漢字家族BLOG版(漢字の語源)

漢字に関する話題など。漢字の語源・ワードファミリー。 現在、荘子「内篇」を素読しています。

re:偽

2004年08月11日 00時29分24秒 | 漢字質問箱ログ

re:偽 投稿者:nothing 投稿日:2004年 8月10日(火)23時59分5秒
 [ブログ内検索] [漢字に関する書籍] [漢字源] [中国古典選]
偽について 投稿者:ちえ  投稿日:2004年 8月10日(火)21時02分30秒

先日、通りすがりのお寺の掲示板?に「偽」の字の意味が書いてあったのですが信号待ちの少しの時間で最後まで読めずどうしても気になっています。どうか教えて下さい。

お寺の掲示板に「偽」ですか???
この場合の掲示板とは、電子掲示板ではなく、本物の掲示板ということですね。

>「偽」の字の意味が書いてあった

ということですが、そこに書かれていたことを再現することはできません。
ただ、まず、一般的によく言われるところを書くと・・・

■一般的な説明
「偽」(にせ)という字を見てください。これを分解すると「人」+「為」です。つまり「人が為す(ひとがなす)」となります。つまり、人為的なものはすべてニセモノだということです。

まあ、こんなところでしょうか。全くハズれているということもありません。
荀子は「人為(後天的な作為)」をといいましたが、後には「悪意の作為」だけを意味するようになります。

「為」・・・ 野生の象に手を加えてしつけること。作為を加えて、本然の姿を変えること。
「化」・・・ 姿を変える
「偽」・・・ 姿を変えるには、学んで作為を加える
「訛」・・・ なまり。常態とは変わったもののいい方。またと通じて「なまり」の意となる。
「貨」・・・ 色々な品物に変わる貨幣。



【偽】 人部 9画 総画数 11画

■解字
会意兼形声。
爲(=為)の原字は「手+象の形」の会意文字で、人間が野生の象に手を加えてしつけることを表わす。作為を加えて本来の性質や姿をためなおすの意を含む。
僞は「人+音符爲(イ)」で、人間の作為により姿をかえる、正体を隠してうわべをつくろうなどの意。爲(=為)が、広く、作為する→するの意となったため、むしろ偽にその原義が保存され、特に、(3)の用法が為のもとの意味に近い。
■音
【呉音・漢音】ギ(グヰ)
■訓
いつわる, にせ, いつわり
■意味
(1)いつわる(いつはる)。うわべを繕う。「偽作」
  「偽遊雲夢=偽りて雲夢に遊ぶ」〔史記・高祖〕
(2)いつわり(いつはり)。うわべだけのみせかけ。うそ。「詐偽(サギ)・(サクギ)」
  「国中無偽=国中に偽り無し」〔孟子・滕上〕
(3)人間の作為。うわべのつくろい。
  「人之性悪、其善者偽也=人之性は悪なり、其の善なる者は偽也」〔荀子・性惡〕
(4)なまったことば。また、ことばのなまり。▽譌(カ)(=訛)に当てた用法。「偽言(カゲン)(=譌言。なまり)」
■単語家族
化・為・県・玄・幻・換 ・・・・ 姿をかえる

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日本史・文学史辞書とIME

2004年08月08日 17時41分06秒 | Weblog

「日本史・文学史辞書」ダウンロード

「日本史・文学史辞書」をMS-I ME へ導入できませんでした???

※「日本史・文学史辞書」のダウンロード

読者の方からのメールによると、

<引用はじめ>
・・・というご指示の如くやってみたらひとつも登録できませんでした。これは
 なぜでしょうか。 登録0 失敗・・・ という画面で終了してしまいま
す。
<引用おわり>

ということでした。

以前、アクセスログをとっていて見つけたページ「半角カタカナ→ひらがな変換マクロ」

を読み直してみると・・・

<引用はじめ>
実はこれは「日本史・文学史辞書」をIME用に変換して
使わせていただくために作りました。

□「日本史・文学史辞書」は「渾沌」さんのATOK・IME用辞書です。
国文学の用語などが入力されていて非常に便利です。
が、なぜか私がIMEに導入しようとしてみたらできず、
半角カタカナをひらがなに直し、「,」をタブ記号(t)に直し、最後の品詞名を「名詞」に直すと言う作業が必要でした。
後ろ2つの変換はEmEditorで一括検索置換でできます。

<引用おわり>

だそうだ。(嘆息)
この作業を作者自身がおこない、IME用の辞書をアップする必要がありますねえ。
すぐにはできないかもしれないけど・・・

re:奏

2004年08月08日 16時59分14秒 | 漢字質問箱ログ

re:奏 投稿者:nothing 投稿日: 8月 8日(日)12時02分43秒
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演奏の「奏」 投稿者:アマチュア  投稿日: 8月 6日(金)11時49分42秒

教えてください。演奏の「奏」という字は、下の部分が「天」?「夭」?
いろいろ調べて見みたら、どちらの表記もあるようなのですが・・・。

どちらが正しいのですか?

