ヒスバナアラカルト

香西善行の雑記ドコロ
諸々の感想には具体的内容も含んでいますので、お気をつけくださいね。

【演劇】東京フェスティバル『泡』

2013-09-23 15:29:04 | 演劇関連

福島県いわき市小名浜、そこに建つひとつのソープ店が舞台。
突然起こる地震。2011年3月11日以降の1年間、そのお店では何が起こりどんな交流が生まれたのかが描かれる。

3.11から2年半、当時に比べれば落ち着きは取り戻しつつあっても被災地において解決してない事は山積みなはず。”放射能”の話題は絶えずセンセーショナルに取り上げられている中、福島に限らず被災地での生活にスポットが当たることは少なくなった。今回観た『泡』という作品は震災によって大きな影響を受けて生活している地元の人々の存在を正面から伝えてくれ、現在ある日本の日常の片鱗を今一度考えさせられるものであった。

テーマは社会的に重くとも、目の前の舞台で繰り広げられるのはとても人情味のある話である。泣き、笑い、悩み、助け合い、別れがあろうとも繫がりあえている人達。矛盾に葛藤し、怒鳴り合いの喧嘩をしようとも一緒に酒を飲みに行く姿。芝居を観ている感覚が薄れ、訪れたことのない小名浜のソープ店に居るような気持ちになってしまう。本当に日常の風景のようで。だからこそ観終わった後に事の重大さを想ってしまう。

ソープ店の店長は3月11日が誕生日。震災からまる1年のこの日も震災前と変わらず従業員や常連客にお祝いされる。たとえ多くのものが失われた日であろうとも、親しい人の誕生日を祝う光景はとても幸せなそうだった。そしてこの『泡』から受ける前向きな姿勢を象徴するようなシーンでもあった。

抱える問題に嘆くだけでもなく、目を逸らすでもなく、強い意志を受け止めました。

公演を終えて

2012-09-03 17:47:38 | 演劇関連

微炭酸シンドローム『ー初恋』の公演が無事終了しました。

とても楽しい公演でした。
直接お聞きできた感想は好評でしたし、大入り袋も出て、公演としても成功だったんじゃないでしょうか。

久しぶりに役者やってとても楽しかったけど、その倍ぐらいは反省の念があったりもします。いやはや、特に今回は魅力的な共演者に囲まれていたので幸せであり、自分の至らなさに申し訳なくなったりの毎日でした。表現者って人間的に魅力的じゃなきゃいけませんね。

土田さんの脚本を演れたことも幸せでした。
何より登場人物達に愛がある。賑やかであり、シリアスであり、ときに対立しようとも、舞台上の人物を嫌いにはならない。みんな人間らしく、愛らしかったですね。そんな中の一人を演れたのが嬉しい。

今回は特に楽日が近づくにつれて名残惜しい気持ちになりました。そういう感情を、公演が終わった今、大切にしたいと思います。


「また演るときは教えて」と嬉しいことを言ってくれる知人も多かった。今回の公演をきっかけに、私が出ている公演に限らず演劇に興味持ってくれたら嬉しいな。私自身はこの先、演劇やるかは白紙なもんで。


演劇って面白いな。

出演のお知らせ

2012-08-23 21:42:29 | 演劇関連

お久しぶりです。

そしてさらにお久しぶりな、舞台への出演のお知らせです。
友人が旗揚げした劇団に出ます。

ここです。

微炭酸シンドローム(http://bt-syndrome.com/

劇団MONOの名作、『ー初恋』を演ります。大好きな土田英生さんの作品という事でとてもうれし楽しいです。MONOは東京で公演があれば毎回観てるし、昔の作品も戯曲取り寄せて読んでました。土田さんの作品は面白いんです。

演出は青年座の須藤黄英さん。この方の演出受けるのは十年ぶりくらい?まだ私が駆け出しの頃に『十二人の怒れる男』という舞台でご一緒しました。今回、旗揚げした友人こと國井有さんとの出会いもその時でした。國井さんとはよく一緒に芝居してたんですけどね、須藤さんとはホント久しぶりで、これまたうれし楽しいです。

約一ヶ月の稽古もいよいよ佳境に迫っています。
連日の通し稽古、衣装や小道具も本番用を使い、細かい動きも詰めてます。いよいよという感じが日に日に増していきます。

多くの方に楽しんで頂ける作品です。是非、ご覧ください!

