丸出しのまま

＜１月１９日（月）＞

日中は１６度まで上がり春を思わす陽気だった。とはいえ、季節は冬。陽が落ちるとやっぱり冷える。
２０時を過ぎていた。今宵の怪人クン、これといって約束はない。ちょっと前ならこんなときこそ、いざキャバクラ。しかし、今ここでガマンをしなければ貯まるものも貯まらずじまいだ。さっさと風呂にでも入って体を温めよう。
ボディを洗うよりも先に頭皮だ。といっても髪がない。１回のシャンプー量は、女性やロン毛男に比べで実に経済的だ。乾燥もお手軽。ドライヤー不要。元どおりまでの所要時間、わずかに３０秒。このときばかりは「ハゲでよかったぁ～」と優越感に浸る。

と、すぐ近くの自室からＥＸＩＬＥの声がした。電話だ。慌てて飛び出しケータイをつかんだ。２つ折りのそれを開くと〝お蝶〟の名前がそこにあった。
「はぁ～くしょん！」
大きな音にヴォーカルが一瞬かき消される。おっと、早く出ないと切れちゃうな。ボタンをプッシュ。
『もしもし、久しぶり』
普段、連絡のやりとりはほとんどがメールだ。こんなふうに彼女の声を聴くのはいつ以来か？　ちょっぴり甘えた感じのＶＯＩＣＥが妙に懐かしい。
「月曜日にめずらしいなぁ。店か？」
『うん、出勤してるの。こないだディズニー行ってきたからね、おみやげ渡そうと思って』
くぅ～、やさしいねぇ。
「ありがとう」
ならば、受け取るためにそっちへ行かないとならないなぁ。今すぐ、と言いたいとこだけど財布の中身を見て言葉を選んだ。
「今週中にもらいに行くよ」
『わかったよ』
なんともあっさり冬眠解除。そうじゃなくて、今回だけは特別だ。相手がお蝶じゃなかったらムフフ…、「しばらくキャバは…」って断ったんだけどね。

それにしても寒いなぁ。あ、忘れてた！
怪人クン、このとき全裸。上から下まで丸出しのまま。対するお蝶は華やかドレス。
このギャップ、表現のしようがないよ～。


※おハナさんのお店にあるカラオケ盛り上げグッズ（写真）。