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逍遥遊第一(2) 《 齊 諧 》 者 , 志 怪 者 也 。 《 諧 》 之 言 曰 : 「 鵬 之 徙 於 南 冥 也 , 水 擊 三 千 里 , 摶 扶 搖 而 上 者 九 萬 里 , 去 以 六 月 息 者 也 。 」 野 馬 也 , 塵 埃 也 , 生 物 之 以 息 相 吹 也 。 天 之 蒼 蒼 , 其 正 色 邪 ? 其 遠 而 無 所 至 極 邪 ? 其 視 下 也 , 亦 若 是 則 已 矣 。 |
齊諧(セイカイ)とは怪(カイ)を志(し)れる者なり。諧の言に曰(い)わく、「鵬の南冥に徙(うつ)るや、水に擊(う)つこと三千里、扶搖(フヨウ・つむじかぜ)に摶(はう)ちて上(のぼ)ること九万里、去るに六月の息(かぜ)を以てする者なり」と。
野馬(ヤバ・かげろう)や塵埃(ジンアイ)や、生物の息を以て相(あ)い吹くなり。天の蒼蒼(ソウソウ)たるは其れ正色(セイショク・まことのいろ)なるか、其れ遠くして至極(シキョク)する所なければか。
其の下を視(み)るや、亦(ま)た是(か)くの若(ごと)くならんのみ。
齊諧(セイカイ)という人は世の中の不思議な話をしっている物識りだが、彼の話によると、「鵬が南の果ての海に移る時には、水に撃(う)つこと三千里、つむじかぜに羽ばたいて上ること九万里、六月の風に乗って天がけり去る(飛び去る)のだ」という。
かげろうか、塵埃(ジンアイ)か、生きとし生けるもののひしめきあって呼吸するこの地上の世界。
その遙か上に広がる大空の深く青々とした色は、いったい大空そのものの色であろうか。それとも遠くへだたって限りがないから、そう見えるのであろうか。
鵬が九万里の高みから逆に地上の世界を見下ろすとき、やはりこのように青々と見えているに違いない。
※齊諧(セイカイ)
人の名(荘子が勝手に考えて作ったもの)
学者先生の考証癖・典拠主義に対する揶揄(やゆ)と皮肉。
「世界が一つに調和する」という意味。
※齊(斉)
■音
【漢音】セイ 【呉音】ザイ 【慣用音】サイ
■意味
ひとしくする。ととのえる。きちんとそろう。
■解字
象形。◇印が三つそろったさまを描いたもの。のち下に板または布のかたちをそえた。
■単語家族
儕(セイ)(そろった仲間)・臍(セイ)(上下左右そろったまん中にあるへそ)・劑(セイ)(=剤。そろえて切る)・濟(サイ)(=済。水量をそろえる)などと同系。
※諧
■音
【漢音】カイ 【呉音】ゲ
■意味
ととのえる。でこぼこをなくする。調和させる。
※扶搖(フヨウ)
つむじ風。
「扶搖謂之?(ヒョウ)」『爾雅』
「暴風從下上」(郭注)
※六月
・六月 ・・・ 大塊(タイカイ)の噫気(アイキ)を風となす。(斉物論篇)
・六か月飛びつづけて休息する。(郭注) ─ 郭象の注。
⇒ [逍遥遊第一(3)]