特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

9-12・ミュオン異常磁気モーメント測定

2024-04-01 00:13:48 | 日記

さてまた前のページからの引用になります。

「ミューオンg − 2/EDM実験」: https://www.jahep.org/hepnews/2012/12-3-5-g-2-Mibe.pdf :より以下、引用です。

『静電磁場中でのミューオンとスピンの運動について考える。一様磁場中では,ミューオンは円運動(サイクロトロン運動)する。ミューオンのスピンはミューオンの運動量に追随するように同様に磁場中で回転する。

g 因子が正確に 2 であれば,磁場に対するスピンの回転周波数はサイクロトロン運動の周波数と完全に一致する。しかし実際には g は 2 より大きいため,スピンは運動量に対してわずかに早く回転する。
この運動量に対するスピンの回転は,g 因子の 2 からの「ズレ」によって生じていて,異常歳差運動と呼ぶ。異常歳差運動の角速度 ωa は aµ,磁場 (B" ),電場 (E" ) および速度ベクトル β",ローレンツ γ 因子を用いて,以下のように表すことができる。』

ωa = − e/mµ[aµ*B" −(aµ − 1/(γ^2 − 1))*( β" × E")/c] ・・・(1)式 

ここでmµはミュー粒子の質量、eは素電荷

『第 1 項は磁場による回転(注:サイクロトロン運動),第 2 項は相対論的に運動しているミューオンが実験室系の電場を見たときに感じる有効磁場による回転である。
前述のように, aµ ∼ α/(2π) ∼ 0.00116 であるので(注:最低次近似),γ が γ = 29.4 である時は第 2 項が無視できるようになり,以下の単純な式になる。』(注1

ωa = − e/mµ[aµ*B"] ・・・(2)式 

『つまり,"ωa と B" を精度よく測定すれば,aµ を決めることができる。このときのミューオンの運動量(p=3.094 GeV/c) はマジック運動量と呼ばれている。(注1

BNL の実験ではマジック運動量のミューオンビームを用いて g − 2 の測定を行った。

このときミューオンビームは,パイオンの崩壊で生成されるものを直接用いたので,非常にエミッタンスが大きいビームであった。一方,測定のためにはミューオンを蓄積しておく必要があり,このために収束電場が用いられた。BNL の実験がマジック運動量で測定した理由は,この収束電場により,測定が(1)式  第 2 項の影響を受けないようにするためであった。』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そうしていよいよ「客観的に存在する静止系の影響の話」となります。

さてここでは上記の主張に従って「aµ ∼ α/(2π) ∼ 0.00116である」としましょう。

その場合は(aµ − 1/(γ^2 − 1)) の項をゼロにする為には

(0.00116 − 1/(γ^2 − 1))=0 が条件となります。

従って

(0.00116 − 1/(x^2 − 1))=0

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%280.00116+%E2%88%92+1%2F%28x%5E2+%E2%88%92+1%29%29%3D0

答えは

29.378

但し桁落ちしています。

で逆にγ=29.4の時に(aµ − 1/(γ^2 − 1))=0 になるaµを求めます。

(x − 1/(29.4^2 − 1))=0

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%28x+%E2%88%92+1%2F%2829.4%5E2+%E2%88%92+1%29%29%3D0

答えは

0.00115827

しかしながら手計算では

25/21584=0.0011582653817642698・・・

となっています。(ウルフラムの数字は桁落ちしています。)

 

そうであれば確かにγ=29.4の時にはaµ=25/21584であって

(25/21584 − 1/(γ^2 − 1)) の項はゼロになっている。

従って

(aµ − 1/(γ^2 − 1))*( β" × E")/c の項も ( β" × E")/c がゼロでないにも関わらずゼロとなり(1)式は(2)式となるのでした。(γ=29.4を優先してaµを決めるとそうなります。)

 

それでここでずうっと議論してきた「客観的に存在している静止系の出番」となるのでした。

たしかに実験室系でみているかぎり(実験のランごとにばらつきはあるものの)ほぼ γ は一定の値になっている様に見えます。

しかしながらそれは実験室系という「静止系に対してドリフトしている地球という惑星の上に固定された系」なのです。

そうしてその地球はどうやらCMBパターン(≒静止系)に対して0.001Cほどでドリフトしているらしいのです。

さてその場合は静止系から見ますれば「ストレージリング内をぐるぐと回っているミュー粒子の速度」はγ=29.4の一定速度で運動しているのではない事になります。

静止系から見た場合にはミュー粒子がストレージリング内を一周する間に、ある時はそれを上回りある時はそれを下回るのです。

さてそうであれば実際はその効果が加味されてωaが決まっている事になります。

 

