特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

「LLの一般解」のさらなる一般化

2023-05-21 07:14:38 | 日記

「LLの一般解の検証」では相対速度V=0.8Cという一つの値に固定した場合を扱いました。

その結果 相対速度VaとVbからなる2つの関数の値が定数になる事が確認できました。

LLの一般解は以下の通りです。

TA@イベント②=L*(Va+(1-Va^2)/(Va+Vb)) 秒 ・・・①式

TB@イベント②=L*sqrt(1-Va^2)*sqrt(1-Vb^2)/(Va+Vb) 秒 ・・・②式

ちなみにここでは

0.8=(Va+Vb)/(1+Va*Vb)

という相対論的な速度の加算式を前提にしています。

つまり、ここまでの「LLの一般解」では慣性系αとβの間の相対速度は0.8Cで固定されていました。



それでここでは相対速度V=0.8CをV=d と一般化した場合を検討します。

それでもちろん

1≧ d ≧0 が条件となります。



さてここでVa=x、Vb=yとおいてこの関数を表すと次のようになります。

1、①式からTA@イベント②の場合は

(Va+(1-Va^2)/(Va+Vb))

=(x+(1-x^2)/(x+y))=z

そうして

d=(x+y)/(1+x*y)

が相対論的な速度の加算式の条件

従ってウルフラム入力式は

z=(x+(1-x^2)/(x+y)),d=(x+y)/(1+x*y)

で連立方程式を解く事になります。

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=z%3D%28x%2B%281-x%5E2%29%2F%28x%2By%29%29%2Cd%3D%28x%2By%29%2F%281%2Bx*y%29

解の所に答えがあります。

Z=1/d

解の条件は

d*x≠1  これはVa≠1、つまり「測定対象の慣性系は光速で移動しない」という条件です。

d ≠ 0  これは「測定対象の2つの慣性系は相対速度を持つ」と言う事です。

この2つの条件は通常は満足されます。したがって

TA@イベント②=L*(Va+(1-Va^2)/(Va+Vb)) 秒 ・・・①式



TA@イベント②=L*1/d=L/d=L/ V ・・・③式

となります。

つまり「時計Aの固有時は時計Aと時計Cが設置された間隔Lを2つの慣性系の間の相対速度Vで割った値になる」ということです。

そうしてこの式から分かります様に「2つの慣性系の間のどこに静止系があるのか」という事には③式は感度を持たないのです。



2、②式からTB@イベント②の場合

sqrt(1-Va^2)*sqrt(1-Vb^2)/(Va+Vb)

=sqrt(1-x^2)*sqrt(1-y^2)/(x+y)

で、上記と同様に

d=(x+y)/(1+x*y)

が条件です。

ウルフラム入力文は

z=sqrt(1-x^2)*sqrt(1-y^2)/(x+y),d=(x+y)/(1+x*y)

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=z%3Dsqrt%281-x%5E2%29*sqrt%281-y%5E2%29%2F%28x%2By%29%2Cd%3D%28x%2By%29%2F%281%2Bx*y%29

解の条件は同上です。

解の表示からzの解を抜き出しますととても見通しが悪いものになります。

それでz=・・・の分子を1>dx≧0 に注意して整理するとこうなります。

まずは分子から(1-dx)の項を消します。

sqrt((dx-1)^2)=sqrt((1-dx)^2)でこれは(1-dx)の絶対値の事です。

そうして(1-dx)>0 ですから(1-dx)/((1-dx)の絶対値)=1となり整理すると分子から(1-dx)の項が消えます。

次に

分子=sqrt((d^2-1)*(x^2-1))

1>d^2>0、1>x^2≧0 ですから

0>(d^2-1)、0>(x^2-1)

従って(d^2-1)*(x^2-1)>0

ここで分子を書き変えます。

sqrt((d^2-1)*(x^2-1))=sqrt((1-d^2)*(1-x^2))>0

分母は分母=d*sqrt(1-x^2)>0 です。

こうして

z=分子/分母

=sqrt((1-d^2)*(1-x^2))/(d*sqrt(1-x^2))

