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水瓶

ファンタジーや日々のこと

横浜人形の家・平田郷陽から郷土人形まで

2016-02-11 14:39:49 | 横浜人形の家
これ以上、何ひとつ足しても引いてもダメ。完璧とはこういうことを言うのでしょうか。
人間国宝・平田郷陽さんの人形「竹馬」です。
この子は手にペッペとつばをはいて、竹馬をしっかり握ろうとしてるところかなあ。。

横浜人形の家は平田郷陽さんの人形をいくつか所蔵しているようで、
時々入れ替えながら、いつも何かしら見られるようになっているようです。
人間国宝って聞いてるせいもあるけど、素人目にもやっぱり抜きん出た何かがあるなあと思わせられますね。

先週の土曜日に行った横浜人形の家の記事です。
今回は日本のあちらこちらの、新しい人形や今まで気づかなかった人形たちなどです。


これも平田郷陽さんの「獅子遊び」。しかし渋い色合いの着物ですね。
お父さんかおじいちゃんの着物を仕立て直した体?


掘柳女さんの「微風」。なんとなく中国風、それも西域と言われる辺りのイメージでしょうか。砂漠っぽい色合い。
手に燭台、帯には近東風らしき金細工。シルクロードの風が吹く~♪


鹿児島寿蔵さんの「聖徳太子孝養之像」。小さい像なんですけど、ありがたい、かわいらしい感じ。


秋田のなまはげ人形。よくニュースで見ますけど、子どもが本気で恐怖に怯えて泣き叫んでて、
トラウマになるんじゃないかと思いますが。。。wikiによると怠惰や不和などの悪事をいさめる鬼で、
刃物を持っているのは囲炉裏に当たりすぎてできる低温やけどのあとをはいでこらしめるためだそう。ひええ。。。


岩手の附馬牛人形。附馬牛(つくもうし)といえば遠野物語に出て来る地名!
当て字かもわかりませんが、岩手の方では馬も牛も飼ってたんでしょうね。


岩手の鬼剣舞。うーん、多いですねえ、鬼。鬼は西洋の悪魔とは違って、一概に悪い魔物と言いがたい面がありますよね。
季節季節の行事に堂々とあらわれたりするし。神様仏様の使いで罰を与える役目という感じなんでしょうか。
公的権力のお墨付きあり。うむ。


宮城は仙台の福神相撲の堤人形。お餅のようにみょーんとのびた頭に技をかけられながらも、
のっぺりした福々しい顔を見せている福禄寿の顔がツボにはまって、思わず吹き出してしまいました。
でもよく見ると、福禄寿も大黒様の足をしっかりつかんでるので、これは互角の戦いをしているのでしょうか。


埼玉は秩父の機織り人形。家内制手工業!機織機、細かい所までよくできてますね。


千葉のヤキレ人形。ヤキレというのはたぶん矢切の渡しの矢切のことだと思います。
で、民子と政夫というのは、「野菊の墓」の主役ですね。

なぜくわしいかと言いますと、実は森のなかまと結婚してから十年ぐらい矢切に住んでたのです。
矢切の~お 渡あ~し~~~♪ はとうとう乗らなかったな………。
「民さん、君は野菊のような人だ。。」というのは昔聖子ちゃんの主演映画のCMで流れていたセリフです。
えーっと、政夫役は中井貴一だったけかなあ。


東京の人形たち。ぶら下がってる籠かぶり犬は、深大寺と札があったような。。深大寺といえばソバだっけ?
右下の天狗は高尾山て書いてあるかな。左下はなんだろう?山申(やまもうす)みたいなものかも。


神奈川の西瓜天神。調べてみたら、どうも横浜市のようです。
腕をのばした姿がスイカを切った形になってるんですね。へええ、こんな人形があったんだなあ。


岐阜は飛騨高山の籠渡し人形。ひょっとして木材の職人とかが、本当にこういう風に山間部を渡ったりしてたのかなあ、、
と思って調べたら、大体合ってました。ひええ。。
こののんきなひょうきん顔は、恐怖のあまり気持ちがでんぐり返ってしまった顔でしょうか。。えへらえへら。