あらすじと公演概要を記しておきます。劇団のWebに稽古Blogも書いていますので併せてお楽しみ下さい。

〈あらすじ〉
「片田舎にあるアパート【ハイツ結城】。外見は変哲もないただのアパートだが、周囲からは目立っていた。なぜならそこの住人は全員、ゲイだったからだ……。彼(彼女)達はそれぞれの考え、悩みを抱えつつも楽しい毎日を送っていた。しかし、周囲の目は段々厳しくなっていく。そんな中、住人達の間でこれまでにない事態が勃発した」

〈劇場〉
劇場MOMO (中野区中野3-22-8)
〈日時〉
8/29(水) 15時(A) 19時(B)
30(木) 15時(B) 19時(A)
31(金) 15時(A) 19時(B)
9/1(土) 14時(B) 18時(A)
2(日) 12時(A) 16時(B)
〈料金〉
\3000
チケットやお問い合わせは reserve@bt-syndrome.com までお願いします。


3LDKプロデュース『おい!オヤジ。』(改訂版)

2012-04-10 22:44:30 | 演劇関連

 今回は改訂版とありますが、初演は六年前の様です。確か、その初演を私は観ているはずなので、当時とどう変わっているのか比べながら。と、いきたいところですが、ザックリとしか内容を憶えてませんで、えぇ……。そんな記憶力の悪さが功を奏して新鮮な気持ちで楽しめたので良しとしましょう。

 『オヤジ』の通夜が終わり一息ついている時間から物語は始まります。子供たちの物語。『オヤジ』の残したもは何だったのか。

 てんやわんやって言葉がピッタリな状況でしたね。お芝居ならではというか、困る様の面白さみたいな。家族というわかりやすいようで曖昧な感覚がゆらゆらと漂って、誰も掴みきれなくて。

 それで自分にとって家族ってなんだろうなとか考えると、まっ先に思い浮かぶのは実家の父、母、弟。そして祖母。戸籍や血縁というか、沢山の想いが詰まっている人の顔がやはり浮かぶ。この先、新たに家族と思える人が増える、かもしれない。ただ、減ることはないはず。どんな形になろうと家族ってなくならないんじゃないかな。姿かたちが消えようが。

 んー、そういえば三年近く帰省していない。いつ帰ろうか。


 

柿喰う客『検察官』

2011-11-28 23:54:24 | 演劇関連

 ゴーゴリの『検察官』を、中屋敷法仁氏が構成・演出。
 
 私腹を肥やす市長と、その周りにいる、これまたアコギな人々。ある日、隠密に検察官がやってくると知る。日頃の行いがバレてはマズイと保身を画策する市長のもとへ、検察官を見つけたとの情報が入ってくる。しかしそれは、無関係の下等役人であった。そうとも知らずご機嫌を取る市長たち。そして、役人も段々と図に乗ってくる……。

 この公演の目玉、韓国の俳優との合作であるということ。これがとても重要な意味をもっていました。セリフは日本語と韓国語。単純に俳優の人種で言語が分けられているのではなく、検察官と市長たちという立場で分けられ、そのコミュニケーションが異国感を増長させ関係性が非常にクリアに感じました。

 また、言葉だけでなく、打ち込み主体の音響効果とそれに合わせたリズミカルなダンスが緊張感を煽り、でもコミカルでもあり笑いも誘い、おまけに集合した人間の不気味さをも感じるもので。なにやら物語の滑稽さと悲しさをどんどんどんどん浮き彫りにしていっているかのようでした。

 主だった装飾のない、シンプルな舞台だっただけに日韓の俳優たちの熱を存分に堪能しました。

  柿喰う客ウェブサイト→http://kaki-kuu-kyaku.com/

  柿喰う客Twitter→ @kaki_kuu_kyaku

ロ字ック『鳥取イヴサンローラン』

2011-11-14 04:25:37 | 演劇関連

 下北沢の片隅のスナックで働く女たち。仲がいいのか悪いのか、不満の掃溜めか希望の棲家か。その店では怒号と欲望が飛び交う。

 オープニング、舞台前に垂らされた幕に映される日常風景とモノローグ。BGMは快速東京の甲高いヴォーカルと轟音ギターが鳴り響く。のっけからハイテンションに包まれ、その雰囲気は物語の中枢にキープされたまま転がってゆく。

 スナックに務める女たちは性格も育ちもバラバラ。狭いお店でわずかな客の相手。そりゃ、溜まるもんもあるだろう。まあそれを、好き放題に吐き出してひと暴れもしでかして、ハチャメチャである。でもそこが笑える。楽しい。自分の欲望に正直というより、欲望同士を戦わせている。そこがとても真っ当に見えた。上手く立ち回ろうとしても、そんな器用さを持ち合わせてない人ばっかり。不器用のレッテルを貼られ人付き合いには不向きかもしれないが、すっきりして悪くない。むしろ、女たちの罵詈雑言の嵐を眺めながら、こんな人達が身近にいたら楽しいだろうなと思った。

 常連客として全くタイプの違う男が二人登場したが、これも女度を意識する重要なファクターなんだろうね。異性の存在が疑問を生み、そこに苦しんだりして。一見、大暴れする女の醜態讃歌なようで、脆い乙女心をきっちり覗かせるあたりにとても感情移入させられた。あ、私は男だけど。

 私が観た回に快速東京のメンバーの方もいらして、カーテンコールの際に舞台で挨拶されてた。演出の山田さんはこのバンドの大ファンらしく、彼らを紹介している姿はとても乙女だった。

