新河鹿沢通信   

暮らしの中から 村の歴史 足跡 集落 跳躍  麓風小舎     

「ウラシマソウ」の不思議 釣糸状の肉穂花軸が回る

2016年06月16日 | 地域の山野草
ヘビが好きだという人はあまりいない。先日村の先輩から「マムシグサ」を「ヘビノバッコ」と呼ばれたことを知る。探してみると杉林には「マムシグサ」に代表されるテンナンショウ属の「ヒロハテンナンショウ」、「ウラシマソウ」に出会う。一般的にはすべて「マムシグサ」か「ヘビクサ」等と呼んでいる。「マムシグサ」の茎は紫褐色のまだらな模様がある。この模様がマムシに似ていると考えられたところからこの名がつけられた。花の形、苞(仏炎苞)は紫色に近く、白線がある。なかには苞が緑色のものもある、この形もヘビのカマ口を連想されあまり好きがられていない。

近縁種に「ウラシマソウ」がある。今回「ウラシマソウ」に魅せられて数回我が家の杉林に通ってみた。「ウラシマソウ」について「ウィキペディア」に次のような解説がある。ウラシマソウ(学名 Arisaema urashima)は、サトイモ科テンナンショウ属の宿根性の多年草。ナンゴクウラシマソウ (Arisaema thunbergii Blume)の亜種 Arisaema thunbergii urashima (Hara) Ohashi et J. Murata とする説もある。

「ウラシマソウ」を昨年自宅の杉林で見つけた。花の形、仏炎苞とは「苞(ほう)とは、植物用語の一つで、花や花序の基部にあって、つぼみを包んでいた葉のこと。苞葉ともいう。また個々の苞を苞片という」。奇怪な感じがするが似た身近な植物に「ミズバショウ」等がある。「ウラシマソウ」にはここから釣糸状の肉穂花軸は一般には40~50cm伸びている。なかには70cmまで伸びるものもあるといわれている。

6月5日 ウラシマソウ 湯沢市川連町内沢

上記の写真は「ウラシマソウ」の全体。立ち上がった肉穂花軸は葉の上までのびるそうだが今回はその時期を逃してしまった。葉も独特通常1枚で、幅20~30cmほどの掌状で鳥足状(左右に分かれた葉軸の片側にだけ小葉をつけ鳥の足のようになる)に、11~17枚の小葉をつける。小葉の数が比較的多いのが特徴。

葉の全体

この写真の葉が一枚だという。小葉が17枚 不思議な形だ。

鶴田知也氏「百草百木誌」(昭和56年 角川書店)に「うらしまそう」(浦島草)に見事な画と「暗紫いろの仏焔苞から伸び出した釣糸状の肉穂花軸は、いったん立ち上がったうえでゆたかに屈曲して長々と垂れ下がる」とかいてある。

鶴田知也著「百草百木誌」引用(図をクリックすると拡大)

この図では葉の展開と同時期に仏焔苞と釣糸状の肉穂花軸が伸びている。それに比べて私の出会った「ウラシマソウ」は葉が展開が終わってしまった。釣糸状の肉穂花軸も初めの姿とは違っていたと思われる。

5月23日

糸状の肉穂花軸は5月23日には仏焔苞前面に上昇して垂れ下がっていた。先端は地についてはいなかった。鶴田知也氏の図の状態と比較して、一週間から10日も経過した姿らしい。

5月31日

5月31日に出向いてビックリした。釣糸状の肉穂花軸が仏炎苞の後ろ側に回っていた。一週間で時計まわりに回り、茎で止まった。

6月5日

そして6月5日には茎から離れ、逆回転して止まっているように見える。前の方に垂れていて先端は土についていた。この不思議な釣糸状の肉穂花軸は動いていたことになる。

6月10日  

6月10日になると釣糸状の肉穂花軸は退化し長さが10㎝程になっていた。5月23日、31日、6月5日の釣糸状の肉穂花軸は時計の針と同じに回り、茎に到達すると今度は反対周りになり仏炎苞の前でとまっている。180度ほど時計回りで回り、茎で止まりそこから130度ほど逆回転して停止している。そして釣糸状の肉穂花軸は退化が始まり6月10には13㎝程の長さになっていた。受粉の終わったと思われる仏炎苞も収縮している。約20日間の出来事。

「ウラシマソウ」の花言葉に・不在の友を思う・注意を怠るな・懐古・回想とある。その由来は定かではないが、名前にもある浦島太郎の話しと重なる言葉が多い。空けてはならない玉手箱を開けてしまった事と重なり、花言葉は「注意を怠るな」が的を得ているのかもしれない。この付属体がなぜこのように長く伸びているのか。その先端が地面や草などどこかにふれている。そしてこれを、地面を這う蜘蛛、蟻などの虫が伝い歩くこともあるらしい。どうやら受粉と関係しているのではないかとの説もある。受粉を促進させるために釣糸状の肉穂花軸が動くのだろうか。

丈は30~50センチ。地中に球茎があり、多くの子球をつくって増える(栄養繁殖)。受粉はキノコバエの仲間の働きによるとされる。キノコバエや他の昆虫を呼び寄せるために仏炎苞からある種の匂いを発散させているのか。釣糸状の肉穂花軸は、雄株の仏炎苞に導くための通り道の働きをするとしても回転しているのはなぜなのだろうか。

動くと思われる植物の代表は「ヒマワリ」、回る時刻は日の出直前だろうか。確かめたことはない。「オジギソウ」は触るとすぐ動くことは誰でも知っている。「ウラシマソウ」の長い釣糸状の肉穂花軸が他の植物よりも複雑に動いていることを知ったのは今回が初めてだ。太陽と関係があるのではないかとの説もあるがどうだろう。不思議な植物。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 薪伐り 漆の大木 | トップ | ニガコヤジ(赤子谷地)考 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

地域の山野草」カテゴリの最新記事