石川県の御陣乗太鼓。おお、新幹線通った石川県のだね!と思ってちょっと検索したら、
かなり力の入ったサイトを見つけました。詳しくはサイトに書いてありますが、
御陣乗太鼓(ごじんじょうだいこ)とは、かつて奥能登平定のために攻めて来た上杉謙信の軍勢を、
村人たちが恐ろしいお面をつけて太鼓を打ち鳴らし夜襲をかけて追い払ったという伝承に由来するそうです。
強敵を恐ろしがらせて追っ払うという明確な目的のもとに作られたお面だけに、半端でない怖さがあります。
完成度の高い、豊富な幽霊の面々!・・・このお面をつけて海藻の髪を垂らしたりしたそうなので、
そんな姿で夜中に奇襲かけられたりしたらたまりませんね。。。

またまた宮本・網野ルートからですが、奥能登というと民俗学では有名な時国家という旧家がありまして、
ちょっとうろおぼえで書いてしまいますが、江戸幕府の台帳によれば時国家は「水呑百姓」と記載がある。
「水呑」というのは土地をほとんど持たない小作農家ということなんですが、実情はその響きとはかけ離れ、
林業や製炭、製塩、陶器や漆器など幅広く産業を手がけ、また日本国内かなり遠くの地方とも交易をして、
相当豊かな家だったようです。能登は、北前船の寄港地でもあったようですしね。
百姓とは農民にあらず、本来は百のかばね、つまり様々な生業を示すものだと網野喜彦さんがしつっこく訴えていましたが。
これはたしか、時国家の古いふすまの裏紙に、交易の収支をつけた帳面かなんかの反古紙が使われていたのが発見されて、
くわしい内容がわかってきたそうなのです。うーん、ドラマチック民俗~!

そんな具合で、地図でもわかるように日本海にひょっこり飛び出た能登半島というのは、かなり独特の歴史を持っているようで、
さればこそ村人たちが、戦上手と評判も高い上杉謙信勢に夜襲をかけるぐらい向こうっ気が強かったという話もうなずけますね。


同じ太鼓でもこちらは牧歌的、愛知は犬山のでんでん太鼓。なんでしょうこの力の抜けるふざけた顔は。。


高知のしばてん塔。「しばてん」とはなんじゃらほいと調べたら、高知や徳島に伝わる河童に近い妖怪らしいです。
芝天狗、「芝」は小さいことを意味するらしいです。なあるほど。そっか、小さい天狗かあ。
でも日本の妖怪ってやたら相撲を取りたがりますね。昔は娯楽が少なかったのじゃ。


鹿児島神宮のシタタキ・タロジョ。調べてみたんですが、かろうじて玩具らしいということしか。
鳥のように見えますが、尾羽か頭の部分を押し下げるともう一方も連動して下がり、
上に跳ね返ってビヨヨヨ~ン♪みたいな音を出すおもちゃでしょうか。

上にあった深大寺や西瓜天神もそうですが、お寺や神社が郷土人形や玩具の発祥であることも多いんですよね。
昔の庶民の旅といえば寺社参りがメインだったでしょうから、そして大きな寺社の周りには、
寺社の仕事を請け負う職人たちが住まう門前町があったでしょうから、その職人たちが副職や手すさびといった感じで、
こうした郷土民芸品を考え出して作って来たのかなあと想像するんですが。


鹿児島の帖佐人形。武内宿禰と札がありました。こちら姶良(あいら)市のホームページに帖佐人形の説明が載っています。
姶良市の写真にこの武内宿禰とほとんど同じスタイルの人形がありますが、これもやはり武内宿禰?
人形の家の方では何を抱えているのかわからなかったんですが、新しいのを見ると、どうも赤ちゃんのようです。
帖佐人形づくりは一度途絶えてしまったそうですから、古い人形を参考にして、新しく作ったものかも知れませんね。


沖縄のヤンバル船グワー。ヤンバル船で検索すると居酒屋がトップに出て来ますが、有名なお店なんでしょうか。
おお、この機動性の高そうな身軽な船は、ひょっとしてジャンク船というやつかな?


