先日、あるできごとがあり、小説にしてみました。多少、脚色してありますが、内容はこんな感じでした。
~春の微笑み。~
「いらっしゃいませ~」
ひとりの男性のお客さんが来店された。車は店の前に止めているが、見た事のない車だったので、始めてのお客さんだと思った。
そのお客さんは、何かを探すように店内を見渡していた。
「コーヒーでしたら、冷蔵庫で保管しているので、こちらからお選びください。」
レジ横にあるコーヒー豆の品名や味の特徴などをグラフとして見易くしてある一覧表を指差して声をかけた。するとそのお客さんはすこし困った顔で、ケーキとかはありませんか?と話しかけてきた。
「たくさん欲しい場合は、予約でないと作ってないですが、2~3個だったらお分けしますが。」
と説明すると、困った顔が急に明るくなった。
「実は、よくウチの嫁さんがこのお店の豆を買いに来るんですが、前に買ってきてくれたショートケーキが美味しくて、それを買っていってあげたくて。」
「幾つ欲しいのですか?」
「2つお願いします。実は、嫁とケンカしてしまって仲直りしたいので、美味しそうに食べてたあのケーキでなんとかならないかな?と思いまして。」
また困った顔をさせたお客さんが、困った顔のまま笑顔をつくっていた。わたしは結婚はしてないが、なんとなくこの男性の気持ちは判る。日本の男性は素直に言葉で表現できないのだ。なにかのきっかけが必要で、それに乗っかって謝る機会を得たいのだ。なんか微笑ましく思い、応援したくなっていた。
「奥さんはまだ若い方ですよね。今はどのお客さんが奥さんだったのかちょっと判らないので、もしよろしかったら、今度奥さんが来店されるとき一声かけてくれると嬉しいです。そうお伝えください。」
そして、一緒にコーヒー豆も買っていってくれた。きっかけと言う名のケーキを片手に。
数日後、黄色い軽自動車に乗る小柄の女性が店の前に車を止めた。何回か来店されているお客様で、黄色の軽自動車でメガネをかけている可愛らしい女性のお客さんだと認識していた。じつはわたしは車でお客さんを認識していることが多く、たまに違う車で来店されると判らなかったりすることもあるのだ。
「いらっしゃいませ~」
女性のお客さんは、頬をすこし赤らめながら照れくさそうに、先日だんながケーキを買ってきてくれたのですが、ありがとうございました。と、注文より先に口を開いてくれた。そうだ、あの男性のお客さんの奥さんだったのだ。
コーヒー豆を注文され、あのだんなさんの奥さんだったんですね。などという会話が弾んでいった。ボクの頭のなかでは、どうしてもその後仲直りできたのか気になってしまっていたので、失礼だとは思ったのですが聞いてみた。
「気分を悪くさせてしまったら申し訳ありませんが、ショートケーキを買ってくれたとき旦那さんが、なんか奥さんとケンカしてしまったらしく、仲直りしたくてあのショートケーキを買ってくれたと話してくれたのですが、今の様子を拝見すると無事仲直りできたみたいですね。」
と、言ってみた。すると、もう一段頬を赤らめて返事がきた。
「はい。あのケーキのお陰です。(笑)」
ボクも、つられて笑ってしまっていた。
春の季節に、気持ちもほがらかになるような出来事が、日常にあふれている。そんな普通にある些細なできごとでも、人の心を温かくしてくれる。そんな手助けをできたことに、嬉しく思う。仕事はお金を得るだけのことじゃないんだよな。
明日も、小さな田舎のコーヒー屋は働いている。
~春の微笑み。~
「いらっしゃいませ~」
ひとりの男性のお客さんが来店された。車は店の前に止めているが、見た事のない車だったので、始めてのお客さんだと思った。
そのお客さんは、何かを探すように店内を見渡していた。
「コーヒーでしたら、冷蔵庫で保管しているので、こちらからお選びください。」
レジ横にあるコーヒー豆の品名や味の特徴などをグラフとして見易くしてある一覧表を指差して声をかけた。するとそのお客さんはすこし困った顔で、ケーキとかはありませんか?と話しかけてきた。
「たくさん欲しい場合は、予約でないと作ってないですが、2~3個だったらお分けしますが。」
と説明すると、困った顔が急に明るくなった。
「実は、よくウチの嫁さんがこのお店の豆を買いに来るんですが、前に買ってきてくれたショートケーキが美味しくて、それを買っていってあげたくて。」
「幾つ欲しいのですか?」
「2つお願いします。実は、嫁とケンカしてしまって仲直りしたいので、美味しそうに食べてたあのケーキでなんとかならないかな?と思いまして。」
また困った顔をさせたお客さんが、困った顔のまま笑顔をつくっていた。わたしは結婚はしてないが、なんとなくこの男性の気持ちは判る。日本の男性は素直に言葉で表現できないのだ。なにかのきっかけが必要で、それに乗っかって謝る機会を得たいのだ。なんか微笑ましく思い、応援したくなっていた。
「奥さんはまだ若い方ですよね。今はどのお客さんが奥さんだったのかちょっと判らないので、もしよろしかったら、今度奥さんが来店されるとき一声かけてくれると嬉しいです。そうお伝えください。」
そして、一緒にコーヒー豆も買っていってくれた。きっかけと言う名のケーキを片手に。
数日後、黄色い軽自動車に乗る小柄の女性が店の前に車を止めた。何回か来店されているお客様で、黄色の軽自動車でメガネをかけている可愛らしい女性のお客さんだと認識していた。じつはわたしは車でお客さんを認識していることが多く、たまに違う車で来店されると判らなかったりすることもあるのだ。
「いらっしゃいませ~」
女性のお客さんは、頬をすこし赤らめながら照れくさそうに、先日だんながケーキを買ってきてくれたのですが、ありがとうございました。と、注文より先に口を開いてくれた。そうだ、あの男性のお客さんの奥さんだったのだ。
コーヒー豆を注文され、あのだんなさんの奥さんだったんですね。などという会話が弾んでいった。ボクの頭のなかでは、どうしてもその後仲直りできたのか気になってしまっていたので、失礼だとは思ったのですが聞いてみた。
「気分を悪くさせてしまったら申し訳ありませんが、ショートケーキを買ってくれたとき旦那さんが、なんか奥さんとケンカしてしまったらしく、仲直りしたくてあのショートケーキを買ってくれたと話してくれたのですが、今の様子を拝見すると無事仲直りできたみたいですね。」
と、言ってみた。すると、もう一段頬を赤らめて返事がきた。
「はい。あのケーキのお陰です。(笑)」
ボクも、つられて笑ってしまっていた。
春の季節に、気持ちもほがらかになるような出来事が、日常にあふれている。そんな普通にある些細なできごとでも、人の心を温かくしてくれる。そんな手助けをできたことに、嬉しく思う。仕事はお金を得るだけのことじゃないんだよな。
明日も、小さな田舎のコーヒー屋は働いている。