特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その2・「時間の遅れを測定するのは難しい」の一般解の導出

2023-05-12 01:58:36 | 日記

ここまでの話の一般化をしておきます。

さてそれで時計Aと時計Bの間に設定された静止系に対して時計Aは左からVaで接近し、時計Bは右からVbで接近する事になります。

そうしてもちろん相対論的に加算された時計Aと時計Bの相対速度はVです。

V=(Va+Vb)/(1+Va*Vb) <--相対論的速度の加算式による。(注1)



それで時計Bは言います。

「時計Cは長さLの棒の先端に取り付けられていて、時計Aはその棒の終端に取り付けられている」と。

まあそうなります。

時計Cと時計Aの間隔はLですから。

「その棒が速度Vaで静止系に左から向かって来ます。

従ってその棒の長さはローレンツ短縮をおこしてLではなくL*sqrt(1-Va^2)になっています。」

静止系から見た場合ローレンツ短縮割合はsqrt(1-Va^2) ですから棒の長さがL*sqrt(1-Va^2)になる、という主張は正当なものですね。



「そうしてまたVaで静止系に向かってくる長さLの棒の先端と終端におかれた時計が示す時刻は同時刻ではなくL*Va秒の差が生じています。

この差分は棒の先端を基準とした場合は終端は+L*Va秒だけ未来にシフトしています。(注2)」

さて、アインシュタインを信用するならば、この時計Bの主張も認めざるを得ません。

そうして時計Bは続けます。



「時計Bが長さがLの棒の先端にある時計Cとすれ違う時に時計Bと時計Cはリセットしました。

そうであれば

TB@イベント①=0秒

TC@イベント①=0秒

は当然です。」



「次に時計Bと時計Cがすれ違いざまに時刻をリセットした場所に静止系の原点を置きます。

さて静止系の時間で計って時計Bと時計CがリセットしたΔT秒後の時計Bの位置は原点の左側にVb*ΔTだけ離れた所にあります。

そうして又この時に時計Aの位置は原点左側にあり、その距離は原点から見て

時計Aの位置=ローレンツ短縮した棒が速度VaでΔT秒、右側に移動した分だけ右にシフト

=(L*sqrt(1-Va^2))ーVa*ΔT

と表せます。

時計Bと時計Cがリセットした時に時計Aの位置は原点左側で原点から距離(L*sqrt(1-Va^2))だけ離れた所にありましたから、上記の様な計算になります。



そうしてイベント②は時計Aと時計Bがすれ違うイベントですからこの2つの距離は同じでなくてはなりません。

従って

Vb*ΔT=(L*sqrt(1-Va^2))ーVa*ΔT

が成立している事がイベント②が成立する条件となります。

これをΔTについて解くと

Vb*ΔT+Va*ΔT=(L*sqrt(1-Va^2))

ΔT*(Va+Vb)=(L*sqrt(1-Va^2))

従って

ΔT=(L*sqrt(1-Va^2))/(Va+Vb)  ・・・①式



さてそれで、イベント①からイベント②までの時計Aの経過時間を計算します。

イベント①の時点で時計AはL*Va秒を指しています。

次に時計Aが時計Bとすれ違うまでに静止系時間でΔT秒、必要でした。

これを速度Vaで移動している時計Aの時間に換算しますと

時計Aの経過時間=ΔT*sqrt(1-Va^2)

そうしてもともと未来方向にずれていた時計Aの時間とその後の経過時間を足すと

L*Va秒+ΔT*sqrt(1-Va^2)秒

となりますからこれで

TA@イベント②=L*Va+ΔT*sqrt(1-Va^2) 秒

となります。

ここに①式を代入すると

TA@イベント②=L*Va+(L*sqrt(1-Va^2))/(Va+Vb)*sqrt(1-Va^2) 

=L*Va+(L*(1-Va^2))/(Va+Vb)

=L*(Va+(1-Va^2)/(Va+Vb))

これが時計Aのイベント②での時刻=TA@イベント②の値となります。



時計Bにつきましては時計Cとすれ違ってから時計Aとすれ違うまでにΔT秒、静止系時間で経過していました。

これを速度Vbで移動している時計Bの時間に換算しますので

時計Bの経過時間=ΔT*sqrt(1-Vb^2) 秒

従って時計Bのイベント①からイベント②までの経過時間はΔT*sqrt(1-Vb^2) 秒となります。

これがTB@イベント②=ΔT*sqrt(1-Vb^2)秒の説明です。

ここに①式を代入して

ΔT*sqrt(1-Vb^2)=(L*sqrt(1-Va^2))/(Va+Vb)*sqrt(1-Vb^2)

=L*sqrt(1-Va^2)*sqrt(1-Vb^2)/(Va+Vb)

を得ます。



以上をまとめますと

時計Cと時計Bの間に設定された静止系に対して時計Cと時計Aは左からVaで接近し、時計Bは右からVbで接近する。

そうしてもちろん相対論的に加算された時計Cと時計Bの相対速度はV。

時計Cは長さLの棒の先端に取り付けられていて、時計Aはその棒の終端に取り付けられている。

この時に時計Cと時計Aは両者が属している慣性系内で時刻合わせが済んでいる。

それで最初に時計Cと時計Bがすれ違う。

その場所で時計Cと時計Bはリセットされる。そこがイベント①.

そうしてまた、その場所に静止系の原点を置く。

次に時計Aと時計Bがすれ違う。そこがイベント②.

以上のイベント条件でそれぞれの時計の指す時刻を静止系観測者が測定すると測定結果は

TB@イベント①=0秒

TC@イベント①=0秒

TA@イベント②=L*(Va+(1-Va^2)/(Va+Vb)) 秒

TB@イベント②=L*sqrt(1-Va^2)*sqrt(1-Vb^2)/(Va+Vb) 秒

であり、

そうしてこの時に「TA@イベント②とTB@イベント②の示す時刻は固有時になります。」



以上がランダウ・リフシッツが説明した「3つの時計を使った2つの慣性系の間での時間の遅れの測定方法」であり、そうしてまた「その測定により得られることになる観測結果を表す一般解」となります。(注3)



さて今回はここまでで、得られた一般解の特性を検証するのは次回と致しましょう。

ちなみにこの一般解は
Lev Landau, Evgeny Lifschitzにちなんで
「LLの一般解」と呼ぶことにします。


注1:速度Vと時計Cと時計Aの間隔距離Lの単位は光速Cで規格化されています。

注2:速度Vでこちらに向かってくる長さLの棒の先端と終端の時間差は、観察している観測者には先端に対して終端は+V*L(秒)未来にシフトして見える、と言うのは従来の説明通りです。

注3:これが時計Bと時計Cの間のどこに静止系の原点があっても成立している解=一般解となります。

もちろんこの一般解は時計Bに静止系の原点があっても(=時計Bが静止している)、時計Cに静止系の原点があっても(=時計Cと時計Aが静止している)成立しています。



PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/h3NyU

https://archive.md/F2vqj