窯元日記復活

奈良国立博物館  重要文化財『十一面観音立像』

奈良国立博物館  重要文化財『十一面観音立像』

1面
石造 浮彫
全高85.1
彫刻
中国・唐時代 8世紀
長安3~4 703~704







奈良国立博物館HPの解説から「
陝西省(せんせいしょう)西安市(せいあんし)宝慶寺(ほうけいじ)伝来の石仏群のうち、七点ある十一面観音像のひとつである。細長い石に独尊の十一面を彫り込んだ仏龕(ぶつがん)であるが、本像の特徴は、右手に「滅罪(めつざい)」の二字が刻まれた方形の印章を持つ点である。印章は千手観音の持物中にあるが、十一面観音の持物としては儀軌(ぎき)にない。しかし、石仏群がもと所在した光宅寺七宝台(こうたくじしっぽうだい)が武則天(ぶそくてん)(則天武后)政権の翼賛(よくさん)の目的で造られたものであることから、滅罪の印は十一面観音に求められた現世利益的性格をより明確にあらわしたものといえよう。均整のとれた作風がこの時代の特徴を示す。(岩井共二)
なら仏像館名品図録. 奈良国立博物館, 2022, p.156, no.217. 」
 細長い石灰岩の角柱に独尊の十一面観音を彫り込んだ仏龕(がん)。ふくよかな顔立ちと、胸が張って腰が細く手の長い体型が印象的。手には「滅罪」と刻まれた四角い印章(いんしょう)を持つ。十一面観音は通常は印章を持たないが、罪を除くという十一面観音の現世利益的な性格を的確にあらわしたもののようである。この石彫は、中国史上唯一の女帝、武則天(ぶそくてん)(則天武后)が自らの正統性を喧伝するために造った光宅寺七宝台に所在した、陝西省西安市宝慶寺(せんせいしょうせいあんしほうけいじ)伝来のレリーフの一つである。制作時期も明らかで、唐代の様式的特徴を示す基準作として重要である。(岩井共二)
奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション―. 奈良国立博物館. 2021.7, p.243, no.3. 」
 陝西(せんせい)省西安市宝慶寺(ほうけいじ)伝来の石仏群は、中国史上唯一の女帝として君臨した武則天(ぶそくてん)の政権を、仏教を利用して翼賛せんとする意図に基づいて造立された。現在32点の存在が知られるが、そのうち7点が、細長い石に独尊の十一面観音を表した仏龕(ぶつがん)である。本品はその一つであり、丸顔に潤いのある眼差しを浮かべた表情、下半身に薄い着衣を密着させたすらりとした立ち姿など、洗練された作風を示す。また「滅罪」の二文字を明記した印章を手にする点は、当時の変化観音(へんげかんのん)信仰の実態を考える上で特に注目される。(稲本泰生)
なら仏像館名品図録. 奈良国立博物館, 2010, p.125, no.171. 」
 西安市宝慶寺の仏殿及び仏塔に嵌入されていた石仏群のうちの一点。この石仏群は元来、唐の国号を一時周と改称した女帝・武則天(ぶそくてん)(則天武后、在位六九〇~七〇四)が側近の僧・徳感(とくかん)を総監督として長安三年(七〇三)から翌年にかけて造営させた光宅寺七宝台を荘厳していたものである。清朝初期重修の六角七層塔に今もある六点を含めて現在三十二点が知られ、うち十一面観音像は七点ある。いずれもインド風をよく消化した典型的な唐様式を示し、当時の長安の官営工房の基準作として、非常に価値が高い。本品は細長い石灰岩の一石を彫りくぼめて仏龕をつくり、宝珠形の頭光を背負って蓮台上に直立する十一面観音像を浮彫する。丸願に潤いを含んだ眼差しを浮かべた表情は気品に満ち、下半身に薄い着衣が密着してすらりとした立ち姿をみせる。頭上面は上から順に一・四・五面の構成で、右手を屈臂して「滅罪」と記す印章をとり、左手を垂下して掌を前にする。宝慶寺の十一面観音像は様々な持物をもち、本像の印章の場合、『千手千眼観世音菩薩広大円満無礙大悲心陀羅尼経』(千手千眼陀羅尼経)所説の千手観音の四十大手に含まれる「宝印手」と何らかの関係を有するかと思われる。ただしそこに「滅罪」の二文字が明記されている点は、東大寺修二会(しゅにえ)に代表される十一面悔過の儀礼を連想させるもので、武周期における変化観音信仰の実態を考える上で、特に注目される。なお光宅寺は儀鳳二年(六七七)、勅命で仏舎利万余粒が発掘されたという光宅坊に立てられた寺院で、この舎利出土の話は則天武后が帝位につく口実作りのために撰述された『大雲経疏(だいうんきょうしょ)』にもみえ、七宝台及び石仏群の造立背景に、仏教を利用して政権翼賛を行わんとする明確な意図が存したことが指摘されている。

(稲本泰生)
古密教―日本密教の胎動―, 2005, p.154 



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