教諭2人を減給

2024-08-24 | 文化 思索 社会
教諭2人を減給
 2024.08.24 Sat. 中日新聞 社説
 三重県教委が7月、県内の公立小学校の教諭2人を、減給10分の1(1カ月)の懲戒処分にした。購入した土地が被差別部落だったと主張し、売買契約を解除させるなどしたためという。社会が差別の根絶を目指す中、子どもを導くべき教師が自ら行った差別の衝撃は大きい。すべての教育関係者は他山の石としてほしい。
 県教委などによると2人は夫婦で、昨年7月、既に購入した土地を仲介した宅建業者に文書を送り「被差別部落の土地は避けたい」と売買契約の解除を求めた。
 業者から連絡を受けた売り主は心身ともに憔悴(しょうすい)し、解除に応じることにした。だがその後も2人は業者を非難し続け、業者の従業員は精神的苦痛から体調を崩した。このため業者は11月、県に対し、あらゆる差別の解消を目的とした県の条例に基づいて、知事が「説示」を行うよう申し立てた。
 今年2月、一見勝之知事は「たとえ私人としての取引活動上の行為であるとしても教育公務員に対する信用を傷つける」として「二度と同様の行為を行うことのないよう」との説示を出した。説示に法的な拘束力はないが、県教委は2人への処分を決めた。
 土地や建物の購入は「一生の買い物」だ。あらかじめ、その物件に関する詳しい情報を知りたいと願うのは、誰しも同じだろう。
 しかし政府は、差別根絶の観点から、宅建業者が取引相手に被差別地域の存在について聞かれても「答えなくていい」と国会で明確に答弁している。業者が2人に、そうした情報を伝えていなくても瑕疵(かし)は全くない。むしろ伝えたら差別への加担となろう。
 知事の説示にもあるように、教育基本法は学校の教員に「自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」と要請している。そうした責務を負う教員が差別を行い、さらに業者を非難し続けた責任は重い。
 幼い子どもには、本来、差別の意識などない。無垢(むく)な心に差別の意識を芽生えさせるのは、周囲の大人たちである。学校はそうした悪意と無縁の場であるべきだし、未来を担う子どもが、差別せず、また差別もされず成長してゆけるよう導くのが教師の務めだろう。子どもが知識とともに、「差別を許さない精神」を身に付けられるような指導こそが求められる。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です

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