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荘子:斉物論第二(35) 惡識所以然!惡識所以不然!

2009年01月05日 00時09分33秒 | 漢籍
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荘子:斉物論第二(35)

 罔兩問景曰:「曩子行,今子止;曩子坐,今子起。何其無特操與?」景曰:「吾有待而然者邪?吾所待,又有待而然者邪?吾待蛇?蜩翼邪?惡識所以然!惡識所以不然!」

 罔両(モウリョウ)、景に問いて曰わく、
 「曩(さき)には子(シ)行き、今は子(シ)止(とど)まれり。曩(さき)には子(シ)坐(ザ)し、今は子(シ)起(た)てり。何ぞ其れ特操(トクソウ・さだまれるみさお)無きや」と。
 景(かげ)の曰わく、「吾れは待(ま)つ有りて然(しか)る者か。吾が待つ所も、又(また)待(ま)つ有りて然(しか)る者か。吾れは蛇?(ダフ・へびのうろこ)・蜩翼(チョウヨク・ひぐらしのはね)を待(ま)つか。悪(いず)くんぞ然(しか)る所以(ゆえん)を識(し)らん。悪(いず)くんぞ然(しか)らざる所以(ゆえん)を識(し)らん」と。


 ある時、影をふちどる 罔両(モウリョウ・うすかげ)が影に質問した。

 「君は、さっきまで行(ある)いていたのに今は立ち止まり、さっきまで坐っていたのに今は起ち上がっている。どうしてそんなに主体性のない動き方をするのだ。あんまり節操がなさすぎるではないか(もっとしっかりしてくれないと、僕まで迷惑するじゃないか)」と。

 すると影が答えた。

 「なるほど、わしは頼るところ、つまり形(人間の肉体)につき従い、それが動くままに動いているのかもしれない。だが、わしがつき従っている形そのものも、また別に頼るところがあり、その何ものかに従って動いている動いているのではあるまいか。わしは、蛇(へび)の腹のうろこや蝉(せみ)の羽のようなはかないものを頼りにしていることになるのだろうか。
 自然の変化のままに従っているわしにとっては、なぜそうなるのかも分からないし、なぜそうならないのかも分からない」と。



 一切存在が自生自化する実在の世界では、形も影も罔両も、ただ自然として存在し、ただ自然として変化するのであって、そこには何らの因果関係もなく、互に他に依存することもないのである。荘子はこの万象の自生自化を、常識が最も密接な相対関係に在ると考える影と形と罔両との問答に借りて説明する。(福永光司)

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罔兩(モウリョウ)
 うすかげ。影のまわりに生ずる薄いかげ。影をふちどる淡いかげ。(それは影に従って動く)


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 ■音
  【ピンイン】[fu4]
  【漢音】フ 【呉音】ブ
  【訓読み】うろこ
 ■解字
  会意兼形声。「虫+(音符)付(ぴったりとくっつく)」。
 ■意味
  うろこ。へびの下腹部のうろこ。「蛇?(ダフ)」




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