Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

移民議論は時期尚早

2009-04-21 14:37:52 | その他
移民議論はあちこちで書いているが、重要なことなのでまとめておきたい。

出生率が上がらないので移民を持ってくるというのは、典型的な対症療法に過ぎない。
根本的な原因は
①労働市場の歪みから若年層に負担が集中し、晩婚化
②女性の出産と仕事の両立が困難で、出産に伴う世帯の機会損失が莫大であり
 完結出生児数まで低下中
③社会保障制度の実質的破綻

の三つで、これをメンテせずにいくら移民を入れたところで、
大穴のボコボコ開いたバケツに水を入れるようなものだ。
「移民自体イヤだ」なんて保守派な意見を言うつもりは無いが、まずは構造的な対策を
採るべきだろう。
それでも出生率の向上に限界があるのなら、そこで議論をすればいいだけのことだ。

ちなみに、上記①②とも、背景には年功序列制度が直接的に関係している。

だから雇用流動化だけでもかなりのインパクトはあるはず。
保守派の中には「年功序列は日本の美徳」なんて頭の悪いことを言う人もいるが、
わけのわからない美徳と、外国人移民が大挙流入する事態と、どちらが日本にとって
望ましいのか、冷静に考えてみるべきだ。

ところで、かんぽ騒動では
「ハゲタカ外資から日本国の資産を守ろう」とバカ丸出しな陰謀論
ではしゃいでいた民主党が、一転して移民問題では
「日本国は日本人だけのものではない」
なんて発言するほどリベラルな姿勢を見せる点はちょっと理解できない。
政権が見えてきてちょっと浮き足立ってるんじゃなかろうか。
政権与党を目指すのなら、何でも批判すればいいってもんじゃないですよ。

退職金制度は年功序列のバロメーター

2009-04-19 09:19:42 | work
月曜日のスーパーJチャンネル、ちょっとだけインタビューで登場予定。
また30秒くらいだろうから、全容はここでフォローしておきたい。
テーマは退職金制度だ。
最近、制度の見直しに踏み切る企業が増えているというもの。
理由は単純に、維持が困難になってきたからだ。

退職金と言うのは意外に歴史が新しくて、一般的に普及したのは戦後のこと。
長く勤めればお給料が上がるだけでなく、定年退職時にはこれだけ一括で支払いますよ
というサービスで、年功序列制度の一種のオマケである。
当時はそれだけどこの企業も人手が欲しく、しかも熟練労働者を欲していたわけだ。

ところで、そういう時代に退職金規定の多くは作られているため、当然ながら
かなり大甘な数字を基にしている。
業績や金利が低下する一方で、逆に(終身雇用が浸透することで)退職金額は増加。
そもそも当時と違い、今も変わらず「お願いだから定年まで残ってくださいね」
なんて考えている企業がどれほどあるだろうか。

というわけで、退職金制度もその役目を終えつつある。
一番ポピュラーでフェアなのは、ある時点で精算し、勤続年数に応じて分配する形だろう。
大手電機などのように、新入社員に「従来型の積立式か、給与に上乗せ支給式か」
を選ばせる会社もそう。
なんのことはない、同じように給料もリアルタイムに上乗せして支払え
というのが、僕がいつも言っていることだ。
退職金改革は、年功序列制度維持のバロメーターだ。

もっとも、「年功序列制度はもう全然ダメなので止めますね」なんて言っちゃうと
大騒ぎになるので、支給規定が明文化されている退職金だけ先に手が打たれるのだろう。
「将来出世させますよ」なんて年功序列のルールは、どこにも明文化されていないのだ。
こうして日本企業は「騙された!会社一筋で奉公してきたのに!」
というおっちゃん達の憤りを内包しつつ、また新たな若者を人柱として
迎え入れ続けることになる。

どんなにイヤだイヤだと駄々をこねたところで、既にレールの無い時代は始まっている。
素直に人柱になるか、それとも荒野に道を見出すか。
決めるのは自分自身だ。

リストラするにも金はいる

2009-04-17 09:57:38 | 人事
5月号のVoiceで、一部の大手電機の苦境が取り上げられている。ちなみにタイトルは
「事業再編すらできない日立」
内容は日立だけでなく、電機全般の話だ。
(実際には日立は営業黒字だし、もっと危険な会社が他にある)