宮崎は延岡の登り猿。これはきっとおさるを上まで引き上げると、カタカタ下りてくるのかな?
いや、登り猿だから上っていくのかなあ。

日本の郷土人形について調べてると、どうも宮本網野柳田氏ら民俗御三家から、
「おいでおいで~」と呼ばれてどんどん脇道に入り込んでしまうようです。きりがないのだ。
でもそうしてイモヅル式に調べてる内に新たに知ることも多くて、面白いんですよね。姶良市って読めるようになったし。

これで先日行った横浜人形の家の記事はおしまいです。ふ~。


                    


※後で思い出して、登り猿が登ってる動画はないかと調べてみたところ、延岡市のサイトにありました。
ここの一番下の動画の1分ぐらいの所で、登り猿が登っている様子が映されています。
なるほど、のぼり幡が風を受けるとお猿が浮き上がって、登っているように見える仕掛けのようです。
へええ、動きがユーモラスで面白い!なんか欲しくなってきたな………。
動画の中では大分大きなお猿も作ってましたけれど、五月の節句の時には、鯉のぼりと同じ竿に飾るんでしょうか。
そういえば宮崎県には海水でおイモを洗うお猿が住む島がありましたっけ。
申年の縁起物に、のぼりざるお一ついかがでしょう?ウッキ~

横浜人形の家・クロースドールやぬいぐるみたち

2016-02-09 09:05:22 | 横浜人形の家
おーい 重いようー よっかからないでくれよーう

とでも言いたそうなハリネズミくん。
ていうかハリネズミによっかかったら痛そうだけど、サルくんは平気の平左のようす。

横浜人形の家、常設展の方でも入れ替えがあったようで、目についたものを少し。
今回は外国の人形たちです。


ちょうど入口から入った所にある、丸いコーナーの展示です。
ここも時期ごとに替わっていて、今はヨーロッパのクロースドール(cloth doll?)とぬいぐるみたちのようです。
正面から見た時はハリネズミくんに気がつかなかったんですよね。
このおサルさんたちも表情など細かい所まで本当によくできていて、感心してしまいます。
ドイツだからマイスターが作ったんでしょうか。


スキットルズ。これは猫かなあ。まさかイタチとか?
スキットルというのはボウリングの元になったゲームだそうで、こんな風にボウリングのピン状に並べたスキットル人形を、
雑貨屋さんなんかでも時々見かけるようになりましたね。実際に倒して遊ぶというより、飾って楽しむ感じでしょうか。


布製の人形だと、陶器製や木製よりも、肌が柔らかくあたたかく感じられますね。洋服もかわいいなあ。


上の女の子の足下にいたのがなぜかアシカかオットセイ、いや、あごひげがあるのはアザラシか。
ねえねえボールちょーうだい!とおねだりの図?


これは男の子が連れているクマ車なんですが、男の子が一緒に写った写真はボケてしまったので。。
セーターの柄もいいですね。

そういえば1960年代頃にドイツに住んでいた方が、ドイツの男の子はいつも同じ革の半ズボンをはいてるんだけど、
あれ洗ってるの見たことないのよねえと言ってました。時々外に干してはたくぐらいで。
子どもだからひどく汚れそうな気がするけど、革ならそれで大丈夫なんでしょうか。謎。


スキー板をはいたおじょうさんとペンギンたち。このコーナーで、この娘さんだけイタリアでした。
シニョリーナだっけ?・・・えー、昔チッチョリーナさんていませんでしたか。


しかしこのスキーウェアのデザインいいですねえ。さすがイタリ~ア!


オリンピックのマスコットドール。いつも展示してあるんですけれど、なんかよく撮れたので。
右のクマくんは、幻のモスクワオリンピックのマスコット、こぐまのミーシャです。
これは私もよく憶えてまして、コマーシャルですごくかわいい金髪の女の子が、このミーシャを抱っこして出てたのです。
ミーシャもオリンピックのマスコットなのにとてもかわいく(けっこう微妙なの多いですよね……)、
ぬいぐるみ欲しいなあと思ってたんですが、なんだかの国際事情で西側諸国のボイコットとなってしまったのです。
うーん、でもあの頃と今とだと、なんかあの頃の方が平和だったような気がするなあ。。。
一触即発で第三次世界大戦勃発すれすれの危機とかあったらしいんですけど、まだ子どもだったし、
なにせ「冷戦」でしたから、その時はピンと来なかったんですよね。。。
後に「エロイカより愛をこめて」で勉強しましたが。おっかないこぐまのミーシャ!

