特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その2・ 時間の遅れを測定するのは難しい

2023-04-18 03:22:50 | 日記

「ほら、ランダウ、リフシッツが言う様にすれば、時計Bの時間が遅れていて時計Aは遅れていない、物事は明確ではないか。」と言う、多くの声が聞こえます。

そうしてこの様に状況を設定した場合のほとんどの論者の説明方法は前のページで述べた筋道に従っています。

しかしながらここで問題になるのは「なぜ時計Aが、慣性系αが静止系である、と言い切れるのか」という所にあります。

運動は全て相対的なものである、と言うのが相対論の建前、前提でした。

そうであれば時計Aが「止まっているのは自分だ」と主張するのと同じ権利を時計Bにも与えなくてはなりません。

そういうわけで、今度は時計Bの主張を聞く事になります。



3、時計Bは「いや、移動しているのは時計Aだ」と言います。

もう一度測定状況を確認しておきます。

慣性系αでは時計Cを先頭に時計Aがそのうしろから距離4Cで右に移動しています。

慣性系α内では時計Cと時計Aは時刻合わせが済んでいます。

慣性系βでは時計Bが左に移動しています。

慣性系αとβとの相対速度Vは0.8Cです。

時計Cと時計Bがすれ違う時にお互いの時計の時刻を観測しあうイベントがイベント①です。

同様に時計Aが時計Bとすれ違う時にお互いの時計の時刻を観測しあうイベントがイベント②です。

以上の状況で得られた観測データは次のようになります。

TB@イベント①=0秒

TC@イベント①=0秒

TB@イベント②=3秒

TA@イベント②=5秒

但しイベント①にて時計Cと時計Bをリセットしたものとする。

以上のデータについては時計Bもすでに同意しているものですから、これにいちゃもんをつける事は出来ません。

さてこのデータからどうやって時計Bは「いや、移動しているのは時計Aだ」という主張を展開するのでしょうか?

ちなみにこの時の時計Bのロジックの組み立ては本邦初公開ではないかと自負するものであります。



4、時計Bの反論、「移動しているのは時計Aだ」という説明。

時計Bの視点に立てばなるほど静止しているのは時計Bで動いてくるのは時計Cと時計Aです。

そこまでは何の問題もなく全員が了解するでしょう。

しかしながら得られた観測データは上記で示したものでOKだと時計Bはすでに認めています。

さてではこの観測データからどうやって「静止系は時計Aだ」という主張に反論するのでしょうか?

時計Aが主張している以外のこの観測データの説明方法があるのでしょうか?



時計Bは言います。

「時計Cは長さ4Cの棒の先端に取り付けられていて、時計Aはその棒の終端に取り付けられている」と。

まあそうなります。

時計Cと時計Aの間隔は4Cでしたから。

「その棒が速度0.8Cでこちらに向かって来ます。

従ってその棒の長さはローレンツ短縮をおこして4Cではなく0.6*4Cになっています。」

sqrt(1-0.8^2)=0.6 ですから棒の長さが2.4Cになる、という主張は正当なものですね。

「そうしてまた0.8Cでこちらに向かってくる長さ4Cの棒の先端と終端におかれた時計が示す時刻は同時刻ではなく4C*0.8=3.2秒の差が生じています。

この差分は棒の先端を基準とした場合は終端は+3.2秒だけ未来にシフトしています。(注1)」

さて、アインシュタインを信用するならば、この時計Bの主張も認めざるを得ません。

そうして時計Bは続けます。

「長さが2.4Cの棒の先端とすれ違う時に時計Bと時計Cはリセットしました。

そうであれば

TB@イベント①=0秒

TC@イベント①=0秒

は当然です。」

「次に長さが2.4Cの棒が時計Bの横を速度0.8Cで通り過ぎるのには3秒必要です。

従って時計Aと時計Bがすれ違う時の時計Bの示す時刻は3秒です。

これがTB@イベント②=3秒の説明です。」

まあこの説明もごもっともな事です。

「さてこの時に時計Aの時刻は時計Bで計って時計Cがリセットされた時点から3秒経過しています。」

「しかしながら時計Aは相対速度0.8Cで移動していますのでその時間は遅れて3秒*0.6=1.8秒の経過となっています。

sqrt(1-0.8^2)=0.6 ですから、時計Aの時間が0.6の割合で時計Bに対しては進まない、というのはアインシュタインの主張でした。

そうであればここでもまた時計Bの言う事を認めざるをえません。

そうして時計Bは言います。

「さて次に、もともと時計Aは時計Cに対して未来方向に+3.2秒、ずれ込んでいました。

そうして、それに加えて時計Cが時計Bとすれ違ってから時計Aが時計Bとすれ違うまでの経過時間1.8秒を足しこみますときっちり5秒となり、これが時計Aが時計Bとすれ違う時に時計Aが示す事になった時刻です。

これがTA@イベント②=5秒の説明です。」

「以上で時計Bからの抗弁と致します。」

会場はシーンとして静まり返っていましたとさ。



注1:この時刻の差分が生じる現象は相対論でアインシュタインが初めて言い出した「同時刻のミステリー」でした。

ういき(英文):「特殊相対論」: https://en-m-wikipedia-org.translate.goog/wiki/Special_relativity?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc  :トーマス回転(Thomas rotation)より引用

『・・・棒の左端と右端にある 2 つの時計が棒のフレームで同期していると想像すると、同時性の相対性により、ロケット フレーム内の観測者は棒の右端の時計を観察 (見えない) します。によって時間的に進んでいるように Lv/c^2 それに応じて棒が傾いて観察されます。・・・』

長さLの棒の切端と終端では時間差ΔT=L*V/C^2が、相対速度Vで移動してくる棒では発生している、という説明になっています。

そうして今はC=1の単位系ですので時間差ΔT=L*V、つまり長さ4Cで相対速度V=0.8CだとΔT=4*0.8=3.2秒となります。



PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/9WKOy

https://archive.md/JWwap

https://archive.md/pIZjI