さて静止系に対して0.6Cで右に動く長さが1Cの棒の話に戻ります。
この時にX軸方向に伸びた腕の長さはローレンツ短縮で本来の長さの80%に短くなるのでした。
それでこの時の状況をX軸を「ローレンツ短縮で短くなった腕の長さ」とし、Y軸を「ずれ時間差ΔT」としてプロットしますとその座標点は(0.8,0.6)となります。
但し腕の長さはC=1の単位系でY軸単位は秒です。
そうしますと
0.8^2+0.6^2=1
何のことはない、半径1の円周上にこの点はある事が分かります。(注1)
つまり長さ1の棒が速度0.6Cで移動するとその長さは80%に短縮したように見えますが、実は時間軸方向に棒の先端が36.87度 後端を中心として回転しているのであって、腕の長さは本来の1のままなのです。(注2)
この回転した棒のX軸への射影が0.8であり、現在時刻でしか棒を観察できない我々の目には「棒の長さが80%に短縮したように見える」という次第であります。
こうして実はローレンツ短縮した棒の長さΔLと棒の先端の時刻のずれ分ΔTが結びついている事が分かるのでありました。(注3)
つまりは「静止系に対して運動している棒の状況」という「一つの出来事」を別々の2つの視点で表したものが「ローレンツ短縮」と「同時性の相対性」という事になっているのです。
注1:長さがLの棒が速度Vで動いている場合は
X軸の値はL*sqrt(1-V^2)・・・短縮した棒の長さ分
Y軸の値はL*V ・・・棒の先端と後端の時間のずれ分
それぞれを2乗して足すと
(L*sqrt(1-V^2))^2+(L*v)^2
=L^2*(1-V^2)+L^2*V^2
=L^2ーL^2*V^2+L^2*V^2
=L^2
その座標は常に半径がLの円の円周上にある事がわかります。
注2:X=0.8、Y=0.6 従ってATN(0.6/0.8)を求めればよく、ウルフラムによれば答えは36.87度となります。
実行アドレス : https://ja.wolframalpha.com/input?i=atn%280.6%2F0.8%29 :
注3:腕の長さをLとしてC=1の単位系を使えばローレンツ短縮した腕の長さΔLと棒の先端の時刻のずれ分ΔT(秒)については
ΔL^2+ΔT^2=L^2 が常に成立している事になります。
それはつまり「棒の長さLは不変なのだが、棒が静止系に対して速度Vで運動する事により棒は時間軸方向に回転している」と見る事ができます。
この時に「棒の長さを静止系基準で計る」ならば棒の長さはL*sqrt(1-V^2)と観測されます。
と同時に棒の先端と後端では棒の時間で計ってL*Vという時間のずれが発生しているのです。
しかしながらこの時間のずれは棒の上に立つ観測者には見えない為に、棒の真ん中から両端に向けて発射された光は棒の両端に同時に到着する事を棒の上の観測者は報告します。
一方で静止系に立つ観測者には「光は棒の後端に最初に届いて、次に棒の先端に届いた」と報告します。
これが「同時性の相対性」と言われている内容になります。
そうであれば「ローレンツ短縮」と「同時性の相対性」という現象はいつも同時に発生している、という事が分かります。
そうしてこの二つの出来事を結び付けているのが「棒の時間」なのであります。
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