特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

2-22・時間遅れの測定:ハーフェレ・キーティングの実験の1

2023-11-11 00:44:01 | 日記

1、ハーフェレ・キーティングの実験

『ハーフェレ・キーティングの実験は相対性理論のテストでした。1971 年[1] 物理学者のジョセフ C. ハーフェレと天文学者のリチャード E. キーティングは、民間旅客機に4 台のセシウムビーム原子時計を持ち込みました。彼らは世界一周を 2 回飛行し、最初は東方向、次に西方向に飛行し、その時計を米国海軍天文台に残っている他の時計と比較しました。再び結合すると、3 組の時計が互いに一致しないことが判明し、その差異は特殊相対性理論および一般相対性理論の予測と一致しました。』(注1

元論文は(1972 年 7 月 14 日)。「世界一周原子時計: 相対論的時間の増加の予測」(PDF)。科学。177(4044): 166–168。

 Hafele, J. C.; Keating, R. E. (July 14, 1972). "Around-the-World Atomic Clocks: Predicted Relativistic Time Gains" (PDF). Science. 177 (4044): 166–168 (注2

に記載された。

以下それの暫定和訳です。

『「要旨:1971年10月、商業ジェット便を利用して、4つのセシウムビーム原子時計が世界を2周し、東回りと西回りの2回の飛行を行い、アインシュタインの一般相対性理論を巨視的な時計で検証しました。各飛行の実際の飛行経路から、理論的には、飛行時計は、米国海軍天文台の基準時計と比較して、東回りの飛行では40 ± 23ナノ秒の損失が予測され、西回りの飛行では275 ± 21ナノ秒の増加が予測されます。観測された時間差は、この要旨の後に続く報告書で提示されています。」

今世紀における最も持続的な科学的論争の一つは、相対論的な時計の「逆説」(1)または問題(2)であり、これは元々、往復の後に旅行時計と基準時計の予測された時間差における論理的な矛盾があるとされたものから発生しました。

この理論的な論争は、最近再び活発になった(2, 3)ばかりか、解決すべきである巨視的な時計による説得力のある実験的解決を求めています。これらの時計の前例のない安定性を実現したため、携帯用の原子時計を使用した時計の問題の単純かつ直接の実験的テストが現在可能です(4)。

この2つの報告書の最初では、最近の世界一周飛行時計実験の飛行データから計算された相対論的な時間差を示します。理論は、セシウムビーム時計が典型的なジェット機の速度で世界一周飛行した場合に、検出可能な効果を予測しています(4)。さらに、それは周回の方向に応じて、飛行時計と地上基準時計の時間差に興味深い非対称性を予測しています(4)。予測される時間差は、以下の報告書で、予測された時間差と観測された時間差を比較します。

この理論の要点を簡単に説明することが適切です、特にこのような実験が意味のある結果を生み出す能力についてのいくつかの混乱があるため(5)。特殊相対性理論は、動く標準時計が、慣性基準空間で静止している(実際または仮想の)座標時計と比較して、記録する時間が少なくなることを予測しています。低い座標速度(u^2 << c^2)の場合、移動座標時計と基準座標時計によって記録された時間の比率は、(1 - u^2/2c^2)に簡約されます。(注3)ここで、cは光速です。

地球が回転しているため、地表に静止して配置された標準時計は、非回転の(慣性の)空間の座標時計の候補としてこの場合には適していません。それにもかかわらず、地球上の時計の相対的な時刻の振る舞いは、基礎となる非回転(慣性)空間の仮想的な座標時計を参照することによって評価できます(6)。

この目的のために、北極点から遠く離れた場所から見下ろす非回転(慣性)空間の観察者が地球(回転している)を見た場合を考えてみましょう。赤道上の地表に固定された時計は、非回転空間に対して速度RΩを持ち、したがってこの空間の仮想的な座標時計に対して1 - R^2*Ω^2/2c^2の比率で遅れています。一方、赤道面近くで地球を周回する飛行時計は、地上速度vを持ち、したがって対応する時間比率1 - (RΩ + v)^2/2c^2で遅れています。

したがって、τとτ0は完全な周回中に飛行時計と地上基準時計によって記録された対応する時刻であり、それらの時間の差は、一次の近似では次のように表されます。

τ - τ0 = (2RΩv + v^2) τ0 / 2c^2 ・・・(1)

したがって、地球の回転方向(東向き、v > 0)での周回は時間の損失を生じ、地球の回転方向に逆らって(西向き、v < 0)の周回は飛行時計に時間の利益をもたらすべきです(|v| ~ RΩ)。

一般相対性理論は、飛行時計と地上基準時計の間の重力ポテンシャルの差に比例する別の効果を予測しています(弱い重力場の場合)。重力加速度の表面値がgで周回の高度がh << Rである場合、ポテンシャルの差はghで、方程式1は次のようになります。

