特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

7-5・「時間の遅れはお互い様」は実験的に確認可能なのか?

2023-12-31 01:17:28 | 日記

前のページでは

『つまりは「ランダウ、リフシッツが示している時間遅れの実験」というのは行われた事が無い、実際には「実現不可能な方法である」という事になりそうです。

そうであればその方法を解析した結果出てくる「時間の遅れはお互い様」という主張は「確かめようがないもの」という事になります。』

と書きましたが、これに関連して議論を進めます。

 

「ハーフェレとキーティングの時間遅れの測定実験」は原子時計と飛行機を使って時間の遅れを実測したのでした。

そうであれば宇宙空間に出る事で「ランダウ、リフシッツが示している時間遅れの実験」は現在の技術水準でも実現可能となります。

さてしかしながらその実験結果、測定された数値は「ランダウ、リフシッツが主張している数値」にはなるのですが、その結果を解釈して「ほら、だから時間の遅れはお互い様なのだ」という「ランダウ、リフシッツの主張」は成立していません。

その主張は「LLの一般解の導出」によって既に却下されています。(注1)

そうであれば「ランダウ、リフシッツ タイプの時間遅れ測定実験」では「時間の遅れはお互い様」は確認できない事になります。

 

さてそれで次は「時刻合わせをした2つの時計を使うタイプの実験」です。

このタイプの実験では一つを静止しておいて一つを運動させる、そうして再びその2つの時計を同じ場所に持ってきて同時に見比べるのです。(注2)

このタイプの実験で「時間の遅れはお互い様」は確認できるのでしょうか?

さてこのタイプの実験の場合には起こりうる結果は以下の2つの状況の内のどちらか一つになります。

つまりは

・両方の時計は同じ時刻を示していた

あるいは

・一方の時計が他方の時計より時刻が遅れていた。

のどちらかの状態しか起こらないのです。

つまりはこの時に「時間の遅れはお互い様」が主張する様な

・一方の時計は他方の時計に対して「進んでいた」のと同時に「遅れていた」

などという事はありえないのです。

さてそうであれば「時刻合わせをした2つの時計を使った時間遅れの測定」では「時間の遅れはお互い様」は検出できない事になります。

 

以上のタイプの実験の変型判として「円運動しているミュー粒子の寿命の延びの測定実験」を上げる事が出来ます。

この場合は観測者は円運動の外側、実験室系に立っていて、そこを静止系として設定し実験を解釈する事になります。

そうであれば「静止系に対して円運動しているミュー粒子の寿命は延びる」のです。

この時に観測者とミュー粒子の立場を入れ替えて「円運動している観測者が静止系にあるミュー粒子の寿命を観測したらどうなるのか?」と問う事ができます。

つまりは「立場を入れ替えてみた」のですね。

この時には「時間の遅れはお互い様」論者によれば「この場合でも観測者が静止していてミュー粒子が観測者のまわりを回っている」と(少々強引ではありますが)その様に主張する事になります。

そうであれば「観測者の時計で計ればミュー粒子の寿命は延びて観測される」となります。

さてしかしながら実験事実は「円運動している観測者の時間が遅れる」のです。

そうなりますと「ミュー粒子の寿命は静止しているミュー粒子の寿命よりも短く観測される」という事になり、「時間の遅れはお互い様」論者の主張は却下される事になります。

 

さて最後は横ドップラー測定を使うタイプのものです。

このタイプの実験では「時間の遅れはお互い様」が直接検証される事になります。

つまりは「すれ違う2つの慣性系に属するそれぞれの観測者が相手の慣性系に置かれた基準光源からの光を観測し合う」のです。

その結果が「お互いの観測者が両方ともに赤方偏移を観測した」のであれば「確かに時間の遅れはお互い様」となっています。

他方で「一方が赤方偏移を観測し他方が青方偏移を観測した」のであれば「時間の遅れは一方的」であって「お互い様ではない」という事になります。

今の所はこのような「W横ドップラー測定実験」は行われてはいません。

しかしながらこれを別々に行った2つの横ドップラーの測定は行われています。

その結果は

・観測者が静止ししていて光源が動いている場合は赤方偏移が観測された。

・光源が静止ししていて観測者が動いている場合は青方偏移が観測された。

のでした。

この2つの横ドップラーの測定実験結果を組み合わせますと「W横ドップラー測定実験」では「一方が赤方偏移を観測したのであれば他方は青方偏移を観測することになる。」が結論として出てきます。

 

さて、以上の様に見てきますと「時間の遅れはお互い様」を確認できる実験で残っているものは「W横ドップラーの測定実験」という事になります。

しかしながらその結果については「『時間の遅れはお互い様』という主張を否定するものになるであろう」という事は「ほぼ確定している」と言えます。

 

注1:この件、内容詳細については以下のページを参照願います。

:  ・ランダウ・リフシッツが間違えた事 :

: ・「時間の遅れはお互い様」は成立するのか? :

注2:この場合「一つの時計を静止させておく」という条件はマストではありません。

2つの時計の間に速度差があれば時間の遅れは検出できるからです。

しかしながら「話を単純にする為には一方を静止させておく」方が良いのです。

 

追記:ローレンツ変換から導出される「時間の遅れ合成則」は「優先される慣性系が存在する」と主張しています。

そうであればローレンツ変換は結局は「時間の遅れは一方的である」と主張している事になります。

そうしてまた実験事実としても「時間の遅れはお互い様ではなく一方的である」となっています。

さてこの2つを合わせますと、つまりは「理論と実験結果の両方から導き出される主張」は「静止系は客観的に存在し、それが優先される慣性系である」となります。

ちなみに「時間の遅れはお互い様」は「特殊相対性原理の主張:全ての慣性系は平等である」から出てきています。

さてそうなりますとこの結末は「特殊相対性原理は成立していない」という事につながるのです。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/CoVgO