タイ 海洋プラごみ、国境超え対策を 赤ちゃんジュゴンの死、きっかけ 2019/9/9

2019-09-10 | いのち 環境
【国際】
タイ 海洋プラごみ、国境超え対策を 赤ちゃんジュゴンの死、きっかけ
東京新聞夕刊 2019/9/9
  

 愛らしい赤ちゃんジュゴンの死をきっかけに、タイ国内で、プラスチックごみ対策を急ぐべきだとの声が高まっている。ジュゴンにとって良好な成育環境と考えられていた海域だったが、体内から多くのプラごみなどが見つかり、波紋が広がった。東南アジア各国も海に流れ出すプラごみを問題視し、一部規制に乗り出しているが、取り組みは始まったばかり。官民の連携や、各国の協働の実現などの課題が待ち受けている。 (タイ南部トラン県で、岩崎健太朗)
 「マリアムは人に助けられ、元気に育っていくはずだった。それなのに、人のせいで死んでしまった」
 タイ南部、アンダマン海に浮かぶトラン県のリボン島。海草が豊富な沖合がジュゴンの生息地として知られるこの島の保護ボランティア、サラシットさん(43)は寂しそうにつぶやいた。
 生後四カ月ほどの雌の赤ちゃんジュゴンは四月、親とはぐれて迷い込んだ沿岸部の浅瀬で保護され、波の穏やかな島の入り江に運ばれた。人の手でジュゴンが育てられるのはタイで初めて。「マリアム」と名付けられ、親代わりの飼育担当にミルクをもらい、顔をすり寄せる姿がネット配信されると、人気者となった。
 ところが、八月に入り、野生の雄に襲われて衰弱。飼育プールで手当てを受けたが、同十七日に死んだ。

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    ポリ袋使用の削減を呼び掛ける小売店=タイ・トラン県で、岩崎健太朗撮影

 悲しみに追い打ちをかけたのが、解剖で見つかったレジ袋のようなごみだった。死因は感染症とされたが、腸内には最長約二十センチのプラごみが八片も。海草と思って口にしたとみられ、獣医師は「直接の死因ではないかもしれないが、腸に詰まったプラスチック片が、弱った体調を悪化させた」と指摘。最期まで介抱したサラシットさんは「地元住民だけでなく、国として、さらには国を超えて考えなければならない問題だ」と語った。
 タイのメディアは、この話題で持ち切りとなった。政府はマリアムが死んだ日を「ジュゴンの日」とし、十二カ所の保護モデル区域を設けると決定。プラユット首相自ら「全力で海の生態系を守る」と宣言したが、プラごみ削減に向けた積極性がみられないとして、地元紙は「首相、すぐにはレジ袋を禁止せず」と批判的な見出しで伝えた。

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 東南アジアで投棄されるプラごみは世界の約三割を占めるとされるが、法規制や処分場整備の遅れ、観光地での過剰な使い捨てなどを背景に、あふれたごみが川や海に流出。海洋プラごみに関する調査では、排出量の多い上位六カ国のうち四カ国をインドネシア、フィリピン、ベトナム、タイが占めるとの報告もある。
 リサイクル名目で先進国から受け入れる、いわゆる「ごみ輸出」もプラごみ集積に拍車を掛ける。実態が相次いで発覚した昨年以降、マレーシアやベトナムなどが規制を強化。六月の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議では、各国が海洋ごみ対策で協力する「バンコク宣言」を採択したが、具体的削減策はこれからの課題だ。
 タイ公害管理局によると、タイでは毎年三百二十万トンのプラごみを排出。環境問題の深刻化に、政府はレジ袋などの使用を二〇二二年までに禁止し、二七年までにプラスチック製品の完全なリサイクルの仕組みを整える行程表を発表した。
 昨年から、死んだゴンドウクジラやウミガメの体内からプラごみが見つかる事例が相次いでおり、ショッピングセンターなどでは、自主的にレジ袋削減や使い捨てプラスチックストローやカップを使わない取り組みも出始めた。だが、リサイクルに向けた法的な規制は未整備で、削減の動きは一部企業にとどまっている。
 グリーンピース・タイの責任者タラ・ブアカムシーさん(52)は「政府は民間の取り組みに任せるだけでなく、ごみの分別やリサイクルの法律や規制づくりを急がねば、行程表も絵に描いた餅になる。ASEAN各国で、国境を超えた問題として協働できるかも課題だ」と警鐘を鳴らしている。    

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  ◎上記事は[東京新聞]からの転載・引用です
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