漢字家族BLOG版(漢字の語源)

漢字に関する話題など。漢字の語源・ワードファミリー。 現在、荘子「内篇」を素読しています。

re:苦

2004年08月01日 02時06分13秒 | 漢字質問箱ログ

re:苦 投稿者:nothing
 投稿日: 8月 1日(日)00時12分25秒


【苦】 艸部 5画 総画数 8画

■解字
会意兼形声。
古は、かたい頭骨を描いた象形文字で、かたくかわいた、の意を含む。苦は「艸+音符古」で、口がこわばってつばが出ない感じがする、つまり、にがい味のする植物のこと。
■音
【呉音】ク 【漢音】コ
■訓

くるしい, くるしむ, くるしめる, にがい, にがる, くるしみ, はなはだ
■意味
(1)にがい(にがし)。不快な味がして口がこわばる感じである。
  ▽甘・苦・辛・酸・鹹(カン)の五味の一つ。漢方薬の黄蓮(オウレン)や、野草の荼(ト)(のげし)の味はその代表。甘(あまい)に対する。「苦味」

  「良薬苦於口=良薬は口に苦し」〔孔子家語・六本〕
  「忠言逆耳利於行,毒藥苦口利於病」〔史記・留侯世家
(2)くるしみ。くるしい(くるし)。不快だったり痛かったりして、つらい。また、そのつらさ。「辛苦」「同甘共苦(ドウカンキョウク)(甘苦をともにする)」
(3)はなはだ。程度が激しくてひどい。しつこく。しきりに。「苦寒(ひどくさむい)」「苦求(しつこく求める)」「苦留(むりにひきとめる)」
(4)くるしむ。くるしめる(くるしむ)。痛みを感じたり困ったりして、つらいと思う。また、ひどいめにあわせる。「刻苦」
  「必先苦其心志=必ず先づ其の心志を苦しむ」〔孟子・告下〕
(5)形がいびつであるさま。ごつごつしているさま。《類義語》⇒固。「苦悪」

■単語家族
枯(かわいたさま)・涸(コ)(かわいたさま)・固(こわばったさま)などと同系。

史記--留侯世家第二十五





re:南

2004年08月01日 02時01分42秒 | 漢字質問箱ログ

re:南 投稿者:nothing
 投稿日: 7月31日(土)23時43分51秒


【南】 総画数 9画

図解:南
「南」は入・内・妊・男・南 ・・・・「中に入れ込む」の家族です。
「南」の字には、植物の芽生えを示す「屮」印と、それを両側からおおう囲いの姿とを含んでいます。
今日でいう「霜よけ」保温のさま。霜よけするには、たいせつな植物を囲いの中に「入れ込んで」保温につとめなりませんし、またミナミの暖かい陽光を存分に取り入れることが必要。「霜よけ」はミナミにつくるので、のち「南」は方角の名となりました。


「東」は、「通」と同系で、太陽が地平を貫通して出る方向。
「西」は、「遷」(形を残して中身がうつり去る)と同系で、太陽がうつり行く方向。
 ※水がざるの目から分散して流れ出るように、昼間の陽光と暖気とが分散して消え去る方角。
 ※サラサラと細分された水の流れ方を(セイ)といい、またともいう。
「北」は、「背」と同系で、寒さを避けて背を向ける方向。

※「南」の字全体を納屋の象形とみてもよい。


「男」とは? 田で力仕事?

 「男」[nəm]は、[nəb]や[niəp]の対転に当たる。してみるとオトコとは「入り込む者」、すなわち入り婿の意であると考えねばなるまい。この語の生じた当時、中国の社会はなお母系制度を保っており、住居・財産と子どもとは、母親がこれを管理する、そして男は外から家庭に入り込んで来て、労働力を提供する者であったわけである。男=任を同系とみて、「男とは力仕事に任ずる者」だという解説は、後世の常識に基づいた誤解である。
  以上『漢字語源辞典』(藤堂明保・学燈社)より引用しました。



■解字
会意兼形声。
「南方とは、任養の方、万物懐任(みごもる)なり」〔白虎通〕
「南呂とは、任包して大なること」〔淮南子・天文訓〕
原字は、納屋ふうの小屋を描いた象形文字。南の中の形は、入の逆形が二線にさしこんださまで、入れこむ意を含む。それが音符となり、屮(くさのめ)とかこいのしるしを加えたのが南の字。草木を囲いで囲って、暖かい小屋の中に入れこみ、促成栽培をするさまを示し、囲まれて暖かい意。転じて、暖気を取りこむ南がわを意味する。
▽北中国の家は北に背を向け、南に面するのが原則。

■音
【呉音】ナン(ナム) 【慣用音】ナ 【漢音】ダン(ダム)
■訓
みなみ, みなみする, みなみのかた
■意味
(1)みなみ。暖気をとりこむ南がわ。
  《対語》⇒北。「南国」「凱風自南=凱風南よりす」〔詩経・癩風・凱風〕
(2)みなみする(みなみす)。南方へ行く。「図南=南せんと図る」

  「南、言化自北而南也=南とは、化の北よりして南するを言ふ」〔詩経・大序〕
(3)みなみのかた。南の方角では。南に進んで。
  「南連斉楚=南のかた斉楚に連なる」〔史記・荊軻〕
(4)「詩経」の周南と召南のこと。周の都からみて南方の国の民謡を集めたもの。「二南(周南と召南)」
■単語家族
入・内・妊・男・南 ・・・・「中に入れ込む」