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「漢」「字」の成り立ちと変化について(2)

2008年08月31日 03時52分40秒 | 漢字質問箱ログ

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「漢」「字」の成立ちと変化について 投稿者:くりまま  投稿日:2008年 8月29日(金)16時23分18秒

 こどもが夏休みの宿題で「漢字新聞」を作っています。漢字の「漢」「字」の成立ちと変化を調べているのですが、持っている本にはのっていなくて困っております。
 ご存知の方教えていただけましたら助かります。よろしくお願いいたします。


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 ご質問には、「成立ちと、変化について」とありますが、「変化」とは、意味の転化、あるいは派生義のことでしょうか。これについての説明はできておりませんが、ただ、「字」について、少しだけ補足します。

 本名のほかにつける名を(もうひとつ名前を増やすので)、(あざな)といいます。

 中国を中心として、東アジアの漢字文化圏では、本名(諱・いみな)を呼ぶことはきわめて無礼なこととされています。したがって、通常は「字(あざな)」で呼びかけます。

 本名をさけるということは、とくに身分の高い人に対しては徹底していて、たとえば、先日中国の「嫦娥1号」「今年2回目の月蝕試練を順調にパスした」ということがニュースになっていましたが、この「嫦娥」(不老不死の薬を盗み出し、月へ逃げ去った美女 ─『小説十八史略』を参照!)は、本来「姮娥」と表記されていました。
*注姮娥・嫦娥 

 ところが、の時代になって、文帝の諱(いみな)が「恒」であったため、おなじ「旁(つくり)」をもつ「姮」の字をさけ、同様の意味を表すために「嫦」と書くようになったのです。

 また、結婚の「婚」という字の旁(つくり)の部分は、「氏+民」で表記しましたが、唐の太宗(李世民)の諱(いみな)に含まれる「民」の字をさけ、「昏」という字を使うようになりました。

 こういう例は枚挙にいとまがありません。

 今の日本でも、「御名御璽」という表現をしますが、一般人を呼ぶ場合でも、上司に対しては「社長さん」「部長さん」と呼びかけ、決して「太郎さん」とは呼びませんし、「鈴木さん」と姓で呼ぶことすら遠慮しますよね。、西洋ではお兄さんやお姉さんを呼ぶときに名前を呼び捨てにしますが、日本では通常は「お兄さん」とか「兄ちゃん」「姉ちゃん」ですよね。

 このように口にするのをはばかる名前なので、本名のことを「(いみな)」といい、通常使用するのを「(あざな)」といいます。

 よく時代劇で家臣が「信長さま・・・」などと言ってますが、これはありえないことですよね。現代社会の上司にさえ「鈴木さん」などと言えないのに、どうして「信長さまはねえ・・・」だとか「家康さまに・・・」などと気軽に言えるでしょうか。

 まあ、余談がすぎましたが、本名のほかに、もうひとつ名前を増やしたので、「あざな」のことを「字」と書くのだと思います。

line

*姮娥・嫦娥 ・・・・ 月の中に住むという美人

 「娥」 「女+音符我(刃のきわだったほこ)」で、くっきりときわだつ意。きわだった(目鼻だちがくっきりした)顔の美人。
 「姮」 「女+(音符)亘(コウ)(=亙)」、亙(コウ)は「月」のこと。月の上下を二つの線ではさんで、月の両端を示した字。
 「嫦」 「女+音符常」で、不死長生の女性のこと。


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