特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その6・ニュートンの時間(NT)と棒の時間(BT)の1

2024-08-11 01:19:24 | 日記

さてそれでローレンツ変換はローレンツがMMの干渉計の実験結果を説明しようとする中で登場してきたものです。

そうして当初はミスがあったそのローレンツの変換式を修正したのがポアンカレでした。

その際にローレンツもポアンカレも「求めている座標変換はマクスウエルの方程式を不変に保つであろう」ということを想定して発見的な手順でローレンツ変換にたどり着いた模様です。

さてそのローレンツ変換を2つの原理を最初に設定する事でトップダウン的に再導出して見せたのがアインシュタインでした。

ローレンツ変換の導出についての大まかな歴史的な経緯としてはそんな所でしょうか。(注1

 

さてそれで、前のページで示した様に実は棒の時間を使ってもローレンツ変換を導出できるのです。

まあこれは「当然と言えば当然の事」でありましょう。

ローレンツ変換の結果としてローレンツ短縮、時間の遅れ、そうして時間のずれが起きると通常は説明されています。

そうであればこの3つから逆にローレンツ変換が導出できてもそこには何の不思議もありません。

とはいいながら「ローレンツ変換の実体が実は棒の時間であった」という事が明示できた事は大きな事であります。(注2

 

といいますのもローレンツ変換は不思議な形をしていて、ローレンツ変換が実は何をやっているのか、それを言葉で説明することはできてはいなかったからです。

ただ「慣性系Kから相対速度Vで動いている慣性系K’に座標変換するにはローレンツ変換を行えばよい」という事が分かっていただけでした。

ちなみにその時のローレンツ変換の式はこうでした。

x’=(x-v*t)/sqrt(1-V^2)

t’=(t-V*x)/sqrt(1-V^2)

その状況に対して棒の時間を使う事でローレンツ変換が何をやっているのか、その具体的な内容が明らかになりました。(注3

それは簡単に言えば「ローレンツ変換もガリレイ変換と基本的には同じことをやっていた」という事です。

「車の外で行われている運動を車の中からみたらどう見えるのか」という事を「棒を使って車の中の座標に移し替えること」それがこの2つの座標変換がやっている内容でした。

その事についてはガリレイ変換もローレンツ変換も同じであります。

そこには何の違いもないのです。

但しガリレイ変換で使った棒は短縮する事はなく、そうしてまた棒の原点にある時計の時刻は遅れず、棒の先端にある時計の時刻も原点に対してずれる事はない、そういう棒の時間を使っていました。

それに対してローレンツ変換の棒は短縮し、そうしてまた棒の原点にある時計の時刻は遅れ、棒の先端にある時計の時刻は原点の時計に対してずれる、そういう棒の時間を使った変換がローレンツ変換なのです。

そうであればガリレイ変換とローレンツ変換の相違は「どちらの棒をつかったのか?というだけの事になります。

それ以外には何の違いもなく同じように棒の時間を使って変換していたのです。

 

さて座標変換という手順についてはこのようにガリレイ変換とローレンツ変換での違いはありません。

しかしながら実はガリレイ変換とローレンツ変換では変換された後の時間軸に大きな違いが生じているのです。

ガリレイ変換では変換後の慣性系での時間軸は変換前と同じ「ニュートンの時間」になっています。(注4

それに対してローレンツ変換では変換前の時間軸は「ニュートンの時間」であったものが変換後の慣性系での時間軸は「棒の時間」に変わってしまっています。(注5

つまり「ローレンツ変換後の慣性系では座標原点にある時計の時刻とそこから距離xだけ離れた場所にある時計の時刻はずれる」のです。

しかしながらこのずれは今まで指摘してきましたように「慣性系K’に立っている観測者には認識できないずれ」なのです。

そうであればこの観測者は「自分が立っている慣性系の時間軸はニュートンの時間である」と認識します。

それはつまり「自分は静止系に住んでいる」と認識する事と同じことです。

さてそのように認識してしまう為に「棒の時間の重大さ」については「今までは十分に理解されてきてはいなかった」と言えます。

違うコトバで言いますれば「自分は常に静止系に住んでいて棒の時間が支配しているような慣性系K’で暮らした事などは無い」と思っているのです。

 

注1:ローレンツ変換を導出する手順としてローレンツやポアンカレの様なheuristicな試行錯誤を重ねる、発見的な方法とアインシュタインの様に公理を設定してトップダウンで行う方法と2通りの方法があった訳です。

そうして「どちらの方法がより優れている」と言うものではなく、それはただ「それぞれの担当者のやり方がそうであったと言う事にすぎない」というのが当方の認識となります。

注2:「ローレンツ変換と棒の時間を使った変換が数学的に同等のものであった」という事は個人的には驚きであります。

注3:残念な事にはその2つの式に対してそれとそのままいくらにらめっこしてもその式のやっている事は当方には解読できませんでした。

そうであれば「その式を解読できた」という事は「長い間解けなかったパズルが解けた」という事になります。

注4ニュートンの時間(ニュートン タイム:NT

ガリレイ変換が支配しているニュートン力学の世界では全ての慣性系の時間軸はニュートンの時間になっています。

それで通常の物体mの運動を表す時に使う表示方法ですがそれは横軸に時間軸tをとり縦軸にx軸の原点からの移動距離xを取った場合にそこに現れる直線、あるいは曲線で物体mの運動の軌跡を表現します。

