ヒスバナアラカルト

香西善行の雑記ドコロ
諸々の感想には具体的内容も含んでいますので、お気をつけくださいね。

劇好サボテンアミーゴ「サムシング・ブルー」@武蔵野芸能劇場

2007-07-26 02:20:33 | 演劇関連
ホテル・サムシングブルーは大手ホテルグループに買収され、本日がリスタートの日。新支配人は記念すべき初めの結婚披露宴をなんとしても成功させたいと意気込んでいるが、旧支配人の怠慢と資金不足により設備はボロボロ。従業員、関係者総出でどうにかしようと奮闘するが…。

今回が第7回公演だけど、決して若い劇団ではなく男性陣はほとんどの方が40代なそうな。芝居の上手さに年齢は関係ないと思うが、その年代が持っている“味”は確実に存在する。それがこの芝居には抜群に活きていたように見えた。それに会場全体が楽しい雰囲気に包まれていたように感じたし。エンディングでダンスを披露していたが、これって私は好みではない、が、周りの手拍子を聞いていると「ああ、悪くないな…」と思ったのは我ながら珍しい。
『ショー・マスト・ゴー・オン』(三谷幸喜・作)に影響を受けて作ったそうで、テンポ良く、笑いとしんみりを盛り込んだ舞台でした。

ブラジル「天国」@中野ザ・ポケット

2007-07-20 07:08:43 | 演劇関連
自動車工場近くの居酒屋「おもひで」。ここは若女将が一人で切り盛りし、それ目当ての期間工たちが毎日通っている。三十路過ぎの期間工達は他愛もない会話をし、酔って帰っていく毎日を過ごしていたが、一人の男の来店で“毎日”がズレ始める……。

舞台は昔ながらの居酒屋。カウンターがあり、座敷があり。ビールのキャンギャルポスターや木彫りの熊等々、昭和から時間が止まっているかのような、取り残されているような佇まい。和服の若女将が映える。

楽しそうではあるが、世間との係わりを拒絶しているかのような人や場所。こういう空間を観ていると演劇界のメタファーなのかな…などとすぐ思ってしまう自分はちょっと毒されている気がする。いや、この芝居とても面白かった。世間を拒絶しているからこその関係性や本性などが徐々に明らかになっていき、哀しいのだが大笑いもした。全員面白い。うん、人間はおかしいな。

お薦め。22日(日)まで。


「ゾディアック」@新宿ジョイシネマ

2007-07-13 05:55:25 | 映画関連
60年代アメリカで実際に起こった連続殺人事件。新聞社に送られてきた声明文と暗号から始まる、記者や刑事達の“ゾディアック”捜し。手がかりもあるし容疑者も浮かぶが、犯人に辿りつかない。そして、追いかける男たちの人生の歯車は次第に不気味な音をたててゆく……。

「セブン」に衝撃を受けた者としては、やはりその線を期待してしまうのだが、ガツンと裏切られる。でもこの映画は凄い!物語が面白いわけではないが、「事件」の描き方が変態的、いや、異常なほど執拗的なのだ。生活も犠牲にし、とり憑かれたように事件を追う男の姿は、この映画をつくる監督の姿をもオーバーラップさせてしまう。今でも未解決なこの事件を徹底的にリサーチし監督なりの結果を出している。
謎解きに参加するでもなく、派手な展開があるわけでもないがスクリーンの人物に釘付けだ。演出も凝りまくっている。
と言いつつ、ウチの20型モノラルテレビじゃすぐ寝るだろうな。是非、映画館で観るべき。臨場感を生かせる環境で観ないともったいない映画。

ユニークポイント「もう花はいらない」@アトリエセンティオ

2007-07-05 07:25:15 | 演劇関連
谷村潤一郎「痴人の愛」が原作。
男の一人称形式で幕が上がる。ナオミを巡る男と男たちの欲望。それはナオミの欲望へ回帰してゆく…。

一見シンプルだが装置の一つ一つが相乗し合い特異な空間になっていた。天井はチュールに覆われてバラの花びらが透けて見える。小振りなシャンデリアや正体不明な人形も居たりどこかメルヘンを感じたり。

これがユニークポイント!?ってくらいの意外さを味わった。これはうれしい意味で。どうも、社会的な、リアルな芝居をする劇団だと思い込んでいたようで、私。
上演時間は60分とコンパクトだが濃密な物語。男女間のアレコレというのは秘すべき部分でもあるが為、余計に食いついてしまうのかな。暴れ、歌い、踊り、エロティックとマゾヒズムの狭間でゾクゾクしたり。

当日パンフの「ごあいさつ」を読んで演劇への真摯な気持ちを感じた。
今配られてるのはNo.5だが過去の文はユニークポイントwebsiteで読めます。興味ある方は是非。
一ヶ月公演、すごい。

「キサラギ」@新宿武蔵野館

2007-07-05 07:22:25 | 映画関連
アイドル・如月ミキが自殺して一年。ファンサイトで交流していた五人は追悼のイベントを行うが、そのうち一人の口から他殺説が…。

小栗旬、ユースケ・サンタマリア、小出恵介、塚地武雅(ドランクドラゴン)、香川照之という役者陣がワンシチュエーションの会話劇を繰り広げると聞いただけで思わずニヤけてしまうが、やはり期待を裏切らない極上エンターテイメントだった。
伏線を張り巡らせた会話、というか伏線と新事実が怒涛のごとく押し寄せ、考えてる暇は与えられない。単純に身を委ねて笑って泣けばいいって感じ。
様々な作品からのオマージュ(?)もちりばめられ、とても凝っている。元ネタを知っていれば思わず吹き出すことは必至だ。
観て損はないね!
珍しく誰にでも薦められる映画。

次世代を担う演劇人育成公演「その鉄塔に男たちはいるという」@青年座劇場

2007-07-02 22:15:11 | 演劇関連
戦争の真っ只中、外国の森林に立つ鉄塔。そこには「コミックメン」のメンバーが四人居る。彼らは慰問でショウをした後、逃げ出してきたのだった。戦争が終わると言われているあと一週間を鉄塔に隠れてやり過ごそうとしてるのだが、そこへ一人の兵士が現れる…。

舞台はまさに鉄塔、の途中の監視場所みたいな部分だろうか。白い骨組と小さな櫓が備えられている。中心には穴が開いていて階段が見える。そして夜には星が瞬く。

戦時中の話ではあるが、この鉄塔にいる彼らに緊迫感はない。多少恐れは抱いているが、仲良しの日常のように見える。なんともこの設定が怖ろしい。本家MONOでの公演は1998年だが、今観たほうが状況をリアルに感じ取れるんじゃないかと思う。
途中、メンバーたちは些細なことで喧嘩し始めたり、意見の違いから派閥が出来たりする。たった五人のコミュニティーでありながらそれは世界の縮図と映る。だからこそ“争い”のバカらしさを感じる。
みんなで笑って生きようじゃないか。きっとそれは可能なんだよ。


中野ポケットの前には上演中の芝居のチラシを張ってある看板があり、その前をふらりと通った私は「ちょっと観てみるか…」と当日券を買った。それが『その鉄塔に男たちはいるという』であり、今では最も好きな劇団、MONOを初めて観た時だ。もう六年前の話。
そして今、友人がその作品を演出した。とても面白く。
そういえば初めて会ったとき、その友人も言ってたな、「京都の劇団のMONOが好き」と。
終演後、知人らしき人と話している友人の元へ向かったが「オツカレ」としか言えなかった。
今度、私の演出を観てもらおう。