要約すると、新興国の工業化で総合電機なんて立ち行かなくなるのは明らかだったのだから
とっとと大リストラして選択と集中しておくべきだったのに、バカなトップが手を汚すのが
イヤでやらなかった。リストラしようにももう金が無い。事業売却しようにも買い手がいない。
06年が最後のチャンスだったが、もうお先真っ暗、という話。
もうこれでもかってくらいにこき下ろしている。
余談だが、今週号のダイヤでも同じ筆者が日の丸半導体をばっさり切り捨てていて、
要約すると「エルピーダくらいしか残らない」。
いやもう、明るい光が全然見えないんですけど。
本当の辛口とはこういうものを言うのだ。

でも、まったくもってそのとおりだろう。3年以内に電機は大再編するはずだ。
前回の一連の再編も、00年前後の平成不況の底で行なわれた。
あの時は半導体中心に行なわれただけだったが、今回はより大規模に行なわれるだろう。

付け加えるなら、経営者がアホだったのはそうだろうが、痛みを伴う改革を嫌がったのは
労組も同じであり、結局のところそのツケをみなで仲良く払うことになるのだろう。
あ、でも団塊世代はギリギリ逃げ切れたか。

本書では、終身雇用・年功序列型組織(いわゆる垂直統合型の組織だ)で発展した
日本がいつの間にかガラパゴスと化し、緩やかに衰退していく様が描かれる。
特に電機に就職を希望する若い人にはオススメしたい。
電機だけを取り上げた書ではないが、IT化によって技術蓄積が無力化していく様子が
よくわかる。
「数年前まで下請けメーカーだった台湾企業が、一躍世界シェアトップに躍り出る時代」に
もはや年功序列は何の価値も持たない。




ガラパゴス化する日本の製造業
宮崎 智彦
東洋経済新報社

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民放労連の取り組み

2009-04-15 10:59:27 | 人事
民放労連が下請け格差解消のために配慮を見せ始めたようだ。

最初の一歩ではあるが、最低賃金協定など、目の付け所が良い点もある。
もっとも、課題は多い。
まず、労組の使命である「昇給賞与獲得」とこれら下請け待遇向上は、真っ向から
矛盾するものだ。それをどうクリアしていくのか。

クリアする気がないから「そういうのは全部経営者が悪いんですよ」
なんて誤魔化そうとしているのが連合やその御用政党なわけだ。
少なくともそういう姿勢は見られないので、どうも民放労連は連合とは違う
メンタリティなのかもしれない。

ちなみに、最終的な課題は、同一労働同一賃金の実現である。
というと原資を全人数で頭割りして均等支給するようなイメージがあるが
そりゃ共産主義だ。仕事内容によって待遇差が生じるのは当たり前の話。
格差自体が悪だなんて言ってるやつはとっとと北朝鮮にでも行けばいい。

僕が言っているのは、その業務内容によって生じた格差に、合理的な
理由があるかどうか。なければそれは単なる身分制でしかない。


つまり最終的なゴールとは、担当する業務内容ごとにある程度の相場が形成され、
身分によらずに上下できるシステムの整備だ。
その上で最低賃金を設定するなら、テレビ局なら2000円くらいには設定できるだろう。
(今の最低賃金ラインは身分制の枠内での話なので、抜本的な解決ではない)
そうすれば製作現場のワープア問題なんて解消され、それなりの待遇と
(昇給昇格があるので)やりがいのある業界に再生でき、人手不足も解消するはず。
テレビを再生したいなら、まずは職場に夢を取り戻さないと。
今の時代、既得権防衛だけでなく、そういった前向きな取り組みも必要であるということは
労組自身もよくわかっているはずだ。

『オルタナ No13』

2009-04-15 08:56:43 | その他
環境やCSR関連のビジネス情報誌オルタナ13号、
「U-40が日本の政治を変える」コーナーに、モノ言う若者の会のメンバーである
寺尾美香嬢が登場しているのでご紹介。
もしも若者の投票率が上がったら…というお話。

留学生が採用されない理由

2009-04-14 08:35:42 | 採用
留学生のエンジニア採用が低調であるとの調査結果。
新刊でも触れていることなので、簡単にフォロー。

留学生、特にアジアからの留学生受け入れについては、国も重要性を認識して
いろいろと支援策をとっている。高等教育の質は、競争と多様性によって磨かれることは
この分野におけるアメリカの一人勝ちの状況を見れば明らかだからだ。
グローバリゼーションの進む中、高等教育の重要性はますばかりだ。