アマチュアさん。この問題については「ばかげた筆順の強制について--漢字家族」をご覧ください。
それでも気になるようでしたら、図解をご覧下さいね。

【奏】 大部 6画 総画数 9画

図解:奏

■解字
会意。
奏の字の中央は枝葉のついた玉串(タマグシ)か、あるいは四肢(シシ)のそろった動物のからだで、それに両手をそえて、物の形をそろえて両手で神前に差し出すさまを示す。
犠牲とした動物の肢体を両手でそろえている姿。ひと所にそろえ縮めるのが原義で、首尾よくそろえるところから、奏進・上奏などの意を派生した。
■音
【漢音】ソウ 【呉音】ス
■訓
かなでる, すすめる, もうす

■意味
(1)すすめる(すすむ)。品物の種類や形をそろえて、神や君主の前に差し出す。「奏進」
(2)すすめる(すすむ)。方向を定めて前進させる。「奏刀蘓然=刀を奏むること蘓然たり」〔荘子・養生主〕
(3)もうす(まうす)。事がらの首尾をまとめて、君主にもうしあげる。「奏議」「還奏太上皇=還りて太上皇に奏す」〔陳鴻・長恨歌伝〕
(4)かなでる(かなづ)。音や声をそろえてかなでる。「合奏」「凝碧池頭奏管絃=碧を凝らす池頭管絃を奏す」〔王維・誦示裴迪〕
(5)そろってまとまる。事がらが進行して結果がまとまる。「奏功=功を奏す」「奏効=効を奏す」
■単語家族
足・束・取・芻・奏・送・従・叢 ・・・・ グッとちぢめる、ひと所に集めそろえる
湊(ソウ)(水が集まる。港)・輳(ソウ)(車が集まる)・束(たばねてまとめる)と同系。

re:鴨

2004年08月08日 16時56分32秒 | 漢字質問箱ログ

re:鴨 投稿者:nothing
 投稿日: 8月 8日(日)11時51分45秒
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教えて下しさい!! 投稿者:yumi  投稿日: 8月 4日(水)21時26分54秒

「鴨」という漢字の由来を調べています。
なかなか見つからずに困っています。。

なぜ、鴨という漢字が出来たのでしょうか??

教えて下さい!!よろしくお願いします。

yumiさん、アマチュアさん、こん○○は。

しばらくネット接続できない環境にありましたので、お返事がおそくなりました。
さて、まずは「鴨」から。

これは、【漢字の話Ⅰ(動物編)・藤堂明保・朝日新聞社】によりますと。
 古代中国語で鴨のことを「ap(アップ)」と呼んだことからこの字ができたのだそうです。

 「古代の中国語ではapといった。のちそのpが消えて、ap→a→iaと変化し、今の北京語ではyaと発音する。」(漢字の話)

 「甲はkap(カプ)と読むのが原型だが、押という字では、すこし発音がずれてap(アプ)と発音する。という字においても、またapという発音を表したのである。カモをapと呼ぶのは、それがアップ、アップと泣くからで、カモの声をまねた擬声語に過ぎない。」(漢字の話)
 「ところで、いわゆるカモのことを中国では「野鴨」といい、それに対してアヒルのことを「鴨子」または「家鴨」と呼んで区別する。有名な北京料理である拷鴨子(カオヤアツ)(ペキンダッグズ)は、あひるを栗の木のとろ火で、数時間かけてあぶりあげたものである。だから正確にいうと、は今日ではアヒルと訳さなければならない。(漢字の話)

 「ちなみにイチョウ(銀杏)の葉は、アヒルの足(水かき)の形をしている。そこで鴨脚・イャチャオと呼び、それがなまって、日本ではイチョウという木の名となった。(漢字の話)」


【鴨】 鳥部 5画 総画数 16画

■解字
形声。
「鳥+音符甲」。
アップアップという鳴き声をまねた擬声語。
■音
【漢音】オウ(アフ) 【呉音】ヨウ(エフ)
■訓
かも, あひる
■意味
(1)かも。水鳥の名。野生のあひる。
(2)あひる。かもを飼いならしたもの。「家鴨(カオウ)」とも。

re:苦

2004年08月01日 02時06分13秒 | 漢字質問箱ログ

re:苦 投稿者:nothing
 投稿日: 8月 1日(日)00時12分25秒


【苦】 艸部 5画 総画数 8画

■解字
会意兼形声。
古は、かたい頭骨を描いた象形文字で、かたくかわいた、の意を含む。苦は「艸+音符古」で、口がこわばってつばが出ない感じがする、つまり、にがい味のする植物のこと。
■音
【呉音】ク 【漢音】コ
■訓

