┌───今日の注目記事───────────────────────┐
「『易経』に学ぶ社長の心得」
伊與田覺(論語普及会学監)
『致知』2013年8月号
連載「巻頭の言葉」より
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前回(2013年5月号)は『易経』に説かれる、
立派な君子になるための正しい行為をご紹介しました。
その道筋は龍が天に昇る姿に例えられ、
初九、九二、九三、九四、九五、上九の
六段階に分けて記されています。
今回はその五段階と六段階、会社であれば社長となり、
さらに社長を退いた後の心得について紐解いてみたいと思います。
「九五。飛龍天に在り。
大人(たいじん)を見るに利(よ)ろし」
社長ともなれば「飛龍天に在り」で、
龍が天空を自在に駆け巡るほどの実力も身についています。
しかし、お山の大将でいい気になっていてはなりません。
社長になると社外での交流も盛んになりますが、
「大人を見るに利ろし」で、
外部の優れた人物から学ぶ心掛けが必要です。
但し外だけでなく、内もしっかり見ておかなければなりません。
大きな会社になると、自分の会社の課長や係長の名前を
知らない社長も多いようですが、
普段から将来大人となるべき若手によく目を配り、
彼らの優れた意見に耳を傾けることも大切です。
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■龍は雲に乗って天に昇る
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私は昭和二十八年に大学生の塾を立ち上げた頃、
中井祖門という禅僧に
深く親炙(しんしゃ)しておりました。
ある正月にご挨拶に伺うと、
床の間に中井老師の描いた龍の絵が掛かっていました。
私はその見事さに感嘆し、
ぜひとも自宅の床の間に掛けてみたい、
と無理を言って借りて帰りました。
ところが毎日眺めていると、
その元気な龍に何か危ういものを感ずるのです。
よくよく見ると、その龍には雲が描かれていませんでした。
私はそういう絵を掛けていると自分も墜ちてしまうと思い、
すぐに老師に返しに行きました。
龍は雲に乗って天に昇るものです。
会社で重役になるくらいの人は、
能力も働きも秀でているものですが、
それだけでは一国一城の主にはなれません。
人望、徳望がなければ上がることはできないのです。
聞けば老師がその絵を描いたのは四十九歳の時。
まだ元気盛りの頃だと分かり得心しました。
自分の力だけでなく、時間をかけて徳を養い、
人望によって推挽されていくのが本当の社長であり、
地位を奪い取ったような社長は長く続くものではありません。
雲が十分寄ってくるまで天に昇ってはならないのです。
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