=sqrt(1-d^2)*sqrt(1-x^2)/(d*sqrt(1-x^2))

=sqrt((1-d^2))/d

=sqrt(1-V^2)/V  

TB@イベント②=L*sqrt(1-Va^2)*sqrt(1-Vb^2)/(Va+Vb) 秒 ・・・②式



TB@イベント②=L*sqrt(1-V^2)/V ・・・④式

となります。

つまり「時計Bの固有時は時計Aと時計Cが設置された間隔Lを2つの慣性系の間の相対速度Vで割った値にsqrt(1-V^2)を掛けた値になる」ということです。

そうしてこの式から分かります様に「2つの慣性系の間のどこに静止系があるのか」という事には④式も感度を持たないのです。(注1)


結果を再掲示しておきます。

TA@イベント②=L/ V ・・・③式

TB@イベント②=L*sqrt(1-V^2)/V ・・・④式


こうしてランダウ・リフシッツが説明した手順、それは「すれ違う2つの慣性系の間の時間の遅れを3つの時計をつかって測定する」というものでしたが「それはうまく機能しない」と言う事になるのでした。

それにしてもローレンツ変換を考慮しながら導き出した「LLの一般解」がこれほどに簡単な形にできる、と言う事は驚きであると同時に、この式の正しさを示している様にも見えます。

 

注1:「LLの一般解」は「2つの慣性系の間のどこに静止系があるのか」という事には確かに感度を持たないのですが、その事は「静止系は必要ない」という事を示していません。

LLの一般解の導出の過程で見てきた様に「静止系は一つ、必要なのです」。

但しその静止系がどこにあるのかは「ランダウ・リフシッツの方法で得られた測定結果からは判断できない」という事であります。

この点、くれぐれも誤解なきようにお願い致します。


追伸
さて以上の結果から任意の観測者は「自分こそが静止系に立っていて、すれ違う相手の慣性系との間の時間の遅れの測定をしている」と思い込むことが可能となるのでした。

そうしてその思い込みから「時間の遅れはお互い様の認識が出てきていた」という事になります。

しかしながらそれはあきらかに「誤解」でありました。

ちなみにその誤解はこうして導出された「LLの一般解の最終式」がランダウ・リフシッツが「時間の遅れはお互い様であるという主張を正当化するのに使った式と結果的に同じ形になっているからである」と言えます。

追伸の2
Geant4(その6) 特殊相対論 虎の巻:光速度不変の原理,相対性原理,慣性系: https://archive.md/8Bapb :によれば

『特殊相対論のもうひとつの前提はもちろん「相対性原理」です.
物理法則は慣性系によらない形でなければなりません.…とは?
Einsteinの原論文(の岩波文庫の邦訳)を読むと,この用語は主に電磁気学でのMaxwell方程式の不変性を指していて,運動学での使われ方は抽象的・限定的です.

(運動学においては)慣性系間の本質的な関係は相対速度だけで決まる,ということだけで足ります.

「慣性系」とは慣性の法則が成り立つ系のことです.外力が働かない「慣性運動」イコール等速直線運動であり,等速直線運動はどの慣性系から見ても等速直線運動です.』とされています。

そうして事実、ランダウとリフシッツによる時間遅れの測定の結果は2つの慣性系の間の相対速度Vの関数として記述される事が「LLの一般解が導出された事」によって明らかになりました。

追伸の3:時計のパラドックス: https://archive.md/8ggjL :ういき「特殊相対論」の「時計のパラドックス」章で説明されているのはまさに「ランダウとリフシッツによる時間遅れの測定の話」です。

そうしてそれが「LLの一般解の導出で解決された」事によって同様に「時計のパラドックスも解決された」となります。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/AhgnG

https://archive.md/7d0Q2 

https://archive.md/Mld0O