で、ここで命名した「ニュートンの時間(NT)」というのはその時に横軸に取った時間軸で示されている時刻表示の事になります。

その「ニュートンの時間」による時刻表示はガリレイ変換では変化する事はありません。

「ニュートンの時間」はガリレイ変換に対しては不変なのです。

他方で距離Xはガリレイ変換で変化します。

というよりも「距離xのみを変化させるものがガリレイ変換である」といえます。

さてそうであれば「ニュートンの時間」という呼び方を新たに登場させましたがそれ以外の内容については「よく知られた事」であり、我々にとっては「ほとんど自明のことである」といっても良い内容です。

 

注5:棒の時間(棒タイムBT

さてそれに対してローレンツ変換が支配している相対論の世界では「全ての慣性系の時間軸は棒の時間(BT)」になっています。

そうして「棒の時間については今まで十分に説明してきたもの」であればここで改めてそれを繰り返す必要はないと思われます。

とはいいながら一つだけ付け加える内容があります。

それは「相対論においては静止系とされた慣性系の時間軸は棒の時間であると同時にニュートンの時間にもなっている」という事です。

あるいはその様に「棒の時間」=「ニュートンの時間」となりうる唯一の慣性系が相対論で言う静止系なのです。

従って相対論に於いては静止系以外のすべての慣性系の時間軸は「棒の時間」ではありますが「ニュートンの時間」にはなってはいない、なる事ができないのです。

 

さてそれで「棒の時間」と「ニュートンの時間」の大きな違いはなんでしょうか?

その違いは通常は「棒の時間」では「静止系に対して動いている慣性系の時間は遅れる」とされます。

これはローレンツ変換が距離xと時間tを同時に変化させる為です。

そうであれば相対論に於いては時間tは不変ではなくなる、それがガリレイ変換が支配しているニュートン力学の世界とは違う所になっています。

 

さてしかしながらここで通常は忘れ去られて振り返えられる事がない大きな違いがもう一つ「棒の時間」と「ニュートンの時間」の間にはあるのです。

それは「棒の時間では距離xに置かれた時計が示す時刻表示tx原点にある時計の時刻表示toからずれる」という事です。

その様な事は「ニュートンの時間」では起こってはいません。

「ニュートンの時間」では常に tx=to が成立しているのです。

「ニュートンの時間」についてはそのことは自明な事でありましょう。

しかしながら「棒の時間」については「今までとは違う状況になっている」のです。

そうして我々はどうやらその事の重大さを十分には認識してはいなかった模様です。

なんとなればそれは「方程式がローレンツ不変である、という事は一体どういう事なのか?」と問う事につながるからです。

あるいはそれは「棒の時間に変わってしまった慣性系K’の時間軸においてローレンツ不変であるとされた方程式が実際の所は一体何を意味しているのか?」と問う事でもあります。

 

追記:ニュートンの時間と棒の時間

この2つの時間の具体的な姿、ありようについては具体的な例を挙げた説明を聞かないとよく分からないと思われます。

そうしてその具体例を使った説明はこの後の別のページで展開される事になります。

従ってここではたとえば『速度グラフを描いた時に横軸になっている時間軸には実は2通りの具体的な実体と言うものがある。

その一つが従来から使われている時間軸でそれは「ニュートンの時間」と言うものを表している。

そうしてもう一つがローレンツ変換の登場と共にこの世界に登場した「棒の時間」と言うものになっている。』(注6

そういう「2つの異なる時間軸と言うものが存在している」という事を認識しておいていただければまずは十分であります。

 

注6:速度グラフの具体例: https://archive.md/YiYTt :

最初に「等速直線運動のv-tグラフ」と言うのが出てきていますがこのグラフの横軸がここで話題にしている時間軸のことです。

そうしてこの場合は横軸は「ニュートンの時間(NT)」になっています。

つまりは「グラフで時刻が3秒の時にはx軸の座標原点に置かれた時計も3秒を指している」のです。

もちろんその時に対象物体はx軸の座標原点からv*3秒の位置にいます。

そうしてその位置に置かれた時計も3秒を指している、これが「ニュートンの時間(NT)」です。

つまりは対象物体が速度vで移動している時に常に

t(原点位置の時計の表示時刻)=t(その時に対象物体が存在しているその場所に置かれた時計の時刻表示)

となっているのが「ニュートンの時間(NT)」なのです。

そうしてこれがローレンツ変換を行うと変換された慣性系では原点の時刻と物体が到達している場所に於かれた時計の時刻がずれるのが「棒の時間(BT)」になります。

さてそれで「我々は通常は地球上の時間軸はニュートンの時間(NT)だ」と思っていますが「それは本当ですか?」という疑問が浮かんできます。

あなたが「地球上の時間軸はニュートンの時間(NT)だ」という証拠は何でしょう?

まあもっともポアンカレを除いてアインシュタインが1905年に特殊相対論を提案していらい120年間に渡って「棒の前後で時間がずれる」という事は了解されていましたが「それがそんなに大事な事なのか?」と言う状況でした。

そうであれば大方の方々は「地球上の時間軸はニュートンの時間(NT)であると何故言えるのか?」などと言う様な疑問は抱いてはこなかったのです。

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「相対論・ダークマターの事など 記事一覧」

「その2:ダークマター・相対論の事など 記事一覧」

https://archive.md/YU7xD