さてそれでその効果を計算する暫定的な手順を以下に示します。(注2

K=(aμ-(1/(γ^2-1)))*(β X E)/C で定義されるKを導入します。

そうすると(1)式は

ω=-e/(mμ)[ aμ*B-(K) ] ・・・(3)式

の様に書けます。

ここでもちろんK=0ならば(3)式は

ω=-e/(mμ)[ aμ*B-(K) ]=-e/(mμ)[ aμ*B ] となり(2)式になります。

それでこの時は

aμ=[ω*(mμ)/(-e)]/B

これはK=0が実現している、という前提でaμを算出する式です。

従ってこれを

aμ(k:0)=[ω*(mμ)/(-e)]/B ・・・(4)式

と書いておきます。

 

でK≠0の時は

ω=-e/(mμ)[ aμ*B-(K) ]

で両辺に(mμ)/(-e)を掛けて

ω*(mμ)/(-e)=[ aμ*B-(K) ]

Kを左辺に移項して

ω*(mμ)/(-e)+(K)=aμ*B

両辺をBで割れば

aμ(k)=[ω*(mμ)/(-e)+(K)]/B ・・・(5)式

こうしてK≠0の時のaμ(k)が決まる事になります。

 

さてそれでこの(5)式を見ますとK<0の時にはK=0とした場合よりもaμの値は小さくなる事が分かります。

逆にK>0の時にはK=0とした場合よりもaμの値は大きくなる事が分かります。

そうであれば当然K≠0ではない時にはその分の修正をaμ(k:0)にかけなくてはいけない、つまりは「(4)式でaμを算出するのではなくて(5)式を使わなくてはならない」という事になるのです。

つまりは「いままでK=0として計算していた結果で得られたaμ(k:0)の値は間違っていて実はaμ(k)とするのが正しい」という事になるのです。

 

それでつぎは γ=29.4 の時の β を求めます。

29.4=1/sqrt(1-x^2)

https://ja.wolframalpha.com/input?i=29.4%3D1%2Fsqrt%281-x%5E2%29

答えは

4sqrt(1349)/147=0.999421369916024917・・・

 

β が上の答えの時に γ がいくつになるのか確かめます。

1/sqrt(1-(0.999421369916024917)^2)

https://ja.wolframalpha.com/input?i=1%2Fsqrt%281-%280.999421369916024917%29%5E2%29

答えは

29.3999999999999879・・・

はいOKでした。

 

それで次は

K=(aμ-(1/(γ^2-1)))*(β X E)/C

=(25/21584-(1/(γ^2-1)))*(β X E)/C

の(1/(γ^2-1))の部分を β で書くようにします。

γ=1/sqrt(1-β^2) より

(1/(γ^2-1))=(1/(1/((sqrt(1-x^2))^2)-1))

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%281%2F%281%2F%28%28sqrt%281-x%5E2%29%29%5E2%29-1%29%29

=1/x^2-1

つまり

(1/(γ^2-1))=(1/β^2-1)

です。

さてそれでこれでKの部分を x を使って書きなおしますと

K=(25/21584-(1/(γ^2-1)))*(β X E)/C

=(25/21584-(1/x^2-1))*(β X E)/C

外積 (β X E)/C の項は今はこのままにしておきます。

 

K=0になる条件を再確認しておきます。

(β X E)/C≠0ですので

(25/21584-(1/x^2-1))=0 が条件となります。

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%2825%2F21584-%281%2Fx%5E2-1%29%29%3D0

答えは

4sqrt(1349)/147=0.999421369916024917・・・

円運動速度は0.999421369916024917・・・で、上で求めたβの値でK=0になっています。

 

さてそれでもともとの話は「 K=(aμ-(1/(γ^2-1)))*(β X E)/C で計算されるKの値が0なのかそれともゼロではないのか?」という事でした。

ゼロならば従来通りの計算でよいのですが、ゼロでない場合は(5)式を使う事になります。

それで「静止系が客観的に存在している場合」は「ストレージリングを一周している時に γ の値が当初設定の29.4という値から上下にずれるだろう」と予想できます。(注3

