手づくり漆器 ~うるし うるおい うるわし~

鳥取の漆職人がお届けします。

父の姿

2010-04-15 07:07:50 | Weblog
父は会津塗りの塗師でした。

手はごつごつして、爪は漆で黒くなっていました。

胡坐をかいて、定盤に向かってひたすら漆を練っていました。

蔵の中は、弱い蛍光灯があって手元が分かる程度の明るさでした。

そのころは、まだ小さかったので、なにをしているのかよく分かり
ませんでした。

しかし部屋には、独特の漆の臭いが沁み込んでいて、記憶の中に
その臭いが沁みこんでいます。

仕事が終わると、よく釣りに行っていました。
仕事道具と同じくらいの釣り道具が、やたら多かったです。

私は、父のスクーターの後ろに乗せられ、一本竿は20本ほど
スクーターに縛り付けられ、人里はなれた穴場に連れて行って
もらいました。

鮒釣りです。 川の淀んだところに陣取って、持ってきた竿をあち
こちに仕掛けるのです。

鈴の付いた竿は、当たりがあるとチンチンと鳴るのです。

真ぶなやへらぶなですが、びくにたくさん入れて帰ると、
母がそれを甘露煮にしてくれました。

私が小学校のころの思い出です。今年で、父が亡くなって7年、母が
亡くなって17年になりました。

5月ごろには、会津に帰って墓参りをしようと思っています。