左は旧ユーゴスラビア(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)でのサラエボオリンピックのマスコット、ブチコくん。
オオカミがモデルだそうです。
・・・あっ、この大会でイギリスのトービル・ディーン組が伝説的なボレロで金メダルとったんだった!
アイスダンスの歴史を変えたプログラムだったんですよ。よっく憶えてます。
アイスダンス見て初めて面白い!と思ったんです。
今見るとそれほど衝撃的に感じられないのは、これが今のアイスダンスの主流になっているからです。たぶん。


私はこの人形を見ると、うあ~前に立って黒板に答え書かされて拷問だ~と思うのですが、
森のなかまは昔読んだドーデの「最後の授業」を思い出して、ちょっとうるうる来るそうです。
私は読んだことないんですが、wikiのあらすじ読むとよさそうですね。ふうん。。。


アフリカのコーナーで目についたものをいくつか。新しいのもあれば、前からあったのもあると思うんですが、
配置換えで結構違って見えました。こちらはエチオピアの人形。


エジプトの、これはクジャクかな?なんとなく北アフリカの色彩。
アフリカ大陸も広いから、地域によって気候も環境も大きく違うし、そういうものが自然と人形のデザインに表れるんですね。


けっこうびっくりして国名見忘れたお面。インパクトありますね。でもわりと現代的な感じ。。
怖さが違うのだ。いいですか。本当に怖いのは


・・・うええ、夢に見そう。なんかもうここまで来るとセンスとか関係ないですね。。
カメルーンの呪術に使われる人形だと説明がありました。さもあらん。
シャーマンのような妖怪のような宇宙人のような。ムーが大好きそうというか。

でも、ひな人形も桃の節句という儀式に必要とされる人形だし、このカメルーンの人形と作られた動機は近いんですよね。
去年、柳田國男展でオシラサマの現物を見たんですが、あれもけっこう怖いです。
ただ素人が大ざっぱに目鼻を彫っただけの木ぼっくれだったりするんですが、そういう最低限の加工だからこそ、
なぜ人間が人形を作るのか、の理由がむき出しになってる気がして。
その理由はうまく言葉にできないんですけど。。。
時代が進むにつれ、そのむき出した何かに段々と肉がつき、洗練され、美しさやかわいさが先に目につくようになったけれど、
いまだにその隠れた理由が薄まりこそすれ健在だと思われるのは、人形には、他とはちょっと違う物の感じがあるからです。
でも私が怖さを感じるのは、理由よりも、人形を作った人たちや人形で儀式的なことをした人たちの、
真剣さや必死さに対してなのかも知れません。

宮本常一さんがアチックミュージアム(日本常民文化研究所)にいた頃、部屋の片隅に箱があって開けてみると、
東北地方で集められたオシラサマがいっぱい入っていて、これは何だと同僚に聞くと、
その人形が何重にも重ねて巻いている布をはぐと呪われるって言われてるんですよ、と言われたそうです。
オシラサマには、毎年一枚ずつ布を重ねて着せてゆく風習があるんですね。
どうやらそんなわけで、なんとなくその箱はほったらかしにされていたようなんです。
そこで宮本さんが布をはいで調べてみたら、この布に大変貴重な資料的価値があったことがわかりました。
三、四百年も前から、手に入る一番良い布の端切れを巻き付けて来たものだから、その時々の繊維事情がわかるというわけで。
いわく通り宮本さんが呪われたかどうかはわかりませんが、でも民俗学ってのがそもそも、
呪いを解くためにやるみたいな面はある気がしますね。もともと呪われてるんじゃい。


怖いでしめるのもなんなので。南アフリカのビーズで作られた人形です。
ユーモラスで楽しい感じですね。ちょっと真鍋博さんのイラストっぽいかも。
なつかしい未来派。うん、ほっとするなあ。

次の日本の人形の記事で、今回の横浜人形の家の記事はおわりです。
しかし人形の話にはついつい熱が入ってしまいます。

横浜人形の家・ひな人形展

2016-02-07 09:53:07 | 横浜人形の家
あかりをつけましょぼんぼりに~♪
冬の色に慣れた目にはひと際あでやか、はなやかに映ります。
昨日は横浜人形の家でひな人形展を見て来ました。
久しぶりの木や草以外の被写体に、思わず力が入りました。


最近よく見かけるようになったつるし雛。モビールみたいで楽しいですもんね。
古民家の軒先の干し柿も大事なアクセントです。
人形の家のサイトの説明によると、つるし雛はもともとは全国でも珍しい風習で、
静岡、福岡、山形の三県が由来の残っている、ゆかりの地なんだそうです。


