ, 2003, p.237 」
(中島博)
女性と仏教 いのりとほほえみ, 2003, p.237 」