特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

横ドップラー効果の件

2022-06-27 03:31:55 | 日記

ういき「ドップラー効果」: https://archive.fo/MNLxG :の中の「光のドップラー効果」の章にその記述があります。

それによれば光の場合はドップラーシフトは次のように計算されます。

光源Sが観測者Oから見て角度Θ の方向に速さ V で運動している場合、Oでの光の振動数 f は、
f=f₀*sqrt(1-β^2)/(1-β*CosΘ) ・・・①式
となる。
ここで、f₀ : 光源の出す光の振動数、V: 観測者から見た光源の速さ、C : 光速、Θ : 観測者から見た光源の動く方向( Θ=0 :観測者に向かってくる場合)、β=V/C

そうして横ドップラーシフトはΘ=90度の時、つまりCosΘ=0で f は
f=f₀*sqrt(1-β^2) ・・・②式
となります。

この場合はういきの記事にある様に
『また、光の場合は波源が運動していると、特殊相対論的な効果によって波源上での時間の進み方が遅れて観測される。これにより、波源から出る光の振動数が小さく観測される効果が付け加わる。』
であり、
『特に90度の位置に光源が来た時には視線方向の速度を持っていない場合(Θ=90°)でも光の振動数が変化して見えることである。これを横ドップラー効果という。』
という事になります。

つまり「横ドップラー効果」は「速度 V で移動する事による時間の遅れの効果そのものを見ている」という事であり、上記のΘ=90度の時のドップラーシフトの式もその事を裏づけています。(注2)

・・・と、まあここまではいいのですが、問題は次の様になります。

横ドップラー効果を測定する観測者は光源が移動する直線上にはおらず、その直線から一定の距離を置いた場所で移動する光源を観察し、光源からの光の周波数を測定する、のでした。

そうして観測者に対して真横に来たとき(Θ=90度の時)には観測者に対する相対速度はゼロになります。

これはういきの説明では「(観測者の)視線方向の速度を持っていない時」と説明されています。

そうして特殊相対論のロジックでは「相対速度はあくまで観測者の視線方向で定義されているもの」でありますから、「観測者の視線方向の相対速度がゼロでは時間の遅れは発生しない」という事になります。(注1

しかしながら「実験事実としては確かに横ドップラーシフトはその式が示すように発生している」のでした。

そう言う訳でこれもまた特殊相対論が持つもう一つのパラドックスの様に見えます。


注1:相対論電卓で時間の遅れを計算する場合に入力する相対速度は「観測者の視線方向の相対速度」です。

そうして「観測者の視線方向の相対速度」=0ならば相対論電卓がいう様に「時間の遅れは発生しない」のです。

そうしてこれが特殊相対論のロジックなのです。


追記:双子のパラドックス(加速度運動あり)についてのういきの説明の件・相対論 :http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=27347 :では「アリスとボブの間には相対速度があったのに時間の遅れは発生しませんでした。」

そうして横ドップラー効果では「相対速度がゼロで時間の遅れが発生しています。」

以上の事から言えます事は「観測者に対する相対速度によって時間の遅れが発生するのではない」という事です。

そうではなくて「基準慣性系に対する相対運動=相対速度の発生が時間の遅れを発生させる」ととらえるのが妥当なのであります。


注2:このういきの説明は大筋では良いのですが詳細に見るとどうでしょうか。

横ドップラー効果を観測する観察者と光源が移動する直線との距離を D とします。

観測者と光源との距離 L が L>>> D である時には 距離 D の事はほとんど無視できて、観測者の視線方向にみた光源との相対速度はういきの説明の様に V とする事ができます。

しかしながら、光源が観測者に近づくにつれて 距離 D の影響が現れてきて、視線方向にみた光源との相対速度はういきの説明の様に V とする事はできなくなり、光源が真横に来た時には相対速度はゼロになります。

そうでありますから、①式に代入する速度 V の値は光源の移動する直線から 距離 D だけ離れた観測者が観測する相対速度ではなく、常に光源が移動する直線上にいる観測者によって観測された値である、という事になります。

そうして横ドップラー効果を表す②式に代入される速度 V もこの値であり、当の横ドップラー効果を観測している観測者に対する相対速度ではない、という事になります。

そうであれば①式及び②式は、横ドップラー効果を観測する観測者のほかに光源の相対速度を観測しているもう一人の観測者を暗黙のうちに想定している、という事になります。


ちなみに特殊相対論が主張する「時間の遅れ」効果が存在しない場合は縦方向のドップラー効果は確認できますが、横ドップラー効果は存在しない事になります。

追伸
横ドップラー効果を観測する場合は、特殊相対論のロジックに従って、
1、まずは光源の移動する直線上の観察者がその光源を常時観察する事によって光源の時間が遅れている事を確定させる

2、次にその直線から距離D だけ離れた場所にいる、直線上にいる観察者に対しては静止している観察者が光源の横ドップラー効果を観察する
という手順を踏むことになります。

まずは手順1が必要ですね。

そうでなく手順2から始めると横ドップラー効果は観察できなくなる、と言うのが特殊相対論の「観察対象との間の相対速度が時間の遅れを規定する」という計算ルールが主張する内容になります。

光源が観察者の真横に来ると観察者に対する光源の相対速度がゼロになるからですね。


ふーむ、これはまるで量子力学の観察問題の様であります。

しかし実際は1、の手順は不要で2、の手順から始めても横ドップラー効果は観察できるのです。

さてそうなると「観察対象との間の相対速度が時間の遅れを規定する」という計算ルールはどこにいったのでしょうか??

あるいは手順1、の代わりに移動する光源を観測し時間の遅れを決めているものは何でしょうか??


答えは「それは空間の働きそのものであり、その様にできる空間が基準慣性系である」という事になります。

あるいは「空間そのものが観察者である」と言うように表現する事も出来そうです。

観察者の存在は、観測装置の存在は横ドップラー効果が存在する為の条件にはなってはいない、という事になります。

それはまたこの宇宙で起きている事が「あなたと私」という「相対的な関係」ではなく「あなたと空間と私」という客観的な関係に変わる、という事でもあります。

そうしてその状況は「双子のパラドックス(加速度運動あり)についてのういきの説明の件・相対論」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=27347 :で議論した 「地球を真ん中にして左右に飛び立ったアリスとボブの物語で起きていた状況と同じもの」です。


追伸の2
こうして地球、あるいは空間、あるいは基準慣性系の存在が「タキオン反電話が行っている計算手順=時間の遅れを計算する中で自由に計算の主体を入れ替えて計算を行う事=アリスの立場で計算を始めて途中でボブの立場に計算を切り替える事」を禁止しており、その結果として「タキオン反電話が主張している事=タキオンが存在したら過去に情報を送る事が可能である」という主張を成り立たなくさせているのです。

つまり「タキオン通信機があっても因果律は破壊されない」のです。

ちなみに「タキオン反電話が主張する計算手順」については :http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?topic_id=3742#post_id26518 :を参照願います。


追伸の3
横ドップラー効果の存在は少なくとも以下の事を示しています。

光源が移動する直線上にいない観測者が属する慣性系に対して静止している空間の中を運動する光源の時間は、その移動速度に応じて時間が遅れる。

ここでのポイントは次の通りです。

光源の時間の遅れは特殊相対論が主張する事=観測者に対する光源の移動速度=相対速度で決まるのではない。

そうではなくて、観測者が属する慣性系に対して静止している空間の中を移動する速度=慣性系に対する相対速度で決まる、と言うものです。

 


PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.fo/bpmku