ヒスバナアラカルト

香西善行の雑記ドコロ
諸々の感想には具体的内容も含んでいますので、お気をつけくださいね。

zupa「サロ・ギュラ~サロメとカリギュラの印象より~」@小劇場 楽園

2007-05-29 21:56:41 | 演劇関連
タイトルからも分るようにオスカー・ワイルド「サロメ」、アルベール・カミュ「カリギュラ」が下地となっている、が私はどちらも読んだ事がない。ま、予備知識なくても充分すぎるほど面白かった。

エアーキャップを天井から這わして、全体的に暗めの照明。さながら湖底をイメージさせる。このアイデアはシンプルながら凄い。

男女6人の織り成す物語の断片が多種多様で初めから終わりまでまったく飽きなかった。情事あり、コントあり、不条理ありなスタイルの無制限さが気持ちよかったし。知らないなりにも「サロメ」「カリギュラ」の一部だろうなと窺えるものがあって芯ははずしてないからこれまた感嘆。演劇ってすげぇなーとか思ってしまった。

そこにある身体シリーズvol.2「東京坪庭」@RAFT

2007-05-27 08:45:58 | 演劇関連
ダンサー、ノシロナオコ氏の「そこにある身体」シリーズ第二弾。建築研究家、スティーブン・チョドリュスキー氏とのコラボレーション。

会場入り口にある巨大オブジェにいきなり驚く。中に入ると階段や多くのペットボトルなどモノが不規則に置かれている空間。小型スピーカーがあちこち吊るされていてその下に座布団が敷かれていたので座った。

能動的のようでシャットアウトしているような、矛盾に似たもどかしさ。ん、緊張感のない生命力というか、何とも上手く表現できないが…。会場のモノたちは東京の風景の転換物。そこにダンスが絡み合っていき感じるのは抑圧、遠慮、不自由、何か抑え(られ)てるような身体の空気。
観終わった後、東京の多面性を少し意識する。

3LDK「ホテルthe寿」@TACCS1179

2007-05-25 07:41:29 | 演劇関連
片田舎にある寂れたホテル「寿」。
先代の社長が急死し、後を継いだ若社長の経営方針には多くの従業員が反発し辞めてしまった。人手不足、多くの負債。そんな経営危機のホテルに銀行の監査員が来るという。本日唯一のイベント、結婚式を盛り上げホテルの存続をアピールしようとするが……。

いつも3LDKの舞台美術は綺麗に作り込まれているが、今回は特に凝っていた。正にホテルの受付とロビーが舞台上にあり、ミレーのレプリカの隣に掛け軸がある様や木彫りの動物、壁の落ちない汚れなど、暗にここが流行ってない様子が窺える。開演まで、すげぇな~と眺めてた。

始まってしばらくはオーバーアクト気味に感じ、少し引いて観てしまったが物語の展開に従い違和感もなくなってきた。これは慣れてきたというよりはコメディーと演技の質が噛合ってきたからかな。こうなると俄然面白い。勘違いから始まるドタバタはこの劇団の得意分野なのだろう。王道だからこそ、ストーリー、キャラクター共にしっかり作られていて楽しめた。

MCR LABO#3「審判」@shinjukumuraLIVE

2007-05-23 08:24:19 | 演劇関連
前後編に分けられた短編を2本、ディズニーランドをモチーフとした短編を3本、オープニング的なモノ1本、計8本をサンドイッチのようにパッケージングした公演。LABOと銘打っているが、笑いと切なさとが混ざり合ったMCRらしい作品たちだったと思う。

ゾンビに追い込まれてビルに籠城している人達を描いた作品が好きだった。
友達3人組と恋人一歩手前の男女がいて、どちらにもゾンビ予備軍が居る。こんな状況なら緊迫した重い雰囲気が常套だが軽快感すら漂っていて、諦めや潔さの心情が切なさを誘う。男女ペア組の男がゾンビ化する前に女にキスをせがむが、どんどん要求がエスカレートしていくあたり、実はゾンビじゃねんじゃねぇの?と邪推してしまったがどうなんだろう。

それにしても今年に入って早3本も公演しているのは驚異的。7月に#4があり、秋にはいよいよ本公演だそうだ。そこも楽しみにしたい。

蕎麦屋の一言

2007-05-09 23:39:41 | 日記ニ非ズ
「お客さん、冷やし?」


最近、昼食は立食いそば。早い、ウマい、安い、みたいな。もはや通っている。
そこで、『かけ』の食券を買ってオヤジさんに「そばで。」と言ったところ返ってきた言葉だ。
暑いんだ。
そんな気はしてたけど。やっぱりね。冷やし勧めてくるんだもんね。バイト着は長袖だけどその下はタンクトップ着ちゃってるからね今日は。暑いんだよ。夏だ、夏!


