照る日曇る日 第2103回
帯を読むと「人口の1%以上は転生者。もしかしたらあなたも」と大書されており、
中学の同級生横溝時雨と「子どもの国」バルナランドからの転生者三浦杜子春を主人公とする「異世界転生」文学が「爆誕」したと書いてあるので、いささか嫌な予感がしてよっぽど読むのをやめようかと思ったけれど、本書は私がそれなりに敬愛している現代日本を代表する文学者の最新作なので、これまで同様まるっきりの駄作であるはずはないという確信に似た一瞬間のひらめきに導かれて最初から最後まで白内障を手術したばかりの真っ赤に充血した両目をこすりながらひととおり通読するにはしたのだが、はてさてこれはなんじゃいな、島田選手は今が明治の御代ならば漱石龍之介にもたとうべき現代作家きってのいんてりげんちいやにして寄らば斬るぞの鋭い知性の持ち主であることだけははしなくもまたしても証明されたが、草枕風にいうならばあまりにも血じゃなくて智に働き過ぎて角が立ちすぎ、これではまるでウオルフガング・サバリッシュが棒を振ったブルクナーの第8番の交響曲とおんなじであまりにも微分積分されすぎて精霊のひとかけらも盆踊りせず、天来の霊感の一滴も行間に滲まない哲理非情の大論文ではないか、ちったあチエリビダッケやギュンターヴァント、朝比奈隆の指揮ぶりやかの三島由紀夫の輪廻転生譚、西馬音盆踊りのひとさしふたまいに学んでほしいものだとないものねだりをいたずらにつらつら並べる残暑も厳きお疲れ長月ざんす。
ふれあいてふ安易な名前の団体よわれは誰ともふれあいたくない 蝶人