と、ここまではいい。問題はここからで、当の日本企業の側がいまひとつ採用に乗り気
ではないのだ。大きく分けて、理由は2点。

まず、留学生と企業の労働観の違いが大きい。
日本企業、特に製造業は保守的な傾向が強く、今でも終身雇用至上主義な風土を
残している企業が少なくない。要するに、新卒で学校推薦で入社して、30年以上
滅私奉公して、最後は「わが生涯に一片の悔いなし」と言ってくれるような
若者が理想なわけだ。
当然、そんな変態は日本人にしかいないので、そういった企業は留学生を敬遠
する傾向がある。

そしてもう一つの理由は、いつも言っている“年齢”問題。
韓国以外のアジア諸国にはそもそも年功序列と言う発想がないので、いくつかの大学を
遍歴したり、あるいは一時的に企業で働いたりして、博士課程なのだけど30歳
なんて人が結構いる。

「学ぶことそれ自体に年齢は関係ない」というのは世界的常識なのだが、ここ日本
は年功序列というまったく別の価値観が支配する国。人間の価値は年齢で決まるのだ。
「終身雇用までは求めない、若い間だけ頑張ってくれればいい」という寛大な企業でも、
さすがに30近い学生を採ることにはアレルギーを感じてしまう。

まあ、要するに受け入れ側の企業内の流動化を図らずに、いくら高等教育、専門教育
の拡充を叫んでも、効果は限定的ということだ。
日本人の高学歴者がフリーターをやっている現実も、根っこは同じである。



雑感@経済危機対策

2009-04-13 12:35:00 | 世代間問題
10日発表の政府の経済危機対策について。
環境対策、資源政策などで見るべき部分もあるが、全体的にはなんというか、玉虫色である。
とくに雇用は新味がほとんどない。一言で言えば、単なるバラマキだろう。
バラマキが何でダメなのかというと、それが本質的な改革につながらない対症療法に
過ぎないからだ。
火事になっているのに火を消さないでエアコンつけようとしているような
ものだから。それで喜ぶのは、もうすぐ寿命のお爺ちゃんだけだ。

ツケの先送りと言ったほうが、若い人には琴線に触れるか。

たとえば雇用調整金をばらまいて、それが労働市場の流動化につながるだろうか。
はじき出された人はむしろ参入のハードルが上がるだけ。極論すれば、次世代の負担で
逃げ切りたい人の背中を押してあげるようなものだ。
再就職のための職業訓練にしたって、そういうことは日本は以前からそれなりに力を入れて
いる。問題は送り出す側でなく、受け入れる企業の側だ。
価値観が硬直しきっているため、「若くてしかも職歴アリ」みたいなものすごい
ストライクゾーンの狭い球にしか手を出そうとしない点にあるのだ。

ついでに言うが、少子化対策で「子育て応援特別手当を一年間だけ拡大」というのもひどくて
一年間だけばらまいてどれだけ意味があるというのか。
本質的な問題は、日本が先進国中最大の男女間賃金格差があり、非正規雇用比率が
高いこと。
つまりここでも、賃金基準が昭和型に硬直していることが原因なのだ。
今回の対策には、こういった本質に迫るものが(少なくとも雇用・少子化に関しては)
まったく見えてこない。
そういう意味で、個人的にはとても残念に感じている。

我々が二十歳の頃。「公共事業をやればやるだけ社会はよくなるんです」と主張する人達が
大勢いて、実際盛大にばらまいた。気が付いたら財政は危機的状況に陥り、しかも構造的な
課題は何一つ解決しておらず、むしろ悪化している。
勝ち組といえば、そういったバラマキを主張し、そして無事に逃げ切った当時の50代だけだ。

もう日本には後がないのだから、90年代の教訓を忘れるべきではない。
ただのバラマキではなく、次代につながるような構造的改革にこそ、最後のカードは切るべきだ。

天地人

2009-04-11 12:21:38 | その他
先日のエントリーに関連して、今月号の「月刊The21」。
大河ドラマ「天地人」などの題字で有名な書道家の武田双雲氏のインタビューが面白い。
氏は新卒で入社した会社を3年で辞めているのだが、きっかけの一つが
「通勤ラッシュがいやだったから」だそうだ。
(最後は自腹でグリーン車で通ってたらしい)