τ - τ0 = [gh/c^2- (2RΩv + v^2)/2c^2]τ0 ・・・ (2)

gh/c^2項は、重力の「赤方偏移」と関連しており、周回の方向に関係なく飛行時計に時間の利益を予測します。典型的な航空機の速度と高度では、方程式2の重力と運動の項は絶対値で比較可能であり、v^2/2c^2はRΩv/c^2と比較して小さいです。西向きの周回(v < 0)では、両方の項が正であり、合算して大きな時間の利益をもたらしますが、東向きの周回(v > 0)ではそれらは相殺され、ネットの時間差を生じる傾向があります。

予測される時間差は、飛行の詳細に依存して正または負である可能性があることに注意してください。我々は予測された時間差を検出の閾値と比較できます。もし周回飛行が一気に行われる場合、一次近似では、旅行時間τ0 = 2πR/lvlとなります。これを式2に代入すると、次のようになります。(訳注:lvl=abs(v))

τ - τ0 =2πR/c^2 [g/lvl - RΩv/lvl - lvl/2] ・・・(3)

この関係は、興味のある地上速度と高度の範囲にわたり、図1でグラフィカルに表現されています。図1の斜線で囲まれた領域は、携帯用セシウムビーム時計を用いた過去の経験から推定された検出の閾値を下回っています(7)。ラベル付けされたポイントは、示された航空機の巡航高度と地上速度に対応しています(8)。図1は、ジェット機の速度でのセシウムビーム時計による周回飛行が測定可能な相対論的な時間差を生じるべきであることを示しています。さらに、観測された時間差には確定的な東西方向の非対称性が存在するだけで、式2の運動項の妥当性を強力に証明します。

赤道周回飛行に関するこれらの予測は、実際の飛行に対してわずかに修正されるでしょう。商業の世界一周ジェット飛行は、もちろん赤道の経路に従うわけではありませんし、高度、地上速度、または緯度を一定に保ちません。ただし、この場合、実際の飛行経路に沿って式2の適切な微分形式を積分する必要があります。

τ - τ0 =積分[gh/c^2 - (2RΩvcosΘcosλ + v^2)/2c^2] dr ・・・(4)

この式にはわずかに変更された方向依存性の項が含まれており、非赤道飛行の場合、地上速度の東向き成分、v * cosΘ、および緯度のcos λに比例する(4、9)。実験では最低次の相対論的な時間差しか検出できないため、計算された予測には最低次の項のみが含まれる必要があり、この近似の次数では、式4においてτまたはτ0の微分時間を使用するかどうかは無関係です。

東回りの飛行は1971年10月4日に19時30分 U.T.で開始し、65.4時間続き、そのうち41.2時間が飛行時間でした。

西回りの飛行は翌週の10月13日に19時40分 U.T.で開始し、続いて80.3時間かかり、そのうち飛行時間は48.6時間でした。

式4の数値評価に必要な飛行データは、さまざまな飛行機長によって提供されました。ほとんどの場合、彼らは適切な飛行マップに飛行経路を描き、飛行経路に沿ったさまざまなナビゲーションチェックポイントでの時刻と航空機の地上速度と高度を記録しました。この情報により、東回りの飛行は125の区間に、西回りの飛行は108の区間に分割されます。各チェックポイントの緯度と経度は、飛行マップから直接読み取り、各チェックポイントでの時刻(U.T.)と組み合わせることにより、各区間の平均地上速度、緯度、および東方向の方位を計算できます。各区間の平均高度は、エンドポイントの高度の平均値としました。この情報を使用して、式4の積分の数値評価が可能になります。表Iは、これらの計算から得られた予測された時間差を示しています。

この報告書を、これらの予測における不確実性についての言葉で結びます。可能な誤差は2つの要因から生じます:(i)飛行データの誤差および不備、(ii)式4の導出に使用される理論的な近似。数値積分後の式4の各項に対する飛行データの誤差からの最大の可能な分数的不確実性は、それぞれ10%未満と見積もります。この見積りには、飛行データの系統的およびランダムな誤差の両方が含まれます。これらの項からの誤差が平方和で加算されると仮定した場合、東回り周回の総値の最大の分数的不確実性は約60%であり、西回り周回の場合はわずか8%です。これらの不確実性は表1にリストされています。

高次の項(c-4、c-6、および...)を無視するにもかかわらず、高次の項(c-4、c-6など)を理論的な近似から無視することは、完全に正当化されていますが、小さながらも完全に無視できない一次の効果が、月と太陽の存在から生じる可能性があります。実際、地球-月系の重心が太陽の周りを自由落下しており、中心が地球ではないため、より正確な計算にはこの効果を含めるべきです。ただし、我々の実験の精度では、式4で保持された支配的な効果以外の効果を検出することは不可能である可能性が高いです(10, 11)。

J. C. HAFELE*
物理学部、ワシントン大学、セントルイス、ミズーリ州63130
RICHARD E. KEATING
アメリカ海軍天文台、ワシントンD.C. 20390 』

翻訳担当 主にチャットGPT3.5+修正は当方

なお表およびグラフは原論文を参照されたい。

加えて数式については原論文にて再確認をお願いします。

 

