「『アイヌ新聞記者 高橋真 反骨孤高の新聞人』 合田一道著
かつて『アイヌ新聞』という名の新聞を作っていたアイヌ青年がいた。名前は高橋真。わが民族の立場に立ち、自ら発行する新聞で、差別や偏見を訴え続けた。なぜ、この人物を書くのか。アイヌ施策振興法ができ、北海道白老町に民族共生象徴空間(愛称「ウポポイ」)が誕生して、やっとアイヌ民族の存在に衆目が集まりだしてきたいま、自らの手で新聞を作って社会に訴えたアイヌ記者がいた事実を明らかにしたいと思ったからである。
「北海道旧土人保護法」が九八年間も経過した一九九七年にようやく廃止され、替わって「アイヌ文化振興法」が生まれ、その二二年後の二〇一九年四月一九日、初めてアイヌ民族を先住民族と定めた「アイヌ施策振興法」が誕生した。
高橋真は、この新法を知ることもなく、一九七六年七月、死去した。享年五六。この著書はアイヌ民族で初めての新聞記者が、自己の信念を貫き通した魂の記録である。(本書「はじめに」より)