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とうげいの茶屋

Sunao Koizumi  
小泉すなお

本のどこを楽しんでいるか

2013-06-15 | こねもの・陶芸
これ読書家の人が読んだら笑ってしまうような話なのですが。

私は文を書くことがあまり得意ではなく、上手に気持ちを言葉で表現する事ももちろん同じ。
それで、偶然読んだ小説の中に、そのモヤモヤした気持ちを代弁してくれる表現に出会ったりすると、
その一文が光って見え、宝物を撫でるかのように
何度も何度もその一文を繰り返し読んでしまったりするのですが。

これが関係しているのかしてないのか。
今まで好きだった小説は、大概心のヒダを書いたようなものばかりで
ディテールを詳しく書いたモノはそれほどではなく・・。
好きな著者のものでも、ピストルの銃口の光や火薬の臭いの詳しい描写は、
つい読み飛ばしてしまうようなところがありました(苦笑)。

ディテールの描写を楽しんでいたのは、文からでは無く、写真の「視覚」からがほとんどだった思います。

・・・この本を読むまでは。

作業中に聴いていたラジオで、松家仁之著の「火山のふもとで」という本が紹介されていました。
主人公は設計事務所に勤めていて、大きな図書館の設計に携わっている・・という
私の相方に馴染みのある?設定に
おお、これは!と非常に親近感が沸き、本を購入したのでした。

著者はその方面のお仕事をしたことがあるのでは?と思うほど、建築に造詣が深く
建物や生物の描写の細やかさに圧倒されました。
物語は静かに進行し、人々の交流部分は濃厚ではないけれど、
細密画をかくような上品な描写が、そのかすかな心の揺れを際立たせているようでした。
読み終わるのが本当に惜しかった!

初めて今までとは「違う部分」で楽しんだと、相方に熱っぽく語ったのに、
当の本人は開口一番「だって小説の一番の楽しみは、ディテールの描写を楽しむことでしょ?」
人間模様はどうも二の次らしく・・。

一番近くにいる人が、本を全く違う読み方をしていたと、改めて気づいたのでした。(好みの問題?)
・・どうりで読んだ本が今までダブらなかったわけだ。

「火山のふもとで」オススメです!