あまでうす日記

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新約聖書翻訳委員会訳・岩波「新約聖書 改訂新版」を読んで

2024-04-06 13:06:05 | Weblog

 

照る日曇る日 第2031回

 

こないだ共同訳の「旧約」を読んだら超面白かったので、今度はあたらしい「新約」を読んでやろうと思って、様子を伺っていたら、岩波から新約聖書翻訳委員会のほんやくの改訂新版が出たので、得たりやおうと読んでみたら、これまたなかなか面白かった。

 

聖書は、昔はかなり韻文的かつ文学的だったが、時代の変化と共にだんだん口語的、散文的かつ学問的になり、例えば今回のは、最近の口語訳、共同訳版、前田訳、田川訳、塚本訳などとの異同を一字一句示しているのがまことに興味深い。されど彼ら訳者は基督教の信者なのだろうか?

 

聖書を面白いなんていうと熱烈な信者の人からの顰蹙を買いそうだが、私は年を取るにしたがって無宗教に傾いていくので、どの神様も信じないで一人寂しく死んでいくのかと思うとちょっと悲しいけど、まあそれが人世というものなので仕方あるまい。

 

昔は「♪マタイ、マコ、ルカ、ヨハネ伝」と、数え歌のようにして覚えていたが、現在では歴史的に最も古いのはマルコ伝であるとされていて、その物語を軸にして様々な要素が付け加えられていくさまも興を誘う。

 

無信仰の私は、予言者としてのイエス・キリストの実在は信じられても、彼が精霊と一体の神の子であるという点で「さあどうなんだろう」と、既に躓く。その彼がパンをさいて、「これが私の肉でワインが私の血である。これを食うて飲んで我と一体になれ」、などと言われると、またしても躓く。キリスト教なんて所詮はユダヤ民族が生み出したイチローカル宗教に過ぎないじゃないかと内心で思うと、カラスの三太郎が3度目に鳴くのである。

 

イエスが、勝手に全人類の罪を一心に背負って悪い奴らに磔にされたが、3日目に蘇って天に昇り、父なる神の隣に座し、ユダを引いた11人の弟子たちを激励して、神の教えを全人類に喧伝したと聞くと、よくあのローマ人が、そんなユダヤの辺境の教えに靡いたな、と思ってしまう始末だから、ほんと真正クリスチャンの方には申し訳ないと思います。

 

それはさておき、今回の読書で痛感したのは、背教者パウロの獅子奮迅の大活躍と現トルコ、シリア、レバノン、イスラエル地方における原始キリスト教会の宣教と組織づくりであった。

 

ある意味では、新約聖書とは原始キリスト教の教典である以上に、教宣活動の最強の武器であるが、その前半のイエスの福音書と、後半のパウロの古代アジア各地の教会に宛てた手紙という名のアジビラ、そして、それらのいずれにも属さない神秘的予言の書「ヨハネの黙示録」という三位一体のセットとして布教戦略的に構成されている。

 

が、その中核をなすのは、背教者からの転向者パウロの言葉と行いだろう。

あれほどキリスト教徒を殺戮したパウロが、夢に現れたイエスの一言で一夜にして転向し、最も戦闘的な布教者に変身したという奇跡こそが、ありとあらゆる奇跡の中で、最も宗教史的に意義のある奇跡だっただろう。

それは元祖イエスと12弟子の奇跡と言動を大きくしのぎ、後代の世界宗教の礎を成したが、その間に元祖イエスの教えはどんどん変貌し、異質で異様な「古代宗教」へと変貌していったようだが、それは本邦の大本教の、出口なおと王仁三郎の関係に似ていなくもない。

 

このように大きな役割を果たしてローマで殉教したパウロだったが、アダムとイブ以来のキリスト教(ひいてはイスラム教)の女性差別を、さらに助長、拡大させてしまった。

彼が「コリント人への第一の手紙」で、「女が髪に覆いをかけないなら、髪を切ってしまうがよい」とまで極論したために、いまでもカトリックの礼拝では、女性だけがベールをかぶっている。

 

この恐るべき女性蔑視の思想を汲むコーランの徒は、最近でもベールをしない女性を殺戮したりしているのだが、なぜ世界中のカトリック教会で、女性による反ベール運動が起こらないのか不思議でしょうがない。

 

もうひとつ、聖書の中では殆ど無視されているイエスの母マリアを、カトリックが聖母と称して無暗に崇拝するのは、どういう風の吹き回しなのだろう? 音楽、絵画、彫刻などで幾多の名作を生む母胎となったとはいえ、まことに面妖な仕儀だと思うのである。

 

庭に眠る愛犬ムクのお腹から今年も咲いたよ白いチューリップ 蝶人

 

 


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