俵のねずみが米食ってチュー!ねずみは貯蔵した作物を食べたり疫病を運んだりと大昔から迷惑者の代表格ですが、
意外にも縁起物として扱われる面があって、ねずみ算式に増えることが子孫繁栄を意味するんだそうです。
なるほど、干支でも一番に来ますしね。


椿の花にはニンジン抱えたうさぎ。


つるし雛の赤ちゃん。このくぅ~とした顔がなんとも。


市松人形なんですが、マンガ「いそべえ」に出て来るお北ちゃんに似てるなあと思ってパチリ。
お北ちゃんというのは天寿をまっとうしたはずの葛飾北斎に憑依されてしまったかわいそうな孫だかひ孫です。


リカちゃんのひな人形。えーっと、茶髪のお内裏様はワタルくんだっけ。。。


こちらは正統派おひなさま。とにかく着物のバリエーションが豊富で美しい・・・!


はああ、、と思わずため息。大変に手の込んだものですね。

久々に宮本常一さんですが、十二単について、平安時代の貴族が住んでいたような高床式の屋敷は、
夏はいいけれど日本の冬には不向きで寒く、しかも当時の暖房といえば火鉢ぐらいのものだから、
とにかく布を重ねて着ぶくれするほか暖をとる方法がなかったのだろうとわりと身もふたもないことを言っていました。
特に身分の高い女性は家の中でじっとしてあんまり動かなかっただろうから体もあったまらないし、
不健康このうえない生活してたんでしょうね。。うう~む。。。


とはいえ人形はあくまで優雅に美しく。




今では段飾りは、庶民でも手の届くものになりましたけれど、昔はそれこそよっぽどのお金持ちでないと買えなかったでしょうね。
人形の他にも、小さい牛車や箪笥調度品などのきめ細やかな細工を見てると、
ドールハウスに通ずるかのようなミニチュアごころがそそられます。わりと普遍的な気持ちかも。
ちっさい世界だからこそ、のミニチュアごころ。


・・・おやや?なんかちょっと違う雰囲気。。

さて、ここからひな人形も未知の世界へ。岐阜県の後藤人形のおひなさまたちです。


創作雛と呼ばれるそう。顔立ちもより現代的ですね。

そういえば、何年か前にひな人形展を見た時には、全体的にもっとバタくさい顔をしていたように思うんですが、
またちょっと東アジアンなあっさりした顔に戻ったような印象を受けました。私はわりと好みの顔立ちかも。
そういう潮流って、特にひな人形とかにはダイレクトに表れるのかも知れませんね。




モノクロモードにしたわけではなく、もともとこういう色合いのおひなさまなのです。
うん、これだとアダルトでモダンな部屋にも違和感なく飾れそうですね。うちは違うけど。。。


・・・もはや二人の世界に余人の入る隙なし。誰か愛のテーマかけてくれえ~


こちらはまたがらりと雰囲気が変わって、静岡の北村人形のおひなさまです。
思わず「パタリロ雛」と名付けてしまいました。。
でもふくよかで福々しくて、いかにもお人形さんらしいかわいさがありますね。


こちらも北村人形のお人形さんたち。独特の面白さがありますので、ちょっと味わって見て下さい。


お人形さんもかわいいんですけれど、後ろの屏風が面白くて。古い端切れをパッチワーク状に縫い集めたそうです。






ううむ。テキスタイルの世界も奥深いですなあ。。




こちらは北村人形の社長プリンセスミネンコさんの、木目込み作家としてつくられた毬だそうです。
棟方志功さんの作品を毬に仕立てたもの。くっきりした輪郭が木目込みによく合いますね。ルオーもいけそう。


熱帯のジャングル的な毬。



いかがでしたでしょうか。私は今回の展示、伝統的あり、モダンあり、ビジュアル系あり、独自の世界あり、
またぜいたくで絢爛豪華な美しさ、質素素朴な美しさと、バラエティに富んでいて大変楽しめました。
桃の節句の頃はまだ冬っぽくて寒いし、昔は特に、こういうカラフルな色彩にとても飢えてる時期だったのかも知れませんね。
ひな人形の展示は、3月6日までやっているそうです。