注1:英語版ういき「ハーフェレ・キーティングの実験: https://archive.md/cEK7X :の冒頭文からの引用

実験結果はこのういきのまとめで確認できますが、実際の数字については次ページに譲ります。

それを見ますと「東回りは時間が遅れ、西回りは時間が進んでいる」のです。

そうして計算の為の基準時計はどうやら北極点に置かれた仮想の時計ベースの様です。

この仮想基準時計は「地球の自転による時間の遅れの影響は受けないが、地球の重力場による時間の遅れは受ける」というしろものです。

その時計をつかって「米国海軍天文台に残っている時計」の時間を計算し、同様にして「東回りと西回りの時計の時間を相対論を使って計算した」のです。

そうして「世界一周した時計と米国海軍天文台に残っている時計との経過時間」について計算上での差分を出した。

同様にして「実際に観測されたデータから地球周回時計と地上に固定された時計の間の差分」を出した。

その両者を比較したら「良い一致が見られた」というものです。

ということは「相対論は現実に起きた現象を説明できている」という事になります。

 

さてそれでここで注意すべきは「回転運動に対しての時間の遅れの計算では客観的に存在する静止系がある」という事を「暗黙の前提としている」と言う所にあります。

それはつまり「地球が静止系(=宇宙)に対して回転している」のであって「地球が静止していて(=地球が静止系で)宇宙が地球中心で回転しているのではない」という事を認めている事になるのです。

さらにコトバを変えますと「回転運動は相対運動ではなく絶対運動である」となります。

ちなみに「回転運動が絶対運動である」と最初に指摘したのはニュートンであります。(「ニュートンのバケツ」: https://archive.md/ejDCq :を参照願います。)

そうしてそのニュートンの主張に対抗したのは「相対運動論の巨匠のマッハ」でした。

そうしてまたそのマッハの影響をうけて相対論を作り上げたのがアインシュタインとなります。(そういう流れが歴史上の事実です。)

 

さてそれで「回転運動だけに有効な静止系」というのはありえません。

静止系が存在するのであればそれは「静止慣性系」として存在するのです。

従って回転運動であれ等速直線運動であれ、あるいはどのような運動であれ「その静止系に対して運動する時計は特殊相対論が予想する通りに時間が遅れる事」になるのです。

しかしながら皆さんこの「世界一周した時計の時間遅れの話」のポイントが「客観的に存在する静止系がある」という所にある事をなかなか理解されないのであります。

注2: https://web-archive-org.translate.goog/web/20170331121014/http://www.personal.psu.edu/rq9/HOW/Atomic_Clocks_Predictions.pdf?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc :

サイエンスに掲載された元記事はこれ。

記事は2つあり、上記に訳出したのは最初のもの。

注3:「sqrt(1-x^2)」のx=0でのテーラー展開の2次の項までの近似式

https://ja.wolframalpha.com/input?i=sqrt%281-x%5E2%29

「x=0における級数展開」を参照のこと。

 

追記:ニュートンが「回転運動が絶対運動である」と言ったのは「回転運動に応じて発生する慣性力=遠心力の存在」をその理由としました。

しかしながらここで「回転運動が絶対運動である」と主張するのは「回転運動に伴って発生する時間の遅れ」をその根拠としています。

ちなみに「回転運動に応じて発生する慣性力=遠心力=横G」は時間の遅れに対しては影響を与えない事はすでに前ページに於いて示しました。→ういき: https://archive.md/UTWGG :の「時計仮説 - 加速の影響の欠如」の説明によれば

『Bailey et al. (1977) 粒子は最大約 10^18 Gの横加速度を受けました。結果は同じであったので、横加速度は時間の遅れに影響を与えないことが示された。』

さてそうなりますと「時間の遅れ」については「等速直線運動と円運動は同じに扱える」という事になります。

そうして「その様に扱ってもよい」と実験結果は示しているのです。

ちなみに「回転運動に伴って発生する時間の遅れ」をその根拠として「回転運動が絶対運動である」という主張に対してはさすがのマッハも抗弁する事はできないと思われます。

追記の2:「ハーフェレ・キーティングの実験」の上記の理論計算の部分は後日に行われる事になった「人工衛星の時間の遅れ計算の基礎になった」と見る事が出来ます。

人工衛星の時間の遅れ計算の例は以下のページを参照願います。

  ・人工衛星の時間の遅れと横ドップラー効果

  ・その2・ 人工衛星の時間の遅れと横ドップラー効果

ちなみに上記の人工衛星の計算例では「地上に固定された時計は南極にある」としています。

つまりは「地球の重力場の影響は受けるが、地球の自転による時間遅れの影響は受けない時計」が基準となっています。

その点「ハーフェレ・キーティングの実験」では「アメリカ海軍観測所の基準原子時計=地球の自転の影響を受ける時計」を基準にしていますのでその分話が複雑になっています。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/U0pNx