高層マンショや上場企業のビルが建ち並ぶ埋立地の一画。
私は車を路肩に寄せ配送伝票をめくりながら届け先を確認する。目の前のビルだ。
見上げていた視線を水平に戻すと、そこには一組のカップル。
制服姿。背は高いが幼さが消えていない、中学生だろう。
二人は向かい合い、身体を寄せ合い、お互いにしか聞こえない言葉を確認し合う。
その内、そんな言葉すら邪魔になったのか二人の口、……唇は隙間なく重なり、腕を相手へと絡ませ始める。
まじまじ見るわけにもいかず、そこは大人の対応として素通りを決めこむ。大人は仕事をしなくちゃいけないのだ。
配送を終え戻ってくると二人の姿はなかった。
遠く伸びる歩道には人の影はない。
今日の東京は四月中旬の暖かさ。
すっかり春ですね。