自由をコントロール。

うちの近所のスーパーへ昨晩買い物に行った時の事。
最近ずっと貼り出されていた無数の
『大好きなお母さんの似顔絵』
をまじまじと見る。

上手にお母さんの特徴掴んでんだろうなぁってものやら
怖～い怪獣みたいになっちゃっているものやら
シュールにぐちゃぐちゃなものやら
これ親が描いただろっちゅう見え見えなものまで色々
窓一面にぎっしり貼られてある。

購入商品をレジ袋につめながら隅々までざっと流し見。
で、思う。

「母の日っていつだっけ？」

その「いつだっけ？」の「だっけ？」に被り気味で

「今日じゃん！」

とも思う。
今日とは昨日の今日。
ややこしいなぁ。

母の日だから何？
もうずいぶんと長い間
僕は母親に迷惑かける事以外なんもしてないくせして
毎年正月以外、実家にすら無用事では帰らんクセして
今更母の日に何思う？
子供が描く絵という物は
なんと自由で楽しいものなのだろう
なんて貼られたたくさんの絵を見て母の日を違った形で思った訳でして。
母さんを想わず。
親不孝。

それらの絵はどれもこれもカラフルではっきりしていた。
ぐちゃぐちゃだろうが何だろうが迷い無しといった感じ。
でいてしっかり主張している。
しっかりお母さんを見ている。
僕らにもそんな風に振る舞えた頃があったのだろうが
大人になった今では別な何かを手に入れた代わりに
その“無邪気な才能”は見る影も無く失われてしまったようだ。
誰しもが持っていたハズなのに。
当然僕も持っていたハズなのに。

子供には子供の“法律”があってそれは決して縛られないものなのかもしれない。
ストレートで素直で豪快で
時にそれが残酷で。

昨晩見た『大好きなお母さんの似顔絵』募集ポスターにこんな文句があった。

“大好きな人や大好きな動物でも大歓迎です”

駄目だろう。

母の日企画の『お母さんの似顔絵』なんだから
『お父さん』や『世界のナベアツ』や
『飼い犬』や『カピパラ』や『ピカチュウ』等は駄目だろう。

でもいるんだな『ピカチュウ』
いるんだよ『お父さん』が。
『わたし』て自分描いちゃってる子まで。
こうなったらもう“お母さんありがとう”もへったくれもない。
コンセプトずれすれだ。

“自由”に描いてもらおう
縛らず発想を広げ、描いてくれる良い子を増やそう
っちゅうスーパー側の大人サイドな配慮なのだろうが
“自由”がズレて子供にブレが生まれちゃっている。
子供からしたらお題は大好きな『お母さん』だけで充分なのだ。
それだけで果てしなく発想と世界観は広がる。
『お母さん』を楽しめる。
楽しみながら大好き度も確認でき
『お母さん』を面白がれるし
『お母さん』も面白がれる。

そんな子供ん中の“法律・法則”に
『大好きな人や大好きな動物』っちゅう毒電波を注入するから
選択肢が広がりすぎちゃって“自由”が散漫になっちゃう。
なんでもアリで違う面白さが生まれちゃう。
膨張したんだか縮小したんだか掴みにくくなり気を散らせてしまう。
かえって“不自由”だ。

結果、その毒電波が入り込んだ子は大概飛び出しすぎちゃうのだろう。
それはそれでおもろいのかもしれないが
それは違った面白さだ。
飛び出すなら『お母さん』で飛び出せば良い。
『お母さん』のみで飛び出させてあげれば良い。
『母の日』企画なのだから。

まぁこれは僕の勝手な意見だから一概には言えん訳だが
どうせ書き加えるなら
“お母さんの大好きな物やお母さんの大好きな動物でも大歓迎”
とした方が良かろうになんて思ったのだった。
あ、“お母さんの大好きな人”なんかにしたら
何だか危険だからね。
お父さんじゃない可能性大だから。
だから“物”です。

なんでもイージーになんでも優しくが過剰だったり履き違えたりしたら
とんでもない子になっちゃうぞ。
僕みたいな大人になっちゃうかも？
まあまあ。

決まりがないとはみ出せないし
常識を知らないと非常識な発想も浮かばないし
常識をくつがえせない。

はじめっから『ピカチュウ』描かせちゃうゆる～い感じじゃ
なんだか危険でもあり味気なくもあり
つまらなくもあるように思った。

帰りスーパー寄ったら
絵はきれいに剥がされていたのだった。

来年は素直に
お母さんを描かせてあげて！
描いたげて！

あ、その前に父の日があるわ。
ピカチュウお父さん！

めけめけ～。

写真。そのポスター。