家具の学校

『家具の学校』から始まったモノづくり
現在は、ダニエル元町本店にてワークショップ体験をご案内

2011年12月10日上級特派員便り

2011年12月16日 | Weblog
上級特派員便り

2011年12月10日 @伊勢原校   晴れ

今週はキャビネットの製作の最終章。
今日の伊勢原は寒い。伊勢原は大山の登り口が近くにある。伊勢原市の海抜は知らないが、大山に近いので寒いのだろうか?横浜辺りとは1,2度は違うようだ。
その伊勢原での木工作業も今日が最後となった。

長い、長い工程を経て、キャビネット製作も最終日になりました。前回も述べましたが、キャビネット製作は実に様々な工程があり、それらのどの工程にもそれぞれ利用する道工具があり、それらを繰るたしかな腕が要る。これら道工具もキャビネ製作で数えきれないほどの種類を使ってきた。
工作機械では、手押しカンナ盤、横切り盤、昇降盤、一面自動カンナ、ほぞ切盤、ボール盤、角のみ盤、ベルトサンダー、スピンドル、パネルソーなど。工作機械ではないが集塵機。
電動/エア工具は、エアカッター、オービダルサンダー、ルーター/トリマー、ドリルドライバーなど。
手工具では、ノギスやスコヤ、曲矩(さしがね)などの定規類、罫引き白書きなどの墨付け工具。のこぎり、玄能、のみ、そして台かんな、小がんな面取りかんな台直しかんななどのかんな類。それに、手作業を補助してくれるハタガネ、ベルトクランプなどのクランプ類やサンドペーパー。
挙げれば、実にほとんどの動工具を駆使していたことが分かります。
筆者は、大事な道具にアイロンも挙げておきたい。材にへこみが生じた時に、患部を水で濡らしてアイロンをかけるとたいてい元に戻ります。ずいぶんお世話になった道具です。

本日のキャビネ製作は、引き出しの組み立てと前扉の取り付け。
引き出しの向板と側板を、底板を嵌め込む溝の位置を合わせてボンド付け。ボンドの乾かぬうちに底板を溝にはめ込み、すかさず、前板を取り付ける。前板をハタガネで動かぬように固定して側板から前板のハツリ部分に釘を打つ。釘はしっかり釘締めで叩き、ダボを埋め込み隠し釘とする。ダボはテーパー加工されていて、打ち込むほどに締まってくる。
引き出しが、きちんと矩(かね=直角)が出ていることを確認する、または必要に応じて微調整する。
底板はボンドをせずに、底から側板に斜めにタッカー止め。引き出しをキャビネに入れて引っ掛かりが無いように、最後に底の部分を手鉋で平ら(若干凹面)に削り、取っ手を取り付けて引き出しの完成。
前扉は、留め(=45度)の部分などを確認し、隙間が生じていたら木工補修用パテ(コクソウッド)で隙を埋めて、乾燥してから余分な部分をやすり掛けで落とす。パテはスクレーパーのようなものでしっかり押し付ける。
裏表ともに綺麗にやすり掛けする。繊維に沿って掛ける。繊維を横切るやすり掛けが必要な時は、やすり掛け痕が消えるように繊維方向に掛けて仕上げます。
完成の目途も立ち、ここで休憩。佐宗おやつタイムとなりました。
伊勢原での最後のおやつは、山梨産巨峰干しブドウの入ったフルーツケーキ。しっとりとした舌の感触に控えめの甘さが広がり、巨峰やシナモンの香りが鼻腔をくすぐります。今後は横浜に戻って張りの練習が待っていますが、このまま伊勢原でいいのにとの声も。

扉の丁番を、下穴を開けてからねじ込みます。本体帆柱には、左右扉の隙間を見定めて、隙間板を使って丁番を取り付けます。何事も丁寧。
扉も取っ手を付けて完成。
これで塗装前組み立ての完成となり、引き出しの側板にダニエルの焼き印を頂き、完成品を前に皆で記念写真。T氏が多忙で完成時に参加することが出来なかったのはまことにです。
実に多くの工程の中、実に多くを学ぶことの出来たキャビネット作業でした。
生徒たちの作業に、時に物足りなさを感じたこともあったかもしれませんが、我々生徒は新しいことも習い、発見しながら楽しい時間を過ごすことが出来ました。お世話になった佐宗先生、正野先生に感謝、感謝です。

終了後、伊勢原駅周辺のお蕎麦屋さんで、専攻科の先輩諸氏もまじえて謝恩会を行いました。話の尽きぬ、楽しい時間を過ごし、おいしいお酒も頂きました。先生の、今後も遠慮なく相談事を持って来てください、との言葉を頂きました。ありがたいです。
歴代でも、かなり熱心なクラスだったとか。皆勤賞はS氏とH女史。
皆多くのことを丁寧に習いとても充実した伊勢原木工教室でしたので、終了を迎え、なんだか感傷的になりました。


写真1: 引き出し前板の釘打ち ハタガネを使って丁寧に


写真2: 段違い部分をきれいにカンナで仕上げ

写真3: 塗装前の木工完成品
  
写真4: ダニエルの焼き印 合格したもののみに許される焼印

写真5: 完成品を前に1枚

写真6: 本日の、そして最後の佐宗おやつ


写真7: 謝恩会

写真8: 僭越ながら、佐宗先生と特派員の記念のツーショット 


『お道具拝見コーナー』その10(三枝氏投稿)

今回は ウッドパテ コクソの紹介です。
品名:木工補修用パテ
メーカ:玄々化学工業株式会社
            http://www.gen2.co.jp

これは道具とは言わないかも知れないが、加工精度の甘い所を隠す道具の一種とみなす事が出来るだろうか?

框組の家具を製作してホゾや留めはキチンと組み上がって欲しいと願うが、今一密着しない場合が有る。
材をカットする時の力加減や、穴掘り時の材の押さえ加減でわずかなずれが出るのだろう。 組上げてみると胴付きが今一と言う事が往々にして有る。

そう言う時、力の掛からない所であれば、ぼろ隠しにこのコクソ白ブナを摺込むと隙間が目立ち難い。 プロでも用意しているくらいだから、自分の腕が悪いと余り嘆くことせず、堂々と使えば良いだろう。 但しコクソを塗った部分は、塗装が乗らないので、不要な部分は出来る限り削りサンドペーパーなどで落として置く必要がある。
その後でどうして此処に隙間が出来たのか、原因を探求して、改善すれば良いではないか。

似た物はホームセンターにも置いて有る。 便利な物は大いに活用していけば良い。 力の掛かる所は、エポキシパテも有るから、場所によって使い分ければ良いと思う。
上手く使いこなせば、隙間も目立たず、我ながら上出来と満足できる仕上がりとなる事請け合いだ。

写真9: 木工パテ コクソ

写真10: 木工パテ例 0.2mmほどの隙にパテを摺り込み(左)乾燥後サンドペーパー(右)

文責・編集  堀江