「いや、熱いほうで。」


え?反射的に口走った。何言ってんのお前、と自分に文句。言い直すか?いや、無理。そんな素直なら友達100人できてるよ。
違う。いつものヤツが食べたいんだ。熱々の蕎麦をふーふー言いながら食べるのがいいんだ。そんな気持ちでお冷を2杯飲む。
そして出された熱々のかけ蕎麦に、いつものようにねぎと七味を加え、いつものように啜る。うん、やはり美味い。全身から噴き出す汗を感じながらつゆを飲み干す頃、隣に客が入ってきた。


「そば。冷たいので。」


今日暑いねえ。暑いっすね。そんなやり取りを尻目に「ごちそう様。」と店を出た。

新国立劇場演劇研修所一期生試演会「三文オペラ」@新国立劇場小劇場【THE PIT】

2007-05-08 04:56:32 | 演劇関連
2005年スタートした新国立劇場演劇研修所(NTTドラマ・スタジオ)の第一期生の初試演会。研修期間は3年なので中間発表といった感じなのでしょうか。残り1年、さらに2作品取り組むみたいです。試演会といえど、演出・宮田慶子氏を始め一流のスタッフ陣なわけで、それだけでも観る価値はあるだろうと観覧応募しましたよ。あ、無料!

正面にロンドンの俯瞰図の書かれた巨大パネルがあり、その前面にアクティングスペースが設けられている。ほぼ素舞台。上手にオケピ。小道具も客席の後ろにむき出しに置いてあり、終演後に「劇場の飾りかと思った~。」という声が聞こえたほど。

演目はブレヒトの「三文オペラ」。
19世紀末のロンドン。乞食の元締めのピーチャムの娘ポリーは、盗賊団の首領マクヒスにかどわかされ、両親に黙って結婚してしまう。ピーチャムは、仕返しのためマクヒスをロンドン警視庁に密告するが、その総監ブラウンは,マクヒスとはかつての戦友で、裏で手を握っていた。そこでピーチャムは智恵を巡らし、ブラウンとマクヒスを追い詰めようとする……。(当日パンフより)

演劇学校や養成所の発表会は稀に観にいくが、…失礼ながら芝居の出来は期待しない。それは、たとえ下手でもひたむきであれば良しと思うから。今回もそんな気持ちで出向いたが、いつの間にか「もっと頑張れ」と批難ではなく期待の気持ちで観ていた。もう少し声が出れば…、細かい所作が…などこれはもう芝居が面白いからこその引っかかりだ。約3時間(休憩15分)想像以上の熱演に魅せられっぱなしだった。すぐ明かりついちゃったけど、ダブルカーテンコールでも良かったんじゃないかと思ったほどだ。
21歳~32歳、研修生とはいえもともと演劇経験はある人が多いと思うがその存在感は凄まじかった。私は興味があり一般応募したわけだが、観客の多くを占めていたであろう出演者の家族や友人の中には初めて演劇を観た方も多かったように感じた。帰り際のロビーの明るさは満足感だろう。面白いものは面白いのだ。そしてこんな役者が来年から毎年15人ずつ世に出て行くと思うとワクワクしてくる。そして素人役者はどんどん淘汰されていくだろうな…。

アンケート

2007-05-06 10:43:51 | 日記ニ非ズ
以前、ある劇団のアンケートに「過去公演の台本が読みたい」と書いたんだけど、劇場で販売し始めたようだ。
「ふふ、さてはオレが読みたいと書いたからだな…」
いや、そこまでは思ってない。同じ意見は多かっただろうし。ただ、意見を汲まれたようでうれしい。
もうひとつ、昔からチケット代1500円で一貫している人気劇団があって、低予算&チープさも売りとしているのだが、今後のチケット代についてのアンケートがあった。
『狭くてもいいから1500円』と『多少高くなるが座りやすい席』の2ヴァージョンつくろうと考えているがどうでしょ?
みたいな内容だった。と思う。
初めてアンケートらしいものを見たなと感じたものだ。

板の上と同じくらい客席との相互関係も大切に。だね。

死ぬまでにしたいこと

2007-05-03 08:29:32 | 映画関連
「死ぬまでにしたい10のこと」を観た。うん、面白い。
貧しいが、愛しい夫と可愛い娘たちに囲まれ暮らしている主人公のアン。23歳で余命2,3ヶ月と宣告されて、誰にも、家族にも秘密にして独りノートに「死ぬまでにしたい10のこと」を書き綴り実行していく……。

序盤、ノートにしたいことを書いているシーンでいきなり泣いてしまったが、そこが涙のピーク。もうすぐ死ぬとわかっても特別なことはしない。いや、夫以外の男と恋路に走ることぐらいは少し特別か。それ以外は今の生活を、意識して大切に過ごしていくことで終止している。残された娘たちに向けメッセージを残すが、「私の思い出を引きずらないで新しいママを愛してね。」みたいなことを言っているあたり人間らしい矛盾がでていて好きだ。
青々とした芝生や、赤を基調とした部屋など、映像がカラフル。人工物に原色が多いのは外国だからか?とも思ったが、このカラフルさは生きる世界の美しさだろうか。色とりどりの世界から真っ白な世界へとアンは静かに目を閉じる。自分のいない世界を思いながら。

さて、余命わずかと言われたら何をするかな?
……とりあえず東京離れて考えるかな。