人形の家、常設展の方もちょっと入れ替えがあってまた新たに面白い人形も見られたので、別の記事にてアップします。

人形たちの物語

2015-09-30 08:58:01 | 横浜人形の家
こけしがいっぱい!よく見ると着物の柄や髪飾りなど、ちょっとずつ違います。

先週末は横浜人形の家に行って来ました。館の人によると、展示を整理しているんだそうです。
こけしも並びに動きをつけたそうで、以前より一つ一つが見やすくなっていました。


色んな顔のこけしたち。ちびまる子ちゃんのマンガに出て来る顔みたい。

そういえば実家には、母か祖母が買ってくれた、姉のこけしと私のこけしがありました。
ちびまる子ちゃんにもお姉ちゃんとまるちゃんのこけしの話があったから、昔は女の子のいる家では、
それぞれにこけしを買う風習があったのかも。またふしぎに、ちゃんと似た感じのこけしを見つけて来るもんなんですよね。


三日月形の目は笑顔のせい。にっこり


今やっている企画展は西洋陶芸磁器人形展。フランス風?


かわいらしいバレリーナたち。


常設展の、時代の人形コーナーにあるビートルズ人形。若いとどれが誰かわかりませんね。。。


ブーフーウーは三匹のこぶたです。

           

日本の各地の人形たち、以前は名札がついているのは一部だったのですが、今回行ったら全部に名札がついていて、
検索してみると人形の由来などがヒットしてきて面白かったので、目についたものをいくつかピックアップしてみました。


【大分 雨乞いの竜】 
リンク先の昔話によれば、雨乞いの時に龍神さまに捧げるための人形が由来のようです。
小さいけれど迫力があります。竜や蛇はワラでつくりやすそうですね。


【山梨 甲府のおみゆきさん】
雨乞いの竜とは逆に、洪水などの水害を避ける川除けの神事にまつわる人形のようです。
神輿の担ぎ手が女性の格好をするそうで、ということはこのお人形さんはほんとは男性なんですね。珍しい!
渇水にせよ洪水にせよ、日本は昔から水に悩まされて来たんだなあ。。稲作には治水が特に大事ですもんね。


【岩手 南部鹿踊り】
鹿踊といえば東北!鹿は、農耕には食害などで害獣だったと思うんですが、こういう芸能があるのは考えてみると不思議ですよね。
宮沢賢治に「鹿踊のはじまり」という話があって、とても鹿らしい感じが出ています。岩手の方では鹿が身近だったんでしょうか。
「遠野物語」にもあやしの白鹿のふしぎな話があります。あれは、怖い。。。


【愛媛 八つ鹿踊り】
あれ、東北だけでなく…?と思ったら、wikiによれば、鹿踊は東北を治めていた南部氏、伊達氏に受け継がれる芸能だそうで、
愛媛には、初代伊予宇和島藩主になった伊達政宗の長男がもたらしたもののようです。へえーえー、意外なつながり。


【静岡 三四呂人形】
これはちょっと変わった由来の人形で、静岡は三島出身の野口三四郎という人形作家さんが作ったものか、
その複製だけを三四呂人形というらしいです。
写真は「人形抱き」という作品の複製のようです。この素朴なかわいらしさに比して作った人の人生が悲しすぎて……。
でも、数少ないながらに、評価されて大切に保存して残されているのは、人形たちには幸せなことかも知れません。


【福井 越前竹人形】
越前竹人形の始まりは昭和20年代とのことで、比較的新しい民芸品のようです。
竹を使った竹籠や花器の廃材で何かできるものは?と考えて始まったようです。
民俗人形ってそんな風にして作られ始めたものが多いのかも知れませんね。手すさび、遊びの賜物。


【新潟 越後獅子】
あれ、この人形かわいいけど、かわいそうな話と結びつくような覚えが…?と思ったら、
wikiにあったような話を、昔何かしらで聞いたことがありました。
民俗系の本を読んでると、どうしてもこういう暗い面の話が出て来ます。
そういった話は、語られないまま忘れ去られることを望まれているのかも知れませんが、
民俗を見ていく上で、とても大事なものが含まれているような気がします。
暗い面ばかりクローズアップするのではなく、かつてこういう歴史があったと知っておくのは、
けして悪いことではないんじゃないかな。。