「この軟弱ものめ!」とかなんとか上司に言われてそうだが、その後のご本人の活躍を
みるに、少なくとも上司たちよりは果敢に見える。
ちなみに、氏のいた会社はよりによってNTTである。
いやあ、合わないだろうなあ(笑)

余談だが、氏とは不思議な縁がある。
実は僕の名刺は、氏に書いてもらったもの。
昔、まだそんなに出ずっぱりにならないころに依頼して書いてもらい、気に入って今でも
使っている。もちろん、3年でNTT辞めているとか、3年で辞めた若者~なんて本を
後で書くとか、そんなことは互いに知るよしもない。

たまに「達筆ですねぇ」なんて言われることがあるが、僕自身はかなりの悪筆なので
あしからず。

社会起業が流行る理由

2009-04-09 11:43:32 | 経済一般
今週号のダイヤモンドは「社会起業家特集」だ。
定義は難しいのだが、一定の社会貢献と収益を両立させたビジネスモデルを持つ
起業のことで、NPOと営利企業の中間的な存在と考えればいい。
一昨年あたりから話題になっている企業形態だ。いや、価値観というべきか。
こういう価値観の登場は、やはり昭和的価値観の凋落とリンクしているように思う。

90年代末以降、日本社会では2つのメッキが剥げ落ちた。
一つは企業というメッキだ。これについては特に説明は要らないだろう。
出来るだけ大きな会社に入って長く勤めた方が得だという価値観は、ある程度の
リテラシーのある人なら既にもってはいないはず。

そしてもう一つのメッキが、東京だ。
昭和の時代とは、企業の時代でもある。野口悠紀雄氏の言うように高度国防国家の
枠組みだけが生き残って高度成長国家となり、生産を軸とした社会作りがなされてきた。
雇用面でこれをサポートするのが終身雇用というフレームであり、労働者は企業に
縛り付けられ、イニシアチブは完全に企業側に握られた。総合職男子中心主義、
残業・転勤地獄といった日本名物は、企業による統治の副産物だ。

そして、それらを体現した都市こそ東京だ。企業活動のみを重視し、通勤インフラ、
労働環境などすべて犠牲にした企業都市。個人的には、あの通勤電車の詰め込みぶりこそ
昭和的価値観の象徴だと思う。

さて、2つのメッキが落ちた以上(少なくともそれに気づいた人は)もうそれらに
惑わされることは無い。企業戦士以外の生き方を、東京以外の地ですればいい。
そういった出発点から生まれた様々な生き方の一つがロハスであり、スローライフ
であり、社会起業なのだ。

本特集では、そういった若者たちのいろいろな活動が紹介される。雑誌なので網羅的
だが、興味のある人にはコチラをお進めしたい。

社会起業家に学べ! (アスキー新書 69)
今 一生
アスキー・メディアワークス

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困った時の○○頼み

2009-04-07 12:19:47 | 人事
本日、日経の春秋欄に「創業家のメリット」について書かれている。
不況時に錦の御旗で乗り切ろうという解説だ。
面白いので人事的に解説。

言うまでも無く、こういう話題が出るくらいだから、上場企業のほとんどは
内部昇格社長である。つまり、サラリーマンの出世競争でタイトルを手にした
キング・オブ・サラリーマンというわけだ。

彼らは堅実で合理的と言うサラリーマンらしい長所を持つが、同時に
「組織の論理に弱い」というサラリーマン的短所も強烈に持っている。
そりゃそうだろう、年功序列という連続性の中で勝ち上がってきたわけだから。
結果、先輩の顔に泥を塗るような改革や、元上司に引導を渡すようなリストラは
やりたがらない。

それに、サラリーマン生活の最後のご奉公として社長を務めている人が大半なので、
汚れ役をするよりは先送りで誤魔化そうとする人が多いのも事実。

その点、年功序列と別の論理で昇格してきた創業家出身者は、上下とのしがらみが
少ない存在だ。さらにいえば、今でもちょこっとは一族で株を持っているものなので
ゴーイングコンサーンを意識した経営をする傾向がある。
もちろんアホだとしょうがないので、一族の中でそれなりの選抜と教育を行なっている
ことが大前提だが。

ところで、こういった創業家の駒を持たない企業は、危機に際してどう手をうつのか。
外部から年功序列的しがらみの無い人材をスカウトしてきたのがソニーであり、
年功序列的しがらみの最上位に位置するベテランを引っ張り出してきたのが日立と
いうわけだ。