そうであれば (aμ-(1/(γ^2-1))) の部分を一周分積分してやればその状況がどうなっているのかがわかります。

上にずれる部分と下にずれる部分がちょうど打ち消し合っていれば積分の値はゼロになります。

どちらかの方向に偏っていた場合は積分の値はゼロからずれます

ハイ、やる事が決まりましたので積分を実行します。

積分対象は (aμ-(1/(γ^2-1))) です。

それで上記で整理してきましたように

(aμ-(1/(γ^2-1)))=(25/21584-(1/(γ^2-1))

そうしてもちろん γ=1/sqrt(1-β^2)

で(1/(γ^2-1))=(1/β^2-1)

βは設定された円運動速度で4sqrt(1349)/147=0.999421369916024917・・・

それで被積分関数を β で書きますと

(25/21584-(1/β^2-1))

円運動にドリフト量を加える為に円運動速度βをsinとcosで展開しドリフト量0.001Cをそこに加えます。(注4

但しこの時には「相対論的な速度の加法則が必要」になります。(注5

なんとなれば「そうしないとドリフト量と合成した円運動速度は光速Cを超えてしまうから」です。

それから「0から2πまで積分します」ので予め「被積分関数を2πで割っておきます。」

こうする事で積分結果が直接 (aμ-(1/(γ^2-1))) の値を示すことになります。

それでウルフラム入力文は以下の様になります。(βの値は0.99942137とします。)

25/21584/(2pi)-((1/( (((0.99942137*cos x+0.001)/((1+0.99942137*(cos x)*0.001)))^2+(sqrt(1-0.001^2)*((0.99942137*sin x)/((1+0.99942137*(cos x)*0.001))))^2)))/(2pi)-1/(2pi))をxが0から2πまでの範囲で積分

https://ja.wolframalpha.com/input?i=25%2F21584%2F%282pi%29-%28%281%2F%28+%28%28%280.99942137*cos+x%2B0.001%29%2F%28%281%2B0.99942137*%28cos+x%29*0.001%29%29%29%5E2%EF%BC%8B%28sqrt%281-0.001%5E2%29*%28%280.99942137*sin+x%29%2F%28%281%2B0.99942137*%28cos+x%29*0.001%29%29%29%29%5E2%29%29%29%2F%282pi%29-1%2F%282pi%29%29%E3%82%92%EF%BD%98%E3%81%8C0%E3%81%8B%E3%82%89%EF%BC%92%CF%80%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%81%AE%E7%AF%84%E5%9B%B2%E3%81%A7%E7%A9%8D%E5%88%86

答えは

-4.12233*10^-10

 

それでこの時にドリフト量がゼロの場合は上記積分は理想的にはゼロになっているはずです。

それを確かめます。

25/21584/(2pi)-((1/( (((0.99942137*cos x+0)/((1+0.99942137*(cos x)*0)))^2+(sqrt(1-0^2)*((0.99942137*sin x)/((1+0.99942137*(cos x)*0))))^2)))/(2pi)-1/(2pi))をxが0から2πまでの範囲で積分

https://ja.wolframalpha.com/input?i=25%2F21584%2F%282pi%29-%28%281%2F%28+%28%28%280.99942137*cos+x%2B0%29%2F%28%281%2B0.99942137*%28cos+x%29*0%29%29%29%5E2%EF%BC%8B%28sqrt%281-0%5E2%29*%28%280.99942137*sin+x%29%2F%28%281%2B0.99942137*%28cos+x%29*0%29%29%29%29%5E2%29%29%29%2F%282pi%29-1%2F%282pi%29%29%E3%82%92%EF%BD%98%E3%81%8C0%E3%81%8B%E3%82%89%EF%BC%92%CF%80%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%81%AE%E7%AF%84%E5%9B%B2%E3%81%A7%E7%A9%8D%E5%88%86

答えは

1.68242*10^-10

ゼロではなくて少しプラスになっています。

これはβの値として0.99942137と厳密解0.999421369916024917・・・から少しだけおおきな値を使った事に起因している様です。

そうであればここでは逆に

1.68242*10^-10の値を原点=ゼロと読みます。

そうすると上記のドリフト量が0.001Cの場合の(aμ-(1/(γ^2-1))) の値は

(-4.12233*10^-10)ー(1.68242*10^-10)=-5.80475*10^-10

となります。

 

