機械が稼働するときに発生する振動や切削音、油の焼けるにおいなどは印刷教材である教科書からは望むべくもありません。
教材は別の言い方をすれば、知識を集約化し、具体的事例に対して共通する性質や用途などを体系的にまとめています。しかし、教材(印刷教材を例に取れば)は、紙面、活字刷り、ページ数などで制約され、共通点を最小公倍数に記述しているのが普通です。
流儀や特殊な事例は、標準化をモットーとする教材では意識的に落とすか、欄外にという形で処理されます。訓練する方法によっても記述する内容や程度は相当変わってきますが、年々新しい材料や工法が出現し、覚える事柄が多くなっていきます。どの点に焦点を当てるか、受講生の過去の経験や、コースごとの仕事の範囲などを正しく設定し、それに合うように構成することは大変難しくなってきました。
多様化というのは、何も人間性や流行の面だけではなく、直接職業に関連する訓練教材にもいえることです。情報量が増え、その選択に苦労する昨今ですが、必要となる情報を正しく選択できる能力というのは、この点だけをとっても、自己の技量に大きく影響しますし、高度の判断力を必要とします。自学自習という教科書のみに依存する通信訓練の場を、狭い学習の機会としてとらえず、実生活の中に存在する多くの事象に関連性を見つけ、少ない努力で最大の学習効果を生む条件を自ら探求する。つまり、広くものを見て、あらゆる機会を利用し、生活の中に学習する。その機会の一つが教材として提供されていると考えれば、自然と興味がわくであろうし、深い洞察力が芽生えてくることと思います。(次回へ続きます)