くるしい, くるしむ, くるしめる, にがい, にがる, くるしみ, はなはだ
■意味
(1)にがい(にがし)。不快な味がして口がこわばる感じである。
  ▽甘・苦・辛・酸・鹹(カン)の五味の一つ。漢方薬の黄蓮(オウレン)や、野草の荼(ト)(のげし)の味はその代表。甘(あまい)に対する。「苦味」

  「良薬苦於口=良薬は口に苦し」〔孔子家語・六本〕
  「忠言逆耳利於行,毒藥苦口利於病」〔史記・留侯世家
(2)くるしみ。くるしい(くるし)。不快だったり痛かったりして、つらい。また、そのつらさ。「辛苦」「同甘共苦(ドウカンキョウク)(甘苦をともにする)」
(3)はなはだ。程度が激しくてひどい。しつこく。しきりに。「苦寒(ひどくさむい)」「苦求(しつこく求める)」「苦留(むりにひきとめる)」
(4)くるしむ。くるしめる(くるしむ)。痛みを感じたり困ったりして、つらいと思う。また、ひどいめにあわせる。「刻苦」
  「必先苦其心志=必ず先づ其の心志を苦しむ」〔孟子・告下〕
(5)形がいびつであるさま。ごつごつしているさま。《類義語》⇒固。「苦悪」

■単語家族
枯(かわいたさま)・涸(コ)(かわいたさま)・固(こわばったさま)などと同系。

史記--留侯世家第二十五





re:南

2004年08月01日 02時01分42秒 | 漢字質問箱ログ

re:南 投稿者:nothing
 投稿日: 7月31日(土)23時43分51秒


【南】 総画数 9画

図解:南
「南」は入・内・妊・男・南 ・・・・「中に入れ込む」の家族です。
「南」の字には、植物の芽生えを示す「屮」印と、それを両側からおおう囲いの姿とを含んでいます。
今日でいう「霜よけ」保温のさま。霜よけするには、たいせつな植物を囲いの中に「入れ込んで」保温につとめなりませんし、またミナミの暖かい陽光を存分に取り入れることが必要。「霜よけ」はミナミにつくるので、のち「南」は方角の名となりました。


「東」は、「通」と同系で、太陽が地平を貫通して出る方向。
「西」は、「遷」(形を残して中身がうつり去る)と同系で、太陽がうつり行く方向。
 ※水がざるの目から分散して流れ出るように、昼間の陽光と暖気とが分散して消え去る方角。
 ※サラサラと細分された水の流れ方を(セイ)といい、またともいう。
「北」は、「背」と同系で、寒さを避けて背を向ける方向。

※「南」の字全体を納屋の象形とみてもよい。


「男」とは? 田で力仕事?

 「男」[nəm]は、[nəb]や[niəp]の対転に当たる。してみるとオトコとは「入り込む者」、すなわち入り婿の意であると考えねばなるまい。この語の生じた当時、中国の社会はなお母系制度を保っており、住居・財産と子どもとは、母親がこれを管理する、そして男は外から家庭に入り込んで来て、労働力を提供する者であったわけである。男=任を同系とみて、「男とは力仕事に任ずる者」だという解説は、後世の常識に基づいた誤解である。
  以上『漢字語源辞典』(藤堂明保・学燈社)より引用しました。



■解字
会意兼形声。
「南方とは、任養の方、万物懐任(みごもる)なり」〔白虎通〕
「南呂とは、任包して大なること」〔淮南子・天文訓〕
原字は、納屋ふうの小屋を描いた象形文字。南の中の形は、入の逆形が二線にさしこんださまで、入れこむ意を含む。それが音符となり、屮(くさのめ)とかこいのしるしを加えたのが南の字。草木を囲いで囲って、暖かい小屋の中に入れこみ、促成栽培をするさまを示し、囲まれて暖かい意。転じて、暖気を取りこむ南がわを意味する。
▽北中国の家は北に背を向け、南に面するのが原則。

■音
【呉音】ナン(ナム) 【慣用音】ナ 【漢音】ダン(ダム)
■訓
みなみ, みなみする, みなみのかた
■意味
(1)みなみ。暖気をとりこむ南がわ。
  《対語》⇒北。「南国」「凱風自南=凱風南よりす」〔詩経・癩風・凱風〕
(2)みなみする(みなみす)。南方へ行く。「図南=南せんと図る」

  「南、言化自北而南也=南とは、化の北よりして南するを言ふ」〔詩経・大序〕
(3)みなみのかた。南の方角では。南に進んで。
  「南連斉楚=南のかた斉楚に連なる」〔史記・荊軻〕
(4)「詩経」の周南と召南のこと。周の都からみて南方の国の民謡を集めたもの。「二南(周南と召南)」
■単語家族
入・内・妊・男・南 ・・・・「中に入れ込む」