相対論を調べていくと「ラピディティ」: https://archive.fo/SIG4B というのが出てきます。
なにやら速度に関係したものらしいのですが、逆双曲正接関数 artanh という耳慣れない関数が出てきて嫌になります。
・・・というわけで、良く知っている三角関数CosΘの話にしようじゃないか、という話です。
それで「ラピディティ」も相対論的な速度の加法則から出てきたようです。
『・・・この式により、ラピディティの有用な特性である、加法性が確立される。つまり A, B, C を基準系とすると、次の式が成り立つ。
φAC=φAB+φBC
この式の単純さは、相対論的な速度の合成則(英語版)とは対照的である。・・・』
つまりうぃきは相対論的な速度の加法則
V=(V1+V2)/(1+V1*V2/C^2) ・・・①式
と言う式は「複雑である」と言っているのです。(注1)
さてこのうぃきの指摘は本当でしょうか?
ちなみに①式はCを単位系に用いる(V=V*C、V1=V1*C、V2=V2*Cを代入する)と式の中からCを消せます。
勿論その場合は1 ≧ V、V1、V2 ≧ ー1と変数が取れる数値範囲が変わります。
そうして①式は
V=(V1+V2)/(1+V1*V2) ・・・②式
に変わります。
それでガリレイ変換の世界、通常の我々の常識の世界では
V=(V1+V2)
が成立しています。(・・・の様に我々は認識しています。)
そうであれば当然(1+V1*V2)>1 によって
V(ガリレイ)=(V1+V2)>(V1+V2)/(1+V1*V2)=V(相対論)
であって
つまりは相対論は
V(相対論)<(V1+V2) ・・・③式
であると言っているのです。
そうしてガリレイ変換の世界ではV、V1、V2を速度ベクトルの加算として図にかけば、それは一直線上に並んだ3つのベクトルとなります。
しかしながら相対論の世界では③式のおかげで「一直線上に並んだ3つのベクトルの加算の絵」にはならず「Vベクトルの長さが足りない」ので、それでもベクトル加算の絵を書くと「1次元の絵」ではなく「2次元の絵のなる・ならざるを得ない」という事になります。
そうしてそこに現れるのはV、V1、V2をそれぞれの辺に持つ三角形の絵となります。
それでその絵を見ると分かるのですがVというのは「V1とV2という2つの辺が作る狭角Θの向かい側にある辺」であって、従って「第二余弦定理」:https://archive.fo/h8X6z によって
CosΘ=(V1^2+V2^2-V^2)/(2*V1*V2) ・・・④式
が成立しています。(注2)
つまり「加算する速度ベクトルV1とV2とは直線的に加算できず加算点で角度Θをもって折れ曲がる」という事をその絵は示しているのです。
これが実は「相対論的速度加算のしくみ」になります。
そうしてガリレイ変換の世界ではこの角度Θが常に180度であって、つまり「3つの速度ベクトルが作る三角形はつぶれて一直線になる」という訳です。
さてこの④式に今度は②式を代入しVを消します。
手計算でも良いし、ウルフラム : https://ja.wolframalpha.com/ :を使ってもいいのですが、最終的に次の式を得ます。
・・・あまりきれいになりませんでした。
②式を代入しただけの式が一番見通しがよさそうです。
CosΘ=(V1^2+V2^2-((V1+V2)/(1+V1*V2))^2)/(2*V1*V2) ・・・⑤式
さて相対論的加算式を上記のように理解した場合は、V1の速度がCの時、つまりV1=1の時にはΘの角度はいくつになるのでしょうか?
⑤式より
CosΘ=(1^2+V2^2-((1+V2)/(1+1*V2))^2)/(2*1*V2)=V2/2
V2がゼロの時はCosΘ=0 したがってΘ=90度
まあもっともV2がゼロでは三角形にはなりませんが、この時のVの値は1(V=C)ですので、「絵としては成立しています。」
V2が0.1の時は(V2=0.1C)、CosΘ=0.05 したがってΘ=87.13・・度
ちなみにこの時のVの値は1(V=C)であって、従って三角形は
V=V1=C
V2=0.1C
の二等辺三角形で底辺V2の両側の角度が87.13・・度、従って頂点の角度は5.74・度となります。
次にV1=V2=Cの時を見ます。
⑤式より
CosΘ=(1^2+1^2-((1+1)/(1+1*1))^2)/(2*1*1)=1/2
したがってΘ=60度
はい、これは正三角形の事ですね。
以上の事よりΘの取りうる値の範囲は
180度 > Θ ≧ 60度 である、と言えます。
(但しV1あるいはV2がCである時は180度 ≧ Θ ≧ 60度)
そうしてまた、この三角形の面積Sの取りうる値の範囲は
sqrt(3)/4*C^2 ≧ S ≧ 0 である、と言えます。
ちなみにこの面積Sの値が大きいほど「2つの速度V1とV2の加算は相対論的である」と言えます。
(従ってガリレイ変換での速度加算では面積Sの値はゼロとなります。)
注1:V1,V2,Vの関係については「おにノート」: https://archive.fo/jydqn :の「問題設定」のイラストおよび「結論」を参照願います。
注2:「第二余弦定理」は三角形の面積を出す「ヘロンの公式」と同等であり、その形に変形する事が可能です。
追伸
その3・ 光速の測定と光速を使った測定・相対論 :http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?topic_id=3815#post_id26950
で示した様に「相対論的速度の加算式」はローレンツ変換を用いることなく導出する事が可能です。
つまり「同じように光の特性について考察した結果から得られる二つの式」ですが「相対論的速度の加算式が成立している理由とローレンツ変換が成立している理由は独立している」と見なす事が出来そうです。
追伸の2:2022/6:上記では「相対論的速度の加算式が成立している理由とローレンツ変換が成立している理由は独立していると見なす事が出来そうです。」と書きましたが、「光の速度は不変である」という条件からローレンツ変換も、そうしてまた相対論的速度の加算式も導出する事が可能である、というのが実状です。
したがって「この二つの関係は独立である」ということはなく「兄弟のようなものである」という所が正解の様に思われます。
PS:相対論の事など 記事一覧
https://archive.fo/nBrgf