特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

9-16・追補:ミュオン異常磁気モーメント測定

2024-04-22 02:28:14 | 日記

ストレージリングメソッドで使っている式については以下の資料に説明があります。

そのあたりの具体的な内容は「ミュオン磁気能率測定は標準理論の破れを検出したか?」: https://www.jstage.jst.go.jp/article/butsuri1946/56/11/56_11_848/_pdf/-char/ja :にて詳細に述べられています。よい資料ですのでぜひともご一読を。

なおほぼ同じ内容ですが写真が鮮明なのは: http://meson.riken.jp/g-2/g-2_mac/old/g-2-JPS/%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E8%AA%8Cver3.pdf :の方になります。

ポイントになる式は(1)~(3)なのですが式の形が下の資料では崩れて表示されている為に、上の資料の方で確認をしてください。

それで(1)式が磁場強度Bのストレージリングに粒子速度がγのミュオンを閉じ込めた時のサイクロトロン角速度ωcの計算式になっています。

ωc=eB/(mμ*c*γ) ・・・(1)式

ここでe電荷、mμはミュオンの質量、cは光速、γは1/sqrt(1-(v/c)^2)、vは粒子速度

でスピン角速度ωsは

ωs=eB/(mμ*c*γ)*(1+aμ*γ) ・・・(2)式

ここでaμは異常磁気モーメント

で求めたいのはaμだから

ωs=eB/(mμ*c*γ)*(1+aμ*γ)=ωc*(1+aμ*γ)=ωc+ωc*aμ*γ

従って

ωs-ωc=ωc*aμ*γ

だから

aμ=(ωs-ωc)/(ωc*γ) ・・・(4)式

これが基本式

ちなみにωa=(ωs-ωc)とすると(4)式は

aμ=(ωa)/(ωc*γ) ・・・(5)式(注1)

となる。

 

さてそれで資料より(3)式を参照すると

ωa=(ωs-ωc)=e/(mμ*c)[ aμ*B-(aμ-1/(γ^2-1))*βxE) ] ・・・(3)式

これがストレージリングメソッドで使われているトーマスBMT方程式から必要な部分だけを取り出したものになっています。

この式の第二項 (aμ-1/(γ^2-1))*βxE) をゼロにするγの値がマジック運動量でそれはγ=29.30

それでこの項が落ちた後の式の形は

ωa=e/(mμ*c)[ aμ*B-0]=e*aμ*B/(mμ*c)

そうであれば

aμ=ωa*(mμ*c)/(e*B)

(1)式よりωc=eB/(mμ*c*γ)

従って

aμ=ωa/(ωc*γ)

これは(5)式と同じものになり、(3)式で第二項をゼロにする事でaμの値がωaの測定値と外部磁場Bの値から計算できる、という事になり整合性が取れています。

 

ちなみに本来のトーマスBMT方程式の形は

「Foundation of Electron Accelerator」: https://accel.hiroshima-u.ac.jp/files/2022/Lecture/2019TextBook.pdf :の42ページに説明されています。(本文は日本語です。)

で最終的な形が(3.130)式になっており上記(3)式はγを [    ] 内に移して分子、分母で打ち消して整理した形になっています。

加えて(3.130)式では「ビーム進行方向に平行な磁場成分B∥がある場合はそれも考慮する形になっていますが、ストレージリングでは磁場成分B∥の成分はゼロですから結局(3.130)式は(3)式に帰着する事になります。

注1:(5)式に於いてミュー粒子のBNL~フェルミ研の場合はγ≒29.3で電子のぺニングトラップの場合はγ≒1である。

 

追記:トーマスBMT方程式の導出には以下の様な資料もあります。

・「異常磁気モーメント g-2 を測る式の導出」: https://soryushi.ynu.ac.jp/theses/bachelor/2018yoshihara.pdf :

追記の2:このThomas-BMT 方程式の正しい使い方の例としてはたとえば

「スピン偏極電子」: https://archive.md/XNGve :というものがあります。ご参考までに。

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上記以外でミュオン異常磁気モーメント測定に関連した資料をご参考までに以下に示して置きます。

・ミュオン異常磁気モーメントの測定値(セルン~BNL)

「muon g-2 の理論」: https://indico.ipmu.jp/event/164/contributions/2417/attachments/2070/2499/dnomura-slides.pdf :のP19にある。

CERN I (1965) Long dipole magnet, B = 1.6 T μ injection 1 0.4% [14], [15]
CERN II (1974) R = 2.5 m storage ring, B = 1.71 T p injection 12 270 ppm [16]
CERN III (1978) R = 7.1 m storage ring, B = 1.47 T π injection 29.3 7.3 ppm

信頼できる実験値はLong dipole magnet,の時代から一貫して理論値を上回っていた!!

 

・「ブルックヘブン国立研究所のミューオン一時リングでのミューオンの寿命の正確な測定」: https://archive.md/RJoGS :

出版物: 博士号論文  公開日: 2006年 概要部分の日本語訳

 

・一方、過去の実験では検討されていなかったスピンとビー ムのダイナミクスに相関があった場合をシミュレーションしたところ、スピン方向と運動量 分布に相関がある場合、ミューオン g-2 の測定値を系統的にズラしてしまう効果があ ることを発見した。この新しい系統誤差要因に関して調べるため、線型加速器中の ミューオンスピンのダイナミクスに関してシミュレーションした。
https://mlfinfo.jp/sp/qbs-festa/2019/files/Q_binder.pdf

・ミューオン線形加速器における スピンダイナミクスシミュレーション
https://www.pasj.jp/web_publish/pasj2020/proceedings/PDF/FROT/FROT02_oral.pdf

・ミューオン線形加速器におけるスピンダイナミクスシミュレーション
https://www.pasj.jp/web_publish/pasj2020/proceedings/PDF/FROT/FROT02.pdf

 

追記:速報:「世界初 素粒子ミュオンの冷却・加速に成功」: https://archive.md/zl1dZ :

『・・・研究グループは、ミュオンをいったん光速の0.002%にまで“冷却”し、ほぼ停止状態にしてから、正ミュオンに高周波の電場をかけて加速しました。これにより、向きがそろった状態で光速の4%の速さ(秒速約1万2000km)まで加速することに成功したということです。

 この方法を用いれば、さらに加速して指向性が極めて高いミュオンビームを得ることができるとしており、研究グループでは最終的に光速の94%まで加速する予定です。

 高エネルギー加速器研究機構の三部勉教授は、今回の成果により「素粒子標準理論に含まれない未知の素粒子や物理法則の存在を明らかにしたい」としており、今回実現したミュオンの冷却・加速技術によって、世界で初めてのミュオン加速器を実現できるとしています。』<--「J-PARCの実験準備」が順調に進行中の模様です。

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PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/8d7Rc

 


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