平成26年12月14日(日)
地域のお宝再発見 在来作物シリーズもついに最終回となりました。今日は「昔ながらの農作物で正しい和食教室」。教えてくださるのはこの道のベテラン、焼津料理研究所を続けて50年、田中満江先生です。
「在来作物は、伝統料理と共に残る場合も多い」という話をよく聞きます。稲垣先生のフィールドワークに連れて行っていただいたときにも、行事食などについて詳しく聞いていらっしゃいました。
幸い、三右衛門芋の取材に行った時に芋煮の話を聞くことができました。三右衛門新田の辺りは、宴会の席で出されるものも豆や芋が中心だったんだそうです。やはり土地柄なんだなあと思いました。じゃあ、いわゆる港町と呼ばれていた辺りでは食文化が違ったんだろうか…
これは昔からの私の疑問でした。
打ち合わせでその話をすると、田中先生から、「今の時期だったらおひらでしょうね」という言葉が出てきました。折しももうすぐおいべっさん。昔から、我が家ではお札の前に鯛とおひら、口取り、お赤飯が並べられ、大根とカブが飾られます。神社が近所にあるため、一年の中でも我が家周辺が一番にぎわうときかもしれません。おばあちゃんの煮物が絶品で。私の中でも忘れられない伝統食。「先生、ぜひそれをやってください!」とお願いしました。
その日のメニューは3品。おひらとお赤飯。そしてぬたを添えてもらいました。今の時短料理などでは味わえない、きちんとした和食を習います。
こんな若い子たちも興味深々。一体どんなできになるでしょうか。
まずは、先生からこんな質問。「どうして神様に赤飯をあげるのか?」
お米は腹持ちがよく、昔はとても高価なので、神様にお供えするのにふさわしいものだったのだとか。おいべっさんの時のように晴れの日には赤いお赤飯を、また喪に服す時には白おこわに黒い豆を。おこわは水加減が難しく、性格がよくわかると言われていたのだとか。私だったらどんなおこわを炊くのかしら(笑)。
ぬたが作られるのは春先。おつぼ(タニシ)を水田で獲りゆでてねぎに合えたのだそうです。今回は中新田の地ねぎを使用。細ねぎなので、普通は「お辛味」にするとのこと。
おひらの由来はあまり確かではないのだそうです。でも、野菜を平たく切って、平たく盛る。これこそまさにおひらの由来ではないかと仰ってました。
当時の人たちの暮らしぶりが見えてくるお話。とても楽しくなります。
さて、いよいよお料理です。
先生から、計量をしっかりするようにとお話がありました。野菜の正味を図り、それにらいして甘み何パーセント、塩み何パーセントと詳しく指示が出ます。実は計量っていつもいい加減な私。でも今日は気張ってきちんと計量します。
そして、小豆を煮て赤飯を作り、下ゆでした野菜でお平を煮て、ぬた用のねぎをしごいて粘り気を捨て。作ったことのない料理はなかったのですが、手間を省いてやらない作業がいっぱい!!これがどんな効果をもたらすか、楽しみ!!みなさん真剣に取り組みます。
さあ盛り付けです。
お料理の美しさももてなしの一つ。先生の見本は本当に美しかったです。
ついに完成!
美しい盛り付け。こんなお供え物をしたら、うちの神様も福を奮発してくれるかしら(笑)。
すごくきれいな盛り付けだけど、もったいないと見てなどいられません!おなかがくーぐー言ってます。
さっそくみんなで試食!
さて、おいしいお赤飯、おいしいぬた!ときておひらに行った時に少し手が止まりました。少し甘みが強かったり、味が薄かったり…おいしいんだけど…ちょっと…
このおひらの疑問が解けたのは、家に帰ってからでした。たっぷりの試食、食べきれずに持ち帰ったものが食卓の並びます。「試食してみて、家の煮物の方が好きだった」という私の言葉を受けておひらを食べた母が、「なに言ってるの、すごくおいしいじゃない!」と言います。食の好みが似ている母。そんなに感想が変わるはずはないんだけど…と思いながら、私も一口。
で、すごく驚きました!!それぞれの野菜の風味が残っていて、どれも上品な味!!そうか!煮物の味付けは、その場で食べておいしいんじゃなくて、冷めてちょうどいいようにしなければならないんだ!この味が、計量することによっていつでも再現できるなんてすごい!!!
うちの料理がまずいわけでは決してないけども、こんなにワンランクも2ランクも上のお料理ができるなら、このレシピやコツを、大切にしなければ!!心に誓った夜でした。
お料理をするときに大切なのは素材だと思います。素材がおいしければ、何もしなくてもおいしくいただけます。でもそこに手を加えることで、びっくりするほどおいしいのお料理へと変身を遂げることができる。お料理って奥が深い!!とても感慨深いお料理教室となりました。
田中先生、ありがとうございました。