【富山 立山の雷鳥】
雷鳥は珍しいかも?こんな風に一つ一つ全部名札がついてるのです。


【長野 伊那松川人形】
これは大名行列の人形のようです。名札の言葉で検索すると、大体いくつか記事がひっかかってきて、
そういう種類の人形があるとわかります。
ていうかこのコーナーの人形、ずいぶん沢山あるんですけれど、それぞれちゃんと由来があるんだなあ。


【大分 豊年馬】
新しい米俵を沢山しょってる馬は、おめでたい象徴だったんでしょうね。
先日馬の博物館で買った過去のカタログに、「馬にかかわる民俗 水をめぐって」という小冊子があって、
その中にちょっと面白い話があったので、要約してひとくさり。

奈良の吉野に丹生川上神社という古い大きな神社があって、罔象女神(ミツハノメノカミ)という水の女神が祀られています。
雨が乏しい時、また雨が多すぎる時には、時の政府から馬が献上され、
雨が必要な時には黒い馬を、雨が止み晴天となるよう求める時は白い馬を奉り、
奉られた馬たちは社の下を流れる丹生川の「馬背」というところで荒い浄められ、馬谷という土地へ放たれていたそうです。
この馬の奉納は応仁の乱の頃とだえてしまい、その後はかわりにわらの馬を黒い布か白い布を着せて献上するようになり、
それも明治ごろには行われなくなりました。


こんなわけで、馬と水は特にかかわりが深いとされていたようです。
そういえば馬の博物館に、岩手の牛の博物館のポスターが貼ってあって、そっちも行ってみたいなあと思ったしだいです。
牛よモオ~~~


【宮城 木下駒 青森 八幡駒 福島 三春駒】
この形の駒は有名ですよね。木彫りの駒の主産地はこの東北の三カ所なんだそうです。
どこも昔から馬との関わりが深く、木材の豊富な土地だったとのこと。
昔切手を集めていたんですが、干支の切手などによくこういう民芸人形の絵柄が使われていて、
それでけっこう知っていたものがありました。

紀元前の古い文明からも人形は見つかっていますから、人形は、人間にとって大事な意味を持ってたんだろうと思います。
うちもぬいぐるいみとか増えちゃって、どうすんだこれ、みたいな状況になってますが、、、
でも時々こうして人形の家に来て、色んな国の、色んな時代の人形を見ると、思ったほど変わらないんだなあと、
ほっとするようになりました。ほっ・・・

ホームズ&ワトソン推理の部屋展 横浜人形の家

2015-08-02 17:57:31 | 横浜人形の家
横浜人形の家の新しい企画展は、以前テレビで放映された人形劇「ホームズ&ワトソン 推理の部屋」の展示です。
ホームズは本では読んでいたけれど、この番組は見ていませんでした。
でも、あまりにもよくできていてちょっとびっくり・・!

とにかく外をお散歩するには暑すぎてつらいので、屋内で楽しめる色々を探し中です。
まだ8月になったばかりだというのに連日の暑さ。早朝も下がらない気温。
今年の夏は命の危険を身近に感じるレベルですよね。。。うへえ。


クールに秀でた額の、こちらが主人公のシャーロック・ホームズ。まだ学生らしいです。
三谷幸喜さんの脚本により、人形劇では寄宿学校が舞台になっていたということで、設定など少し変えているようです。


相棒ワトソンくん。なんでビリケン頭???人の良さそうな感じが原作に忠実です。


左がラングデール・パイク、右がレストレード警部。
ラングデール・パイクという登場人物はちょっと憶えていないんですが、原作ではどういう役回りだったっけ。。。


これがホームズとワトソンが住んでいた寮の部屋のようです。こまかい所までよく作り込まれています。
しかし楽しいですね、こういうの。作った人たちも大変だったろうけど、楽しかったんじゃないかなあ。


あ、そういえばナポレオンの胸像の話あったなあ。黒真珠の話。七面鳥の話もホームズでしたっけ?

