あれは4年前かな。お米を作っている秋田の農家の方から仕事でお問い合わせをいただいた。そのときはご縁がなかったのだけど、ずっと気になっていた。
なんだか。その方のあったかさがホームページから伝わってきて、その実直さが心地よかったのだった。ひょんなことから、今年実際にお会いして話しするチャンスが訪れた。
全国からまじめに農業に取り組むメンバーが集まっての会議をしていたということだ。ありがたいことに、5人の仲間の方々とご一緒においでになった。
(そのかたがたは、「
食の匠の会」のみなさん。)
お会いしてみると。田中さんをはじめ、あとの5名の皆様も実直さ、誠実さ、強さが伝わってくる。まっすぐで心の暖かい人たちだ・・・。
田中さんから、こんなエピソードを聞いた。
先日。ある都内のOLさんからお米のクレームが入ったらしい。「一年前におたくでお米を買ったのですが、なんだか味がおかしいんです。」あら・・・。お米ですよ、お米。ほうっておけば虫だってつくし、味はもちろん下がります。精米後に一年間放置されていたお米なんて、それは食べられない代物だったことでしょう。
でも。その方、田中さんは言います。「お客様にとって、それがそういう認識でいらっしゃったのでしょう。お取替えしました。」
その後、その女性が味に感動し、定期購入を申し込んだ。そのときに田中さんはこう告げる。
「お客様の過去の購入履歴を拝見していますと、定期購入されても食べきれないと思います。定期購入されないほうがよいのではありませんか?」
ビジネスだから。売れればよいなずなのだ。なのに。買おうとしているお客様にNOと伝える。売り上げを逃しちゃうじゃない・・・。
でも。それでいいいのよね。
彼にとって。自分が大切に作ったお米。おいしく食べてほしい思いが強いのだろう。そして。自分のお米に対する誇りもあれば、愛情もあるのだろう。また、そのお客様にも。
田中さんはこうも語った。
私は、農家です。お米を作るのが私の仕事です。インターネットで販売することでお客様の声がたくさん聞けて大変勉強になりました。でも、本職は「米作り」です。
そう語る彼を見ていると。4年かかったけどこうしてお会いできたことがとても特別なことのように感じられた。
2時間くらい、話をしただろうか。
6名の皆様にとってお役に立てる話ができたかどうか、不明だけど笑顔でお帰りになった。
え?彼は誰かって?
田中ファームの田中さんです。
今、日本人がお米を食べなくなっている。農家の後継者がいなくて、お米だっていつまで自給自足ができるかわからない。こんな状況の中で、田中さんのサイトにはこう書いてある。「
100年後も稲作農家であるために」
田中さんとお話して数日後。
会社にどどっと荷物が届いた。
・秋田の田中さんからのお米2種、黒豆。
・山形の阿部さんから、りんご
・山形の阿部さんから、桜の枝(もうしばらくしたら花が咲くだろう)とお酒
お酒にも桜の絵が描いてあるの・・・素敵。
・長崎の川原さんからあまーーーーいみかん。
ダンボールがつんである・・・。
お会いした皆さんのお顔が目に浮かぶ。
早速みなさんにお礼のお電話をする。
穏やかな声で、少し照れながら会話する。
ああ・・・。なにか。微力ですが私にできることがあれば。お声掛けください。
いや。パワーをもらっているのは、こちらのほうではないかなぁ・・・。いつか。
みなさんを尋ねてみたい。
追伸:田中さんに電話すると外で仕事している、と奥様。メールでお礼を告げる。
すると。お返事が返ってきた。「4年間。覚えていてくださったことが本当にうれしかったのです。これからも生産者と生活者の間にたつお仕事、がんばってください。」
じぃーーーーん・・・。田中さんのサイトから直感で感じたお人柄は、本物だった。