窯元日記復活

奈良博三昧「国宝 地獄草紙」①

奈良博三昧「国宝 地獄草紙」1巻
紙本 著色 墨書 巻子
縦26.5 横454.7

平安~鎌倉時代 12世紀 


奈良博収蔵品データーベースから
当館の地獄草紙は明治年間には東京・大聖院の所蔵であり、のち神奈川・原家を経て国有になる。東京国立博物館所蔵の旧岡山・安住院本地獄草紙一巻とならんで著名な作品である。詞書き六段、絵七段からなり、隋の闍那崛多訳『起・・・
「『起世経』の「地獄品」には、八大地獄(活・黒繩・習合・叫喚・大叫喚。熱悩・大熱悩・阿毘至)の各々に十六小地獄(黒雲沙・糞屎泥・五叉・飢餓・燋渇・膿血・一銅釜・多銅釜・鉄鎧・函量・鶏・灰河・斫截・剣葉・狐狼・寒氷)が付属し、罪人は八大地獄と各付属を順に逃げ回り苦痛を受け続けると説かれる。当館の七段のうち六段は、「また(この地獄に)所別あり」と書き出す詞とそれに対応する絵からなり、屎糞所・函量所・鉄磑所・鶏地獄・黒雲沙・膿血所の各小地獄を表す。「屎糞所」は『起世経』の名称と若干異なるものの、文中にある「針口」という虫などが経文と共通する。巻末の一段については、孤狼地獄にあたるとか、他の経典に見られる小地獄の一との説もあるが、決着を見ていない。絵はいずれも深い闇を表す墨色を基調に、茶系統の濁った色を配して汚らわしい空間を作り、その中に、苦しめる側の鬼をはじめ鶏や虫などのたくましさと、堪えるしかない罪人の無力さを対比的に描くが、客観視する余裕があり、おかしみを漂わせる。

(中島博)
銘 文
詞書 屎糞所「また別所あり なをば屎糞所といふ むかし 人とありしとき こゝろをろかにして きよからぬ物を きよしとおもひ きたなからぬものを きたなしとおもひ 仏法にあひながら三宝をうやまふ心なきもの この地獄にをつ くそのあなのふかきにをちいるつみ人のくびにたつ そのくそのかのくさく けがらはしきこと たとへむかたなし そのなか□針口□(字数不明)罪人をはみくらふ 苦患たえがたし」、函量所「また別所あり 名をば函量所といふ むかし 人間にありしとき 斗升につけてわうぼうして たみをなやまし あるいは あきなひする人をなやまし うたてがりしもの この別所にむまる このところにおにありて ひとつのうつわものをもちて くろがねのたけくおこりたるおきおつみ人にはからすことやまずしてひさし くるしみしのぶべからず」、鉄磑所「また別所あり なをば鉄磑所といふ むかし 人にむまれたりしとき こゝろかたましくして ひとの物をすかしとりて そのむくひもなく あるいはこゝろにくゝうとましがりし人 この別所にむまる このところに獄卒罪人をとりて くろがねのするうすにいれてしきりにすりひしぐ その身分くだけちる いたみくるしみ たとへをとるにものなし」、鶏地獄「またこの地獄に別所あり 鶏地獄となづく むかし 人間にありしとき こゝろおろかなるによりて はらあしくして いさかひをこのみ あるいは いけるものをわびしめ とりけだものをなやますもの これにむまる この地獄にたけきほのほ身にみちたるにはとりありて 罪人をしきりに蹴ふむ 罪人の身分づたづたになりて その苦患たえしのぶべきかたなし」、黒雲沙「また別所あり なをば黒雲沙といふ むかし 人とむまれて こゝろにくゝあしくして ひとをそこなひ ひとのいゑをやかむとこのみしもの このぢごくにおつ このところにくろきくものなかより あつきいさごふりて 罪人をやくことたえず その苦 ひさしくしてしのびがたし」、膿血所「また別所あり なをば膿血所といふ むかし ひとたりしとき こゝろおろかにしてすべて人のためにはらぐろく きたなきものを人にくはせあたへしもの この地獄におつ このところにうみしるおほくたゝへり ふかくして 罪人のくちはなにおよべり なまぐさに最猛勝といふむしありて 罪人をくらふ ほねとほり すぢやぶれて くるしみたとへむかたなし」
e国宝から「詞書(ことばがき)と絵を組み合わせた六つの段と、絵のみが残る一段の計七段からなる絵巻で、隋の闍那崛多(じゃなくった)が漢訳した『起世経(きせきょう)』に説かれる十六小地獄を表わしたものである。地獄には八大地獄があり、その周辺には十六小地獄があるとされる。『起世経』は、(1)黒雲沙(こくうんしゃ)、(2)糞屎泥(ふんしでい)、(3)五叉(ごしゃ)、(4)飢餓(きが)、(5)燋渇(しょうかつ)、(6)膿血(のうけつ)、(7)一銅釜(いちどうふ)、(8)多銅釜(たどうふ)、(9)鉄磑(てつがい)、(10)凾量(かんりょう)、(11)鶏(とり)、(12)灰河(かいが)、(13)斫截(しゃくせつ)、(14)剣葉(けんよう)、(15)狐狼(ころう)、 (16)寒氷(かんぴょう)、の小地獄をあげているが、現存する場面は(2)(10)(9)(11)(1)(6)(15)の順となっており、順序が入れ替わっている。また米国・ボストン美術館が所蔵する(7)一銅釜処にあたる断簡は、かつて本巻の一部であったものと考えられる。なお絵第七段は、『起世経』の狐狼地獄(ころうじごく)ではなく、『大楼炭経(だいろうたんきょう)』に説かれる狼野干泥梨(ろうやかんないり)とする説もある。
詞書は「また別所あり」で始まり、『起世経』の該当部分に加えて、罪人が地獄に堕ちる原因となった現世における罪状を記している。
絵は、柔軟な描線(びょうせん)に、抑えた暗色系の彩色を施している。全体に重厚な雰囲気が漂うが、ある種の超越した穏やかさが感じられる。図様には鉄磑所のように中尊寺経見返絵(ちゅうそんじきょうみかえしえ)にも見られるものと、鶏地獄のように中国・宋の影響を受け入れたことが顕著なものがある。現存する地獄草紙・沙門(しゃもん)地獄草紙・餓鬼(がき)草紙・辟邪絵(へきじゃえ)・病(やまい)草紙など、いわゆる六道絵巻(ろくどうえまき)のなかで、もっとも精妙な作風を示しているということができる。
なお六道絵巻は、後白河法皇(ごしらかわほうおう)(1127-92)が制作させ、蓮華王院(れんげおういん)の宝蔵に納められていた「六道絵」にあたるとする説が有力である。
本巻は、明治時代には東京・大聖院が所蔵しており、のち神奈川・原家を経て国有となった。東京国立博物館が所蔵する地獄草紙(岡山・安住院伝来)と並び、六道絵のなかで著名な作品である。 」




奈良博ページ 
https://www.narahaku.go.jp/collection/644-0.html


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