  ロ字ックオフィシャルWEB→http://www.roji649.com/

劇団錦魚鉢『BIGマンディンゴの伝説の作り方』

2011-11-11 02:40:39 | 演劇関連

 ギターを抱えた男が物語を案内する。すべての男たちが不能になって十年、荒廃した世界に生まれた伝説『BIGマンディンゴ』。それは男の機能をフルにみなぎらせた唯一の男。その伝説の男が現れたBarを舞台に、集まった人々の回想を交錯させつつ物語は進んでゆく。

 その店には数ペアのグループがそれぞれの目的で集うわけだが、本人達の気付かないところで関連性を帯びていた。各グループごとの記憶・視点で物語が進み、人々の素性が明らかになっていくことでそれが明かされていく。観ながら『パルプフィクション』を思い出した。きっとイメージは近いと思う。同じ時系列を各グループの視点で語っていくので、同じシーンが繰り返すことになる。視点が違えば相手の見え方も違ってくるので、本人たちは強気な態度だったにもかかわらず、相手からしてみれば弱虫キャラに写っていたという風な各グループの関係をダイレクトに表していて面白かった。ただ、前半は同じシーンが繰り返すことになるので冗長に感じたことは確か。なかなか集中できなかった。

 場の切り替わりが頻繁にあるのはどうも苦手。観ている意識の方も切れぎれになってしまうし、想像力も働かなくなり退屈に陥る。関係や起こった事を全部見せてくれなくてもいいんだけどなと少し思ってしまいました。舞台だからできる表現の可能性を観たいです。

ナルペクト『ドドスカドン』

2011-06-26 11:05:24 | 演劇関連

 おかまバー『怪物ランド』から巻き起こる、元応援団員たちの再びの青春。
 ぶっ飛んだ個性のオンパレードで、見た目も含めて、わかりやすく観てて楽しかった。ぶっ飛び具合は過剰サービスになる危険も孕むが、今回の舞台・物語にはとてもはまっていたんじゃないだろうか。と言うのも、大人の回想する青春に付き物の、“美化した思い出”がどうも苦手なんだが、笑いや気持ち悪さ、時には熱すぎたりとリアリティーとは少しズレた人物たちの集合でその辺りが中和されていたように感じた。もちろん決めるところは決めていたからこその好印象だろうけど。
 あ、でも少し調和が合ってないような瞬間が覗いていたのも否定できない。見た回がたまたまそうだったのか、アドリブシーンでもなさそうな、でもなんか不安定さを感じるやり取りがあったりと。
 劇団メンバーの三橋さんがムードメイカーとしてひと際輝いていましたね。座組みにこういう人いると、場が盛り上がったり締まったりとメリハリが生まれて気持ちいですね。男らしくてコメディーな面も持ち合わせていて、こんな男の人好きです。(あ、私はおかまじゃありません)

ナルペクト公式サイト↓

http://www.narupect.com/

たまごプリン『さいあい~シェイクスピア・レシピ~』

2011-01-28 09:10:35 | 演劇関連
コンクリートの下から突然生えてきた“ど根性野菜”と、母を事故で亡くし父とも学校とも拒絶された女子高生のシェイクスピアを通してのコミュニケーション。
人間に興味を持った野菜たちは、演劇部の女子高生(ハタケ ミノリ)が捨てた台本を元にシェイクスピア演劇を始める。

冒頭、野菜たちがコンクリートからニョキニョキと生えて来る姿からしてワクワクさせられる。初めからミノリと仲良しな訳ではない。だって言葉すらまともにしゃべれないんだもの。
遊び心をふんだんに取り入れたコミカルなダンスは言葉以上に野菜たちの個性を表し、ミノリとの距離を縮めてゆく。
拾った台本からハチャメチャなシェイクスピア劇を繰り広げる野菜たちに巻き込まれていくミノリは楽しそうで、でもフラッシュバックする学校や父との溝。対比の振れが大きくミノリの闇が視覚的に飛び込んで来る。

“ど根性野菜”からのメッセージから向かえるラストには思わず涙した。
確かな身体能力に裏打ちされているからこそのエンターテイメント。客席も老若男女みんなで楽しんだ幸福感で包まれていた。
ダブルコールは何よりの証し。

劇団☆錦魚鉢『わるいゆめ』

2010-12-25 10:09:09 | 演劇関連
物語の軸は、閉じ込められたエレベーターの中というサスペンスコメディー。
浮気の疑いのある男の本音を探るため、依頼を受けた探偵たちが密室という極限状態に追い込むのだが……。
基本的には軽めの雰囲気で、探偵たちもコミカルな個性を前面に出している。
それは観ていてとても楽ではあるんだけど、過剰な動きや台詞が、ある意味親切すぎ段々と観たいという興味が削がれたのは本音。
終幕への伏線もやはり前面に出すぎていたんではないかと感じた。
コメディーであれサスペンスであれ一種の緊張感を帯びた時間がないと、惹かれないんじゃないかなあ、なんて思ってみたりしました。