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相互理解のために必要なこと

2020-11-12 12:00:00 | 20期生のブログリレー

みなさん、こんにちは。稼プロ!20期生の加納です。

今日は、25年余り前に当時の勤務先の集合研修で受けた、文章完成法テスト(Sentence Completion Test、以下「SCT」とします)について、お話しさせていただきます。

 

SCTは、被験者のパーソナリティを環境・身体・能力・性格・指向といった面から捉える心理テストです。企業では、内定者の理解やアセスメントなどに利用しています。

 

能力は、知能や知識より人間として生きる知恵を重視しており、精神的分化度(Mental Differentiation、以下「diff.」とします)と名付けられています。分化度という概念は、ドイツの心理学者Lewin,Kurtがパーソナリティ発達の尺度として用いたもので、精神年齢が高くなるほど分化度も高くなります。内面がより豊かになる、ということですね。

 

性格は、気質と力動に分かれます。

 

気質は、生涯を通じて変わりにくい先天的な要素が強いもので、3類型あります。

(1)S(Schizothyme Temperament、分裂性気質)

自分自身の内面世界を重視し、外界の動きにはあまり関心がありません。思考の世界に住み、行動は苦手です。客観的にものを見ていることが多く、逆に感情の波は小さく表面に出しません。また、敏感な面と鈍感な面の両方を兼ね備えています。

(2)Z(Zyklothyme Temperament、循環性気質)

Sとは逆に、同調的で、活動的で、社交性があります。困っている人がいるとすぐ同情し、相談に乗るタイプです。また、いろいろなことに興味があって手を出しますが、飽きやすいのか途中で放り出してしまうことも多くあります。

(3)E(Epileptisches Temperament、粘着性気質)

粘り強く、最後までやりとおすタイプです。スロー・スターターですが、一度エンジンに火が付くと、たゆまず走り続けています。社会的規範や常識を重視しますので、杓子定規になったりすることもあります。

 

一方、力動は大きく2つに分けられますが、環境や育ちなどの影響によって、後天的に形成される要素もあり、全員が当てはまるわけではありません。また、数年で表れたり消えたりすることもあります。

(1)H(Hysterie、ヒステリー)

わがままで、好き嫌いがはなはだしく、移り気で、無反省で、他罰的。自分中心でないと気に入りません。また、自己顕示欲が強く、なんでも「おれが」「わたしが」と自分を出したがる特徴もありますが、Hとは別にG(Geltungsbedürftige、顕示性)と分ける場合もあります。

(2)N(Nervosität、神経質)

自分に自信が持てず、たえず取り越し苦労をし、他人が自分より偉く見えて仕方がない。他人を責める前に自分を責めます。

 

さて、私が経験したのは精研式SCTというものです。「子供の頃、私は」とか「私が好きなのは」のような短文(刺激文と言います)が60項目示されてあり、その後に続けて自分が思いついたことを書いていきます。B5縦で4ページ、つまり1ページに15項目で1項目に2行。大体の文字数は想像いただけるでしょうか。時間は60分程度ですので1項目に1分。考えながら書いていたら、時間内では終わりません。

全項目に2行ビッシリ書く人もいれば、それぞれ1行ずつしか書かない人もいます。どちらが良い悪いということではなく、内容が問われます。

 

判定は、それなりの訓練を受けた方が読み込んで行います。

 

能力だったら、-、±、+、++の4段階(理論的には--もありますが、実際に使うことはないそうです)。±~+(±と+の中間)とか、±~(少なくとも±以上)のような判定もあります。

ここで重要なのは、被験者の年齢ではどの程度なのか、ということです。被験者が30歳だったら、30歳なりの生きる知恵がついているかどうかを判定します。同じ±でも、年齢が違えば絶対的なdiff.は異なるわけです。

 

性格は、原則として気質のS・Z・Eいずれかを判定しますが、一文字だけで表せる典型的なタイプは少ないといわれています。Seとか、ZEとか組み合わせることが多くあります。さらに、力動が感じられればEhとか、Z(n)のように判定します。

 

共通するのは、そのタイプの特徴が日常行動において顕著にみられる場合は大文字で、弱いながらもほとんどの場面で見られる場合は小文字で、通常は見られることは少ないが緊張やショックの場面で表れる可能性がある場合は括弧付きとします。

 

その他、環境・身体・指向面を記号や文字で表し、全体的なコメントがつけられます。このコメントが最重要というか、被験者の生き方や考え方を的確に指摘していることが多いのです。モヤモヤしていたのが、「そういうことだったのか」と腑に落ちることも多々あります。気付きを促すため、コメントを本人にフィードバックする企業もあります(本人にフィードバックすることを前提に、コメントを書いてもらいます)。

 

10年ほど前、SCTのセミナーや研究会に参加しました。なかなか先生方のような読み方ができませんでしたが、「SやZやEに善し悪しはない」「被験者は、どのような生き方をしてきたか、考えを持っているかを感じることが大切」と教わりました。

 

確かに十人十色、人生いろいろ、一人ひとりに個性があります。それを感じ、認め合うことが相互理解につながります。また、SCTの観点で自分を振り返ってみると、自分のタイプがより理解しやすくなります。

 

ところで、25年前のSCTの判定は、10年前のセミナーの講師の方がされたのですが、結果は覚えていないとのことでした。事実を告げるのを遠慮されたのかもしれません。

自分では、セミナー受講前はSe、受講後はEsと思っているのですが、みなさんの判定はいかがでしょうか。

 

*参考文献

槇田仁他『文章完成法(SCT)による パーソナリティの診断 手引』金子書房

『精研式文章完成法テストの枠組みと基準』東京国際・キャリアダイナミックス(当時)

 


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2 コメント

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Unknown (大井 秀人)
2020-11-12 22:51:06
自分を客観視するのによさそうな手法ですね。私はSもZもEもありそうで、どこが一番強くでるか、とても気になります。
思い出したのが、ある外資系会社の入社面接で、中学くらいから今までを時系列で振り返って、そのときどう考え、どう行動したか、なぜそう考えたか、を1つ1つ聞かれたことです。1時間半くらいで相当に疲れました。
職種とパーソナリティのマッチングをしていたのだと思いますが、採用で緻密なパーソナリティの診断を取り入れているのに驚きました。
Unknown (加納久稔)
2020-11-13 21:43:41
大井さん

コメント、ありがとうございます。
私が習った講師の方曰く、実証されていないが、仮説としてSとZの混合はない、とのことでした。正反対のパーソナリティだからです。また、日本人で多いのはEとのこと。粘り強さがあるという意味では、そうですね。
とはいえ、単に型に当てはめることよりは、彼我のタイプを知り、尊重することが大切なことだと思います。

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