薫るクロニクル。

日常生活で思ったことや、趣味の山歩きの話しなど、思いついたことを綴る記録です。

死神の精度 <伊坂幸太郎・著>

2008年07月02日 13時23分49秒 | 本。
 08年の本屋大賞のゴールデンスランバーが面白かったので、他の作品も読みたくなって買ってしまった本。でもその他にも「陽気なギャングが地球を回す」なども読んでいたことを思い出す。
 
 この本の主人公は死神だ。死神の仕事は、上のほうから言い渡された対象となる人間を1週間調査し、その対象の人間が死ぬ事に対して「可」の判断を下すか、それとも「見送り」の判断をくだすのか?それが、死神の仕事とされている。そして、「可」を下した場合は8日目に死が訪れ、それを確認して仕事は終わる。
 死神が登場する場合の死には、自殺や病気は含まれないらしく、事故や他殺が死神の登場した場合の死の原因となるらしい。死神は人間のもつ感情などは持ち合わせていないので、よっぽどのこと?でも無い限り「可」の判断がくだされる。6つのストーリーのうち最初のひとつだけが唯一「見送り」としたくらいだ。それも単にその「千葉」と名乗る死神の大好きな「ミュージック」が絡んでいたことがきっかけに過ぎない。
 そのミュージックは音楽全般を指し、死神は基本的にミュージックが好きという設定だ。どうやら上の世界にはミュージックがないということなのらしい。

 そして、伊坂幸太郎さんの表現力に唸らされる。こういう表現の仕方もあるんだぁ、と言う事を感心しながら読んだ。もちろん、登場人物に感情移入してしまい、「見送り」するんだろう?はやく「見送り』の連絡を入れろよ!と思いながら読みすすむのだが、死神は人間の悲しみとか、嬉しいとかいう感情を持ち合わせていないので、対象の人間が死んでしまうことには興味がない。そう、死神の目線で客観的に判断をくだしているのだ。いや違う、「千葉」という個人的な死神の判断で死を選択している設定がまた世界観を作り出している。
 
 そして、人間の本質を死神が客観的な視点でグサッと投げつける。読み終えた後で、もう一度読み直したくなる本だと思った。

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