特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その2・時間の遅れについての理論内部の不整合の件

2022-06-21 00:52:54 | 日記

まずは日本版ういきから引用します。: https://archive.fo/hCjKk

『時間(時刻の隔たり)の伸び

運動する観測者 A があり、A とは別の観測者 B が慣性運動し、A 側の座標系 (ct, x, y, z) にて B の位置が、x→(τ) = (ct(τ), x(τ), y(τ), z(τ))
と書けるとき、・・・

・・・A 側の固有時間 T が得られる。ここで V(t) は時刻 t における A と B の相対速度である。

V<C ゆえ、積分内は常に1未満であり、慣性系B側の時間 T′ との関係は次式となる:

T<T'

・・・特に観測者 A も慣性運動しているときは、相対速度V は常に一定であり、次式となる:

T=T’*SQRT(1-V^2/C^2) 』

これはつまり「慣性系アリスから慣性系ボブをみた時の時間の遅れはローレンツ係数 SQRT(1-V^2/C^2) だけ遅れて見える」=「実際にボブの内部時間は遅れる」という事を示しています。



さて前のページでの議論では

O君から見たアリスの時計は0.6掛けでO君の時計より遅れている

O君から見たボブの時計は0.4346掛けでO君の時計より遅れている

アリスから見たボブ号の相対速度V2=107,525.8km/s 

この相対速度V2でアリスがボブの時計の遅れを上の式で計算すると0.93347掛けで遅れている事になる。

だがしかしこの値はO君観察の値 0.4346÷0.6=0.72433 とは一致しない

と言うものでした。



これは明らかに「特殊相対論内部にある不整合」です。

特に特殊相対論が立つ「特別な慣性系はなく、すべての慣性系は平等である」という立場とは相いれない結果になっています。

と言うのも、上記の矛盾を解消するためには

1、V2の計算式=相対論的速度の加算式 を変更するか、それとも

2、相対論的速度の加算式と整合する様に 時間の遅れの式を変更する、あるいは

3、O君の立場を「特別なもの」と認め「優先慣性系」=「基準慣性系の存在を認める」

まあこの3つあたりしか解決策がない様です。

ちなみに3、の立場は「時間の遅れは基準慣性系に対する相対運動によって生じる」と言うものになります。

したがっていくらアリスから見たボブ号の相対速度が計算され、あるいはレーダーで検出されてもその値V2ではアリスから見たボブ号の時間の遅れは計算できない、という事になります。



さてそれで結論から言えば2、の立場はまず取り得ないでしょう。

そうすると残りは1、か3、という事になります。

それで1、を選択した場合にどうなるか見てみましょう。



基準慣性系にO君がいます。

そのO君に対してアリスはV1=0.8Cで離れていきます。

それと同時にボブがV=0.9Cで同じ方向に離れていきます。

アリスからボブをみた時の相対速度がV2です。

それで

O君観察の値 0.4346÷0.6=0.72433は一般式では

(SQRT(1-(V/C)^2))/(SQRT(1-(V1/C)^2))

となります。

アリスから見たボブ号の相対速度V2=107,525.8km/s 

この相対速度V2でアリスがボブの時計の遅れを上の式で計算すると0.93347掛けで遅れている事になる。・・・と言う部分は一般式では

sqrt(1-((V2)^2/C^2))

となります。

この二つの値が常に同じくなる、と言うのが必要十分条件ですから

sqrt(1-((V2)^2/C^2))ー(SQRT(1-(V/C)^2))/(SQRT(1-(V1/C)^2))=0の解を求めればよい、という事になります。

それでウルフラムの出番です。

入力欄に

sqrt(1-((V2)^2/C^2))ー(SQRT(1-(V/C)^2))/(SQRT(1-(V1/C)^2))=0

をコピペしてポチると実数根を表示してくれます。

https://ja.wolframalpha.com/

V2=±sqrt(ーC^2(V1^2-V^2) /(C^2-V1^2))

整理して

V2=±sqrt((V^2-V1^2)/ (1-V1^2/C^2 ) )

この式で計算したアリスからボブをみた時の相対速度V2を了解するのであれば、時間の遅れについての不整合はなくなります。(注1)



しかしながらえられた式は相対論がいう加算式

V2=(V-V1)/ (1-V*V1/C^2)

とは似てはいますが、それ以外の挙動はどうでしょうか?