推理小説は母が好きで家に沢山あったので、かなり読みました。主に古めのものが多いですが。。
(創元推理文庫やハヤカワミステリの本の値段が80円とかの時代があったんですよ…!)
コナン・ドイルはもちろん、クリスティー、クイーン、ディクスン・カー、ヴァン・ダイン、クロフツ。
あとシュヴァルー夫妻のマルティン・ベックシリーズやエド・マクベインの87分署シリーズにもはまりました。
ほかにもルース・レンデルとかフロスト警部ものとか。
ディクスン・カーは本格推理と言われてますが、古いトリックは建物の構造などがわかりにくかったりするので、
ファース(笑劇)の要素の強い、カーター・ディクスン名義のHM卿のものが好きでした。
本読んでてげらげら笑っちゃうってあんまりないけれど、ほんとお腹痛くなるぐらい笑っちゃうんです。
カーの弱点は、かわいい悪女タイプの金髪美人はどんなに疑わしくても犯人にしないことで、
意外に男性の作家ってそういう印象があります。クイーンなんかも好みのタイプらしき女性はぜったい犯人にしない。
その点クリスティーは老若男女美男美女、好青年から幼児にいたるまでまんべんなく犯人にしていて、
その博悪平等(?)な精神、さすがミステリーの女王ですね。あっぱれ!


アイリーン・アドラー。「ボヘミアの醜聞」に登場する美女です。名前は記憶にあるんですけど、どういう話だったっけ。。
と、おりよくコナン・ドイルの電子書籍が99円で買えるじゃないですか。ぽちっ!


「赤毛連盟」のジェイベズ・ウィルソン。ホームズの中でも有名なこの話はよく覚えています。
ほんと面白い顔!極限までデフォルメされているというか、ひとりひとり大きく違って見飽きません。

ほかにホームズで特に好きだったのは、犯人やこまかい筋は忘れてますが、
「バスカヴィル家の犬」「白銀号の失踪」「黄色い顔」「まだらのひも」とかかなあ。
面白い推理小説って、一度読んで犯人わかってて読み直しても面白いんですよね。


きのこ頭のウィンディバンク。どういう人だっけな。。。
しかしこんなによく作っちゃあ、処分するのも難しいでしょうね。。ちゃんと人形供養でもしないと。


ダンカン・ロス。画家か絵が趣味なんでしょう。うん、まちがいない。

日本のものでは赤川次郎や松本清張、和久峻三など読みました。
高木彬光とか黒岩重吾とかも読んだなあ。。その辺になると渋すぎて面白いとはいえなかったけど、
娯楽が少ない時代だったので、とにかく読むことは読んだという感じでしょうか。
半七捕物帳とか人形佐七捕物帳とかまで読んだものなあ。。これが意外に面白く読めたんですが。
横溝正史は人気があって、定期的に豪華キャストで映画化されてましたね。
宮本常一さんの本読んでたら久しぶりに思い出しました。閉鎖的な村の旧家、どろどろの血と因習、
加えて戦後の混乱期に生じた色々、みたいな。昭和でも古い昭和のイメージです。
本陣殺人事件がそうだったと思うけれど、日本家屋で密室殺人て難しいですよね。ふすまとか障子とかまるごと外せるし。
横溝正史の醍醐味は、被害者の殺され方が悪趣味ぎりぎりクールジャパンなところでしょうか。


紙で作られているのにおいしそう・・・


ホームズの持ち物。そうそう、化学実験が趣味でした。あとバイオリンとジュードーと、悪癖コカイン・・・
さすがに人形劇ではその設定はないでしょうけど。

ところで、私は昔からいっぺん見てみたいと思う人形劇がありまして。。。それは知る人ぞ知る

「パンチとジュディ」

という人形劇なんであります。
イギリスの小説読んでると時々目にするんですが、かなり古くから人気のあった巡業の人形劇のようで、
カーがことのほか好きだったらしく、タイトルもそのままズバリ「パンチとジュディ」という小説がありました。
クリスティーの本にも、登場人物にパンチとジュディという名前が使われていたと思います。
そして怪奇小説のM・R・ジェイムズには「パンチとジュディ」の人形劇を中心にした「失踪奇譚」という話がありまして、
内容がかなりくわしく説明されているんですが、これがブラックというか残酷というか、
これでなんで笑えるの???みたいな内容なんです。でも、子どもから大人まで大人気だったっていうし。
う~ん、現代の感覚でも笑えるものなのかどうか見てみたいなあ。。

というわけで、つい熱が入ってずいぶん寄り道枝道してしまいましたが、見応えのある人形たちでした。
「ホームズ&ワトソン 推理の部屋展」は、9月6日までやっているそうです。
屋内で人形たちと涼みながら楽しめる展示ですよ!