さてそうなりますとK=(aμ-(1/(γ^2-1)))*(β X E)/Cは

K=(aμ-(1/(γ^2-1)))*(β X E)/C

=-5.80475*10^-10*(β X E)/C≠0

となっていて、「K≠0である為に静電四重極電場Eの影響が無視できない」という事になります。

つまりは「今は(4)式でaμを計算している」のですが「(5)式を使わなくてはならない」という事になるのです。

しかも(aμ-(1/(γ^2-1)))<0ですので(β X E)/Cがプラスですとk<0となります。

そうなりますと「今のaμの計算値よりも修正されたaμの値は小さくなる」のです。

つまり「修正されたaμの値はより理論計算値に近づく事になる」のです。

 

さて以上が当方の主張、「実験値が理論値を上回っているのは客観的な静止系が存在しているからである」というものになります。(注6

さてこの事を逆に言いますと「静電四重極を使わないJ-PARCの追試では実験値は理論計算値に近づく方向に動くことになる」と宣言している事になります。

そうしてJ-PARCの追試結果が当方の主張通りであったとすればそれは「実験値が理論計算値を上回っていたのは静止系に対して地球がドリフトしていた為である」という当方の主張が妥当なものであった、という事になります。

つまりは「ミュオン異常磁気モーメント測定」はじつは「静止系に対する地球のドリフト量を測定する実験であった」という事になるのです。(注7

 

注1:ここでこのレポートの著者の三部さんは「ミューオンのマジック運動量(p=3.094 GeV/c) に相当するγは29.4だ」と主張していますが、p=3.094 GeV/cに対応するγを計算すると29.30となっています。

しかしながらここでは三部さんの主張に従って「γ=29.4がマジック運動量に相当する粒子速度である」として本文の話を続けます。

注2:ここで示した手順は数値計算を行ってはいるものの暫定的な手順であって主に「マジック運動量に設定できた」と実験者は思っているが「それは達成できていない」という事を示す為の計算例になっています。

注3:地上で見ている分にはミュー粒子がストレージリング内を一定速度のγ=29.4で回転しているのであれば、それは静止系から見れば逆に「一定速度では回転していない」という事になるのです。

なんとなればミュー粒子は静止系に対しては円運動ではなくてサイクロイド運動となるからであります。

注4:ちなみに円運動速度βをsinとcosで展開するとこうなります。

β^2=0.99942137^2=(0.99942137*cos x)^2+(0.99942137*sin x)^2

注5:「相対論的な速度の加法則が必要」:円運動にドリフト量0.001Cを「相対論的な速度の加法則」を使って合成する

(((0.99942137*cos x+0.001)/((1+0.99942137*(cos x)*0.001)))^2+(sqrt(1-0.001^2)*((0.99942137*sin x)/((1+0.99942137*(cos x)*0.001))))^2)

合成された式はウルフラム表示の方が分かりやすい

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%28%28%280.99942137*cos+x%2B0.001%29%2F%28%281%2B0.99942137*%28cos+x%29*0.001%29%29%29%5E2%EF%BC%8B%28sqrt%281-0.001%5E2%29*%28%280.99942137*sin+x%29%2F%28%281%2B0.99942137*%28cos+x%29*0.001%29%29%29%29%5E2%29

 

ちなみに「相対論的な速度の加法則」はこれ

特殊相対性理論入門 公開用 第 1 版 : http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~tatekawa.takayuki/Note/SRelativity-v1.pdf :の21ページ、3.6.1 速度の合成 の76式~78式がその答えになります。

但し速度は光速Cで規格化とし、γ=1/SQRT(1-V^2)

Vx=(V+Vx')/(1+V*Vx') ・・・76式

Vy=Vy'/(γ*(1+V*Vx')) ・・・77式

Vz=Vz'/(γ*(1+V*Vx')) ・・・78式

注6:さてこの主張は (β X E)/C 項の符号によって左右されますが、すくなくとも「静止系が客観的な存在」の場合は「その影響を無視できない」という事は明らかにできました。

なお「実験値が理論値を上回っている状況」は: https://archive.md/MmDX0 :の一番下のイラスト「ミューオンg-2の理論予言」で確認できます。

注7:ということで次は「J-PARCの追試がどのようなものであるのか」を見ていく事になります。

 

追記:以上の検討では「トーマスBMT方程式は正しいのだが、それを満たすようにBNL~フェルミ研の実験は実施できていない」という主張になっています。

それはまた「BNL~フェルミ研の実験ではマジック運動量で行われた」という主張に対して「いや、マジック運動量は実現できていなかった」という指摘でもあります。

つまり当方は「BNL~フェルミ研の実験では静電四重極電場の影響を打ち消すことに失敗している」と主張するのであります。

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PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/w76Rr