相対論の式のV1にCを入れますとV2=ーCと値が出ます。

他方で得られた式のV1にCを入れますとV2は発散してしまいます。



次は加算式を確認するためにVについて解いてみましょう。

Vの代わりにXをその位置に置きます。

sqrt(1-((V2)^2/C^2))ー(SQRT(1-(X/C)^2))/(SQRT(1-(V1/C)^2))=0

コピペしてポチると実数根を表示してくれます。

https://ja.wolframalpha.com/

X=V=±(sqrt(C^2*V1^2+C^2*V2^2-V1^2*V2^2))/ C

しかしながらえられた式は相対論がいう加算式

V=(V1+V2)/ (1+V1*V2/ C^2 )

とは一致しませんし似てもいません。



こうして「時間の遅れについての不整合を無くす式」は得られますが、その式は相対論のロジックから得られる通常の速度の合成式とは全く違うものになる、という事が分かるのです。



さて、以上の事をまとめますと

時間の遅れについての特殊相対論の中に起きている不整合を無くすためには3、を認める、

という結論に至るのであります。



注1:確認しておきましょう。

V2=sqrt((V^2-V1^2)/ (1-V1^2/C^2 ) )

SQRT(1-V2^2/ C^2)
に代入すると

SQRT (1-(sqrt((V^2-V1^2)/ (1-V1^2/C^2 ) ))^2/C^2)

ウルフラムにコピペしてポチると整理してくれます。

https://ja.wolframalpha.com/

「別の形」から整理した式として

SQRT((C^2-V^2) / ( C^2ーV1^2 ) )

その式は

=(SQRT(1-(V/C)^2))/(SQRT(1-(V1/C)^2))

となります。

Q.E.D.


追記
相対論がいう加算式

V2=(V-V1)/ (1-V*V1/C^2)

についてはレーダーを使ったアリスによるボブ号の速度測定値がV2になる、という事は確認済でした。

http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?topic_id=3815#post_id26950

つまり「現実の宇宙の中でリアルに測定可能な速度である」という事になります。

他方で今回出てきた

V2=±sqrt((V^2-V1^2)/ (1-V1^2/C^2 ) ) ・・・①式

という式が与えるV2の値が現実の宇宙の中で何に対応するのか、それはこれからの検討課題であるように見えます。


追記の2
①式はO君がボブとアリスを観察して得たそれぞれに対する相対速度VとV1の値から、時間の遅れに対する不整合が起きないようにした場合の速度V2を算出するものであれば、「時間の遅れ」という観点に立った場合に「O君にはアリス号とボブ号がどう見えるのかを与えている」と言えそうです。

追記の3
時間の遅れの式も相対論的な加算式も両方ともにローレンツ変換式から出てくる様です。

であればなぜその両者間で整合性が取れなくなるのか、解かれなくてはならない謎がそこにはあります。

ちなみに相対論と言うのはそのコトバ通りに「私とあなたの関係を問うもの」ですが、速度の加算式はそこに第三者が登場するのです。

そうして速度についての加算式に登場するK0慣性系は加算式の中では自分自身の慣性系については特別な優先度を主張してはいない様に見えます。

しかしながら同じK0慣性系が時間の遅れを考慮する場合は、自分自身の優先度を主張する様に見えます。

この状況はコトバを変えますと「速度と言うものは本質的に相対的であるが、時間はそれほど相対的ではない」と言えます。

そうしてこの事の認識は相対論においては結構大事であると思われます。

PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.fo/HonZz
https://archive.fo/rNFzt
https://archive.fo/u31rT